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扉の向こうは異世界!! - 68話 始めての日本!!
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68話 始めての日本!!

 初めてのパラスは目を輝かせる。車内の窓から見る景色……それは見た事もない世界が広がっているからだ。目の前を通り過ぎる車、バイク、そして自転車等がある。


 皆、色々な色をしている服を着ている。パラスは楽園に来たのかと思っていた。


 隣にいるライに話しかけてみたが、言葉が通じずライは困った顔して首を傾げる。ライが話しかけてみるが、パラスは首を傾げる。分かるのは里理が紹介してくれたライという名前だけ。


 ライもパラスという名前しか分からず名前を呼べば振り向くが、言葉が通じず困っていた。


「里理さん、言葉が通じないのは大変ですね……」


「そりゃそうだろ……私だってライさんが住んでいる異世界の文字が読めずに大変な思いをしたのだから……ライさんも同じかとは思うけど」


 里理は笑いながらライと話ていた。


「通訳ならしてあげる事が可能だから言ってくれ。こう見えても語学は得意なんだよ」


「そうですか、なら……」


 ライは里理に通訳をお願いして話をしてもらう事にし、コミュニケーションを取っていた。


『貴女は克己様という男性に買われたのをおぼえているかい』


『克己? そいつは誰だ?』


 パラスは自覚が無く、里理は苦笑いをして説明をしてあげた。


『そ、そうだったのか……私は奴隷として……』


『貴女は克己様に尽くさないといけないんだよ? 克己様はお優しい方だ、大丈夫。縛り付ける事はしない。こうやって買い物に出かける事さえ許していただけるのだから』


 ライは優しい顔をして微笑みかけると、パラスは困った顔をしていた。


『どうした? 何かあったか?』


『に、尿意が……』


「ニョウイ?」


 里理は一瞬、何のことか理解ができずに考え込む。そして慌てて車をコンビニの駐車場に止めた。


「ライさん! 申し訳ないがトイレに連れて行ってくれないか! この子、トイレに行きたいそうだ!」


 里理は慌ててライに説明をして、ライはトイレに連れ行き身振り手振りで説明をしてパラスは何とかトイレに間に合った。


「里理様、大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ、ケーラはこっちじゃ運転できないからね……私に任せてよ。袋は持ってきているでしょ?」


「勿論ですが……」


「色んな場所へ連れて行くし、洋服も買ってあげないといけないからね。下着も……」


「あ、ライさんが戻ってきましたよ」


 ライはパラスを連れて戻ってきた。その手にはコンビニの袋を片手に……。


「飴玉でも舐めます? 私、酔い易いんですよね……」


 ライはそう言ってコンビニで買った飴玉を舐めると、里理は手を出してライから新しい飴玉を貰い口に入れる。


 パラスは何をしているのか分からないので三人を見ていると、ライが飴玉をパラスに渡す。里理が包み紙を取って口に入れるように言うと、恐る恐る口に放り込み驚いた顔をする。


『こ、これは!! あ、甘い!!』


『これは飴玉と言って……簡単に言うと、お菓子だね』


『こ、こんなお菓子があるなんて……』


 パラスは驚くが、里理たちにとっては日常の事。ライやケーラは里理と買いに行く事があるので、既に日常と化していた。


「これでジュースなんて飲んだら……驚きますかね?」


「ライさん、一応あっちにも味の付いた飲み物があったようだから、驚きはしないと思うよ。だけど自動販売機には驚くだろうね」


 里理とライは笑いながら話をしていたが、パラスは全く理解できていない。


 暫く里理が車を走らせ、青山に到着する。近くのパーキングに車を止めて里理達は青山にある服屋へと入って行った。


『服が……こんなに一杯……』


『服屋だからね。さて、パラス君に似合う服を探さないといけないね……』


 里理は店員を呼び、パラスの体を測らせて服を選んでいく。


「里理様、彼女は食事をちゃんと取っているのですかね? かなり痩せているように見えますよ?」


 車椅子を押すケーラが里理に言うと、里理はパラスに質問をする。


『パラス君、食事はちゃんとしていたか?』


 パラスは首を横に振る。


「してないそうだよ……ケーラ」


「な、何て酷い……」


「この後は食事にでも行くか……近くに美味しいお店があるんだよ、カッチャンの作る料理には劣るがね……」


「里理様、克己様は料理が得意ですから仕方ありません。それに、克己様の料理には愛情が含まれておりますから……」


「ケーラ、良いことを言うね。随分口が達者になったじゃないか?」


「里理様のおかげですよ」


 ケーラは笑いながら言うと、里理は冷たい声で言う。


「次はちゃんとレベルを上げて来いよ? お前だけだから……レベルが1なの……私ですら3はあるんだから」


 ケーラは小さく返事をした。


『サトリ! こんなに買って良いのか?』


『パラス君、一応言っておくが、君の立場は私よりも下……せめて「さん」を付けてくれないか? それに私の方が歳上なはずだ』


『ち、小さい事を言うんだな……』


『君は非常に運が良い……ここにアルスが居たら、君は殴られているだろう……彼女は礼儀等にかなり煩い。そして、カッチャンに害をなす物を必ず殺そうとする。アルスやノエル、ハミルに逆らわない方が良いな』


