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氷の貴婦人 - 少しでも、僕の事が好き?
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氷の貴婦人  作者:
第二章 キースの寄宿学校生活

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少しでも、僕の事が好き?


 考えたことが無いという返しが来るとは思わなかったので、困った。


「僕の事が嫌いだったのでしょうか」


「いいえ」


「じゃあ、少しは好き?」


 言ってしまってから、キースは自分の言葉にぐさっとえぐられた。少しでも好きなら、こういう状況にはなっていないだろう。もう十一歳なので、それくらいはわかる。

 案の定、少しも考えずに言われた。


「いいえ」


「だったらなんで僕を産んだの?」


 流石にムカついて来て、キースは少し涙目になりながら母をなじってしまった。こんな風に話すつもりはなかったのに、とっさに出た言葉だ。

 しかも陳腐なセリフで、それも恥ずかしい。こんな恥ずかしい思いをさせる母に腹が立つ。


「そうねえ、病気だったからかしら。まともだったら、自分を殺してでも、あなたが産まれないようにしていたわね」


 その言葉にぎょっとしたキースは、思い切り驚いた表情をしたようだ。


「驚いた?もう帰ったほうがいいわ。そして、もう近づかないように。私はあなたの母じゃないって言ったでしょ。忘れてしまったのね」


 足の力が抜けて、キースは座り込んでしまった。


「一体なぜそこまで嫌がるんですか?」


「嫌じゃないわよ……」


 そう言ったまま、母はしばらく考え込んでいる。

 そしてぱっと顔をあげると、驚いたように言った。


「私、あなたのことを憎んでいたのよ。勿論あなたの父親のこともね」


 驚きすぎると気持ちが平坦になると言うのは本当だった。キースは立ち上がり、ズボンについた葉と土を払い、冷静に言った。


「じゃあ、僕だってあなたのことを憎みます」


「そう。それは仕方無いわ。でも、私は初めてあなたに対して何か感じられて嬉しいわ。じゃあね」



◇◇ ◇



「そういう会話をしたのよ」


 ソフィは嬉しそうだ。


「楽しい会話には思えないけど、どのへんが嬉しいのかな」


「それはね、あの子を見て初めて感情が動いたの。前は見るたびに感情が消えてぼんやりしたのに。

 私、あの時感じたはずの憎しみに、蓋をしていたようだわ。やっとそれが出てきた。アトレーも姉もキースも憎い。でも、素敵な感情だわ」


「うん、僕もアトレーとマーシャは嫌いだ。一緒に悪口をいっぱい言おうよ」


「嬉しいわ。ニコラス。それにね、キースの事を憎んでいたと言った途端に、それが薄れて消えていったの。それもすごくうれしいのよ」


 ニコラスはほっとして、チェリーパイを大きく一口フォークで切って、口に入れ、もう一口分をフォークに載せて、ソフィの口元に差し出した。


「良かったよ。僕はキースの事は、悪く言いたくないもの」


 チェリーパイを飲み込んだソフィは、まずは、と言ってアトレーの嫌な思い出を話した。


「あの人ね、私の好きな花を、ちっとも覚えてくれなくて......」

 


 二人はどれだけ彼らの事が嫌いかを順番に話し、そのうちにそれは笑い話に変わっていった。



◇◇◇


 家に帰り着いたキースは部屋に駆け込み泣いた。母に腹が立ったし、子供っぽい態度をとったことも恥ずかしかった。

 キースは母ともっと冷静に恰好良く話ができると思っていたのだ。


 そしたら、もしかしたら母が謝ってきて仲良くなれるかもしれないと、チラッとだけ、本当にチラッとだけど思っていた。

 ひっくるめて、すごく腹立たしかった。


 枕に顔を押し当てて泣き、その後ベッドにバシバシと八つ当たりしていたら、祖父母がやって来た。


「どうしたんだい。何があった?」


 いつも優しい祖父が心配そうな顔をしている。

 ずっと小さい時だったら、お母様がひどいの、と泣き付いただろう。いや、お母様という単語は無かったから……


 そして、改めて思った。お母様と、本当に初めて話をしたのだ。

 キースはそれだけでもすごいことだと思い、なんとなく嬉しくなった。そして虚しくなって再び落ち込んだ。


「何があったの? 言ってご覧」


 心配そうな祖父母に、今日の初めての体験を話した。

 キースは自身の行動力を自慢したり、母の言葉に怒ったり、ちょっと笑ったり涙ぐんだりと忙しかったけど、全部話し終えるとスッキリした。


 祖父母は、まあ、とか、おお、とかしか言わずに聞いていてくれた。


 叱られると思っていたので、実は驚いてもいた。絶対に近付いては駄目と、ずっと言われて来たことを破ったのだから。



「ソフィがお前と話をしてくれるとは驚いたな」


 祖父の第一声はそれ。

 驚くのがそこなのに驚いた。普通、憎んでいた、辺りに驚くものだろう。


 祖母も、驚いたわね、と相槌を打っている。

 祖母が更に驚くことを言う。


「私ね、ずっと考えていたの。彼女の放心状態は出産後に治ったでしょ。

 本能が赤ん坊を守ったのじゃあないかと思うの。彼女が言った通り、もし正気だったらあなたは産まれていなかったと思う」


 祖父が、そこまでは……と言いかけたが、祖母は遮ってきっぱり言う。


「私も、きっとそうするわ」


 いつも優しい祖母の瞳がギラついていて、すごく怖い。

 思わず祖父に近寄ると、祖父も一歩近寄ってきていたので、二人でくっつくような感じになった。



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この段階で感想を書くのはためらったのですが・・ そして作者様もあえて書かれているようなので、(今後の展開やどれほど傷ついたかがわかるエピソードとして)子供キース君へ感情移入してしまい、つらくなってしま…
>まともだったら、自分を殺してでも、あなたが産まれないようにしていたわね そらそうよ。 ソフィ主観じゃ強姦の末宿った命よ? 王太子妃が例であげさせた毛虫・ゴキブリの子供っていう寄生生物よ? 腹の中だか…
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