20 お問い合わせ『HAダンジョンが不具合らしき動作をします』2
◆前回までのお問い合わせ
【迅速対応希望】
お世話になっております。
緊急の要件によりなるべくく早めの対応をお願いいたします。
問題の起きたダンジョンは弊社のHAオプションを利用してし、ツインタワーダンジョンをHA構成にて運用していまっす。
ここのおツインタワーですが今までの設定では片方が攻略されたさいに二時間以内にもう肩法も攻略されなかった場合は、攻略状況がリセットされ中に煎る冒険者をまとめて排除する設定となっております。
この二つのとうの同時攻略は後に続くだんじょんへの入場件となており、我がダンジョン運営を目玉要素の人つです。
それなのですがつい先日、片方のダンジョンを攻略し二時間が経つと、もう片方の塔も二時間で爆発して攻略完了になる現象が二時間で発生しました。
ダンジョンを一次風さして原因を調べましたが爆発物は存在しません。
このままでいくとはダンジョン運営に大きな問題が出ています。
支給解決お願いします
とりあえず用意できる情報は全部出し増したので四球お願いします!!
「どうしてこんなことに……」
HAオプションのセットアップマニュアルと睨めっこしながら、ドラゴンらしい角が特徴の少女は頭を抱えていた。
HAオプションはただの一カスタムオプションの筈なのに、マニュアルは平気でメインの設計ガイドと同じ分厚さがあった。
それを必死に読み込みながら、検証環境を構築しつつ、ドラ子は現実逃避に勤しむ。
世の魔王軍の皆様は、こんな苦労までして魔王城への道筋を封じているのかと思うと、自然と尊敬の念さえ抱いてしまう。
そうだ、今度四天王ごっこ(ククク、奴は四天王の中でも最弱、とか)してる子供達を見つけたら怒ろう。
魔王様はこんなクソ面倒な構築してるんだから笑ってないで真面目に焦れと。
お前等の余裕は、魔王様の苦労の元に成り立っているのだと。
そんな益体もないことを真剣に考え始めた少女に向かって、隣の先輩は自分の仕事を続けながらも無感情に言う。
「勉強する時間をくれとか言ってただろう。望みが叶って良かったな」
「先輩は私に何の怨みがあるんですか?」
元はと言えば、この先輩が根回しをしなければ、ドラ子が担当する未来もなかったかもしれないチケットである。
そんなものを嬉々として送りつけてきた以上、個人的な怨恨か、または鬼畜眼鏡の性根がよほどひん曲がっているかの二択だとドラ子は考えた。
「はっ、まさか先輩のサバンナ系検証環境に、誤ってキラーパンサーの群を解き放ったことで、生態系を壊滅させたのがバレて?」
「!? あれテメエの仕業かゴラァ! ぶっ殺すぞてめえ!」
「やぶ蛇!」
普段は淡々としている先輩が、普通にブチギレたことでドラ子は平身低頭謝った。
補足すると、保守サポート部では共有でオープンになっている検証環境ダンジョンがいくつかあり、基本的には自由に使って良いことになっている。
だが、生態系に影響を与えるような行いは、主な管理者に事前と事後の報告をするのがマナーであった。
そして、それがなされないままだったため、何も知らないまま定期管理を行おうとダンジョンを確認したメガネは、世界の崩壊に慟哭したのであった。
そのまま幽鬼のように目から生気を失わせ、メガネはぼそりと言った。
「……余罪があるなら、吐け」
「な、なんもないっす。海底神殿をサメの楽園に変えたりとか、天空の城ラ○ュタを再現するために天空ダンジョン水没させたりとか、そんなことしてないっす!」
「…………吐きそう」
そして青年は仕事中にも関わらず、デスクに突っ伏して何も言わなくなった。
もし仕事中でなければ、泣いていただろう。
なお、主犯ではないが、それとなくドラ子を誘導して『誤らせた』ハイパーイケメン蝙蝠は、サメの楽園に大はしゃぎだったことをここに追記しておく。
はたして、生きる屍と化した先輩に、ドラ子は恐る恐る声をかける。
「あ、あのー先輩、元気だしましょ! また作れば良いんですよ!」
「ゴーレム部長には、厳しくするように言っておく」
「ひぃいい! さらにやぶ蛇!」
それから、なんのアドバイスもくれなくなった先輩の圧に耐えつつ、なんとか二つのタワーダンジョンを繋いだHA検証環境を構築し終えたときには、時計は昼を回っているのであった。
──────
『では、改めてお願いします。通話は繋いでおくので、適宜分からないことがあれば質問してください』
「よ、よろしくお願いします」
ようやくHAダンジョン環境が整ったところで、ドラ子が恐る恐るゴーレム部長にメッセージを入れると、ゴーレム部長は通話を繋ぐように言った。
本当はドラ子のデスクまで来て、つきっきりで面倒を見るのが一番なのだろうが、ゴーレム部長にも仕事がある。そのため、とりあえず音声ガイドをする方向になったのだ。
ドラ子の当初の予定としては、なんだかんだ分からないことは隣の先輩に聞けばなんとかなると思っていたところがあるのだが、現在は何を話しかけても無視されるので、心を決めて部長に頼るしかない状況なのだった。
「それでその部長。一つ良いでしょうか」
『なんですか?』
これを言ったら、怒られるだろうなぁ、と予感しつつ、それでも言わなければいけないことをドラ子は言った。
「まず、何から始めればいいのかさっぱり分かりません」
『あなたは今まで何を学んで来たのですか?』
ドラ子はぐうの音も出ずに、神妙な顔(なお部長からは見えない)で押し黙った。
とはいえ、これは半分仕方ないことであった。
ほとんど初めての情報解析、初めてのHAオプション、そして初めての部長とのマンツーマンとくれば、何から始めて良いのか分からないのも無理は無い。
ゴーレム部長は、己のこめかみを揉み解すような僅かの時間を開けたあとに、淡々と述べた。
『情報解析と言っても、他のチケットと初動は変わりません。お問い合わせを精読して、事象を整理するんです。前提条件と、事象の結果、そこから発生しうる条件を想定して、設定を確認してください』
「なるほど、わかりました」
ぶっちゃけ半分くらいしか理解できていない気がするドラ子だが、そう答えるしかなかった。
とりあえず、今回の事象は、整理すると単純だ。
二つの塔のダンジョンで片方が攻略されたとき、もう片方が何故か爆発する。
というわけだから、片方が攻略された際に、もう片方が爆発する条件を想定しろというのだろう。
なぜ爆発するのか……いや、もしかして爆破?
