84話
この日、僕は『小鬼丸』を手に入れた。
都築さんを見送った後、みんなで『小鬼丸』を見ていたんだ。先日入荷された物の中では、1番短く反りが少なく、僕が初めに手に取った一本だった。
180万円、攻撃力18。
刀特有の妖しげな輝きが、僕らを掴んで離さない。
手に持つと、まるで僕の手元に戻って来たような、そんな錯覚を覚える一振りだった。
「・・・欲しいな。」
思わず、口からこぼれ落ちた。
僕は慌てて口を閉じた。でも、後の祭りだった。
「じゃあ買うかコウタ!」
「いや、お金が足りないんだよエミリア。」
「あたしが・・・「私が出します。」
いや、2人の気持ちはありがたいんだけどね。
人様に借金してまで、買う物じゃない。
まして、足りないのは30万円近い大金だ。今は、みんな持ってるとはいえ、軽々しく借りて良い物じゃない。
「そうだな、ソフィアから借りてやれ幸太。」
「ミラ、お金の貸し借りは・・・「じゃあ、装備は良いのか?」
「・・・。」
ミラが被せて来たので、僕は黙った。
僕を睨みつけてくる、ミラが怒っている。
「幸太、ソフィアだって心苦しいんだよ。自分だけ、高価なパーティーの装備を着けている事に。本来ならば、売ってみんなに分配しているはずの金だ。あれだけあれば、幸太なら『小鬼丸』だって買える。自分の所為で買えなかった、ソフィアにそんな思いをさせるな。」
ハッとさせられた。
自分は借りたくないけど、気にするなって言ってるんだ、僕は。
無神経な話だ。
さっき、ソフィアは甲冑の値段を確認していた、まともな人なら気になっちゃうよね。
装備の運用を言い出したミラも、気にしていたのかもしれない。
不安そうな顔で、僕を見つめていたソフィアに、僕はお金を借りる事にした。
「ソフィア、なるべく早く返すから。30万円近い大金だけど、貸してくれる?」
「はい!もう少し貸せますよ?」
「いや、『小鬼丸』が買いたいだけだから、そんなには要らないよ。」
「幸太、借りておけ。」
「なんで!?」
「カードの残金を使い切ったら、メシにも困るぞ?」
僕は、思った以上に抜けていた・・・。
「すみません、・・・もう少し貸してください・・・。」
「はい!」
何とも、情けない話だ。
でも、ソフィアの輝く様な笑顔を見れたから、良しという事にしよう。
僕の買った『小鬼丸』は短くて、小柄な僕にはぴったりだ。短い分、とうぜん軽くて扱いやすい。まるで出会うべくして出会った様な、あるべくして僕の手にある様な、そんな気さえする。
そんな、ロマンチストなつもりはなかったんだけどね・・・。
だけど、ナイフとの違いを、早いところ修正しないといけない。
すぐに、ダンジョンに試し斬りに行きたい気持ちを、何とか我慢して。ギルドに刀を預けて、この日はお開きにした。
もう、いい時間だ。
みんなの家族が、心配しているかもしれない。明日からの約束も取り付けて今日は解散した。