第23話 魔橋の山⑥
「よくもあの時は殴って……くれたなッ!」
ゴッ
「ウ゛ッ……カハッ……はぁはぁ……」
「まだまだ、こんなもんじゃねぇぞ!」
バキッ
「ガッああああ!」
「その辺にしておきなさい。魔女の命など、どうでも良いですが、罪には罰であり、2日後の罰は全うさせねばなりません」
取り押さえられた私たちは着の身着のまま牢獄……と言う名の拷問部屋に閉じ込められた。
部屋は山岳部の断崖に突き出す形で設計されており、格子窓の他には出入り口しか外と出る手段はない。
「イャザッタ様に感謝することですね。冷えるとは言え春先だからまだ夜も暖かい方です。真冬など、昼夜関係なくこの部屋は吹雪きますから……」
プロリン師の言葉は既に届かない。
既にこの拷問部屋に閉じ込められ5日が経過している。殴打、切り裂き、鞭打ちと言った拷問により衣服は既に身につけていないも同然のものになっている。鎖に繋がれ冷気へ当てられたため、鎖と体の接合部は皮膚が剥がれ落ち、血が滴っては凍り、剥がれてはまた皮膚を剥がすといった悪循環により、既に感覚はない。
それでもまだ横たわれれば少しは休められただろうが、鎖で壁の固定されているため、冷たい石の上に横臥することさえ許されない。
アフラは既に限界を超えており、後悔どころか、今が何日目かすらも分からない。
(アフラ……生きてるか?)
(……)
返事はない。だが自分がこうして生きている以上、アフラも死んではいないのだ。
かつてなら、アフラが苦しむ姿など笑って眺めていただろう。だが、今は違う。同じ体を共有する以上、苦しみは自分に返ってくる。利己心がそうさせる――はずだった。
(……それだけでもねぇか)
麻友は気づいていた。利己心の裏に、奇妙な連帯感が芽生えていることを。
(まあ、アフラに死なれちゃ困るし、あたしがあんな拷問に耐えられるわけがない)
実際、拷問の最中、何度かアフラの意識が飛びかけ、入れ替わりそうになった。だがそのたびに、気力で食い止めてきた。ここで入れ替われば正体が暴かれ、魔女として大衆に晒されかねない。
(やけに落ち着く……二日後には処刑だってのに)
脱獄の算段も立ててはみたが、成功率は二割。いや、もっと低いだろう。防御魔法でも習得していれば、崖を転がる方がまだマシだったかもしれない。
(……高いところから落ちるのはもうコリゴリだがな)
残り二日。その間に策を練らねば、二人とも死ぬ。
(頼むぞ、アフラ。二日だけ耐えろ。あとは――あたしがどうにかしてやる)
柄にもなく、麻友は祈りを口にした。毒づく代わりに、震える唇からこぼれたのは、か細い祈りだった。
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