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【アース・スター金賞】 貴婦人たちの噂話は今日も楽しい  - 20)
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お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 糸というものは私たちの生活の中で最も身近にあるものよね。

 私たちが着ている衣服を縫い付けているのも糸なら、革と革を繋ぎ合わせて靴にしているのも糸だわ!バッグの形を作り上げているのも結局は糸を使って縫い合わせが必要だし、糸がなかったら私たちの生活は成り立たないとも言えるでしょう。


 そんな最も身近にある糸だけれど、動物の毛や綿、大麻、亜麻の繊維をより合わせて作るのが一般的よね。自分たちの衣服を作り上げるために何千年も前から人は針と糸を使っているのだけれど、切開した傷を縫合したという記録は四千年以上も前から残されているの。人間って想像よりも遥か昔から人間を縫合するということを行なっていたというわけね。


 そんな訳で首をグイッと絞められて殺されてしまったジェニーのお姉様なのだけれど、彼女は臍から下の部分を斜めに切開される形で右側の腎臓を取り出されてしまった。切開された傷跡は、紙の端っこがペロンと出る形で縫合されていたのよね。

 

 殺されたご遺体を見た時に、まず目が向かうのは無惨にも縫い付けられた傷跡とペロンと出ている紙の端っこというところでしょう。ペロンと出ている紙はご丁寧にも蝋を塗りこんで水に溶けないようにしていたみたいだけど、犯人は川にご遺体を投げ込んだ時点でペロンと出した紙が残っていようが、結局川の水に溶けて流れようが、どちらでも良いと考えていたのでしょう。


 ペロリと飛び出して主張している紙に書かれていた文字も、七色とか喜びとか橋とかのろとか、何というのか、発見した人がたとえ読めなくても、まあ良いか。という程度にしか考えていなかったのではないかしら。


 なんでそんなことを言うのかって問われるのなら、私はこう答えるわよ。

 本気で体の中に突っ込んだ古代文字を読ませるつもりならば、川になんてご遺体を投げ込まないって。本気でご遺体の中の文章を読ませたいと考えるのなら、そこら辺の道端に置いておくだけで十分だもの。


 だからこそ謎なのよ。

 なんでターレス川にご遺体を投げ込むようなことをしたのかしらって。

 それと、もう一つの引っかかるポイントは糸よ、糸。


「縫合するのに利用されたあの糸、あれ、ヘンプ(大麻)糸でしたよね?」

 私はおじさんの方を見ながら言ったわけなんだけれど、おじさんはポカーンとしているわ!


 つい先ほど、問題の糸をプチン、プチンとハサミで切っていたはずのおじさんが『え?』みたいな顔をしているのは何故?

「あれってヘンプ糸だった?」

「ヘンプの糸でしたよ」

「え〜?」


 おじさんが眉を顰めている間に、前に座る二人が前に乗り出すようにして、

「何でヘンプ(大麻)の糸だと問題なんだ?」

「ヘンプの糸なんて何処でも買えると思うんですが?」

 と、質問をして来たのよ。


「あのですね、ご遺体を傷つけた犯人はご丁寧にも十年前と同じようにご遺体を損壊し、腎臓を引き抜くようなことを行い、石の代わりに古代文字が書かれた紙をわざわざ油紙に包むようにしてご遺体の中に突っ込んでいたんですよ」


 うん、うん、みたいな感じで頷く男たちを見回しながら、私は大きなため息を吐き出しちゃったわ!


「犯人は間違いなく、これをやったのが北の部族による犯行だと思わせたかった。遥か昔に私たちラハティ人の先祖によって北へと追いやられることになった人々は、私たちに対して大きな恨みを持っている。そもそもターレス川にかけるアーチ橋を作る際にも北から労働者が沢山やって来ましたし、今は線路を敷く作業で人の流動がそれは活発な状態となっています。これを好機と捉えた北の人たちが王都にやって来て、王家の転覆を図っている。そう指し示したくて、こんなことをやっているんじゃないんですか?」


「あの、すみません、それとご遺体の傷口を縫い合わせていた糸と、一体なんの関係があるのでしょうか?」

 オリヴェル氏の部下の方が挙手しながら問いかけて来たので、私はまたまたため息を吐き出してしまったわ!なんで分かってくれないのかしら!


