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扉の向こうは異世界!! - 52話 命の恩人!!
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52話 命の恩人!!

 リーズは重苦しい空気の場所に座っていた。目の前には高級料理がある。しかし、リーズはそれに手を付ける事はなかった……と言うよりは手を付けられなかった。何故ならば、リーズは食べ方が分からず、普通に食べたら絶対に克己が恥をかくからだと理解していたから……。


『お嬢さん、食べないのかい?』


「え? あ、は、はい……。主人が手を付けていないのに、奴隷の私が手を付けるなんて烏滸(おこ)がましいですから……」


 リーズはそう答えて場を回避する。


『君のところの子は全員素晴らしいね……』


 克己は嬉しそうにお礼を言う。


『ところで……話とは?』


「この間話をした街を作る件です……」


『オォ! その話はどうなったのか知りたかった所だよ……』


 期待もしていないような顔して男達は言う。


「許可を貰いましたよ……しかも二つ作って良いと言うおまけ付きでね」


『ふ、二つは……そんなに金は出せんよ……』


 もう一人の男が困った声で言う。


「二つの内一つはお金を支払わなくて良い。その代わり、王都に店を構えることが条件です」


 克己が言うとホッとした顔をするが、まだ安心は出来ないでいた。


「店は何店舗でも構わないとの事ですが、服屋を作らないといけない……」


『服屋? 何故だ?』


「向こうの国は、服を作る技術が乏しく質素な服しかないからですよ……。店を作れば飛ぶように売れるでしょうね」


 克己は甘い言葉を言う。


『そ、そうか……、助かるよ……』


 男達はホッと胸を撫で下ろした。


「話には続きがあります。王国側からの依頼です」


『い、依頼?』


「そうです。依頼です。かなり好条件だと思いますよ」


『そ、それは何だね? 勿体振らずに教えてくれないか?』


「コインの生産をお願いしたいそうです。大きさはこのくらいです……」


 克己はテーブルの上にそれぞれのコインを置いて男達に見せると、手に取り皆でそれを確認しあっていた。


『これが好条件?』


「これを作ってくれるのなら30%を20%にしてくれるとの事です」


『10%も……か……だが……』


「そうですね、俺も交渉してきたことですから、出来れば取り分は少しでもほしいですね……。ですが……」


『ですが? 何だというんだね?』


「俺も自衛隊の使用権など、色々無理をお願いしますからね……。ここは我慢しますよ。だけど、俺達(・・)が日本で武器を所持しても問題なくしてもらいたい……これも条件の一つとさせてもらいたいですね……」


『じゅ、銃などをというのか?』


「はい、俺は各国に命を狙われていますからね……自分を守る道具が必要……これが許可されないなら全ての話はなかった事にしてもらいたい」


『そ、そうか……分かった、我々が政権を握ったら許可を出そう……』


 男達は資源を選び、克己は密かにほくそ笑む……。


「あと……武器の件ですが、これに関して前回は提供いたしましたが、今回は提供しません」


『な、何故かね?』


「強力過ぎるからですよ……。自衛隊に使いこなすことはできません」


『だ、だが!!』


「これは決定事項です。提供は致しません……。通常の重火器でも十分な殺傷能力はあります。必要性は感じられません。ドラゴンを除く魔物なら大抵の魔物は銃で始末する事が可能です。それに、以前、死骸を提供しておりますから強力な武器などを作られたほうが良いかと思います」


『グッ……わ、分かった……』


「正直、ここまで話を聞いてくれるとは思ってもみませんでしたよ……俺もあなた方が政権を握れることを祈りますよ。契約書は俺が作成いたしますが……宜しいですか? 政権を握った先生方はお忙しいはずですし、先生方の手を煩わせるのも失礼ですからね……」


 すでに政権を握ったかのように話を進めると、男達は気をよくして了承する。


「ではこれで俺達は失礼させて頂きますよ……。幸運を祈ります」


『今日は良い話ができたと思っている、感謝するよ』


「こちらこそ感謝します。まずは王都を見学して来たら如何ですか? 私が案内いたしますし、それに現地を知っている自衛隊がいますからね……彼らに案内をしてもらうのは如何でしょう?」


