【コラボ配信】ガーディアンボス戦! 魔法少女コンビで横浜中華街ダンジョンを攻略するよ~!【雪姫ちゃんと】6
「わかりました。ヒバナさん、私に考えがあります。ヒバナさんにも大変な役目を任せなくてはいけませんが……」
「どーんと言ってよ! 何でもやるから!」
「一分でいいので、ガーディアンボスを引き付けてほしいんです。とにかく私のやることに邪魔が入らないようにしてほしくて」
「一分だね! わかった!」
〔ええええええええええええ〕
〔スムーズに激ヤバ要求を受け入れてて草ァ!〕
〔ほんまにわかってるか……? 相手地形連動型の初見ガーディアンボスですよ……??〕
〔「わかった!(即答)」は心配になるって!〕
何だかヒバナの物分かりが良すぎて心配になるが、ここはもう信じるしかない。
俺たちは最悪の場合、それぞれ<帰還のコンパス>……即座にダンジョンの外まで退避できるマジックアイテムを使うことになっている。レアアイテムの上使い捨てだが、多少の無茶はできる状況だ。
「あ、でもボスの足止めをするために、雪姫ちゃんにも手伝ってほしいことがあって……」
ヒバナがそんなことを言ってくる。
「わかりました。どんなことですか?」
「えっとね――」
……で。
数分後、ヒバナは頭上にいた。
『ギキャアアアアアア――――!』
「んぎぎぎぎぎぎ……! 暴れても駄目だよ! 絶対振り落とされてあげないから!」
〔ばなちゃん耐えろ……!〕
〔ボスめちゃくちゃ嫌がってる! すげぇ、ちゃんと足止めできてる!〕
ヒバナがやったことは単純だ。俺の撃つ【アイシクル】に乗り、翼竜の近くまでいったところで爆発魔術の爆風によって翼竜の背中に張り付く。
そのままだと炎バリアで大変なことになるが、ヒバナは【ヒートヴェール】という炎耐性を上げる魔術を使えるらしいので、一分ならなんとか持つとのこと。
翼竜は背中の邪魔者を振り落とそうと躍起になっている。
おかげで俺のほうを攻撃してくる気配はない。
ヒバナも頑張ってくれていることだし俺も働こう。
俺たちが苦戦している原因はあの翼竜が地形連動型のボスであることだ。
だからやるべきことは単純。
「光の空、闇の湖底。隔つるはただ一枚の薄氷のみ。しかしてただ前だけを見て」
<薄氷のドレス>の効果を発動させる。
重ねて、さらにスキルを使う。
「【オーバーブースト】」
俺の体を金色のオーラが覆った。
《《さらに重ねる》》。
「【大番狂わせ】」
新宿ダンジョンのガーディアンボス戦を経て【番狂わせ】から進化したこのスキルは、ガーディアンボス戦ごとに一回ずつ、確率で成功するスキルを確定成功にできる効果がある。
俺が選ぶのは当然【一撃必殺】だ。
これで俺の魔力は三十秒の間、普段の二百倍という馬鹿みたいな数字に跳ね上がる。
「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは冷ややかなる霜の吐息――」
<スノータイトの封唱杖>を構える。
ただし対象は翼竜ではなく斜め下。
火山。
「――【フロスト】!!」
詠唱を終えた瞬間、極寒の息吹が吹き荒れた。
吹雪という表現すら生ぬるい冷気の濁流だ。それらは火山の頂上たるボス部屋を舐めるように駆け抜け、ボス部屋の障壁に反射して荒れ狂う。
ボス部屋のあちこちで、ジュウ、ボガンッッ、という溶岩とのせめぎ合いが起こるが、それも短い間だ。数秒で熱は冷気に鎮められ消えていく。
これまでボス部屋を支配していた熱が、炎が、暴力的な生命力に満ちた気配が嘘のようだ。
あとは火口だけだな。
「【アイスショット】」
ガラガラガラ!
