57話 変わった人たち!!
森田はベッドの上で目を覚ました。
「おはようございます。ご機嫌は如何ですか?」
アルスが優しく微笑み、森田は体を起こす。
「こ、ここは……」
「ここはパルコの街……克己様の家ですよ。森田さん」
「ぱ、パルコ……帰って来たの? 私達……」
「そうですね……私の魔法で家に帰ってきました。お体は大丈夫ですか? 痛い場所はありませんか? ルノールが魔法をかけたので痛みはないかとは思いますが……万が一のことがありますのでお確かめになったほうが追いかと思いますよ?」
アルスが言うと森田は自分の体を触り、痛い場所はないかと確認をする。
「と、とくには無いようです……。な、何があって私はここに居るのでしょうか……」
「お記憶が無いのですか? まさか……」
アルスが聞くと、森田は一瞬考える。そして自分がしでかした行動を思い出して顔面蒼白し、震えながらアルスの顔を見る。アルスはニコニコしており、森田はフラレたのだと思った。
「まさか森田さんがあんな風に暴走をするとは、思っても見ませんでしたよ」
アルスは笑顔でそう言うが、まさか森田自身も、そのようなことをするとは思っても見なかった。
「わ、私は……」
森田が何かを言いかけた瞬間、扉が開き、森田は体を跳ねらせた。
「おや? 目が覚めたのかい? アルスちゃん」
「はい、里理さん。たった今お目覚めになりましたよ」
「そうかい、そりゃ良かったね。調子はどうだい? 森田ちゃん」
里理は機嫌が良いのか、笑顔で話しかける。
「か、体の方は問題有りません……が……」
「そうかい、そうだろう! まさか暴走して結婚を申し込むなんてバカな真似をするとは夢にも思わないだろ? あれは夢だよ、森田ちゃん」
「ゆ、夢……夢ですか! そ、そうですよね! わ、私が幸せになれるなんて、烏滸がましいですよね……。あは、あははは……。そ、そっか……、夢か……」
森田は混乱しているのか目が泳ぎながら周りを見渡すと、金の球が置いてあり、現実へと引き戻される。
「ゆ、夢……ですよね? 里理さん、アルスさん……」
アルスは何て答えてよいのか言葉を探していたが、里理はバカにしながら言う。
「夢なはずないだろ? 君は脅迫しながら結婚を申し込んだんだ! カッチャンに銃を押し付けノエルちゃんはビームガンを……そして蹴りを入れたんだよ」
森田は耳を塞ぎ現実から逃げる。里理は椅子に座り、ニコニコしながら森田に追い討ちをかける。
「カッチャンは私にプロポーズしてくれたよ。この足でも愛してくれるって……」
森田は耳を塞ぎ布団に顔を埋める。
「挙式には森田ちゃんも来てね! だけど、銃は持ってきちゃダメだよ?」
「き、聞きたくない……」
「現実とは残酷だね~。森田ちゃん。感謝しているよ……。君のお陰でカッチャンは考えを変えてくれたんだって言っていたよ。ありがとう」
「や、止めて……、き、聞きたくない! お願いだから止めてください……」
森田は顔を上げて涙を流しながらお願いする。
「私は一戸建てに住みたいな~。素朴で普通の一軒家に……」
「や、やめろ……それ以上は言うな……」
小さく、人を呪うかのように森田は言う。
「子供は二人くらいが良いかなぁ~。白い犬を飼って二人で散歩をするの! 素敵でしょ?」
「止めてって言っているでしょ! 何で止めてくれないの!」
森田はヒステリックに叫んだ。
「止める? 何を言っているの? 貴女はカッチャンを脅迫したんだよ? 銃を押し付け、結婚を迫ったんだよ? ねぇ? それはどう言うことなのかなぁ……イテッ!」
「苛めるなよ、俺の花嫁を……」
「か、カッチャン! 私だって花嫁だよ! そう言ったじゃん!」
「君はこっちの世界での話でしょ? 森田ちゃんは両方の世界で俺のお嫁さんになるんだよ。許しが出たらの話だけどね……」
