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夜行さん - お誘い 1
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夜行さん  作者: 原月 藍奈
人喰いの屋敷編
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お誘い 1

夜行さん視点です。

―夜行さん視点―




 すぅすぅ、と気持ちよさそうな寝息が聞こえる。その寝息を立てているのは退治屋の陽だ。退治屋は『喫茶 百鬼夜行』の畳で仰向けになって万歳の姿で寝てしまっている。


「なんだ、これは」


 思わず呟くと雪女が「相当参っちゃってたんじゃないかしら。精神的に」と薄いブランケットを持って隣に来た。


 精神的に参ったというと……。理科実験室にいた妖怪か。たしかに精神的なダメージは大きいだろうが。そうはいっても。


「なんでここで寝ているんだ……。『人喰いの屋敷』を倒すという共通目的はあるが。――妖怪と退治屋。敵同士だぞ?」


 すると雪女はブランケットを乱雑に退治屋にかけてから「よく「アイツ」も家出してここで寝ていたし。もうそういう家系だって割り切るしかないんじゃないかしら」とため息を吐く。

 「アイツ」とはもちろん陽の母親、田中 明愛梨のことだ。


 俺はすやすやと気持ちよさそうに眠っている退治屋に視線を向ける。


 ……同じ家系、ね。とはいえ当たり前ではあるが、全部が母親の明愛梨と同じではない。例えば。

 明愛梨の方がたくましく見えてしまうが、寝相は陽のように大胆に万歳などせず背を丸めて縮こまって寝ていた。

 明愛梨の方がどちらかというと臆病だった――。




 すぅすぅ、と気持ちよさそうな寝息が聞こえる。その寝息を立てているのは退治屋の明愛梨だ。退治屋は喫茶『百鬼夜行』の畳で猫のように背を丸めて横になっている。そしてその横には座布団の上に寝かされている赤ん坊がいる。赤ん坊は明愛梨とは違い、仰向け万歳の姿で寝ていた。


「オイ」


 俺は丸くなっている明愛梨の背を軽く蹴る。明愛梨は「ゔ」と小さく呻くと目をこすってのっそりと起き上がった。


「なんだ。よく寝ていたのに」

「なんだじゃないだろ。仮にも敵である退治屋がここで寝るな。自分の家に帰れ」

「仕方ないだろ。家出中なんだから」

「家出?」


 明愛梨はぷくっと頬を膨らませる。その様子から夫の日髙 剣と喧嘩したようだと察した。

 俺は「どうせ喧嘩の原因はお前だろう」と軽くため息を吐きながら明愛梨の隣に腰かける。


「そんなことはない……こともない」

「おい」

「……ただこの子に対する教育方針が剣さんと違っただけさ」


 明愛梨はそう言って隣で眠っている赤ん坊に目を向けた。明愛梨の頬は相変わらず膨らんでいるが、赤ん坊に向けた慈愛に満ち溢れている。


「私はこの子を退治屋にするのは反対だ。だが剣さんは退治屋にした方がいいだろうって」

「……意外だな」


 明愛梨のことだから自分の子供も退治屋に、と考えそうなものだが。俺たち妖怪に気を遣って……ということも恐らくないだろう。


 俺はチラリと明愛梨の顔を盗み見る。明愛梨の表情はどこか影を落としている。


「……――」


 明愛梨は赤ん坊に目を向けたまま黙ってしまう。俺は「とにかく」と口を開いた。


「ここに居座るんだったらいっそのこと、京都にある実家に戻った方がいいだろう」

「……それがイヤなんだ」

「は?」


 俺がすっとぼけた声を出すと明愛梨はこちらに目線を向けた。明愛梨は眼鏡の奥にある俺の瞳をスッと見据える。


「私にとってはあの家が何より恐ろしい」

「恐ろしい?」

「こういう退治屋みたいな。古くて特殊な家系の家は人を喰ってしまうからな」


 明愛梨は「だからこの子だけはあの家に関わらせたくなかったんだが」と寝ている赤ん坊を抱きあげる。赤ん坊は起きる気配がなく、相変わらず明愛梨の腕でぐっすりと眠ってしまっていた。


「だからこそ剣さんは退治屋にしてしまった方が自分の身を自分で守ることが出来る――と考えているんだろうが。やはりお前もそう思うか」

「……」


 尋ねられた俺は思わず眉を寄せる。


 明愛梨の言っていることは分からない。家の何が恐ろしいというのか。恐ろしいのであれば妖怪と同じように退治してしまえばいいものを。

 いや、そもそも俺たちは妖怪と退治屋。正反対のものが同じ思考をしていることの方がおかしいのだろう。


 俺が難しい顔をしているとふいに赤ん坊が「あーーー」と言う声と共に目を開け、俺に手を伸ばしてきた。赤ん坊の小さな手は俺の腕をぺしぺしと叩いたかと思うと、何が面白いのかキャッキャッと笑った。

 それを見て明愛梨は「おっ、さすが私の子だ。妖怪は退治するものだと分かるんだな」とどこか寂しげに笑う。


「おい」


 俺は小さくため息を吐いてから赤ん坊に目を向ける。


「まぁ、退治屋に「する」・「しない」じゃなくて、「なる」・「ならない」の問題だ。今、この小さな赤ん坊に出来ることなんて何もないだろう。もう少し大きくなった時に本人に決めさせるのが一番だ」

「…………それもそうだな」


 明愛梨は赤ん坊を抱えてやっと立ち上がる。


「じゃ、解決したところで帰る」


 相変わらず急に来ては急に帰る。俺は早く帰れと手をヒラヒラとさせて追い払う仕草をする。

 明愛梨はそんなのお構いなしに一度振り返ると「近いうちにまた来る」と口元に小悪魔的な笑みを浮かべて、今度こそ帰っていった。


いつも応援してくださってありがとうございます。レビュー・感想いただけたら嬉しいです。めちゃくちゃ喜びます!


今回は過去回でした。夜行さんと明愛梨の出会いも書く予定なのでお楽しみに。そして主人公の陽ともそろそろ関係を発展させていきたいなぁ。

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