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【完結】手取り15万の社畜OL、『魔物グルメ』配信で世界1位になる。~会社では無能扱いですが、Sランク冒険者が「一皿100万で売ってくれ」と殺到しているので、もう辞めてもいいですか?~ - 会社の金で行く「ダンジョン出張」が最高すぎる
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会社の金で行く「ダンジョン出張」が最高すぎる

 平日の昼下がり。

 ポカポカとした陽気の中、私は会社の軽トラのハンドルを握っていた。


「……最高だ」


 思わず独り言が漏れる。

 いつもなら、薄暗いオフィスでエクセルのマス目を埋め続けている時間帯だ。

 あるいは、課長の「コピーの角が揃ってないぞ!」という怒号をBGMに、シュレッダーのゴミを捨てている時間だ。


 それが今はどうだ。

 青い空。白い雲。

 そして、助手席にはコンビニで買ったアイスコーヒーとお菓子。


「これが『直行直帰』という名の自由か……!」


 私はアクセルを踏み込んだ。

 目的地は、埼玉県の山奥にある『森林ダンジョン(Cランク)』。

 

 名目は「女神マリア様が指定した食材の受け取り」。

 実態は、「私が食べたい食材を、私が狩りに行くだけ」。

 

 ガソリン代は会社持ち。高速代もETCカードで会社持ち。

 おまけに「待機時間は自由にしていい」という課長のお墨付きだ。

 こんなにホワイトな業務が他にあるだろうか。


 ◇


 現地に到着した私は、誰もいない林道に軽トラを停めた。

 ここから先は車両進入禁止だ。

 普通なら、重い荷台を引いて歩かなければならないが……。


「装備、セット」


 私は胸元のネックレス(指輪)に触れた。

 一瞬で、作業着姿から「戦闘モード」へと着替える。

 と言っても、ジャージにエプロン、包丁といういつものスタイルだが。


「さて、今日の獲物は……」


 私は森の奥へと進んだ。

 鳥のさえずりが心地よい。

 マイナスイオンを浴びながらのハイキング。いや、仕事だ。これは仕事なのだ。


 ガサガサッ!


 茂みが揺れ、巨大な影が飛び出してきた。

 体長3メートル。

 全身を硬い毛で覆われた、巨大な猪だ。


 『アイアン・ボア(鉄の猪)』。

 その突進は軽自動車くらいなら簡単にペシャンコにする破壊力を持つ。

 だが、その肉は「ぼたん鍋」にすると最高に美味いことで知られている。


「ブモォォォォッ!!」


 ボアが私を見つけ、興奮して鼻息を荒くする。

 地面を蹴り、猛スピードで突っ込んでくる。


「今日の夕飯、決定!」


 私は逃げずに、真正面から迎え撃った。

 

 ドドドドドッ!

 地響きと共に迫る黒い弾丸。

 衝突まであと1メートル。

 私は半歩だけ横にずれ、すれ違いざまに包丁を振るった。


「そいっ!」


 スパァン!


 硬い毛皮も、鋼鉄の筋肉も、私の「解体スキル」の前では豆腐と同じだ。

 ボアの首が綺麗に飛び、巨体がズザザザッ!と地面を滑って停止した。


「ふゥ。いい運動になった」


 私はボアの巨体(推定300kg)に近づいた。

 普通なら、ここで解体して切り分けるか、数人がかりで運ばなければならない。

 でも、今の私には『彼』がいる。


「お願い、指輪さん」


 私は指輪に魔力を込めて、ボアに触れた。


 シュンッ!


 一瞬で、巨大な猪が消滅した。

 まるで手品だ。

 指輪の収納空間を確認すると、『アイアン・ボア×1』という文字が増えている。


「便利すぎる……。レオン様々だわ」


 重さを全く感じない。

 これなら、あと10匹くらい狩っても余裕で持ち帰れる。

 私は調子に乗って、さらに森の奥へと進んだ。


 ◇


 二時間後。

 私の指輪の中は、食材の宝庫になっていた。

 

 ・アイアン・ボア×2

 ・フォレスト・マッシュルーム(高級キノコ)×大量

 ・ロックバードの卵×10個


「大収穫だ。これで一週間は食費が浮く」


 ホクホク顔で軽トラに戻り、アイスコーヒーを飲んで一息ついた時だった。

 スマホが鳴った。

 嫌な予感しかしない着信音。課長だ。


『おい久住! 今どこだ!』

「あ、お疲れ様です。埼玉のダンジョン前ですけど」

『マリア様との合流は済んだか!? 荷物は受け取ったか!?』

「はい、バッチリです(自分で狩ったので)」

『よし! ならばすぐに帰社しろ!

 実は今、社長が来ているんだ! 「マリア様から届いた食材をぜひ一目見たい」と仰っている!』


「……は?」


 私は耳を疑った。

 会社に持ってこい?

 いや、それは構わないのだが……。


『いいか、そのまま本社の駐車場に乗りつけろ!

 私が社長と一緒に出迎えるからな!