花嫁? お嫁さん? 森田は聞き間違えたのかと思い、周りを見渡す。アルスと目が合いアルスは優しく微笑むと、森田は目を真っ赤にして口をパクパクとさせていた。克己は里理の隣に座り、森田の顔を見る。
「か、克己さん……」
森田は何て言えば良いのか分からず、それ以上の言葉がでなかった。
「調子はどうだい? 大丈夫かな? で、君の答えを聞かせて頂けるかな? 俺は君と結婚しても良い。これが答えだ」
「う、うそ……イテッ」
森田は自分の頬を抓り嘘か誠かを確かめる。
「だけど条件がある。とても大事な条件だ……」
「じょ、条件……?」
「正直、自分でも最低な事だと理解している。だけど選ぶのも難しい。これが呑み込めないなら……この話は無しだ……」
「な、無し? ど、どういう事ですか……?」
「条件とは、俺の浮気を許す事! と言っても、浮気になるのかは良く分からないけど……。どうもここ最近、女性に好かれ過ぎているんだよね。自分では全く理解をしていないんだけどさ。これが日本なら正直一人しか愛せないから森田ちゃん一択になるんだろうけど、ここは異世界……つまり、多重婚が認められているんだよね……だから複数人と結婚をしても問題ないんだって。で、里理ちゃんには日本……というより、地球では結婚できないと言っていったけど、ここなら多重婚しても問題ないし、里理ちゃんは俺の子供がどうしても欲しいらしい……」
里理は嬉しそうに頷く。
「それに、アルス達……奴隷の皆さんも俺の事を愛してくれているから責任を取らないといけないかなって思っている」
アルスは真剣な目で話を聞いている。
「で、結論的に、ここの多重婚というシステムを使おうかなって思っている訳。日本では独身扱いになるけどね。これが許されなければ俺はこの世界のみでしか結婚をすることはないと思う」
「に、日本……い、異世界……」
森田は頭が混乱して、どうやって答えればいいか分からなかった。
「答えは君が持っている。俺に出来るのはここまで……君が言う二階建ての家を購入することもできる。我が儘を聞くこともできる……君が我が儘を望めば……の話になるけどね……」
「えっと……あ、あの……、そ、その……」
「直ぐには答えを出せとは言わないし、君が嫌なら諦める。それにもう関与もしない……今までありがとう。楽しかったよ……」
それは別れの言葉に聞こえ、克己は微笑み立ち上がり部屋を出ていく。それに続いてアルスと里理も出て行こうとするが、里理は立ち止まり振り向かないで一言いう。
「何でカッチャンは君を選んだんだろうね……。私は君のような五体満足では無いけど……彼の傍で支える事は出来る……彼が返ってくるまでここで待っていることだって……待ち続けることだってできる……。私は日本でもカッチャンのお嫁さんになりたかったよ……」
里理はそう言って部屋を出て行った。
「お、お嫁さん……異世界……日本……二階建ての家……。だ、だけど借金がある……私には……私の家には多額の借金があるんだよ……克己さん……」
森田は嬉しいのか悲しいのか分からず涙が出てくる。
廊下を歩く克己は里理に呼び止められる。
「カッチャン、話がある……」
「どうした? 里理ちゃん。早く帰ってきたことで国枝君と密会できなくって残念とかそういう話か?」
「紀一とは終わった話だよ……」
「なら、俺とも終わった話だろ? どうして君は俺に拘るんだ……」
「初めて会った時から君の事が……好きだったからだよ」
「親同士が決めたい許嫁でしょ? 俺の親が死んで、君の親が破棄して俺を見捨てた……君もそれに同意したんでしょ? 本来なら都合が良過ぎる……君の親に連絡したら喜んでいたぞ」
「お、親に話をしたのか!!」
「大事な話だろ……つくづく虫唾が走る話だよ……君は北川の姓を捨てるっていうんなら……親と……いや、これは俺が最低だな……話を蒸し返している……最低な男だな……」
「ご、ごめん……それは私が全ての原因だよね……」
