年末パーティ 子供の部
年末パーティーの日、目一杯の盛装をしたキースは、家中の者たちに大絶賛されていた。
伯父の見立てはさすがのもので、キースはいつも以上に美しく大人びて見えた。
迎えに来てくれた伯父が、最後に髪を少しいじってくれて、そうしたら更に垢抜けた印象に変わった。
今後は伯父に教えを請おうとキースは決めた。祖父母の目線では何時までも可愛い子供扱いだが、伯父はカッコ良く装わせてくれる。
キースは来年には十二歳になり、そして学園に新入生が入って来る。それまでにはもっと大人っぽくなりたい。
王宮に到着し、コートを脱いで使用人に預ける。その時にコートの脱ぎ方を伯父から教わった。
「もう子供じゃないんだから、袖を引っ張ってもそもそ脱ぐな。肩から外してスルッといけ」
そう言われてやってみたが、だらっとしか出来なかった。伯父はふっと鼻で笑った。
「修行しろ」
キースは腹が立ったが、伯父の様子を見て納得した。父親がいたら、こんな感じだったのだろうか。
そんな事を思っていたら、遠くにノーチェが見えた。もたもたとコートと格闘していて、あげくに父親が手伝って、二人でもたもたしていた。父子にもよるか。
会場に入るともう既に子供と付き添いの大人達で一杯になっていた。
「おい、仲の良い奴がいるか?」
キースは会場を見回してみたが、さっき入り口でもたついていたノーチェ以外見当たらない。彼はまだ入場していないようだ。
そこに、恰幅の良い陽気そうな中年の貴婦人が近付いて来た。
「グレッグ様。お久しぶりですわね。こちらに戻っていたのですね。隣国の奥様やお子様達はお元気?」
「ご無沙汰しております。ナターシャ夫人。皆元気にしております。今日は甥の付き添いなんです。キース・ゲートです。お見知りおきを」
腕を軽く触って促され、キースもご挨拶した。
「キース・ゲートです」
「息子は学園の6年生なの。夜の部に備えて、すぐに出ていってしまったのよ。キース君は、学園ではハッピーって呼ばれて人気者だそうね。噂を聞いているわ。ジョン王子とは親友だそうね」
ナターシャ夫人は少し疑わしげな目をして見ている。
キースは王子とはただの友達だと訂正しようとして、口を開きかけた。
「こんにちは。ナターシャ夫人。親友のキースを探していたのです。今日、約束をしていたので。お話に割り込んでしまったようで、失礼しました」
彼は申し訳無さそうな顔を作っているが、絶対にそう思ってはいないだろう。自称、親友の王子様は、はにかんだ様な顔で笑っていた。
思っていた以上に黒い奴なのかもしれないとキースは思った。王子の言葉をこの場で否定することはできないのだ。本当に、これを女の子相手にはやらないで欲しい。
仕方なく、キースはハハハと棒読みで笑っておいた。
ナターシャ夫人は、一大スクープゲットというようなホクホク顔で、遠巻きにしている他の婦人たちの方へ離れていった。
グレッグ伯父は、へえーと言ったまま、まじまじと王子を見ている。
キースはその顔を見て思った。
「伯父さん、顔つきが不敬です」
学園での顔見知りもチラホラと増えてきて、だいぶ動きやすくなってきた。学園でのようにハッピーと声が掛かり、肩を抱いてじゃれ合う。それを王子様が時々邪魔して追い払う、いつも通りの様子になっていった。
その様子を周囲の人々が注目しているのはわかっていたが、キースは無頓着だった。それに、キースも王子も見られるのには慣れている。
少し離れて見守ってくれていた伯父が寄って来て言った。
「キース、楽しそうだな。お前が幸せそうで嬉しいよ」
「ありがとう。伯父さん。伯父さんって隣国に、家族と住んでいるの?」
「うん。赴任先で隣国の女性と結婚して、向こうに家があるんだ。今九歳の男の子と七歳の女の子がいる。お前の従弟妹だな。今度連れてくるよ」
キースは思いの他たくさんの血縁がいる事を知って驚いた。
「ところで、ジョン王子のあれはなんなんだ? なんで他の奴らを追っ払う?」
「なんだかねえ。嫉妬するっていうか、理解不能だよ。でも不思議と皆もあんまり気にしていないんだ。普通さあ、王子様に追い払われたら青くならない?」
「うーん。どうだろう」
伯父に聞いたのは間違いだったとキースは反省した。
「じゃれているっぽくて、ごっこ遊びみたいな感じ。あれ、本気だったら怖いよね」
グレッグ伯父さんは、少し口をもごもごさせてう~んと唸ってから言った。
「アトレーに対してサイラスもあんな感じだった。独占欲の強さは遺伝だな」
その時、入口の方のざわつきが大きくなったので、自然と皆がそちらを見た。
子供を三人連れた夫婦が入場してきたな、と思う間に人垣が出来た。
「おお、さすがソフィ。相変わらずの人気だ」
「え、あれは母の家族なの?」
さすがに体に緊張が走った。憎んでいると言われてから、二度目の接触だ。
しかし少しすると、とても話しかけるどころでは無いのがわかった。
キースは近寄ることも出来なそうだった。そのため、ホッとしたような、残念な様な気分になった。