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夜行さん - 決戦 2
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夜行さん  作者: 原月 藍奈
人喰いの屋敷編
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決戦 2

 ぴーちゃんがおもむろに私の肩から股の間に移動してくる。夜行さんはというと眼鏡を外してわずかにこちらを振り向く。


「しっかり掴まっとけ。でないと振り落とされるぞ」


 振り落とされる?


 一瞬首を傾げるが、なんだか嫌な予感がして思いきり夜行さんに抱き着いた。それからすぐに首無し馬がふわっと舞い上がる。かと思えば上空から徳島を眺める余裕もなく、ギュンと凄い速さで移動する。


「っ!!!」


 夜行さんの背にいるものの頬に強風が当たって痛い。私はあまりの強風に必死に夜行さんに掴まり、強く目を閉じた。


 ここでようやく分かってきた。夜行さんが『喫茶 百鬼夜行』と美術館の集合時間を合わせたのか。山本さんも言っていたけれど。一瞬で移動できるからだ。


 頬に風が当たるようになって一分程時間が経ったところで、首無し馬の速度が落ち、ガクンと軽く体に振動がくる。


「着いたぞ」


 夜行さんの声が聞こえて目を開ける。と、そこは間違いなく大塚国際美術館の入り口だった。


「す、凄い……」


 思わず感嘆の声を上げると、それに同意するようにぴーちゃんが「ぴい」と鳴いて周囲をグルグルと飛び回る。

 夜行さんが周囲に警戒しながら首無し馬から降りる。次いで私も夜行さんを見習って馬から降りた。

 辺りはシンとしている。今のところ独特な嫌な気配はない。ホッと息を吐き出したいところだが――。


「山本さん、どこにもいませんね」

「ああ」


 私はスマホの時計を確認する。時間は八時三分。『喫茶 百鬼夜行』で長く話をしていたとはいえ、三分の遅れだったら待っていてくれそうなものだけれど。


「もしかしたら駐車場から歩いてきているのかも……」


 大塚国際美術館には専用駐車場が設けられている。歩いて五分程度だからそこまで遅くはならないはずだけれど。


「もう少し待ってみましょうか」と提案した時だった。ぴーちゃんが「ぴい!」と鳴いて、美術館の入り口に近づいていく。


「ぴーちゃん!?」


 そんな迂闊に近づいたら……と思った瞬間、「おーい」と誰かが美術館の中から手を振っているのが見えた。


 誰?


 私が首を傾げていると夜行さんは大きくため息を吐いて、頭を乱雑に掻く。そして「もう先に着いていたようだ」と呟く。


「え?」

「山本さんだ。もう中に入ってしまっている」

「うそ!?」


 私は薄眼で相手を見る。


 背格好から男性ということは分かるが……。山本さんといえば……そんな気もする。

 山本さんが美術館の中に入ってしまっているなら。当初の計画の帰ってもらう、が、おじゃんになってしまったわけで。でもだからといって絶対見捨てることは出来ない――。


「とにかく私達も中に入りましょう。山本さんを何としても美術館から出さないと」


 夜行さんは眼鏡をかけてから、鋭い目つきで首無し馬に取り付けられている大刀を取り出す。私もいつでも刀を抜ける状態にして美術館に歩き出す。


 歩き出すと山本さんの姿が私の目にもはっきりと見えてくる。何故かは分からないけれど、今日も山本さんはスーツ姿だ。


「遅いじゃねぇか、二人とも」

「山本さん!」


 すぐに山本さんの元へ駆け寄ろうとするが、「お客さん、チケットは……」と受付のおばさんに声をかけられてしまった。

 おばさんからは嫌な気配どころか妖怪の気配もない。

 私は二人分のナイトミュージアムチケットを見せる。おばさんは私と夜行さんの格好をジロリと舐めまわすように見たかと思うと、私の刀と夜行さんの大刀に視線を向けた。


 まあ、そりゃあ。普通の人間だったらそうなるわな。


 なかなかチケットを受け取らないおばさんに山本さんは「まぁまぁ、こいつらは私の連れで。コスプレが趣味の兄ちゃんと姉ちゃんで」と、訳の分からない言い訳を始める。だがおばさんはそれで納得したのか、すんなりと私達を通した。


 こういう時、大人って便利だ。


「すみません。山本さん。助かりました」

「いやいや。それより夜行さんはともかくも姉ちゃんまで巫女服なのか?」


 その言葉にハッとする。


 悠長に話している場合じゃない。早く山本さんをここから出さないと。


「山本さん! 早くこの美術館から出ましょう!」

「な、なんだ。突然。まだ入ったばかりじゃねーか」

「この美術館に妖怪がいるんです。それもかなり凶悪な……」


 山本さんはゴクリと大げさに唾を飲みこむ。私はさらに追い打ちをかける。


「だから一度ここから出ましょう」

「……分かったよ」


 山本さんが渋々と頷く。その瞬間、美術館の中へと入るエスカレーターの上空に黒い靄が現れる。黒い靄から妖怪の気配はしない……。

 けれど。


「山本さん!!!」


 刀を抜いて山本さんの前に出て行こうとする。だが、その前に黒い靄が一瞬で山本さんを包み込む。


「姉ちゃん!!!」

「っ!!!」


「山本さん!」と声をかける間もなく、黒い靄は山本さんを覆いつくし美術館の奥の方へ消えて行ってしまった。


「山本さん!」


 私は夜行さんの「おい」と言う制止を振り切ってエレベーターを駆けあがった。


いつも読んでいただいてありがとうございます。レビュー、感想(批判もOK)いただけるとめちゃくちゃ嬉しいです!


いよいよ美術館の中へ……。無事に山本さんを助けることはできるのか、こうご期待!!!

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