「仕方ない話だろ……過ぎた話だし。蒸し返している俺が悪いんだ。君は悪くない。ほら、歩きにくいだろ……」
「あ、う、うわ!」
里理は克己にお姫様抱っこされ恥ずかしそうに腕を首に回す。
「ご、ごめん……五体満足じゃなくて……」
「仕方ないだろ……普通に考えれば五体満足で生まれてくる奴がラッキーなんだ。それを分かっていない奴らが多すぎる。君は片足が不自由ってだけでそれ以外は普通だからある意味ラッキーだな」
「私は君にこうしてもらえることが奇跡に近いよ……愛しているよ、カッチャン……」
里理は克己の唇にキスをする。克己は直ぐに唇を放し、里理の顔を見て言う。
「里理ちゃん、俺はね……」
「分かってる!! 分かってるよ!! 私は恋愛対象にはならないんでしょ……」
「違うよ、話をちゃんと聞いて……里理ちゃん」
克己は自分の部屋へと連れていき、ベッドの上に里理を降ろした。
「里理ちゃん。俺もね、里理ちゃんが好きだよ。君は昔から変わっていない……国枝君の彼女として紹介されたときは驚いた。君だってそうだと思う」
「う、うん……まさか紀一の友人が君だって思わなかった……紀一とも親を通じて知り合ったけど……」
「みたいだね……」
「私はどうでも良かったの……紀一には悪かったと思う……今は後悔の念しかない……君と……カッチャンと別れてから私は最低な人生を歩んできたと思う……」
克己は椅子に腰かけて話を聞く。
「君と別れて一年後、私は学校の男子に乱暴された……。足が悪いから逃げる事も出来ずに何度も体を凌辱された。それは私が親に言うまでずっと……。何度この体が他の男に汚されたか分からない……気持ち悪い話だ。そして転校して新しい学校に行き新生活を送る事になったけど、私は陰湿な苛めにあっていた。前の学校では体は汚され、今度の学校では心を傷つけられ……もうどうでも良かった……何度も自殺を考えた。だけど、転機が訪れた……。とあるパーティーに親の命令で参加したら紀一がいた。紀一とは同い年だったから話は合うよね……その中で君の……カッチャンの名前が出て、まさかって思った。この人の傍にいたらカッチャンに会えるんじゃないかって思った。紹介をしてほしかったけど、するはずは無いよね……」
克己は無言で話を聞いていた。
「私は君だと思い、どうしても会いたかった。紀一が言うには貧乏暇なしの生活を送っているとの話だけど、成績を落とさない、むしろ上げている凄い奴がいるって自慢するように言っていた。私は確信した、カッチャンだと……どうしても会いたい、一目だけでも会いたい……この思いは徐々に膨れ上がっていくのを思い出すよ……。君に会ったら何を話そうか……どうしようかと沢山考えた。だけど、私が君に会える一つの方法は紀一のフィアンセになるしかなかった。だけど! 思いは止められなかった……紀一に抱かれるのだって我慢するしかなかった。嫌いじゃないよ? 紀一の事は嫌いじゃない……でも違うってすぐに気が付く。誤魔化すように体を重ね合わせたけどね……。それは君も知っているだろ?」
克己は何も答えず、ただ黙って、困った顔をしながら里理の顔を見ていた。
「やっと君に会う事が出来た……その時の事は覚えているかい? ……その顔だと覚えているようだね? 嬉しいよ。君は紀一が無理やりバイトを休ませて私を紹介したよね。それも嬉しそうにさ……残酷だと思ったよ。私は……最低だって。高校生になっても君はあまり変わっていなかった。背が伸びたくらいかな? 変わったというのは……だけど私に対する態度は他人行儀だった。そりゃそうだよね……君を捨てた人間だもん。どの面下げて顔を合わせているんだって思ったでしょ? ……いいの……分かっているからそんな顔しないで……君はそんな人じゃなかったね……。君は紀一に対して『おめでとう。よかったね、幸せに』って何度も言って私の方をまったく見ていなかったね……。それは酷く傷ついた。私はここに居る、助けてくれって何度も心の中で叫んだ。だけど届くはずは無かった。当たり前の話だ……都合が良過ぎるし、君の生活は大変だったからね。それ以来、紀一には無理言って君と遊ぶ時は一緒に付いて行かせてもらった。その代わり私は紀一に抱かれることになっても我慢する事になるのだけれど……。君は知っていたかい? 君と遊んだあとは必ずホテルで抱かれるんだよ? 私はずっと君に抱かれている幻想を抱きながら、紀一と肌を重ねていたよ……最低な女だろ? あとは君が言っている通りさ……」
