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おじさんは部下の方々が到着したということで、とりあえず私とマリアーナだけでジェニーさんに会いに行くことになったのだけれど・・・
「すみません!私、気を失っちゃったみたいで!お二人にご迷惑をおかけしました!」
待合室で待機していたジェニーさんは、私たちの姿を見て慌てて立ち上がったのだけれど、そのジェニーさんの後ろに立つ男性の姿を見て私とマリアーナは思わず固まってしまったわ!
「君がエリアソン中尉の姪御さんであるリューディア嬢と、そのご友人のマリアーナ嬢?」
ジェニーさんには四角い顔のヨエルが寄り添っているものだと思っていたけれど、憔悴しきったジェニーさんの後ろには、部下を一人だけ連れた男が直立不動の様子で立っていたのよ。
短く切った銀色の髪に紺碧の瞳を持つその男性は笑顔で私たちを出迎えたのだけれど、私とマリアーナはその場で生唾を呑み込んでしまったわ!
私たちは言葉には出さなかったけれど、恐らく同じことを考えていたはずよ。
変態が・・変態が何故だか今、目の前に居るわ!
王太子の側近で元近衛であるこの人は軍服姿でその場に居たわけなんだけれど、まるで初対面のような様子で私たちを見つめているわ!
カステヘルミとの初夜を放棄した男であり、カステヘルミの具合が悪くなったと聞いても見舞いの一つもすることがなかった男。
結婚式の時から、ピンク頭の花嫁よりも派手なドレスを着た女を愛おしげに、切なげに見つめ続けていた恥知らずの男。
軍服を着て男の中の男!みたいに装いながら、自宅ではピンク頭を兄と一緒にサンドイッチするようにしてベンチに座り、頬を撫でられてはデレデレし続けているという変態男。
私とマリアーナは互いに示し合わせた訳でもないのに、ゴミクズでも見るような眼差しで目の前の男を眺めたと思うわ!だって!仕方がないじゃない!相手は紛うことなきろくでなしの変態野郎なのですもの!
「中尉の美貌が通じない女性がいるだなんて!」
後ろで部下と思しき男性が独り言を呟いているけれど、女は顔が良い男を見れば誰でもデレデレすると思ったら大間違いよ!
今、私たちの目の前にいるオリヴェル氏はカステヘルミの夫になった人なのだけれど、公爵家の次男だし、ルックスは良いしで、貴婦人たちの鼻血を噴かせる男として有名だったりするのよね。だけどね、カステヘルミの話を聞いちゃったからもう無理よ。それにあの結婚式は最低だったし、この男に対しての評価はマイナス値を更新中の状態よ。
「ジェニーさん、このたびは本当に・・大変なことになりましたね」
マリアーナは丸っと目の前の男のことは無視をしてジェニーさんの手を握ると、ジェニーさんはわっと泣き出したのよ。私はそんなジェニーさんの涙をハンカチで拭ってあげたし、マリアーナはジェニーさんの背中を撫でてあげていたんだけど、どれだけ顔が良かろうが軍人さんに囲まれることになったので緊張していたのね!
「ジェニーさん、大丈夫よ、大丈夫よ!」
「私たちも一緒にいるから心配しないで!」
平民の花屋の売り子の娘と、明らかに貴族の令嬢である私たちにどんな繋がりがあるのだろうかと不思議そうにしている二人の男を丸っと無視し続けていると、ようやっと部屋にやってきたおじさんが、
「被害者のご家族の方ですね?とりあえず今はお顔だけ見てもらう形となりますが、身元の確認をして頂くことになりますー」
と、平常運転で言い出したのよ。
「お姉ちゃん・・お姉ちゃんが・・」
おじさんの言葉でウワーッと泣き出したジェニーさんの近くには、軍服姿のオリヴェル氏とその部下と、私たちしか居ないのだもの。心情的には女性の方に縋りつきたくなるものなのよ!
「大丈夫!私たちも一緒に行きますから!」
「そうよ!一緒に居てあげるわ!」
私とマリアーナでジェニーさんを励ましながら部屋の外に出て行こうとしたのだけれど、私だけ襟首を掴まれて取り残されたのよ。
部屋の外にはおじさんの部下が待ち構えていて、ジェニーさんとマリアーナ、そして外で待っていたヨエルくんをご遺体がある部屋へ案内し始めたのだけれど、おじさんに後ろ襟首を掴まれた私だけが取り残されることになったのよ。
「何故?何故?私は一緒に行けないの?」
「うちのリューディアちゃんはすでにご遺体の確認をしているだろう?」
おじさんはそう言って私を待合室の椅子に座らせると、その隣にさっと座ったのよ。
待合室にもテーブルや椅子が幾つか置かれているので、その一つに座ることになったのだけれど、私とおじさんの向かい側の席に、オリヴェル氏とその部下が座ったのよ。何故?
