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「おい、オリヴェル、お前は一体何をやっているんだ?」
リューディアとマリアーナを待合室から外へと叩き出したヨアキム・エリアソンは、扉の向こう側で大騒ぎをしている自分の姪とその友人の声を聞きながら、直立不動の男を睨みつけた。
「確かお前は王命により、カルコスキ家の令嬢を妻として迎え入れているのだよな?」
ヨアキムはそう言ってオリヴェルの前まで行くと、指先でオリヴェルの胸を叩きながら、
「公爵家で監禁?花嫁は結婚式を挙げて以降、姿を消した?お前、まさかとは思うが自分の花嫁を公爵家で虐待しているんじゃないよな?」
怒りを滲ませながらの問いに、オリヴェルの側近であるベンジャミンが間に入るようにして言い出した。
「ラウタヴァーラ中尉は結婚後、すぐに、オムクス対策を命じられることになったので家にも帰れていないような状況なのです!」
「はあ?家に帰れていない?」
ヨアキムは大きなため息を吐き出した後に、熊のような顔で威嚇するように歯を剥き出しにしながら言い出した。
「うちのリューディアちゃんが言うにはよお、てめえは花嫁との初夜もブッチして、てめえの家に住んでいる娘っ子を兄上とサンドイッチするようにベッタリひっついてベンチに座って、デレデレ、デレデレしながらお茶をしているそうじゃあねえかよ?」
ヨアキムは歯を剥き出すようにしたまま、オリヴェルの胸をリズミカルに叩きながら言い出した。
「てめえ、自分の家にいる娘っ子は相手にしているってえのに、王命で決まった花嫁には会ってもいなかったってことかよ?つまりは放置しているってことだよなあ?てめえは王命の重さっていうもんをよお、きちんと理解した上でお受けしているんだよなあ?」
オリヴェルの頬を殴りつけたヨアキムは、
「てめえみてえな馬鹿がこの事件の指揮官だってか?」
オリヴェルの襟首を掴んだまま腹を殴りつけ、
「さあ?ってなんなんだよ?さあ?って?てめえ、自分の妻が今、何をしているのかも分からねえのかよ?マジで終わってんな!」
そう言って最後に蹴り上げると、自分の髪の毛を掻き回すようにして近くの椅子を蹴り上げた。
「分かっていねえみてえだから言ってやるが、オムクスって国は頭がおかしい国で、こちら側の少しの綻びでも決して見逃さねえみてえな陰湿な蛇みたいなところがあるんだよ。あちらはウチでやっている鉄道事業を頓挫させてえし、それでてめえの家はなんだ?鉄道の終着駅にするためにわざわざ港を最新鋭とやらにしたんだよなあ?」
床に這いつくばったオリヴェルの襟首を掴んで引き上げたヨアキムは、
「てめえ〜、自分の妻が敵側に寝返ったらどうなるか分かった上で、冷遇しているってことだよなあ〜?」
と、言って再び殴りつけたのだった。
「中尉!エリアソン中尉!これには事情がありまして!」
「なんなんだよ?その事情っつうのはよ?」
「ラウタヴァーラ中尉は急に王命という形で結婚が決まり、まさに、寝耳に水の状態という状態だったのです!」
「はあ?ふざけんなよ?」
ヨアキムは再び近くの椅子を蹴り上げた。
「てめえはなんなんだ?一般人か?てめえは軍人じゃあねえのか?あ?上の命令は絶対だっていうのが骨身に染み付いてもいねえ素人か!寝耳に水だったんです〜、じゃあねえよ!」
椅子と一緒に机まで倒しながら、
「てめえの所為でこっちの作戦までぶち壊しになったらタダじゃ置かねえからな!ここはてめえらで片付けておけ!分かったか!」
そう雄叫びのように叫ぶと、ヨアキム・エリアソンは自分の部下を引き連れて部屋から出て行ってしまったのだった。
オリヴェル・ラウタヴァーラの直属の部下であるベンジャミン・ラシムスは一礼して上官を見送ると、オリヴェルと一緒に倒れた机と椅子を直し始めていたのだが、
「オリヴェル様、流石に、流石にこれはまずいっすよ」
と、ベンジャミンは机を移動させながら言い出した。
