Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
夫がよそで『家族ごっこ』していたので、別れようと思います! - 37 これからもここで 
[go: Go Back, main page]

表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夫がよそで『家族ごっこ』していたので、別れようと思います!  作者: 青空一夏
第一部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/53

37 これからもここで 

 レオン団長との結婚が決まってから、食堂は少しずつ、新しい姿へと生まれ変わろうとしていた。


 「こっちの壁、全部取り払ってしまえば、奥にもう一棟建てられますよ。中庭を囲むようにすれば、使いやすいはずです」  

 建築師の提案に、私はうなずいた。


 従来の食堂スペースはそのままに、隣の空き地を買い取って、新しい棟を増築する計画が始まっていた。そこは、静かで優雅な空間になる予定だった。上品なソファや繊細なレースのカーテンが似合うような、貴婦人たちが午後のお茶を楽しめる場所に。


「エルナちゃんも、いよいよ侯爵夫人になるのねぇ」  

 八百屋の女将さんが、目尻に笑い皺を寄せながら、嬉しそうに微笑んだ。  

「でもさ、エルナちゃん、本当にそんな貴族用のカフェなんか作っちゃうの? 私たち庶民の相手なんて、もうしませんってことなの?」

「まさか! ここは私の原点ですから。どっちも続けますよ。新しく作る建物は、貴族同士のお付き合い用の空間なんです。そうしたら、私も食堂をやめずに済むし、侯爵夫人としての社交の役目もちゃんと果たせると思うんです」


 その言葉に、女将さんたちが一斉にうなずいて、ぱちぱちと手を叩いてくれた。

 「貴族のマダムたちはあっちで優雅に紅茶を飲んで、あたしらはいつも通りここで騒がしくやるってわけね!」

 「ふふ、そうです。これからも、よろしくお願いします」


 気づけば、もう何人もの商店街の仲間たちが、食堂の増築工事に協力してくれていた。馴染みの大工さん、壁や扉の仕上げをしてくれる建具職人さん、家具職人さんまで来ていた。


 また別の日には結婚式の準備も進んでいた。二階の居間では女将さんたちが、私のためのドレスの生地を選びながら、まるで自分たちの娘のように盛り上がっている。


「ねぇ、ねぇ! やっぱり純白のドレスに、胸元から裾にかけて繊細なレースをあしらったほうがいいと思うの! それに、花の刺繍が少し入ってたら絶対素敵よ!」

「でも、私は淡いブルーのシフォン生地が重なるデザインも似合うと思うのよ。きっと清楚で上品な花嫁さんになるわ!」


 私はというと、もう、なんだか照れくさくて仕方なかった。

 はじめは、まさか自分がウェディングドレスなんて――と、恥ずかしさが先に立っていた。


 でも、レオン団長が「エルナの花嫁姿を、ちゃんと目に焼き付けたい」って真っすぐな目で言ってくれて……。

 顔が熱くなるくらい照れたけれど、心の奥がじんわりとあたたかくなった。

 本当に愛されるって、きっと、こういうことなんだろうな。


 中庭はほぼ完成していて、噴水の水音が心地よく響いていた。

 ここで結婚式を挙げよう――そう決めた瞬間から、この場所は私にとって特別で、どこか神聖な空間になった。


 昔の、苦しくて息の詰まるような結婚生活も、こうしてひとつずつ塗り替えていける。増築で広くなった厨房には、新しく人を雇うことも決めた。少しずつだけど着実に、私の生活は変わっていく。


「エルナらしく生きていけばいい。食堂を続けて、ここで暮らすのもいい――そうさ、俺が引っ越してくるよ。2階の居住スペースを広げて、1階も少し部屋数を増やせばいいだろう?」


 その言葉に涙がでた。変わらず今を大事にしてくれることも、未来を一緒に描いてくれることも、全部が嬉しくてたまらなかった。


 そして、本当にその通りに話は進んでいった。家の増築、陽だまりの中庭、そして貴族向けのカフェ――それは、まるでおとぎ話みたいに優しくて、幸せの形そのものだった。ここが、私たち家族の新しい暮らしの場になる。


 アルトは新しく整備された中庭をすっかり気に入った様子で、尻尾を高く掲げながら嬉しそうに駆け回っている。その姿を見て、ルカは小さな手を叩きながら、楽しげな笑い声を上げていた。二人の無邪気な様子に、思わず頬が緩む。この子たちなら、貴族のご婦人方にもきっと愛されることだろう。


「ねえ、アルト。これからは、毎日ここでルカと一緒に遊べるわね」


 そう声をかけると、アルトがこちらに駆け寄ってきて、ふわふわの体を私の足元にすり寄せてきた。その後ろから、ルカが小さな足でトコトコと走ってきて、両手を広げて抱っこをせがんだ。私はしゃがみ込み、ルカを優しく抱き上げる。その小さな体の温もりが胸に広がり、幸せな気持ちで満たされた。


「ふふ、アルトもルカも、ここが大好きになったみたいね」


 中庭に響く笑い声と、愛しい存在たちの温もり。


 ――なんて幸せな気分かしら?


 こんなふうに笑える日々が続いていくのだと、そう思えるだけで、胸がいっぱいになった。


 こうして、私の新しい日常は誰よりも大切な人たちと一緒に、ゆっくり動き始めていくのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