「犯人は十年前と同じように北の部族がやったのだと指し示したかった。今のこの時に、なんでわざわざ我が国の王都でそんなことをしているのか、その理由が私には全く分からないのですが、兎にも角にも、ジェニーさんのお姉さんを部族の風習に従って処置したんですよと言いたかった。だからこそナイフでご遺体を切り裂き、腎臓を取り出し、その腎臓の代わりに古代文字が書かれた紙を入れた上で切開部を縫合していった。その糸は本来、何の糸を使うべきだったのでしょうか?」


「えっと・・カットグット(吸水糸)を使えば良かったってこと?」

「おじさん、何でわざわざご遺体にお値段お高めの動物の腸で作ったカットグットを使用しなくちゃいけないのかしら?」

「そうだよね、表皮にカットグットは使わないもんね!」

「そうじゃなくて!」


 何千年も前から人は切り開いちゃった傷口を縫い合わせるようなことをしていたわけなのだけれど、これをお肉の中身の方まで縫い合わせるとなると感染が問題になっちゃうわけですね。そんな訳で開発されたのがカットグット(吸水糸)なのだけれど、そんなものをご遺体に使うわけがありませんって!


「あ・・ああー!」

 そこで部下の方が何かに気が付いた様子で大きな声をあげたのよ。

「ラハティのように北にある国ではヘンプ(大麻)糸よりもリネン(亜麻)糸の方が一般的です!我が国のような寒い国でも亜麻は簡単に栽培できますし、我が国の紡績工場でも作っているのはリネン糸なので、ヘンプよりも断然格安で購入できます!」


 よく出来ました〜、という気持ちを込めて拍手を送っておきました!


「縫い物をしていれば良く分かるんですけれど、我が国で使われているほぼ八割の糸はリネン糸だと言えるでしょう。それは何故かといえば国内の産業を活発にするためにリネン糸は税金もお安め、だからこそ格安で販売出来るんです。その代わり輸入品となるヘンプ糸はお値段がお高めになるんですよね!」


「それに北の民がやった犯行だと主張するのだったら、手製のリネン糸、もしくはアザラシの髭で作った糸を使うべきだったということか」

 オリヴェル氏が考え、考え、言い出したのだけれど、オリヴェル氏には拍手は送らなかったわ。だって彼は完全なる変態なのですもの。正直に言って嫌いだわ。


「北の民は今でも夏の間に栽培した亜麻で糸を作るようなことをしているし、手製の糸ではなかったとしても、安値で購入出来るリネン糸を本来は使用するべきだったということか」

 おじさんは、自分の手でプチン、プチンと肝心の糸をハサミで切っていたというのに、ようやっと正解に辿り着いたのね!


「そうです!本来ならリネン糸を使うべきだったというのに、ご遺体を縫い付けていたのはヘンプ糸でした!」

 確かにそうですね!みたいな顔でみんなが私を見ているのは何故?まさか、まだ分からないと言うのかしら?

「あのですね、我が国ではお値段お高めになるヘンプ糸ですが、他国に行けば安く購入出来たりするのです。ちなみに、隣国オムクスが主に使っている糸はヘンプ糸です」


 ガタガタッと音を立てながら男達は慌てて立ち上がったのだけれど、丁度タイミングよく扉がノックされて、

「マリアーナ・リンドホルム嬢をお連れしました〜」

 と、外から声がかかって来たのよ。



こちらの作品、アース・スター大賞 金賞 御礼企画として番外編の連載を開始しております。殺人事件も頻発するサスペンスとなりますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!

モチベーションの維持にも繋がります。

もし宜しければ

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令和7年11/4 (火)より『貴婦人たちの噂話は今日も楽しい②』がアース・スター様より出版します!!

全文丸ごと書き直し、新ヒロインカタジーナの祖国での虐められ物語が追加!

奇天烈なパウラ夫人とユリアナコンビも健在!!!!

敵国オムクスの陰謀に振り回されるニクラスは妻の愛を手に入れることが出来るのか?

もちろんカステヘルミとオリヴェルのその後のドタバタも描かれます

『貴婦人たちの噂話は今日も楽しい②』 11/4 に発売しますのでお手に取って頂けたら幸いですm(_ _)m
― 新着の感想 ―
なるほどー!そこに繋がるんですねっ(*・д・) オムクスの暗躍がこっちにも! リューディアちゃんは間違いなく監察医向き。 かしましさでなんとなく誤魔化されてるけどすごく冷静ですね。 めちゃくちゃ面…
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