『それはまだ無理な話だな……政権を握ってからじゃないと……』


「そうですか……仕方ありませんね、来週の結果が出るのを楽しみにしていますよ……」


 克己は男達と握手を交わして、高級レストランを後にした。


「リーズ、お腹は空いてないか? 何か食べて帰るか?」


 克己は一口も手を付けなかったリーズを気遣い食事に誘うと、リーズは嬉しそうに頷いた。


「『はんばーがー』という物が食べてみたいです! アルスやノエルが美味しかったと言っておりました! 私も食べてみたいです」


「ジャンクフードかよ……まぁ、食べたいというなら連れて行ってやるか……」


 克己はリーズをマルドナックへ連れていき、二人でハンバーガーを食べて帰ると、髪を切ってさっぱりした里理が自分も食べたかったと我が儘を言って、克己は仕方なく全員分を買いに行かされたのだった。


 選挙の結果、自明党が勝利を収める事となった。


 自明党の行動は早かった。首相となった間部総理は克己の作った異世界・武器使用に関する契約書と誓約書にサインをして、直ぐに自衛隊を現地に派遣を命じた。


 克己は扉の入り口に立って自衛隊が到着するのを待っていると、制服姿の品川が現れた。


「お久しぶりです。あれから一か月くらいですかね?」


 品川が書類を克己に手渡し、微笑みかける。


「そうだね、大体それくらいになるかね……?」


 書類を確認してそう言うと、品川は質問する。


「森田三曹とは……どうなんですか?」


「すれ違いが続いているよ……。せっかくの約束もこの件で台無しになってしまったからね」


「どう言う事ですか?」


「今日が約束の日なんだよ……デートの……」


「う、嘘……何でこんなところにいるんですか!」


「大丈夫、俺がいかなくても自分からやってくるよ……ほら……」


 克己は書類を品川に見せると、品川は驚いた顔をする。


「あ、あの子……また選抜されたの……」


「そりゃそうだろ……魔法が使えるんだし、現地にも多少詳しい。選抜されないわけがない……伊藤ちゃんも選ばれているし、宮川さんも選ばれているよ。もちろん君もね……」


 品川はそんな話は聞いていないと言わんばかりに書類に目を通す。すると、小さく声を上げて顔を青くする。


「でも、今回は外に出るわけではないようだね……街づくりメンバーに選ばれている」


「だ、だけど……折角の……」


「諦めなよ、休みの日は日本に帰って来られるんだから……」


 克己はそう言って肩を叩き、品川は項垂れる。


 暫くすると続々と自衛隊が到着する。


 入り口には成りすまし防止のために自衛隊の広報や総務の人が立っており、中に入るために自衛官診療証を提示してもらっているが、大渋滞が発生してしまっている。


 中に入るときに、自衛隊員は広報と総務の人から説明を受ける。


『この先は訓練ではありません、本当の戦場になります』


 言われる隊員は緊張して入り口を潜り、直ぐに銃を構え、隊長の指示に従い以前使用していた基地の確認を始める。


