都子ちゃんは晶君とキスがしたい~男の娘あきらきゅんが誕生した件~
あまあまです。
あまあま注意!
ある夏の日、あたしの部屋にて。
あたしは男の子の晶とローテーブル越しに向かい合っていた。
「…………」
「…………」
お互い無言。
しかし何かを言い出せずに緊張だけが部屋を支配している。
真実あたしは緊張の極致であった。
顔はまともに見れず、首や胸元をチラチラみては、女とちがう男の骨格に更にドキドキさせられてしまう。
「は、はい、楠園君! 確認したいことがあります!」
「な、なんでしょう、宮路さん!」
何故か互いの苗字で呼び合う。
「あ、あたし達は恋人同士でいいんでしょうか?!」
「は、はい、付き合ってるってことで……いいんだよね?」
「う、うん……」
「そ、そっか」
「と、というわけでキスしませんか?!」
「そ、そうですね!!」
お互いぎこちなさ過ぎるガチガチの動きでローテーブルに上半身を乗り出す。
まともに見てらんないし、どうせならと目を瞑った。
ゆっくりと相手の気配が近付いてくるのがわかる。
…………
「ご、ごめんっ!」
「あっ」
ポンッと小気味のいい音を立て、晶が女の子に変わる。
体格の差から、あたしの唇はおでこにぶつかる。
「…………みやこちゃん」
「ご、ごめん、ほんとにごめん、あきら!」
「ボク達にはボク達のやりかたとか進め方ってのがあるんだからさ、そんなに急がなくても」
「だ、ダメだよ!」
ちなみにこのやり取り、1日ぶり12回目である。
言うまでも無く全て失敗している。
晶が言うことにも一理ある。
だがそれでも挑戦するには理由があるのだ。
「だって、どきどきさせられっぱなしで悔しいじゃない」
「え、えーと」
「女の子同士では出来てたし、それに何だかあきらの方が余裕ありそうでずるいし」
「別に余裕あるわけじゃないけど」
「む、じゃあ何なのさ」
「片思いが長かったから、我慢するのに慣れてるだけだよ」
「うぐっ」
も、もぉおおおぉおおおぉっ!!
これだよ、これ!
どこまでもあたしの方が翻弄されてしまう。
だって悔しいじゃない?
まるであたしばっかり好きって気がしてさぁ!
こうなったら半分意地である。
……へタレまくってるけれど。
「ふぅ、仕方ない。みやこちゃん、元に戻して」
「う、うん」
「ボクだってみやこちゃんとしたいんだからね?」
「う、うん」
2回目の返事は声が上擦ってしまった。
くぅ、あきらめ!
「あまりやりたくなかったけど……ちょっと待ってて」
「わ、わかった」
そういってあたしの部屋を出て行った晶は、30分は戻ってこなかった。
何をしてるんだろう?
あたしのために何かしてくれるんだよね?
時間掛かってるけど、大げさなことなのかな?
待ってる間も苦じゃないというか、期待に膨らむ思いに委ねるのが楽しいっていうか。
やっぱり晶はずるい。
「みやこちゃん」
「あきら?」
「絶対、笑わないでね?」
「う、うん?」
「いいから! 笑わないでね! あとなるべく何も言わないでね!」
「わ、わかった」
焦らすように、ゆっくりとドアが開く。
…………
思わず息を呑んだ。
肩にかかるミディアムロングの髪。
大人びた眼差しを強調するメイク。
ライトブルーの刺繍が入ったブラウスに、上品な黒のレースのスカート。
上品さのなかに甘さがある、大人っぽい女の子がそこにいた。
スラリとした背の高さから、可愛いというより美人という言葉がよく似合う。
「あきら……?」
「そ、そうだよ」
「綺麗……」
「そ、そう?」
声は男の子と同じなんだ……なんてぼんやり考えてしまう。
女の子な晶にお姉さんとかいたらこんな感じかもしれない。
「で、みやこちゃん。キスしよう」
「ふぇっ?!」
「ボ、ボクだってみやこちゃんとしたいから、こんな格好したんだ!」
「う、うん」
な、なるほど。
これが晶の作戦か。
どこからどうみても女の子である。
あ、こっちは男の娘か。
……うん、あたしは今新しい扉を開きつつある。
「みーちゃん……」
「あ、あきら……」
甘く、それでいて低い男の声であたしの名前を呼ばれるとぞくぞくする。
まるであたしはお姉様に身を委ねるかのように翻弄される。
どっちにしろ、あたしは晶に翻弄されちゃうのだ。
ど、どうしよう。
目の前の晶が男の子なのか女の子なのか男の娘なのかわからない。
でも中身は全部、同じ晶なのはかわらない。
座り込んでいたあたしの前にきて、左手は肩に、右手はあたしの手に置かれる。
いつも手を繋ぐ手と一緒だ、なんて思った。
そんなくだらない事を思わないと、どきどきし過ぎて倒れかねない。
「いくよ?」
「う、うん」
今からするのは3度目のキス。
男の子としてするのは初めてのキス。
あれ? 男の娘の方がいいのかな?
よくわかんない。だけど、晶なら……
体中の力を抜いて、晶に委ねる。
そしてそっと目を閉じた。
ポンッ
「いてっ」
「いつっ」
再び、あたしの唇と晶の額がぶつかった。
目を開けると、大人へと背伸びをした女の子がいた。
ジト目であたしを睨んでる。
「みやこちゃん……」
「だ、だって、どう見ても女の子だったし……」
「んもぅ!」
都子と晶、2人の仲が進展するのはまだまだ前途多難である。
あまいわー