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がっちゃ! ~12万円は溶かしたがピックアップは出たから今回は爆死ではなかったと主張するような漢の英雄譚~ - 060 その言葉は呪詛のごとく
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060 その言葉は呪詛のごとく

「なんだか聞けば聞くほど、時間が経過するほどに問題が大きくなりそうですね。マキさんには今すぐにでも会えないんですか?」


 状況は一刻の猶予もないのではないか。

 ビール片手に俺は考える。早く救ったほうがいいのではないかと?


「そりゃあ、今すぐにでも会いには行きたいです。それが仕事の関係で……今はちょっと気軽に外には出れないらしいんです。明日だって無理を言って顔を出してもらうことになったんだし。まあ、それもその男の受け売りかもしれない……んですけど」


 ほぉ?


「いや、アルト。さすがにあの人が教えてくれたんだから嘘じゃあないだろうさ。それに今の酔っ払った私たちが会っても拗れるだけだろう」


 まあ……泥酔した父親と恋人が間男と対峙か。確かにそりゃあ駄目だわ。血を見るしかない。うん、なし。ちょっと今は落ち着いたほうがいい。酔っている場合じゃないんだ。つまり酔いを覚ませってことじゃないか。完璧な論理だな俺。すげえ。


「だったら飲んでる場合じゃあないんじゃないですか? 明日会うんでしょう。親ならば毅然とした態度でビシッと言うべきです。取り返しのつかないことになってからでは遅いんですから」

「ああ。そうだな。まったくその通りだ。明日のための気付けに一杯……などというのはいいわけだな」


 そういうことさ。酔っちゃ駄目だ。でないと俺みたいになっちまう。分かるんだよ。俺には。


「しかし、君もお人好しだな? こんな馬鹿な男ふたりの話に付き合ってくれて」

「差し出がましいとは思いましたけどね。ま、俺も親とは別れた口なんで」

「君も……なるほど、そういうことか」


 おいおい、親父さん。そんな顔は止してくれよ。もう昔の話さ。思えば俺にも悪いところはあったのかもしれない。ただ譲れないものがあったから俺は両親と決裂して、家を出た。思えばあの頃は若かった。ただ俺は時間が戻っても同じことをすると思う。多分、それが俺の性分ってヤツなんだろう。へっ、ダメな野郎だよな俺は。


「その……僕も家を出てはいますが両親との仲は良好で……気持ちを察せられないのが申し訳ないのですが」


 いやいや、大丈夫だイケメン。そんな気を使う必要もないさ。


「気にすんなよ。俺の場合は頼りになる先輩がいたからなんとかなった。けど、そちらのマキさんでしたっけ? その子のことは知りませんが……相手の男、俺が聞いても糞野郎にしか感じられない。聞けば聞くほどに金のある娘を騙くらかして飽きたら捨てるようなヤツにしか思えてなりませんね」

「それは……やはり、そうなんでしょうか」


 ああ、間違いない。問題は色々とあるが借金は駄目だ。先輩も言っていたしな。借金をする男は最低だ。ましてや惚れた女に金を借りる馬鹿はいない。それも大金となれば結論はひとつだろう。


「俺の経験が言っていますよ。その男は最低のクズだ。ここまでの話ぶりじゃあマキさんだったか。その娘の所有しているのは金貨400枚以外にもまだあるんじゃないですか?」

「ええ、まあ。あの子の自由に使える額を考えれば、今もそれ以上に」

「でしょうね。となればだ。このまま行けば、根こそぎ搾り取られますよ。賭けてもいい」

「……む、さすがに娘もそんな馬鹿な子では……」


 おいおい、ここに来て擁護とか。さっきまでの勢いはどうしたんだよ。駄目だなこの親父は。まだ甘い。まったく駄目だ。全然駄目なんだよ。それじゃあマキは救えない。あの娘は助けらんねえ。


「娘を信じるのは結構です。けれどもお父さん、あんたも現実を見るべきだ。分かってるはずだ。その男は酒でマキさんを酔わせて手篭めにした挙句、マキさんの体を弄びながら、マキさんの金で豪遊しているに違いない。ほら、こんな風に酒をかっ喰らいながらね」


 かぁ、喉に染みるな。


「そうして、今あなたたちがマゴマゴしている間にも一体何をさせられているのやら……」

「う、うわぁああああ」


 おっと、イケメンにはちょっと刺激が強過ぎる物言いだったか。けど、その目をそらしちゃ駄目だ。本当に大切なものを守りたいんなら、ちゃんと目を開けてなきゃいけない。だから俺がカツを入れてやるのさ。


「馬鹿野郎。お前がそんなことでどうする?」

「で、ですが」


 おいおい、泣きそうな顔してんなよ。どうしたらいいのか分からないってか? けどな。マキはそんなお前の助けを待ってるんだぜ?


「お前さ。その子のこと、好きなんだろう? なのに悪い男にホイホイ騙されたからって見捨てちまうのかい? ビッチと蔑んで知らんぷりかい? お前の想いはその程度だったってことかい?」

「ち、違う。違います。まだ僕は頼りないけど、ずっと……一緒に……僕が守ってやるって、いつか言いたくて……それなのに」

「ざっけんな。だったら俯くんじゃねえよ。しっかりと前を見ろ。まだ言える。間に合うんだ」


 そう言って俺はドンとアルトの肩を叩いた。ほらよ。俺の目を見ろよ。お前だって分かってんだろ。


「な?」

「!?」


 涙はまだ溢れているが、瞳の奥にある光は消えていない。そうだ、迷いは晴れたな。いい顔だ。ああ、こいつならきっと大丈夫さ。


「アルト。そっちの人の言う通りだ。私たちはマキと向かい合わないといけない。明日……そう、明日だ。酔って紛らわしている場合じゃなかったな」

「はい。そうですね。マキは……僕が守ってやらないと……」


 その言葉にザイカンさんが笑ってアルトの頭をクシャクシャと撫でると立ち上がり、アルトもそれに続いて椅子を降りた。


「オヤジ、金はここに置いていく。余った分はそこのお兄さんの酒代にでもしてくれ」

「そうかい。頑張りな。あんたらの未来に乾杯だ」


 そうだ。オヤジの言う通りさ。あんたらには酔って気を紛らわすよりもやるべきことがあるんだ。だったら俺はハッパをかけてやるだけだ。


「助けろよアルト。それが男ってもんだろう?」


 俺の声にアルトは振り返らずに出口に向かいながら、右の拳をあげて意志を示した。さすがイケメンだ。覚悟が決まれば、怖いもの無しってわけかい。

 そして、ふたりが酒場を出て行く。ありゃあ次に会うときにはマキって娘さんと四人で飲めそうだ。ま、そんときゃあいつから妬けるぐらい惚気られそうだけどな。

ザイカン・シム:高名な神官戦士。娘がいる。

アルト・トリム:光の道を進む若き騎士。

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久しぶりに読み返してるけどなんど読んでもこのシーン好き
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