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BE(ワケ)有り車限定 転生トラック中古販売店 - 7台目 「中古転生トラック販売ディーラー【T/E】」(前編)
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7台目 「中古転生トラック販売ディーラー【T/E】」(前編)

 えっ、ちょっとお前……何急に……。


 ん? あー……しまった……。っていうかこんなことあるんだ……。

 一応聞くけど、もしかして客? え? あー、うん、どうせ客だね。いやー参ったな……。

 え? いや、キミが来るべき店はココで合ってるはずだよ。ようこそ、BEワケあり中古転生トラック専門の販売ディーラー「T/E」へ。まずは到達おめでとう。


 ん、俺かい? 違うよ、店員じゃない。ほら、自動販売機のドアを開いてるだろ。見ての通り、この自販機にドリンクを補充に来た出入りの業者だよ。

 店員は今その、何と言うべきか……野暮用でね。もう少しで大丈夫と思うんだが……そうだ! 店員が()()()まで、そこに座ってドリンクでも飲んでてくれ、どうせ代金は店持ちのサービスだ。よいしょ、っと。っし、補充完了! ほら、選びなよ、ちなみにこれ(コーヒー)が俺のオススメだぜ。


 ふーむ……いや、本当におかしいな。なんで客が来たのに……まさか、いやぁ、でもなぁ……。あぁ、ごめんごめん。えっと……どうも店員の方が手間取ってるようなんだけど、ここまで来た人を追い返すわけにもいかないんだよなぁ……。

 仕方ない、じゃあ少し時間つぶしにこの店の話をしてやろう。接客じゃないぞ、あくまで時間かせ……潰しだよ。俺はあくまで出入りの業者だからな、ここで()()をするのはルール違反だ。

 だからキミが望む車を案内してやることは出来ないんだが……そうだな、じゃあこの店そのものの話をしてあげよう。それならあくまで雑談の範疇だ。

 ほら、コーヒー冷めちゃうよ、せっかくのオススメなんだから遠慮しないで。


 さて、じゃあまず最初にだけど、キミ……どうやってこの店までやって来たか覚えてるかい? 


 うん、うん、そうだな。まあ誰でも大体そう言うんだ。地図は無駄、ナビも無駄、記憶なんて一番の無駄だからね。そんじゃあさ、せめて最後にどっちに曲がったかは? そう、右か左、それならどうだい、ついさっきの事だろう?

 多分左? よーしよし、じゃあちょっとそこの入り口から覗いてみなよ。どうだい?

 ()()()()()()()()かい?

 キミにどう見えてるかはわからないけど、俺には地平線まで少しのカーブもなく真っ直ぐに伸びる道が見えるけどね。うん、キミも? そりゃあ良かった。


 じゃあ逆に、外からこちらを見た場合……例えばこの店はどのくらいの大きさに見えた? うん、シンプルな平屋、広さはまあ、大きくもなく小さくもなく……だよねぇ。

 でもこの建物には二階がある。見た目に反して? いや、三階があること(傍点)もあるよ。ヘタすりゃあ何十階ってことも無くはないし、地の底まで続く地下室を見せられる客もいるんだ。

 じゃあサービスで、敷地についても教えてあげよう。

 キミのおぼろげな記憶では、ここまで結構入り組んだ細い道を経由してきたと思うんだけど……この店には軽トラや2トン、4トンなんて普通のはもちろん、トレーラーまで置いてるんだ。トラックじゃないけど、もし転生機能があればバケットホイールエクスカベーターだって置けるよ。え? 知らない? あっそう。

まあもし帰っても覚えてたら調べてみてよ。ここに持ってこれるようなものかどうかはすぐに分かるさ。


 そう、なんとなく理解してきたみたいだね。キミの考えてる通りだよ、この店は「歪んでる」んだ。


 何がって? うーん、時間……空間? 因果律とか、存在確率とか……まあそういうのだよ。

 どうしたんだい変な顔をして。そりゃあ超常的な話だしついて来られないとか、文化レベル的に信じられないような話かもしれないけど、実際君はこの場所を求めて……え? 何さ、俺? さっき言ったじゃない、しがない自販機業者だよ。ここ? それも言ったよ、転生トラックの中古販売ディーラーで……どこって、だからまあ、端的に言えばキミのいた世界からは少しズレた位置に存在する……おい、ちょっと待て、ちょっと待ってくれ。


 なあキミ、キミはなんでここに来た。


 転生トラックが欲しいんだろ? そうでなきゃここには……わからない? だって、え、いや、何がだって? ……キミ、もしかして何一つ覚えてないのか?