克己は何も言わずただ黙っているだけだった。
「何とか言ったらどうなんだい? 最低だろ? 嫌いになっただろ? ……もう……いいよ……、分かってる……自分が生きている価値が無いって……う、うぅ……カッチャン……私はもう……嫌なんだ……」
里理は顔をクシャクシャにして泣き始めた。克己は里理の隣に移動し、腰を掛けて肩を抱きしめた。
「なんて言えば分からないけど……里理ちゃんを忘れた事は無いよ。君との時間は楽しかった。本当に楽しかった。あんな形で終わってしまって、そして国枝君の彼女として現れたとき、運命とは何て悪戯が好きなんだろうと思ったよ。だけど、君は国枝君の彼女で、国枝君は俺と君との関係を知らなかった。あの時言えば何かが変わったのかもしれないけど……国枝君の嬉しそうな顔を見ると、俺は何も言えなかった。それは里理ちゃんだってそうだろ?」
「う、うん……うん……そうだ……」
里理は泣きながら克己の言葉に返答をする。
「君が最低なら俺だって最低だよ。君の事を知らないふりして国枝君を騙していたんだから……同罪だろう」
「ち、違うよ……君は悪くないよ……わ、私が……私の我が儘が全てを生んだ原因だったんだ……私なんかが居なければ……君はもっと幸せになれたんだよ……きっと……」
「里理ちゃん、それは考え過ぎだ。俺は君に愛してもらって嬉しい。あの時と変わらずに俺の事を好きでいてくれるのは本当に幸せな事だ。ありがとう。だけどね、俺は君との結婚はできないよ……国枝君に悪い。せめて、異世界では君の願いを叶えてあげたい……だからこっちでは君と一つになる。最低な話だって分かっている」
「カッチャン、私は最低だって思ってない……。それだけでも私は嬉しい。正式では無いけれど、君と一つになれるんだもん……嬉しいよ……」
里理は克己に抱き着き押し倒す。二人はそのまま肌を重ね合わせるのであった。
森田は体を起こし、部屋から出る。
「わ、私はどうすれば……」
そう呟き、フラつきながらリビングに行くと、ノエル達が武器の手入れをしていた。
「あ、森田さん……お体の方は大丈夫ですか?」
ノエルが優しく微笑みかける。
「ノエルさん……ごめんなさい。興奮していたからと言って、暴力を……」
「仕方ないですよ、私が言い過ぎたから森田さんは興奮してしまたんですから」
ノエルは微笑みながら森田に言うが、森田は俯いたままだった。
「で、どうなされるのですか? 克己様と一緒になられるのですか? 私達とすれば正直な話、一緒になられたら困るんですけどね」
「そ、そうですよね……困りますよね……」
「でも、好きなんですよね? 克己様が……」
「そ、それは……」
「好きでは無いのですか? なら……お断りをすれば良いだけの話ですよ。私達の事が気になるのですか?」
「あ、あの……そ、その……」
「ノエル! また貴女って人は!」
アルスがリビングにやってきてノエルに睨む。
「森田さん、ノエルの言う事を気にしてはいけませんよ、自分が思った通りに行動すればいいんです……克己様の事を思うなら一緒になればいいだけです。森田さんだって結婚したいと仰っていたではありませんか」
「う、うん……だけど……」
「迷う必要はありませんよ、思った通りに……一緒になれば良いのです……森田さんの思うように……」
「アルス!! あなたは自分の事はどうでも良いって言うの!」