 その中には森田も含まれており、緊張しながら数人で基地を探索する。


「体長、異常ありません……」


『こっちも異常ありません……』


『こっちも……です……』


『よし、次へ行くぞ……』


 そう言って森田達は他の場所へと調査に向かう。


 その頃、克己は資料を片手に里理と一緒に居た。


「里理ちゃん、これ宜しく……」


「ん、置いといて~」


 椅子に座り、眼鏡をかけてPCと睨めっこしながら里理は答える。


「ネットワークの構築はどうなってる?」


「今やってる~。君はせっかちだね……エッチの時もそうなのかい? 私はしっかりと前戲をしてくれないと嫌だよ~」


「どうして君はそんな話をするのかね?」


「君が一度も抱いてくれないからだよ……」


 真剣な目で里理は克己を見つめる。


「抱いたらどうなるんだ?」


「さらに君を愛してしまうだろう……」


 克己は深い溜め息を吐いて項垂れた。


「冗談ではないよ? 本当さ……早くマーキングをしてくれないと困るよ。ノエルちゃんやリーズちゃん達とは頻繁にしているくせに」


「な、何で知っているんだよ!」


「女の子の情報を舐めるなよ?」


 里理は憎たらしい笑みを浮かべて克己を見る。


「気が向いたらね……里理ちゃん」


「いつでもwelcomeだよ」


 俺はいつでもNO thank youだよと言って、克己は部屋を出て行こうとすると、里理は真面目に言う。


「カッチャン、アルスちゃんはどうするの? 好きなんでしょ? それに他にも気になる子がいるって……」


「里理ちゃんは気になるのかい?」


「なるよ。気になる……本当に私はカッチャンを愛してる……誰にも渡したくは無いほどに……」


「俺も里理ちゃんを愛しているよ」


「でも……一番じゃ無いんでしょ……」


「それでも、君の作ったシナリオでは俺の傍にいる事にしたんでしょ? どうなの? まだこの話をするの?」


「カッチャン、私は……貴方と別れたあとレイプされた……。紀一に聞いたでしょ? 汚れた女は嫌い?」


「普通の人だったらどうかな? 嫌いになっているかもね。だけど里理ちゃんは嫌いにはなれないよ……。君が忘れていないように俺だって忘れてはいない……だけど終わった話なんだよ」


「まだ終わってない!! 勝手に終わらせないで!!」


「君達が終わらせたんだよ……」


「私は嫌だった! でも、逆らえるはずないじゃん!! 君だって分かっているだろ!!」


「それは君達家族の都合だろ! 俺には関係ない! 君達は俺を見捨てたんだから……俺は君と結婚をしない……そう言ったでしょ」


「しなくても……」


 里理は立ち上がり足を引きずりながら克己の傍による。


「しなくても抱いて構わない……私を滅茶苦茶にしてよ……好きにしていいんだよ……私は君の物なんだ……これは私の望みなんだよ……君が誰と結婚しても構わない……抱きたくなったら抱いてくれればいい……中にだって出しても構わない……子供ができたら認知しなくても良い……私は君の子が欲しい……」