 参ったな、これでようやく理由が分かったよ……。

 さっき言った通り、この店は「歪んでる」んだ。普通じゃない。だったら、そこにいる店員も普通な訳がないだろ?

 実はね、ここの店員には決まった姿も人格もないんだ。「店員」という概念のマネキンが、来る度に違う服を着せられているようなものでね……見てもらう方が早いな……ちょっとこっちに来てくれ。

 うん、そこの机の下なんだけど、ああ大きい声を出さないでくれよ。大丈夫、死体じゃないから。生きて……ると言っていいかは微妙なんだけど、死んじゃいない。言ったろ、これはマネキンみたいなものだ。


 さて、じゃあ顔を覗き込んでみてくれ。

 どんなヤツだ?

 ふんふん、ウェーブのかかった髪の長い美女。身体は? いやそういうのいいからじっと見て。そう、ボインちゃんね。今時ボインちゃんってキミ、なかなか計り知れないタイプだね……。まあいいや、じゃあ一度目を閉じて。

 うん、そしたらゆっくり目を開けて。

 じゃあ今見た「店員」はそこにいる? へぇ、短パンのガキね。身長? まあそりゃあ顔相応じゃなきゃおかしいだろ? せっかくなので何度かやってごらんよ。

 はい閉じて―、はい開けて。どう? 駄菓子屋みたいなおばあちゃん……それじゃもう一回。今度は? 2メートルくらいある大男……なるほど。


 よし、じゃあ一旦さっきの席に戻ろう。

 さあ座って。……多分、これ俺の仕事なんだろうなぁ……なにぶん、初めてのケースだからちょっとわかんないんだけど、対応出来るの俺しかいないから言うね。


 君は「客」じゃない。


 この店は、「客」が入った瞬間に店員が「定まって」対応するんだ。

 それは客がイメージする店員だったり、客が言って欲しい事を言ってくれる店員だったり、嫌な客を追っ払うようなヤツだったり、まあ色々だけど。

 とにかく客に応じて店員が決まる。一度決まった店員は次の客が来るまでは其の姿のままで雑務をしたりしてる。

 さっきまで俺と雑談してた奴は、君が店のドアを開けた瞬間に倒れて、今みたいな「定まってない」状態になっちゃったってワケさ。


 姿かい? 俺は部外者だから、ここの店員が定まってない状態をキミ以上に正しく見る事ができない。そうだな、かろうじて人の輪郭をした靄のようなものが、あの机の下には転がっているよ。


 で、その後も店内に(キミ)がいるのに、一向に店員は決まらず、混沌のままあそこで燻ってる。最初はタイムラグでもあるのかと思ったんだよ、次にぶっ壊れたかな? みたいな。でもよくよく考えるとどちらも有り得ないんだ。


 だってそもそも、俺が店内にいる時点でキミ()が入ってくるはずがない。俺はこの店にとっては客のいる時間には存在しないはずの「裏方」だからね。逆に言えばキミがいる時点で俺はこの店に居られないワケだ。

 となると、そう、君は「客ではない」ということになる。それが自明だ。


 じゃあ君は何者か……まあ俺はもう見当がついてるんだけど、キミは何か思い出せない?

 そうか。じゃあ名前とかはいいから、せめて「最後に何を見たか」はどうにか思い出せないかな。うん、うん……やっぱりそうか……


 猛スピードで迫りくる大きなモノね。


 キミの記憶の片隅に残ってるそれは、間違いなく転生トラックだよ。


 つまり、君はこの「中古転生トラック専門販売ディーラー『T/E』」の世界に転生してきたんだ。


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