翼竜が飛び出してきた大きな穴の壁を【アイスショット】で崩す。
普段のマグマなら岩くらい溶かしてしまっただろうが、今のボス部屋は冷気で満ちている。黒っぽくなったマグマは俺が崩落させた岩を溶かせず、埋め立てられた。
あれほど感じられた暑さはもうない。
ここで【オーバーブースト】の効果時間が終了。
俺は冷気の暴風のせいで乱れた髪を払った。
「これで涼しくなりましたね」
〔ほぁあああああああああああああああああ!?〕
〔えええええ!? いや、えええええええええええええええええ!?〕
〔火山が……死んだ……?〕
〔【フロスト】で火山全体の熱をかき消したってこと!?〕
〔あれレベル6とかで覚える初心者用の魔術だろ!? どんなバフかけたらこんな大災害が起こせるんだよ!〕
〔先生、常識君が息してないです!〕
〔やってることやばすぎるだろwwwwwww〕
〔雪姫ちゃんすげええええええええええええええええ!?〕
〔もうどっちがボスかわかんねーよ!〕
〔翼竜君びっくりしてて草〕
〔地形連動型のボスだから地形を取り上げよう★なんて思いつきもしなかったわ! 何でそんな選択肢が自然に浮かぶんだよ!〕
コメント欄にもあったが、要は地形が厄介なら地形を破壊すればいいわけだ。
これが横浜中華街ダンジョンにそびえる大火山だったら絶対無理だが、ここはダンジョンからは隔離されたボス部屋だ。いわば火山の上のほうだけ切り取ったような不完全な地形。
このくらいの規模なら、全力全開の【フロスト】で覆い尽くせる。
『ファッ……!?』
地形連動が切れたようで、翼竜が纏っていた炎のバリアが消えた。翼竜が驚いたように間抜けな声を出している。
精神回復薬を飲んで消耗した分を回復させていると、翼竜から飛び降りたヒバナが駆け寄ってきた。
「雪姫ちゃん、やったね!」
「ヒバナさんこそボスの足止めありがとうございます」
拳を打ち合わせてお互いを称える。ヒバナがいなければとてもじゃないがあんな真似はできなかった。
『キィイイ……ギィエエエエエ!』
翼竜が炎ブレスを吐いてくる。
だが地形連動バフがなくなったせいだろう、明らかにさっきより弱い!
「炎神フラムよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは形なき爆ぜる籠手、【ボムガントレット】!」
ドシュウッ!
ヒバナが爆発属性を纏わせた拳を突き出すと、炎ブレスはあっさりかき消せた。
〔やっぱり弱くなってるな〕
〔本来はこんなもんなのか? 別にボスとして能力が低いわけじゃないとは思うけど……〕
〔さっきまでがヤバすぎてなんか見劣りするな〕
〔このままいったれ二人とも!〕
やや緊張感が薄れてくるコメント欄。
とはいえ油断大敵だ。ここは徹底的に攻める!
「氷神ウルスよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは敵を穿ち削る氷槍――【アイシクル】!」
『ギャア!?』
地形連動が切れたことで動揺したのか、あっさりと氷の槍が命中。
翼竜が地面に落ちる。
「【アイスゴーレム・ヘッド】!」
『――――、』
<スノータイトの封唱杖>に封じていた魔術を発動させる。氷でできた巨大な人形の頭部が現れ、翼竜に嚙みついた。
ストックする魔術にこれを選んだのはヒバナと相談した結果だ。
巨大なゴーレムの頭は攻撃、盾、さらにはヒバナの足場としても役立つ。
ここまで使いどころはなかったが、地面に落ちた翼竜に噛みつかせれば、空に逃げられるのを防ぐことができる。
「あとはとどめを刺すだけだねっ」
「ですね」
ヒバナが拳を打ち鳴らし、俺はその横で杖を構える。
『――ギキュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
翼竜が絶叫した。
ゴーレムの頭部が炎に包まれて弾け飛ぶ。
ドバンッッ! という音を立てて翼竜は勢いよく飛び上がった。
「これって……!」
「ウイングラプトルの時と同じ!?」
その全身は燃えている。さっきのような炎のバリアに覆われているんじゃなく、全身が本当に燃えているのだ。
〔焼き鳥だあああああああああああああああああああああああああ!〕
〔お ま え も か〕
〔ウイングラプトルの時も見たなこれ!〕
〔鳥さんどうしてすぐ燃えてしまうん?〕
『キュアアアアアアアアアア!』
炎の塊と化した翼竜はとんでもない速度でこっちに突っ込んでくる。
おい待てやばい! 今の俺は<薄氷のドレス>の効果を使っているせいで耐久が1しかないんだぞ!? 間違いなくかすっただけで即死する!