 マリア様からの贈り物だ、きっと素晴らしい逸品に違いない!』


 ブチッ。

 電話が切れた。


「……マジか」


 私は軽トラの荷台を振り返った。

 

 空っぽだ。

 当たり前だ。全部、指輪の中に入っているのだから。

 でも、課長たちは「軽トラで運んでくる」と思っている。

 到着した時に荷台が空っぽだったら?

 

 「おい、荷物はどうした! まさか落としたのか!?」と大騒ぎになる未来が見える。

 かと言って、今ここで指輪からボアを取り出して荷台に載せたら……。


「いや、無理だ。300kgの巨体を私一人で積み込んだことになっちゃう」


 華奢な(?)OLが、一人で巨大な猪を軽トラに積む。

 どう考えても怪力すぎる。正体がバレる。


「……詰んだ?」


 いや、諦めるな。

 社畜には、ピンチをチャンスに変える「言い訳スキル」があるはずだ。

 私は脳をフル回転させながら、軽トラを発進させた。


 ◇


 一時間後。

 本社の駐車場には、課長と社長、そして野次馬の社員たちが待ち構えていた。

 まるでVIPの到着を待つような歓迎ぶりだ。


 私は胃が痛くなるのを感じながら、軽トラをバックで駐車スペースに入れた。


「オーライ、オーライ! ストップ!」


 エンジンを切って降りると、課長が駆け寄ってきた。


「ご苦労だったな久住! さあ、見せてみろ!

 マリア様が託した『至高の食材』を!」


 課長が勢いよく荷台のカバーをめくった。

 

 バサァッ!


 ……シーン。


 そこには、風に舞う枯れ葉が一枚あるだけだった。

 完全なる虚無。


「……あ、あれ?」


 課長が目を擦る。

 社長が首を傾げる。

 社員たちがざわめく。


「おい久住! どういうことだ! 空っぽじゃないか!」

「まさかお前、途中で食べてきたんじゃないだろうな!?」


 んなわけあるか。生肉を。

 私は慌てず騒がず、涼しい顔で言った。


「いえ、ご安心ください。

 マリア様は仰いました。『鮮度が命だから、特別な魔法をかけておいた』と」


「ま、魔法……?」


「はい。空気中の不純物に触れないよう、結界で隠蔽されているそうです。

 素人目には見えませんが、心の綺麗な人には見えるとか……」


「な、なるほど! そういうことか!」


 課長が食いついた。チョロい。

 

「わ、私には見えるぞ! うっすらと凄いオーラが!」

「さ、さすが課長です」


 私は心の中で爆笑しながら、荷台の後ろに回った。

 みんなの視線が荷台(虚空)に集中している今がチャンスだ。


(指輪さん、排出! ……あ、丸ごとは大きすぎるから『脚』だけでいいや)


 私はこっそりと指輪に触れ、荷台の死角になる地面へ向けて念じた。


 **ドスンッ!!!**


 突如、駐車場の地面が揺れた。

 空から降ってきたかのように、巨大な肉の塊――『アイアン・ボアの後ろ足』が鎮座したのだ。

 脚一本だけで、大人一人分くらいのサイズがある。重量にして約50キログラム。


「うわぁぁぁっ!?」

「な、なんだ今の音は!?」

「い、いつの間に!?」


 課長たちが腰を抜かす。

 何もないはずの空間に、突然巨大な肉塊が現れたのだから当然だ。


 私は演技がかった口調で言った。


「ああ、魔法が解けたようですね。

 これが、マリア様からの贈り物。『アイアン・ボアのモモ肉』です。

 『丸ごとだと冷蔵庫に入らないでしょうから、一番美味しいところを切っておきました』とのことです」


「す、すげぇ……」

「脚一本でこのサイズかよ……!」

「マリア様の気遣い……やはり彼女は本物の女神だ……!」


 社長が感動して震えている。

 課長も「見ろ! これが私の人脈だ!」と意味不明な自慢を始めている。


 誰も、私が指輪を使ったことには気づいていない。

 そして、私が「一人で積み下ろしをした」という矛盾も、「魔法で浮いていた」ということにされて解決した。


「よし、これは週末のバーベキュー大会まで、会社の業務用冷蔵庫で保管だ!」

「社長、太っ腹!」


 盛り上がる社員たち。

 私はその喧騒を横目に、そっとため息をついた。


(……あーあ。私の夕飯用だったのに)


 まあいい。

 指輪の中には、本体(脚一本欠損)が丸々残っているのだから。

 私は誰にもバレないように、自分用の肉が入った指輪を撫でた。


 会社の金で行くダンジョン、そして経費で食べる焼き肉。

 この味を知ってしまったら、もう真面目なOLには戻れそうになかった。


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― 新着の感想 ―
ブタって2Mサイズで体重300kg前後になるんですよ 体長3Mで図体もでかいとなると800kg~1tくらいにはなるはずなんで そのイノシシは餓死寸前くらいにひどい状態ってことになります
2トンの容量の指輪に300キロのボアが入って、その後まだ10匹ほどはいるの?!不思議指輪だ 会社辞めないんだ、色々損失出てるのにね 課長をいたぶる事もあんまりできてなくてむしろ良いように使われてるね…
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