 里理は震えながら抱き着きキスを求める。克己は扉を閉めて……。


「嬉しいよ……カッチャン……やっと君と一つになることが出来たよ……」


 里理は嬉しそうな顔して克己にキスをする。


「里理ちゃん、本当にごめんね。君とは結婚はできない」


「うん……それは私達が裏切ったからだ……。だけど終わっては無いんだよ……私の中では続いているんだ……」


 暫くの間、里理は克己の胸で幸せを味わっていた。


 翌日になり、自衛隊は基地に荷物を運び入れ始めるが、森田は本来休みだったので、特別に休暇が貰え、小型四輪駆動車の使用許可を貰ってパルコの街へと向かった。


「久しぶりの街はどうなっているのかな……」


「本当は愛しのダーリンに会いたいだけなんでしょ? 理恵」


「な、何を言っているの! それに階級は私の方が上なんだから! あんたが運転しなさいよ!」


 森田は同期で同じ歳の松田香織(まつだかおり)と一緒にパルコに向かっていた。


「ここで階級を出す? あんたつれない人ね~。で、成田克己ってどんな人なの?」


「私の命を救ってくれた人だよ……冷たい部分もあるけど、基本は優しい人だよ」


「優しい人ね~それだったら家の借金を払ってもらえるんじゃない?」


「何を言っているのよ! 香織は……そんなの無理に決まってるじゃん……それに私は……そんな事望んでない……」


「でも恋愛はしたいんでしょ?」


「そ、そんな……私には無理だよ……皆、借金で逃げていくもん……恋愛なんて出来なよ」


「そんなこと言いながら成田克己に会いに向かっているのは何故なのかしら?」


「それは香織が行った事ないから案内してあげるんでしょ!」


「そう言う事にしてあげるわ」


 松田は森田を揶揄いながら助手席に座っていた。


 暫く車を走らせると街に到着し、車を徐行して走らせる。


「うわ~……本当に色んな人がいるのね……」


「そうよ……猫族もいればウサギ族もいるし、犬族だって……ほかにも色々居るらしいわ。この街はこの世界では一番平和と言われている街なの」


「ふ~ん、凄いね~」


 森田は一つの店の前で車を止めて中に入ろうとすると、松田が腕を引っ張る。


「理恵、私はここのお金を持ってないよ!」


「大丈夫だよ、ここは日本のお金が使える唯一の店なんだから」


 森田はそう言って中に入ると雰囲気が違った。


「あ、あれ? ……こ、ここは……」


 森田が戸惑っていると店員が寄ってくる。


『いらっしゃいませ~、お二人ですか~?』


「あ、は、はい……」


 つい返事してしまい、二人は席に案内される。


「理恵、かなり繁盛してるね……! 日本人はいるのかな? ……あ! あの人、日本人じゃない?」


 森田は克己がいたのかと思い振り向くが、まったく違っており、ガックリするのであった。


「いらっしゃいませ……あら? 貴女方は……日本人ですか? 文字は読むことできますか?」


 松田が注文のために呼んだ店員は、森田達を日本人と理解して話しかける。


「私達が日本人と分かるんですか?」


 松田が質問をする。


「えぇ……服装が全く異なりますからね……オーナー曰く、洋服を着ている人はいるはずないと言っていますからね……」


「そうなんだ~、店長って日本人なの?」


「違いますよ、オーナーが日本人です。ちなみに私も日本人です。まさかこんな場所で日本人と会えるとは思ってもいませんでした」


「そうだよね~。私も異世界で自衛隊員以外の日本人に会えるとは思っていなかったわ~」


 松田は嬉しそうに話す。


「自衛隊……? まさか巨大な扉から入ってきたんですか? 自衛隊が来たって事は……すいません、ちょっと席を外させて頂きます。てんちょ~う」


 店員は走って裏方に入っていく。


「ど、どうしたっていうの? 自衛隊が来たら問題でもあるの?」


 松田は森田に話しかけると、森田は首を傾げ分からないと答える。


 スーツを着た若い女性が慌てて店に出てきて森田達はポカ~ンっとして見ていた。


 スーツを着た若い女性は森田達の前に来て質問をする。


「あ、あの、日本人の方は何時頃この街に来たりするんですか!!」


 若い女性は興奮しており、顔を近づけて質問するため森田達は仰け反り困惑して答える。


「あ、明日か明後日には……先発隊がやってくるのではないでしょうか……」


 森田が答えると、若い女性は携帯を取り出し電話をかける。


「か、克己様! 緊急事態です! に、日本人がお客様でやってきました!!」


『そりゃそうだろ……ペルシアが日本のお金がある場所を知っているからそこから取り出せば良いよ』


「そ、そうなんですか? 克己様ご存じだったんですね……」


『もちろん。当たり前だよ……俺の許可が無い限り誰も入る事は出来ないんだから。だけど意外と早くやって来たな……』