「そうだよ、私は一緒に居られればそれでいいの……それ以外に望むものはない! 克己様が望むのならそれが上手くいくようにするのが私の役目……貴女だってその為に買われたんでしょ!」
「知ったような口を言うな! チビ助!」
「チビで何が悪いっていうのよ! デカ尻女!!」
「な、何ですって!!」
アルスとノエルは取っ組み合いの喧嘩を始めてしまった。森田はオロオロして止めに入るが、二人は殴り合いを止めなかった。
「ふ、二人と……や、止めて下さい! だ、誰か来てください!!」
その声に駆け付けたライが二人を引き剥がす。
「何をやっているんですか!! 二人は!! 克己様に知れたらどうなるか分かっているんですか!」
「こ、このチビ助が生意気だから!!」
「何言ってんだ! デカ尻女! お前が惑わしてるんだろ! 人のせいにするな!」
「な、何だと!! チビ助!!」
「死ね! デカ尻! イテッ!!」
「イタッ!!」
ライがノエルとアルスに拳骨を落とし、二人は頭を押さえる。
「馬鹿な真似は止めなさい! 二人とも、頭を冷やしてきなさい! 森田さんが見ている前で……まったく……」
ライに怒られた二人はリビングから出ていき、ライと森田の二人きりになった。
「森田さん、こうしてちゃんと話をするのは初めてですね。宜しくお願いします」
ライは手を差し出して握手を求める。森田は戸惑いながらもその手を握り、ライは優しく微笑んだ。
「二人が何を原因で喧嘩をしていたかは知りませんが……見苦しい物をお見せしてしまって大変申し訳ありません」
「わ、私が原因だから……仕方がないんです……」
「どういうことですか? もし宜しければお話を聞かせて頂いても……」
森田はライに自分の悩みを打ち明けると、ライは少し難しい顔して頷く。
「そうですか……。森田さんはどうしてお悩みになっているのですか? 克己様は喜んでお話を受けると仰っているのでしょう? それなのに……」
「わ、私の家には借金があるんです……かなり高額な金額で、それを返済するまでは私は……」
「小さい話ですね」
「ち、小さい……話ですか?」
「小さいですよ。だって克己様はそれを承知で、話を了承したんですよね?」
「た、多分……」
「それなら悩むことはないじゃないですか……克己様が受け入れてくれた。森田さんはそれに応えるか応えないか……借金は自分の都合の良い言い訳に過ぎません。確かに森田さんの中では大半を占めているかもしれませんが、それが無ければ森田さんはどうしたんですか? 受け入れたのですか? アルスはそれが言いたいのだと思いますよ。ノエルは別としても……」
「ら、ライさん……」
「ほら、直ぐに答えを出さなくて良いと言われたのなら、まずは一緒に出掛けてみたら如何ですか? ユウエンチ……とか言う遊ぶ場所が日本にはあるらしいではないですか。一緒に出掛けてみて、この人と一緒に居たいと思うのなら……一緒になれば宜しいのだと私は思いますけどね。……すいません、奴隷の分際で生意気なことを言ってしまって……」
「い、いえ……話を聞いてもらって感謝します……一度、二人でどこか出かけてみたいと思います」
森田は立ち上がり、頭を下げてリビングから出て行った。ライは一息つくと、ハミルが椅子に座り、微笑む。
「お疲れさま、ライさん。如何でした?」
「若いって羨ましいって思った……ハミルも身分を気にしなくても良いと思うわよ? 克己様はそういう人じゃないから」
「ライさんだってそうじゃないですか……」
「私みたいなおばさんより、彼方達みたいな若い人が克己様にはお似合いよ……。私には荷が重すぎる。ライラ、コーラー貰える?」
『は~い』
遠くからライラが返事をする声が聞こえた。
「私は……アルスと一緒で、お傍に居させて貰えるだけで幸せですよ」
「変わった人たちだね……」
ライはそう言って天井を見つめた。