第95話 皆が見守る中……
「それじゃあ、かけるぞ」
皆が見守る中、完成したクリスタル化解除ポーションをキャロルの頭からかける。
「頼む……」
レインボーバタフライの宝玉やレッドドラゴンの血で効果を増幅しているとはいえ、効果を発揮するかは半々とタバサさんに言われている。
俺は祈りながらキャロルのクリスタル像を見る。
「頼むから、治ってくれよ!」
自分のことを庇いクリスタル化したキャロル。俺は彼女にまだお礼すら言っていない。
「キャロル!」
ところがクリスタル像には変化もなく、ただ時間だけがすぎていった。
「……失敗、ね」
タバサさんの言葉が耳から入ってきたが、言葉の意味がわからない。
「クラウス様」
ロレインが肩に手を乗せた。
「ふざけるなっ!」
俺はロレインの手を振り払うとクリスタル像に手を置く。
「『一撃もくらうな』って言っておきながら俺を庇って、自分がくらってるじゃないか!」
堪えきれず感情が溢れた。
「人に指図するくらいなら自分も守れよ!」
ただ諦めたくなくて泣き叫ぶ子どもそのものだ。
「クラウス、そろそろやめておけ」
ダグラスさんが俺の肩を掴み止める。
『ピィ』
『…………#』
『…………(悲)』
『クコ?』
従魔たちが心配そうに俺を見ている。俺は自分の力が及ばず俯くと……。
――バリンッ――
小さな音が聞こえた。
「ちょっと! クリスタル像にヒビが!」
「もしかして、崩れるの?」
誰かの声が聞こえ、最悪の想像が浮かぶ。一度破損した石像は治すことができない。
――パリパリパリーー
「キャロル!」
クリスタルが剥がれ落ちていく。俺たちが見守る中、すべてのクリスタルが砕け散り、キャロルの姿が現れた。
倒れるキャロルを俺は抱きとめた。
彼女から温もりが伝わってくる、瞼が開き赤い瞳でキャロルは俺を見つめると……。
「クラウス、お腹すいた」
「最初の一言がそれかよ」
こんな時だと言うのに普段とまったく変わらない彼女に、涙を流しながら笑い掛けた。
エピローグ
「それでは、今回の事態の調査結果を報告します」
ステシア王国城内で会議が行われている。
宰相のニコラスは各地に派遣していた調査隊からの報告書を読み上げていた。
「今回の件ですが、何者かが強力なモンスターを使役し、モンスターをこちらに追い立ててきたことが発端のようです」
クラウスたちからブラックドラゴンやクリスタルコカトリスの存在について告げられている。ブラックドラゴンが国境沿いを飛び生態系を見出したのだと推測する。
「それは、何か裏付けができているのか?」
キングス四世はニコラスに確認をした。
「決定的な証拠ではりませんが、調査隊の宮廷魔導師が国境の山脈より禍々しい魔力を感じ取っております、その直後にコカトリスが出てきたことから考えても、ブラックドラゴンのせいかと」
その報告に軍務卿のドワイトが声を上げた。
「もしそれが本当なら防ぐ手段はないではないか」
原因を排除するしかないのだが、Aランクモンスターが怯えるような存在をまともに討伐できる気がしない。
「ひとまず、今回の件である程度のモンスターを討伐することができたので、しばらくは平和でしょう」
財務卿のエグゼビアはそう告げる。モンスターの数にも限りがあるからしばらくは強力なモンスターは人里に出てこないだろう。
「それよりも、今回の件で発覚したとある国家冒険者のスキルについてだが……」
国王を含む四名は視線をマルグリッドへと向ける。
「希少モンスターのフェニックス・レインボーバタフライ・プチゴーレム・クリスタルコカトリスをテイムした国家冒険者クラウス。彼はまるで百年前に現れたリントを彷彿させる活躍を見せている」
「いや、リントとてレッドドラゴンを従魔にした時はある程度歳を重ねていた。まだ成人して間もない歳で希少モンスター四匹というのはそれを超えている」
「いずれせよ、今後彼の言動に注意するのだ。間違っても他国に渡してはならん」
それぞれの言葉を聞いたマルグリッドは、
「それには、皆様のより一層の協力が必要になります」
本人は気付いていないが、クラウスが保有している従魔は時が経てば一国と戦える戦力となりえる。
他の貴族が余計なちょっかいを出し、彼の気分を害しては困ったことになる。そうならないためにも、この場にいる後見人が彼を守らねばならない。
「ふむ、そういうことなら貴族位を授けるべきかもしれんな」
キングス四世はアゴを撫でるとそんな言葉を口にした。
「馬鹿なっ! 早すぎるのではっ!」
ドワイトが驚愕の声を上げる。貴族位というのは、長年国に貢献して初めて贈られるものだからだ。
「そうはいうが、リントを超える逸材なのだろう? ならば何を持って早いというのか?」
キングス四世の言葉に全員が黙り込む。
「それはともかくとして、クラウスが受け入れるかどうかですな。何せ彼は現時点で他者が持たない多くの物を持っておりますゆえ」
従魔を大切にしており、危害を加える者には容赦しないというのがクラウスのスタンスだ。
「とにかく、今後の彼の動向には気を使うように」
キングス四世はそういうと、国難を防いだことよりも、規格外な存在であるクラウスをどう扱うかについて頭を悩ませるのだった。
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