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「……助けるつもりはなかったんだよね」
私は一拍置いて、小さくため息をつきながら体を伸ばす。そして、更に言葉を付け足した。
「助けなんて呼ばずとも、あんな連中たちから逃げ出す方法はいくらでもあったでしょ?」
品定めするように私はミミのことをじろじろと見つめていた。ボロボロの汚い服に、髪も乱れていた。ただ、真っすぐ私を向く目だけは美しく気高いものだった。
「……今の私には何の力もないの」
「どういうこと?」
私はミミの言葉に思わず眉間に皺を寄せた。
あのスネークマンが人間より弱いなんてありえないもん。……けど、安宿で実際に見たミミは抵抗することもなく殴られていた。……スネークマンに関する本が間違っていたとか? ……いや、そんなわけない。
私が頭の中でぐるぐると思考を巡らせていると、ミミが口を開いた。
「まだ覚醒前だから」
「…………カクセイマエ?」
スネークマンに関して新たな情報じゃん……。
固まったまま言葉を発する私にミミは丁寧に説明してくれた。
「私たちスネークマンは従者の種族。主を見つけ出し忠誠を誓い、仕えることで力を得る。主に従うことで強くなるということです。我々は主を裏切ることは許されない。契約に反することに」
「え、ちょっと、まって。じゃあ、かつての王がスネークマンの脅威に震えて、殲滅命令を出したっていうのは……!?」
「当時の王がスネークマンという存在をちゃんと理解していなかっただけです。私たちは決して「主」になることはないし、その座を狙うこともない。その代わり、力が与えられるんです」
……なるほどね。権力者の愚かな判断って聞くに堪えない。
あれ? なんかさっき、しれっと忠誠を誓われていたような……。
「それで、まだ主は見つかっていない?」
「……ようやく見つけました」
やっぱり私じゃん……!!
ミミは一片の曇りなき目を私に向ける。思わず私は頭を抱えて「なんてこったい」と声を発した。
スネークマンに会えたのはものすごく嬉しいけど、彼女の主になるのはまた話が違う。私には責任感とかそういうももは一切ない。一人で自由に生きたいの……!!
「なんでそんなに嫌そうなんだよ」
レイが私とミミの会話に割り込んでくる。
逆になんで嫌じゃないの?
そう聞き返したかったけど、またレイと言い合いになるのが面倒なので飲み込んだ。
「守るべきものが増えるってことだよ?」
「お前が守られる対象だろ」
「馬鹿ね」
私は呆れたようにレイを睨んだ。