「閃きました」
『何が分かりましたか?』
「これは新しいダンジョン攻略法ですね。つまり、塔を普通に攻略するのではなく、塔を内部から爆破することで攻略に挑戦している冒険者が、たまたま居たという可能性が高いと考えられます」
『あなたは何を言っているのですか? 説明してください』
ゴーレム部長のツッコミは、岩のように固かった。
流石のドラ子も本気で冒険者が爆破していると考えていた訳ではないが、くだらないボケにここまで硬度の高い返事がくるとは思っていなかった。
「いや、その。すみません」
『なぜ謝るのですか? 私はそう判断した根拠を尋ねただけですが』
「いやその、あれです、ただの思いつきです、すみません」
『なぜその思いつきを得るに至ったのかと』
「すみません勘弁してください」
ゴーレム部長の追及に圧迫感を覚えながら、ドラ子はちらりと、いつもこのノリで漫才に付き合ってくれる先輩を見た。
だが、先輩はドラ子の視線を無視した。
ドラ子は精神に1のダメージを受けた。
そのまましばらく、針のむしろに座っている気分を味わっていたドラ子だったが、これ以上ドラ子を叩いても仕方ないと判断したのか、部長は話を戻した。
『……まあ良いでしょう。基本的には、Solomonで運用されているHAダンジョンが爆発する理由は一つしかありません。それはHAダンジョンの一つが攻略されたときに、残りを爆発する設定にしている場合です』
「つまり?」
『まずは顧客から頂いた情報のうち、HAダンジョンの攻略時の設定情報を確認してください』
「了解です」
何をすれば良いのか分からないなら動けずとも、指示を貰えれば動くのは容易い。
HAオプションのマニュアルを見ながら、ドラ子は顧客の設定情報のうち、指示された箇所を確認する。
HA構成のダンジョンのうち、一つが攻略された場合の他のダンジョンの挙動を。
だが。
「二つのHAダンジョンのうち、片方が攻略された場合の動作は『爆破』ではなく『外敵の排除』になってますね……」
『ということは、お問い合わせの通りですか』
言われてドラ子はお問い合わせを思い出す。
お問い合わせの文章では盛大にテンパっていたが、それでも『片方の攻略後二時間以内にもう片方も攻略されなければ、冒険者を排除する仕組み』みたいな記載があったはずだ。
顧客は自身のダンジョンをそう認識していた、実際に設定もそうなっていた。
つまり、想定される中で一番可能性の高い『設定の間違い』の線はこれで消えたのだ。
『先方も、以前は上手く動作していたと書いてありましたから可能性は低いとは思いましたが……となると……エラーログのほうはどうですか?』
「確認します」
ドラ子が何かを尋ねる前に、ゴーレム部長は次の疑問を上げた。
特に逆らう理由もないドラ子は、言われるがままにエラーログを確認する。
だが、
「HAオプションのログの方には、特に何もありません。定期的なハートビートの交換ログと、片方の攻略時に、もう片方への条件命令を飛ばしているログだけです」
『つまりHAオプション自体は、問題無く作動しているわけですね。メインシステムログのほうは?』
ドラ子がメインシステムの方のログを開くと、すぐに以下のメッセージが溢れんばかりに並んでいるのが分かった。
──────
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──────
「ひぇ」
内容はさっぱり分からないが、なんらかのエラーを吐きまくっていることだけは良く分かったドラ子の口から、思わず悲鳴の成り損ないが漏れる。
『何かあったのですか?』
「部長……ゴーストが囁いてます……」
『あなたは何を言っているのですか?』
意識的にボケたわけでもないのに、ドラ子は再び針のむしろに追い込まれたのだった。
午前中で検証環境のダンジョンを構築できるだけで有能だと思います