 森田は克己の名前を聞いて驚いていた。彼が近くにいるのだと思い周りを確認するが、電話で話しているため近くにはいるはずは無い。


『お客様には二種類のメニューを出すようにして、皆に日本人がやってくることを教えてあげて……もう少ししたらそっちへ行くから』


「わ、分かりました……お待ちしております……。あ、克己様、ペルシア様ですが、本日はお店に参られない予定になっておりました……」


『な、何ぃ! 今からそっちに行くから待ってて!! 里理ちゃん……』


 そう言って電話が切れた。


「店長、オーナーは何とおっしゃっているんですか?」


「今から来るそうです、全従業員に指示をしてください! 急いで!」


「て、店長……、何を指示すればいいのか教えてください……あと、落ち着いて……」


「あ、そ、そうですね……! メニューは二種類出してください! 今後、日本人が来るかもしれませんと皆に伝えてください!」


「承知致しました!」


 店長の横に居た店員はそう言って従業員に説明を始める。店長は森田達に気が付き頭を下げた。


「あ、慌ててしまって申し訳ありませ……あれ? あなた……どこかで……?」


 店長は森田の顔を見て記憶の海馬に探りを入れる。


「ど、何処かでお会いしましたっけ?」


 森田はナンパの手口に似た言われ方をしてドギマギしていた。


「お、思い出せません……ですが、何処かで……」


 店長が考えていると、他の方から店長を呼ぶ声が聞こえ、店長は頭を下げて走って行ってしまった。


「知り合い? 理恵……」


 松田が不思議そうな顔して森田に問いかけるが、森田は思い出せずに首を横に振る。


 暫くすると、新しいメニューがやってきて、森田達は注文をすることができた。


「メニューがファミレスみたいだね……理恵」


「うん、前に来た時と雰囲気が違うし、メニューも違う……だけど、日本円が使えるのは助かるよね」


「そうね……助かるわ~。もし使えなかったらどうしようかと思ったわ……文字も読めないし……」


 森田は「だよね~」と、笑いながら財布を確認するがその財布が見当たらない。


「あ、あれ? あれれれ? さ、財布が無い……うそ! 財布が見当たらない! ま、まさか……」


 そのまさかである……基地に財布を置き忘れたのであった。


「う、嘘でしょ? 理恵! 私は貴女が奢ってくれるっていうからそんなに持ってきてないわよ! ど、どうすんのよ!」


「ね、値段は……二人で3,780円……」


 松田は大急ぎで財布の中を調べると2,589円しかなく、全く足りなかった。


「きゃ、キャンセルを……」


『お待たせいたしました~当店特製のハンバーグステーキセットになります! ごゆっくりお食べ下さい!』


 店員はそう言って食事を置いて立ち去った。


「り、理恵……どうするのよ……」


「か、香織、携帯は? 誰かにお金を……」


「非番は私達だけじゃん! それ以外の人は働いてる! 呼んでも無駄だし、それ以前に携帯を持ってきてないよ! 電波が入るなんて聞いていないもん!」


 森田達があーでもない、こーでもないと話していると、店員の雰囲気が変わる。


「お待たせ、千春ちゃん……お金の場所を教えるね。日本人は何人?」


 森田は懐かしい声を耳にして、声がする方を見ると車椅子を押す男性が自分達を見ていた。


「あれ? 森田ちゃん?」


 男はスットンキョな声を出して驚くが、車椅子に座っていた眼鏡をかけた可愛らしい女性は怪訝な顔して森田達を睨んだ。


「誰だい? カッチャン……」


 眼鏡をかけた女性は不貞腐れた声を出して質問する。


「か、克己さん……ですか?」


「やっぱり森田ちゃんか!! よく来たね!」


 克己は嬉しそうな顔をして車椅子を押しながら近寄る。


「この子は誰だい? カッチャン。紹介をしてくれないのかい?」


「あ、あぁ……、すまないね、里理ちゃん。この子は陸上自衛隊所属、森田理恵三曹だよ。前に座っている子は知らないけど、多分同じ自衛隊の子だと思うよ」


「成る程ね……」


「は、初めまして、私は陸上自衛隊所属、松田香織士長です!」


 松田は立ち上がり敬礼をして答える。


「「成る程、松田さんね」」


 里理と克己はハモらせながら答える。


「ほら、里理ちゃんも挨拶をしなよ、失礼だろ」


「あぁ、そうだね。私は成田君の肉奴隷をしている……アイタ!!」


 克己が頭を叩く。


「ほ、本当の事だろ! 昨晩だって……」


「違うだろ、エンジニア! システムエンジニア!」


「チッ……そう言う事にしといてあげるよ……。どうやら私はシステムエンジニアらしい、北川里理という者だ。見ての通り、足が悪いから丁重に扱って……イタ! そんなに叩かないでくれよ……」