「雪姫ちゃん!」
「きゃあっ!?」
ヒバナが俺を抱えて横に跳ぶ。おかげでどうにか命拾いした。
『――アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
速すぎて目で追うことすら難しい。燃えながら空を暴れ狂う翼竜は、もはや流れ星か何かにしか見えない。
〔はっや!〕
〔隕石じゃないんだから!〕
〔いや、でもこれ普通の能力じゃないだろ! 間違いなく狂化入ってる! 向こうも瀕死だからもうちょいで倒せるはず!〕
狂化か……
一定以上のランクのボスは瀕死時に狂暴化し強くなる。それが狂化だ。
ウイングラプトルも同じ性質を持っていた。あの翼竜に起こっていることも同じだ。そしておそらく、ここから先のボスは軒並みこの特徴を持っているんだろう。
だがそれがわかったところでどうもならない。
絶対魔術打っても当たらないだろ、あれ。
「雪姫ちゃん」
「何でしょう」
「あたしのこと信じてくれる? 何とかするから」
「……わかりました。ヒバナさんを信じます」
「ありがと!」
どのみち俺にできることはもう思いつかない。ここはヒバナに託す!
「炎神フラムよ、我に力を貸し与えたまえ。我が望むは形なき爆ぜる具足、【ボムグリーブ】」
ヒバナは足に爆発属性の魔力を纏い――
「ふーっ……」
……ちょっと待てヒバナ。
信じるとは言ったけど……お前目を瞑ってないか!?
〔ばなちゃん!?〕
〔この子目を瞑ってるんだけど!?〕
〔目で追えないくらい動きが速いから、風の動きとか音とかで察知するみたいな……?〕
〔いくら何でもそれはやりすぎだって!〕
『ギュアアアアアアアアアアアアアアアア!!』
襲い来る翼竜。
それが俺たちのもとに到達するより一瞬早く、ヒバナは目を見開いた。
「――だぁあああああああああああっ!」
『ッッ!?』
ドォンッ!
上段蹴り。同時に爆発が起こり、翼竜の体が勢いよく真上に浮く。
嘘だろ、本当に当てたぞ!?
「もう一発!」
『ギャフッ!』
ヒバナは反対側の足で浮いた翼竜をさらに蹴り上げ、二度目の爆発を起こす。
だが、足りない。まだ翼竜は生きている。
怒りに燃えた目がヒバナを見下ろした。
『ァアアアアアアアアアアアアアア!』
くそ、【アイスショット】を――駄目だ、間に合わない! 反撃が来る!
「あたしの攻撃はまだ終わってないよ! これが最後っ――」
ヒバナは右手を掲げた。
開いたその手を強く握りしめる。
「【バーンエンブレム】!」
カッッ! と翼竜の胴体が光を放つ。
そして。
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』
翼竜の体が内側から爆発した。
激しい炎と爆風が巻き起こり、視界を埋める。
やがて目の前が晴れた時には、暴れ狂う翼竜の姿はなくなっていた。
<レベルが上昇しました>
<新しいスキルを獲得しました>
倒した……のか?