『だ、誰だ……そいつは……』


『君を気絶させた人だよ』


『あ、あの女か!!』


『アルスはカッチャンの傍にずっといて良いと許可を貰っている。それは信頼されているからと、カッチャンの好みに寄るものだ……これはどうでも良いな。彼女は非常に頭が良く、そして強い。尚且つ冷酷だ。絶対に逆らってはいけない……。カッチャンの言う事しか聞かないし……』


『な、何者なんだ……その女は……』


『カッチャンの切り札……かな?』


 パラスは体を震わしアルスに恐れを抱いた。その後は食事を行い、観光をして家へと戻る。


 家に帰りつくと、克己が森田とアルスの三人でリビングの椅子に座り、お茶を飲んでいた。


「お帰り、里理ちゃん」


「お邪魔しています……」


「里理ちゃん、その子……随分と雰囲気が変わったね」


「あとは髪を纏めれば、完成かな? 森田ちゃんの奴隷ちゃんは……」


「あ、アハハ……。わ、私の奴隷って……」


「そう聞いているけど? カッチャン……違うの?」


「森田さんの奴隷ですよ。間違いありません」


 アルスが答えると、パラスは里理の後ろに隠れた。


「おやおや? 随分と里理ちゃんに懐いたようだね……」


 克己はニコニコしながら言う。


「カッチャン、自己紹介をしてあげないと……君が誰だか分かっていないよ?」


「おろ? そうなのか? 自己紹介をしてないかったか……俺は克己、こっちが君の教育係のアルスに、ご主人様の森田理恵……」


 克己は現地の言葉で紹介をすると、パラスはアルスに脅える。


「? 私が何かしましたか? あ、気絶させましたね……そう言えば……」


 里理は空いている椅子に腰を掛けると、ライは少し離れた場所に立ち、ケーラもその横に立つ。パラスは当たり前のように里理が座っている隣の席に座ろうとして、アルスが止める。


「パラス、お前は奴隷なのだからケーラやライさんのように指示があるまで立ってないとダメでしょ! 誰が座って良いと言いましたか?」


 翻訳機を使用してアルスが言うと、パラスは里理の顔を見る。アルスは再びパラスに言う。


「お前の主人はこっちにおられる森田さんだ! 里理さんではない! 森田さんの命令があるまで立っていろ!」


 アルスの眼は真剣で、本当に殴られるのではないかと思うほどの眼だった。


「あ、アルスさん……別に椅子くらい……」


「ダメです! 森田さん。こういう時に躾をしないと生意気な奴になってしまいます。ノエルのように!」


 そのタイミングでノエルが通りかかり、歩みを止めた。


「何だと? ……チビ助!!」


「デカ尻のくせに生意気なんだよ!!」


 二人は指を絡ませ力比べを始めると、克己が止めるように言う。しかし、二人は止めないので克己は溜め息を吐き、もう一度優しい声(・・・・)で言うと、二人は慌てて手を放した。


 パレスはこの時に理解をする。一番恐ろしいのは克己なのだと……。


「パラス、これから貴女は日本語を覚えてもらう。これは必須条件だ。覚えられなかったら、鉄拳制裁を行うから覚悟するように……イタッ」


「アルス、最近暴力ばかりするのは良くない。お前だって叩かれたらいやだろうに……だから少しは優しくしてやりなさい! わかったか?」


「はい……」


 アルスは頭をさすりながら上目使いで克己を見る。森田はその顔が克己の好きな顔なのだと知っているため、卑怯だと思っていた。


「まったく……」


 克己はなんだかんだ言って、アルスの頭を撫でてあげると、アルスはニンマリと嬉しそうな顔をする。ノエルはそれを見て、チビ助のくせにと思っていた。


「カッチャンは何をしていたんだい?」


「森田ちゃんと一緒に不動産周り。静岡に引っ越すから」


「え?」


 里理は耳を疑い、聞き返す。


「静岡に引っ越す。というか、新居を買う」


「し、静岡? あんな田舎に?」


「田舎じゃありません!! 田舎は遠州の方です!!」


「森田ちゃん、磐田市は俺の聖地だから馬鹿にしてはいけないよ」


「あんな田舎が聖地? 克己さん、目を覚まして!! あそこは田舎よ!! あるのはボーリングだけ!!」


「いやいや、森田ちゃん……聞き捨てならないな……」


「克己さん……まさかあなたは……」


「森田ちゃんこそ……」


 二人は暫く睨み合う。里理はくだらないと思いながらライラにコーヒーをお願いし、ケーラには好きにするように命令すると、ケーラは椅子に座って、ライラにコーヒーをお願いしていた。