「ちゃんと挨拶をしないからだよ。ごめんね。森田ちゃん……」


「い、いえ……お会いできてよかったです……」


 森田は頬を染めながら答え、里理はそれに気が付き怪訝な顔をする。


「そうか……君か。カッチャンの思い人は……まさかこんな子だったとは……痛」


「里理ちゃん、何を言っているのか分からないな……」


 叩いた力は先程とは比べ物になっておらず、里理は頭を押さえていた。それを見て森田と松田は苦笑いをしていた。


「じゃあ、二人はゆっくりとしていってくれよ」


 先程とは違った笑みで克己は言うと、車椅子を押して裏へと向かおうとするが、松田が引き留める。


「あ、あの、成田さん?」


「ん? どうしたんですか? 松田さん」


「じ、実は私達……」


「ちょ、ちょっと香織!」


 森田は理恵の口を塞ごうとしたが、一歩遅かった。


「お金を持っていないで……モガッ!!」


「へ? 無銭飲食?」


 松田は頷き、森田は項垂れる。


「成る程ね……。だから食事に手を付けていないのか……。分かったよ、ここは俺が何とかしとくから、好きなだけ飲み食いすると良いよ」


 克己が優しく言うと、里理が納得行かない顔をするが、克己は気にしなかった。


「も、申し訳ありません……」


 森田は頭を下げるが、克己は言葉を続ける。


「これは貸しだよ? ちゃんと返して貰うからね? 手段は選ばずにさ」


 克己はそう言って奥へと引っ込んだ。


 最後にとんでもない台詞を言ったように聞こえた森田は再び項垂れ、松田は安心して食事を始めたのだった。


 数日後、パルコの街では自衛隊員で溢れかえっていた。


 至るところに迷彩服を着た者がいて街は混乱をしているように見えた。勿論克己の店は大繁盛をしており、売り上げもとんでもない額を記録して、新垣は驚いていた。


 自衛隊は王都に向けて車を数台向かわせたりしておりかなり、慌ただしくなっていた。


 森田は周囲偵察部隊に所属させられており、連日連夜出掛けている状態だった。


『三曹、聞きましたか?』


「何がですか? 一士」


 階級は森田の方が上だが年齢は一士の方が上のため、森田は敬語を使っていた。


『明日は調査及び偵察任務は無いそうですよ』


「何故です?」


『お偉いさんが王都に向かった面子を除き、挨拶をするらしいですよ』


「面倒ですね……。変な命令が下りなければ良いですね」


『そうですね……』


 森田達は苦笑いをして重装備を担いで森の中を警戒しながら歩いていた。


『三尉、右斜めに何かいます!』


 森田達の小隊に緊張が走る。三尉は銃を構えさせながらユックリと前進させていく。


『三曹、何がいるか分かるか?』


 三尉は自分より経験豊富な森田に質問するが、索敵は全て克己達に任せていたので森田が分かる筈がない。


「も、申し訳ありません……正直、分かりません……」


 三尉は仕方ないと言ってユックリと前進すると、上空から棍棒持った鬼のような奴が一士の頭をカチ割る。一士はそのまま地面に倒れ、森田達はその鬼のような化け物に対して銃を乱射し、化け物は蜂の巣にされ絶命した。


『衛生科! 一士の治療を!』


 衛生科と呼ばれたWACはビビりながら一士の治療を始めようとするが、一士は既に事切れていた。


『な、何て事だ……』


 三尉は項垂れ、森田は初めて仲間の死を目の当たりにした。


「こ、これが実戦……?」


 克己達と行動しているときはこんな事は起きなかった。それは克己達の慎重さが安全に繋げているからであった。だが、決して森田達が油断をしていたわけではない。最低限の警戒はしていたが、異世界……いや、実戦経験や知識の差が招いた事故であった。


