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うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。【WEB版】 - やっぱりとことん合わないんですよ。
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うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。【WEB版】  作者: 古森きり@書き下ろし『もふもふ第五王子』
アミューリア学園一年生編

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やっぱりとことん合わないんですよ。



昨日、『便利屋』で分かった事をまとめておく。

エディンの言う通り、主犯…首謀者は王妃と思われる。

その可能性が極めて高い。

事が行われたのは14年前。

同じ日に生まれた女の子の赤ん坊を、当時王妃の侍女だったミアーシュという女が、自身の実家で働いていて友人でもあったエレザの孫娘と取り替えた。

エレザは我が子を取り戻さんとした息子が二度と戻らず、義理の娘も産後の肥立ちが悪くそのまま亡くなった事で取り替えられた赤ん坊を支えに生きる事となる。

それが、マーシャ。

取り替えの証人、エレザとミアーシュ。

そして、マリアンヌ姫の容姿に酷似した一組の夫婦の姿絵。

今の所、俺の手元にある『材料』はこれだけである。


そして…………。





「お前の義妹が…⁉︎」

「まだ断定は出来ないが、その可能性は高いと思う」


早朝の弓技場。

圧倒的閑古鳥が鳴く感漂う、秘密の会談にはもってこいの場所。

昨日得た話をまとめつつ、一応クレイたち亜人のことは伏せて説明した。

可能性は高い、というか、あいつが本物のマリアンヌ姫です。

…とは、まだ言わない。

なにしろ確証がないのだ。

まさか「ゲームの設定だとそうでした」なんて言えるわけないだろう?

…そういえばゲーム内でもどうやってマーシャが本物のマリアンヌ姫だと発覚するんだろう?

救済ノートにメモしてあったかなぁ?


「……『便利屋』とやらでも確たる証拠は探し出せなかったか…」

「正直マーシャにその事を話すのは気が引ける。いきなりそうかもしれないと言っても混乱させるだけだ。それで『記憶継承』の力が引き出せなくなるとも限らない…」

「確かにな…。事情を話さずに、色々やらせてみるか…」


なんかこいつが「やらせてみて」とか言うと違う事が浮かぶなぁ。

やだなぁ、殴っていいか?


「だが、それなら同時にもう一つ確認もしないとならん」

「マリアンヌ姫の『記憶継承』だな」

「文字の読み書きはとうに出来ているから、それは基準にはならない。その上勉強嫌いときている。本人が引き出す気がなければ、『記憶』は上手く引き出せない。特に知識においては」

「身体的技術は身体が勝手に動くが、マリアンヌ姫に剣技や弓技などさせられないし…」

「かと言ってアミューリアに入学するまで待つのは無理だ」

「だよなぁ、どうしたもんか…」


うーーーん。

2人で腕を組んで考え込むも、良い案は出てこない。

マーシャには俺から頼んで、剣技や弓技もやらせてみる。

セレナード家の者なのだから、主人のために多少の戦闘技術は身につけておけとかなんとか言えば、まあ、あのアホは鵜呑みにするだろう。

だから、マーシャは楽勝なのだ。

しかしマリアンヌ姫の能力…『記憶継承』の有無の確認はどうしたらいいもんか。

確認しないと『王族』とも『平民』とも断定出来ないので、実は本当に……まあ、ほぼないとは思うが……王族だった場合こっちが罪に問われる。


「あ、それと、普通の王族の記憶の出現ってどんなものなんだ?」


ぶっちゃけ貴族…特にエディンやライナス様の『記憶』による剣技の実力は、訓練で身につけた俺の洋剣の実力を軽々上回るものだ。

入学時の時よりも遥かに“思い出した”2人の剣技はマジで達人のレベル。

その点でいうと、刀の扱いも俺はそこそこ“思い出してきた”ようなので2人に劣ることはないが…洋剣の方はもう勝てないと思う。

貴族の2人でこうなのだ。

王族ってどんだけ、と思うのは当たり前だろう?


「…俺も話に聞いただけだが、知識の蓄積量と身体能力の高さが比ではないという。レオの場合はプラスアルファ…」

「うわぁ…」


考えただけで「こいつより?」と、なる。

しかし、エディンが言うにレオは一つ前の前世は女性だったのではないか。

それも、身分の高くない、あるいは田舎の貧乏貴族。

そうでないと「お茶入れるの単純に楽しいんだよね〜」だの「お掃除は自分でするのが一番落ち着くよね」だの「今度僕もクッキー焼いてみようかな〜」だの「人に下着を洗われるのってなんか恥ずかしくない?」にはならない筈だと。

…あいつエディンの前だとそんなこと言うの…?

素朴感丸出しの田舎娘風属性まであるとかあの王子なんなの、マジただの萌キャラ天使なの?

なによりそう言われると確かにマリアンヌ姫への「どうどう」「やれやれ」な対応や、ほとんどの事を「まあ、仕方ないよね」で済ますところなどは我儘な貴族に仕える使用人の体質に似ている気がする。

下の者への配慮は彼らと同じ目線を知っているが故?


「…………ありえる」

「だろう? 『記憶継承』はそれほど人格に影響の出るものではないが、全くないわけではない。スティーブは出過ぎだが…。ローナも前世は医療関係者と言っていたな? あのクソ冷静なところはその影響を感じる」

「確かに…!」


『記憶継承』奥深いな。

人格に影響はほとんどないと言うが、記憶の継承である以上ないはずはないと言うことか。

え、でも待って、レオって前世も貴族の使用人…メイドや侍女だったのだとしたら、今世で王子なのは女神様からのボーナスステージのつもりだったのか?