「ま、まぁ……いいや……そこは追い追い話していこう……ライさんも自由にしていいですよ。今日はありがとうございました」


「いえ、有意義なお時間でした。世界は広いと言う事を改めて認識致しました」


 ライは微笑んで椅子に座り、ライラに紅茶を頼む。


「克己さんが遠州派だったとは……洗脳しないと……」


 森田はブツブツ言いながら湯呑みを握っていた。


「で、家は決まったのかい?」


「一応ね……購入してきて、明日からフルリホームを始める予定。外装も含めてね」


「へ~、そう……なんだ……」


「里理ちゃんの部屋もあるから安心して」


 里理はコーヒーを克己の顔に吹き出し咽た。


「……おい……アルス……タオル……」


 アルスは急いで洗面場へと走り、ノエルはほくそ笑みながら袋から新しいタオルを取り出し克己に渡す。


「ん、ありがとう、ノエル」


 克己は顔を拭いてノエルにタオルを渡すと、アルスが戻ってきて声を上げる。


「な、何してやがる! ノエルのくせに!」


「あんたが鈍間だから悪いんじゃない! 人の所為にしないでよ! 鈍間!!」


「ムキー!!」


 アルスはノエルに殴りかかる。それを見ていたパラスは本当に暴力的な女だと思いながらアルスを見ていた。


「里理ちゃん、言う事はあるよね?」


「ご、ごめん……。だけど、何で私の部屋があるのよ! おかしいでしょ!」


「森田ちゃんに聞いてよ」


 克己が言うと、里理は森田の方を見て質問をする。


「私は!!」


「だって……里理さんだって好きなんですよね?」


「だからって……」


「克己さんの子供が欲しいって言っていました。私は最後に私の元に戻ってきてくれるなら……構いません。家にずっといられる仕事ではありませんし……」


「それはカッチャンが何とかしてくれるでしょ! お人好しにも……もう! 知らないよ? カッチャンが戻って来なくても……」


「必ず私のもとに返ってきてくれるって約束しました。それを信じるだけです。覚悟は決めています」


「アルスやノエル達と関係を持つことも許すの? バカでしょ? 貴女……」


「里理さんだって馬鹿です……」


 克己は二人の会話に参加せず、お茶を飲みながらノエルとアルスを呼び、傍に立たせる。


「ノエル、物に魔力を宿すことは可能なのか?」


「どういうことですか?」


「言って理解できるかは分からないが……こういった筒状の物に水を流したら、エネルギーに変換できることは可能なのかって言う事。どうなんだ?」


「さ、さぁ……やったことはありませんが……そもそもそんな事が出来るんですか? 誰に聞いたのですか?」


「魔王に聞いた。ノエルもできないのか?」


「できる出来ないと言うか、やったことがありません。そもそも、知っていたら魔法が使える人は全員やっている筈ですよ?」


「騙されたかな……?」


「魔王に限って克己様を騙す必要がありますかね? チビ助は知らないのか?」


「知らない……初めて聞いた。克己様、一度魔王の元へ行ってみませんか? やり方を教えてもらいませんか?」


「やはりそれしかないか……やり方が分かればお前らでも……」


「教える事は可能ですよ」


 ノエルが答えるとアルスが最後まで喋らせろと言って、足を蹴っ飛ばす。始まる足元の攻防。そして落ちる雷。


 二人は頭を押さえながら蹲り、克己はどうするのかを考える。


「里理ちゃん、車の設計図を用意できる?」


「ん? 設計図? できるけど……どうするの? 車を調べたいなら、トロタ自動車に見学しに行けば良くない?」


「まずは設計図が必要なんだよ、各社の設計図を用意してくれないか?」


「分かった……うん、わかったよ……カッチャン」


 里理は立ち上がり部屋に行こうとすると、克己が腕を掴み椅子に座らせる。


「な、なに? カッチャン……」


「焦る必要はないよ、素材に魔力を宿す方法も分からない。焦る必要はないでしょ? もう少し一緒にお茶しながら話をしようよ」


「カッチャン……森田ちゃんが傍に居るといると優しいんだね……」


「そう思いたければ思うと良いよ、里理ちゃんを暫くほったらかしにしていたから……ただそれだけだよ。君だって言いたいことだってあるでしょ? あれだけ拘っていたのだから」


「カッチャンの冒険話を聞かせてくれれば……私はそれで幸せだよ……」


「ん~、分かった。ノエルもアルスも座ると良いよ、お前らだって一緒に出掛けていたんだから」


 そう言って克己は森田と里理に半年近くいなかった時の話をして二人を楽しませた。

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