 森田達は使うことは無いと思っていた死体袋を準備して一士の死体を袋に入れる。


 正直、全員は現実を受け入れることが出来ずに、一士が起き上がって来るのではないかと思っていたが、異世界は現実逃避をさせてくれるほどの余裕はくれなかった。


 騒ぎを聞き付けたと思う魔物の仲間は続々と現れ、森田達は死体を置いて退却せざるえなくなり、必ず迎えに来ると言い残して一士の亡骸を置いて退却をした。


『三曹! こんな話は聞いてないぞ! 街の付近はもっと安全な場所じゃないのか!』


「わ、私に言われても……」


 森田達は混乱をしていた。まさか基地からそんなに離れていない場所で魔物が現れるとは思っていなかったからだ。だが、これは魔王が先手を打って行動していたからであった。


 森田達が命からがら逃げ延び座り込んで休憩をしていたが、魔物はそれすらも許してはくれなかった。


『ハァハァ……、5分休憩をして基地へと戻るぞ!』


 三尉が言うと全員が返事をする。しかし、皆が息を整えていると遠くから地響きのようなものが聞こえてくる。


『な、何だ……この音は……』


 ズズン、ズズン……と音が近付いてくる。三人は立ち上がり警戒をするが、目にしたものは巨大怪獣そのものであった。


「あ、あれは……ドラゴン……。隊長! 逃げましょう! 勝てっこありません! 逃げましょう!」


 森田が叫んで言うと、三尉は我に返り退却の指示をするが、ドラゴンの目には森田達をロックしており追いかけてくる。


「隊長! 先に逃げてください! 応援を!」


 森田が言うと、三尉は頷き森田を殿にして退却をする。森田はライフル等を使ってドラゴンの気を引き付け、自分の退路を確認しながら進んでいくが、森田の銃撃が効いているようには感じられず、徐々に追い詰められていく。


「や、やり過ごせる場所を探さないと……」


 必死で退却を繰り返しながら森田は一人で基地へと向かうが、ドラゴンは森田を逃さない。


 体力的にも限界が訪れる森田の頭の中に、死という言葉が誤る。


「い、嫌……! まだ死にたくない! た、助けて! 克己さん!」


 森田は足が止まり動けなくなる。ドラゴンは叫び声を上げて森田の側まで来ると、大きい前足で森田を踏み潰そうとする。


 ダメだ、自分は死ぬのだと目を瞑って覚悟を決めた森田だったが、自分の体に何の衝撃等が感じられず、殺るなら痛み無く一瞬で……と願った。しかし、いくら経っても何も起こらない。森田は目を開けると目の前にはドラゴンの返り血を浴びている男が立っていた。


「いや~、危なかったね。大丈夫かい? 森田ちゃん」


「う、うそ……な、なんで……こんな場所にいるんですか! 克己さん」


 返り血を浴びていた男は森田の知っている克己であり、森田はそれ以上の言葉が出なかった。


「怪我はない?」


「う、うん……」


「間に合って良かったよ、恐かったでしょ? もう大丈夫だよ。皆で駆除しているから」


 克己は倒れている森田に手を差し伸べ、森田は戸惑いながらその手を掴んだ。


 克己は勢いよく引っ張り上げ抱き締める。森田は顔を赤くして動揺し、声を出すことが出来なかった。


「本当に無事で良かった……。こんなところで地竜が現れるなんてね……」


「あ、あり……がとう……ございます……」


 森田はそれだけしか言えず、自分がどの様な顔をしているのか分からなくて恥ずかしそうにしていた。


「さて、街に戻ろうか……」


「は、はい……」


 克己はドラゴンのコアを回収して袋に仕舞い、自衛隊の基地がある方へと歩き出し、森田はその後ろを警戒しながら付いていった。


 一時間くらいすると、開けた場所に出て、自衛隊が作った基地が見える。


「も、戻って来られた……」


 森田はホッとしたら涙が零れだし、座り込んでしまった。


「い、生きてるよ……、私……生きてた!」


 大声を上げて泣き、暫く克己はそのまま黙って立っていた。


 克己は森田の頭を撫で、森田は克己の顔を見て微笑む。


「これで……二度目ですね……」


「何がさ?」


 克己は考え込むと、森田は立ち上がり改めてお礼を言う。


「克己さん、私が事故を起こした時も助けてくれてありがとうございます。お礼を言いたかったのですが……中々言う機会が無くて……」


「あぁ~、あの時ね……。じゃあ、森田ちゃんは俺には逆らえないね!」


 克己が笑いながら言うと、森田は恥ずかしそうに頷く。


「そうですね、二度も助けてもらっては何も言えないですね」


 森田も笑いながら返す。


「そうか……、命の恩人か……。成る程ね……それも二度も……」


「恥ずかしい話ですけど……」


 二人は笑いながら自衛隊の基地がある方へと向かった。

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