確かに世間一般からすればあんなイケメン王子勝ち組と言っても過言ではなかろう。

ましてこの世界は『記憶継承』なんてRPGで職業レベルマックスになって転職したらステータス数値を引き継げる風なチートシステムがあるのだ。

それが如実に現れる王族…イケメン王子…ある種ご褒美だ。

そう、普通ならボーナスステージだろう。

が、しかし。


……全っ然ボーナスステージになってないよ…‼︎

むしろすっごい試練だよ!



「…とはいえ、俺も最近はレオと手合わせを断られるから…武に関してどれほどのものなのかはよく分からん。少なくとも陛下と同じ量の執務を行うだけの能力はもう現れている」

「そうだな。そう考えると、『記憶継承』の有無はマリアンヌ姫に是が非でも仕事をして貰えば…」

「…………」

「…………」


しないと思う…。

とは、言いたくない。

エディンもあえて口を閉ざした。

…まあ、ですよね。


「はぁ、せめてマリー姫をきちんと操作できる婚約者でも現れれば多少レオの負担も軽くなるのだが…」

「そういえばマリアンヌ姫にはまだ婚約者がいなかったな…」


出来ない理由はよく分かるんだけど。

あれ、ちょっと待てよ。


「お前の女たらし術で口説き落としてしまえばいいんじゃないか?」

「…き、貴様…人を散々ゲス扱いしておきながら…」

「だってほら、マリアンヌ姫の夫になるってことはイコール、レオの義弟になるって事だぞ?」


エディンはレオが相当好きだろう?

なにしろ俺がお嬢様へ忠犬として働く幸せを理解できると言うのだから。

提案しておいてなんだが、これは結構いい考えじゃないか?

お嬢様との婚約解消、そしてお嬢様の破滅エンド回避にも繋がる上、レオも負担軽減、マリアンヌ姫だって乙女ゲームの人気攻略キャラを夫に出来るし…。


「………………っ……」


…このようにエディンも本気でグラングランと揺らいでいる。


「…………レオが、義兄………………………い、いや…………だ、騙されるかァ! そこまでやれるわけがないだろうが!」

「え、な、なにが?」

「なんでもない!」


どこまで考えたんだこいつ。

え、それより義兄ってそんなに夢の詰まったものだっけ?


「それに、マーシャが『本物』の可能性があるのだろう⁉︎ 妻にするならマーシャの方が圧倒的に…」

「殺すぞ」


お嬢様は元よりマーシャもお前なんかに嫁にやるか。

…くっ、しまった…確かにこいつにとってはマーシャの方が圧倒的好み!

マーシャが『本物のマリアンヌ姫』の件はまだ伏せておくべきだったかもしれん!

……ん? 好み…マーシャ……レオ…金髪青眼…え?


「……あ?」

「?」

「…お前、金髪青眼が好みって…まさか……」


一つの考えに至って思わずエディンを指差してしまう。

スティーブン様が言っていたな?

エディンは「金髪青眼が好み」と。

そうだな、確かにレオもマーシャも金髪青眼だ。

異母兄妹にしてはよく似ているとも思う。

…だが、問題はそこではなく…。


「…………レオが好みのタイプ…とか、では…ない、よな…?」

「……………………」


口にして少しぞっとした。

ぞっとしたが、同時に理解もできてしまう。

なにしろ俺だってゲーム内のローナ・リースに一目惚れしたので。

一度奪われた心は、もう戻ってはこない…。

だからーーー。


「……初めて会った時…女かと思った。しばらく誤解していた…。可愛かったんだから仕方ないだろうが!」


逆ギレされながら告白されて両手で顔を覆ってしまった。

か、可哀想…!

そうだな、俺もそう勘違いすると思う!

今でこそ一目でただのほんわか系イケメンと分かるが、幼少期に会った10歳のレオは相当天使だった。

あれより幼い頃のレオは女の子と勘違いされても無理なかっただろう。

ましてレオから聞いたエディンとの出会い…あれ相手が女の子だと思ってたらもう運命的なものさえ感じるロマンチックなものではないか?

なんて罪な…!

ほ、本当に可哀想…‼︎

攻略サイトでスティーブン受以外にエディン×レオハールやエディン×マーシャが人気だったのはそれでかーぁ!

思い出したくなかったそこはー!


「でもマーシャはやらん。どうしても口説くというならばまずはこの義兄あにを倒してみろ」

「は? じょ、上等だ…! 俺がいつまでも貴様の暴言にビクビク怯えていると思ったら大間違いだぞ…」


すでに逃げ腰の癖に大口叩くようになりやがったなこのクズ野郎…。

まあ、レオ大好きなお前ならレオと血の繋がったマーシャを大事にするんだろうけど…。

前世で俺はみすずを探してすらやれなかった。

だからこそ、義理とはいえマーシャを変な女癖のついた貴様にタダでくれてやるわけにはいかねーんだよ。


「でも弓技は貴様の方がまだ上手い! 剣で勝負だ!」

「いいだろう」


という話の流れで剣技場に移動する。

…移動中に「あれ、俺たちそこそこ大事な話し合いしてなかったっけ?」とお互いに思い出したが後には引けない。

俺は刀に似た細身の鉄剣を掴み、エディンは標準の鉄剣を選ぶ。

剣技場は1年から4年生まで区画が設けられ、それそれにただの練習場と対決用のリングがある。

無論、俺たちはそのリングの上で対峙する…予定だった。




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