「リューディアー、お前は十年前、敵に損壊された兵士の遺体を見ているよなー?」
隣に座ったおじさんがそんなことを言い出したため、私は生唾を呑み込んだわ。
一応、バクスター子爵家の跡取り娘である私は、十年前におじさんについて北部の部族が起こした武装蜂起の現場に赴いているのよ。
「エリアソン中尉の姪御さんがあの時の北部に居たというのは本当の話だったんですね?」
オリヴェル氏が驚きを隠せない様子で言うと、部下の方も私の顔をまじまじと見つめながら、
「十年前というと、お嬢さんはまだ子供だったんじゃないですか?」
と、言い出したのよ。
「うちのリューディアちゃんはまだ八歳だったな」
「「八歳?」」
「そういうのがうちの方針だから〜」
おじさんはあははっはと笑っているんだけど、こんなんだから結婚出来ないのよ。普通、八歳児を戦場になんて連れて行きませんからね?
「リューディア。さっきも言ったけれど、最初はスラムにいる娼婦が殺されるというような事件だったんだ。最初は痴情のもつれかと思っていた事件が思ってもみない方向へ進み出している訳なんだが」
「殺されたご遺体の状態が十年前の状態と似ていると言いたいのでしょう?」
「そうだ。そこでお前なりに気が付いたことがあれば教えて欲しいと思ってな」
「なんでこんな小娘の意見なんか聞きたがるのかしら?」
「それはうちのリューディアちゃんだから〜」
おじさんはニコニコ笑いながら私を見ているのだけれど、目の前の二人は無表情のまま私を見ているわ。
十年前、北部に住む部族がラハティ王国に対して武装蜂起をした訳なのだけれど、これを鎮圧するために向かった王国軍は想像以上に苦戦することになったのよ。
哨戒中の兵士が殺されて内臓を引き抜かれるということが連続して起こるようなことがあって、みんながみんな、部族の人間による犯行だと思っていたの。
北の部族は私たちラハティ人とは信じる神が異なるのだけれど、子孫繁栄を第一と考える信仰は女性の子宮と男性の腎臓を特に特別なものだと考えている。
女性の子宮は子供を育むものだから良く分かるんだけど、男性の腎臓は子孫繁栄と関係ないわよね。なんで腎臓?と、思うのだけれど、男性には二つの玉がある。この二つの玉と、左右に一つずつある腎臓が類似しているものだと考えたのでしょうね。
だからこそ憎っくき敵に呪いをかけるのなら、女性なら子宮、男性なら腎臓を取り出して石を詰め込むようなことを行うの。石を詰め込まれた人の一族、子々孫々に至るまで呪われるようにと願って行われるのだけれど、とりあえずは、そういった風習を持っていたのよ。
それで、鬼畜のおじさんに戦場まで連れて行かれた私は、損壊されたご遺体を調べる手伝いを行うことになったのだけれど、その共通した切り口を見て思わず言っちゃったのよ。
「北の部族って医療に関しては未開の地と言われているけれど、医療用メスを使う程度にはこちらの技術が伝わっているということなのね〜」
ってね。
アザラシを解体して生業とする部族は切れ味鋭いナイフを常に腰に差しているのだけれど、それでご遺体を傷つけたとするとあまりに切り口が深くなりすぎる。刃渡りの長いナイフだとズバーッと深く切り分けることになっちゃうはずなのに、切り裂かれた場所はあまりに切り口は綺麗だし、一刀目が間違いなく刃渡りの長いナイフで出来るような深さではないのよ。
「おじさんはリューディアの観察眼を買っているんだよね」
おじさんはそう言ってにこりと笑うと、
「エリーナ嬢のご遺体を見て、お前は何に気が付いた?」
と、瞳を細めながら問いかけて来たのよ。
こちらの作品、アース・スター大賞 金賞 御礼企画として番外編の連載を開始しております。殺人事件も頻発するサスペンスとなりますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!
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