公爵家の次男であるオリヴェルの結婚式に部下であるベンジャミンはもちろん出席などしてはいないのだが、噂が大好きな国民性なだけあって、上官の結婚式については噂を耳にしてはいたのだが、
「王命で結婚した相手が公爵家で監禁されているとか、もしかしたら消されたんじゃないかとか、そんな噂が流れるのは流石にまずいっすよ」
と、恐る恐ると言い出した。
オリヴェルの妻となったカステヘルミはカルコスキ家の才ある花としても有名な人物であり、彼女が見出した天才の平民は帝国で機関車製作に関わるほどの人物でもあるのだ。この鉄鋼の天才がいるからこそ、ラハティ王国は帝国から機関車の部品を自国で受注生産する運びになったのだが、この天才を引き抜きたいと考える帝国は、天才が物凄く懐いているというカステヘルミをも帝国に取り込もうと考えた。
カルコスキ伯爵の領地が線路の分岐点となる場所だからとか何とか言いながら、カルコスキ伯爵家が裏切ることがないようにと第一の終着駅となるラウタヴァーラへと令嬢が嫁ぐことになったとしてはいるが、帝国に取られてはたまらないと考えた王家が早急に令嬢の結婚を決めたというだけのことなのだ。
令嬢を捕える籠となる家として公爵家が選ばれただけのことであって、その籠となる家が捕まえた令嬢を冷遇、更には虐待などということになれば、王家はどう考えるであろうか?
「エリアソン中尉が懸念する気持ちも良くわかりますよ。オムクスはいくらでも心の隙を突いてくる。それこそハニートラップはお家芸みたいなものなんですよ?我が国の揚げ足取りをしたい敵国がオリヴェル様の花嫁に目を付けたらどうなります?誘惑、誘拐、なんでもござれ。それで挙げ句の果てに死んで腎臓を引き抜かれちゃいました〜なんてことにでもなれば、公爵家だってタダでは済みませんよ?」
「だけどな・・」
殴りつけられて顔に痣を作ったオリヴェルが椅子を直しながら言い出した。
「母上やユリアナが俺の仕事の忙しさには十分に理解してくれていて、俺の花嫁については任せてくれと言ってくれたから」
「バカですか?いや、バカですよね?」
ベンジャミンは心底呆れながら言い出した。
「古来より姑と嫁が初手からうまく行くなんてことがあるわけがないんですよ!ちなみに、うちの嫁とうちの母親だって未だに仲良くなんかないですよ!『エリサさんは上手くやってくれるから、私はと〜っても安心〜!』なんてことを言いながらアレが出来てない、コレが出来てないって陰ではぐちぐち言っているのが姑っちゅうもんなんです!姑っちゅうのは自分の母親であって母親ではない。妻の前では別の生き物に変身するんだと考えておいた方が良いんです!」
「ユリアナが俺が忙しいのは十分に理解しているから、自分に任せてくれ。それで少しでも公爵家に恩返しが出来たなら、それで自分は満足なんだって言っていて・・」
バカだ〜。
こいつはバカだ〜。
という言葉をベンジャミンは呑み込んだ。
「それではとっても忙しいオリヴェル様に、パウラ様とユリアナ様が、新妻のことは自分たちに任せてくれと言ったので、その言葉を信じて任せっきりというわけですよね?」
「そもそも、カステヘルミ嬢は結婚してすぐに高熱を発して寝込んでしまっているしな」
「自分の妻のことを未だに令嬢呼びなんすね。それで?その寝込んだ令嬢の見舞いにも行っていないんですよね?」
「・・・」
知らぬ間にこんなことになっているとは!
家のことになると途端にマヌケな状態になる上官のフォローは、ベンジャミンがやらなければならないのかもしれない。
リューディアのおじさんはヨアキムという名前に変更となっております。
ここからこのお話は急展開していきますので、最後までお付き合い頂ければ嬉しいです!!
こちらの作品、アース・スター大賞 金賞 御礼企画として番外編の連載を開始しております。殺人事件も頻発するサスペンスとなりますので、最後までお付き合い頂ければ幸いです!
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