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クラージュ・イストワール - 第23節 戦の備えⅡ ―聖騎士と智将―
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クラージュ・イストワール  作者: Hanna
第Ⅰ章 森と戦士の国 アルスター 編 ―紅棘の死の魔槍―
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第23節 戦の備えⅡ ―聖騎士と智将―

 戦への準備を整える為、焔は訓練に励んでいた。

 翌日。焔は、竜になったアッシュと連携訓練をしていた。


「そらぁ‼」


 白銀の竜になったアッシュの掛け声と共に、彼女は彼の力で高く舞い上がり―


「はぁっ‼」


 飛んで来た訓練用の丸太を打刀で斬り落とした。そして、落ちて来た彼女をアッシュは上手く背中にキャッチした。

 これは、スカアハから教わった竜との連携戦闘訓練。焔は、それをスカアハから貰い受けたノートに書き切ったのだ。

 それを聞いたアッシュは、連れて行ってもらえなかった事にショックを受けていたが、連携訓練をすると聞いて開き直ってしまった…。


「その調子だよ、アッシュ。絶好調じゃない。」


 地面に降り立って焔は、アッシュの頭を撫でる。


「良かった。(ロード)がそう言ってくれるのは、励みになるよ。」


 アッシュは、喜んでそう言った。すると、隣でジュヌヴィエの訓練を見ていたフロリは歓喜する。


「すげぇじゃん!ジュヌヴィエ‼」


「そ、そうなのかな?」


「そうだぞ!焔もアッシュも、中々良かったぞ。」


 フロリは、隣の彼らにもそう言った。そして、彼は、焔に剣術の訓練を申し込んだ。彼曰はく、短剣術はともかく、アッシュたちが扱う剣を特訓したいとの事だった。

 焔が厳しく強い師匠に鍛えられたと聞いて、教わりたくなった様子らしい。


「い、良いけど、上手く説明できなかったらごめんだけど…。」


「良いから‼」


 フロリは、焔に早速教えて欲しいと言って、実践する。アッシュとジュヌヴィエは、フロリが必死に取り組んでいる姿に微笑む。また、その隣では、ロランとルノー、オリヴィエとアストル、クーとクースクリドで訓練を受けていた。


「鈍ってはいない様だな。」


「ルノー殿も、同じですよ。」


「そうか。尚更、隙を見せる訳には、いかないな。」


 ロランとルノーは、互いに隙を突くも、譲らない勢いで素早い剣技が行われている。オリヴィエは、アストルの槍術に付き合っていた。


「オリヴィエ、どうかな?」


「どう?と言われても…。もう少し、相手を見定めて欲しいよ。目を瞑って攻めてた。」


「げぇ~。だって、どーしても、そうなるんだもん。」


「言い訳は無し!続けるよ‼僕の剣技を避けるのも、受け流すのも騎士の技量にかかるよ。」


 オリヴィエは、アストルの悲鳴を容赦なく受け流して、訓練を続ける。そして、クーとクースクリドは見事な槍捌きで一歩も勝利を譲っていなかった。しかし、ある程度の所で、クーはクースクリドから一本取った。


「さ、流石、兄上…。はぁ…はぁ…。まだまだですね…。」


「いや、クースクリドも以前より成長しているぞ。少し休憩するぞ。水分を取ってなきゃ、秋であっても倒れたら困るんだからな。」


「はい。では、休憩後、また訓練させてください!」


「おう‼任せろ。」


 騎士団だけでなく、アルスター全軍の戦士たちは訓練所で己の技を鍛えていた。昼になると、食堂で戦士たちは互いの成果を話し合い、大賑わいとなる。

 その間、焔は軽食で済ませて一人訓練所で鍛錬をしていた。アーサーは、アッシュたちの元へと預け、交流を深める様に言いつけた。


 『お前は、剣術だけでは戦闘には向いてはいないだろう。空手という物も身につけさせたが、遠距離攻撃で弱点を突かれてしまっては元も子もない。故に、お前には射撃の技も身につけさせる。案ずるな、弓だけでなく、銃もこの目で見て来たからな。』


 “―って師匠は、射撃も教えてくれたけど…まさか、刀が銃に変形するとは思ってなかった…”


 『その武器は、焔…お前自身でもある。剣、魔法銃と弓、それがお前の武器で帰る事のできる物だ。予言では、お前の持つ聖槍のように、誰かによって与えられる武器も数本あるからな。』


 “よく分からなかったけど、これから色んな戦い方があるって事だよな…”と焔、

 “不安なのはよく分かるよ、自分だってそうだし…”とユウ、

 “そんな生温いのは、俺が封じるぜ‼”とホムラ、

 “そうはいっても、貴方では暴走しかねないです”とレイ、

 “レイの言う通りだな。ホムラは、俺と一緒じゃなきゃ、戦闘狂で捻じ曲がる”とエフ、

 “分かったよ。分かってるから、二度も言うな!”とホムラは思う。


 焔は、脇差を紅色の銃に変形した。銃の形としては拳銃だが、近未来でありそうなデザインで、宿る緑炎が揺らめく。そして、彼女は訓練所に設置してある的の中心に向かって、魔法弾を撃ち込んで壊す。

 弾は、風の魔術が主流で強力となるが、状況に応じて属性変更も可能らしい。


 “こんな武器、私が持ってていいのかな?無双(チート)じゃないよね…”と焔、

 “でも、使わないのは宝の持ち腐れだ。師匠の教えを実行しない訳には行かないだろう”とエフ、

 “お前よりも、武器を多く持っている英雄がいるだろ?例えば、四大文明の中で二つの大河に挟まれた国の王様とか?”とホムラ、

 “まぁ、あの王様も、あり得なくはない、か…。鎧が、三〇〇㎏は越えているって書かれているもんね…”と焔は思う。


 彼女は次々と的に魔法弾を撃ち込んで、訓練を続けていると―


「焔。」


「焔殿ではありませんか。」


 と聞こえて、彼女は振り返ると、ロランとオリヴィエの名コンビだった。焔は、銃を脇差に戻して、亜空間へとしまった。


「ロラン、オリヴィエ。どうして、ここへ?」


 焔はそう尋ねると、様子を伺いに来たとロランは話した。


「あ、ありがとう。ロラン。…本当は、一緒に食事をしたかったんだけど、あの騒ぎがどうしても苦手で…。一緒にいたいけど、一人でいる時間が欲しいと言うか…。」


「焔がそう言うのなら、その休養も必要だよ。個人差はあるとしても、一人になりたい時はある。人との交流は必要だとしても、無理する必要は無いからね。」


 オリヴィエは、正直な気持ちを言う焔を優しくフォローした。焔は、ふと思った事を二人に言う。


「そう言えば、二人はどうやって親友になったの?ルミソワで、二人は連携が良く摂れた有名ダッグってきいたけど…。」


 その質問を尋ねられた二人は互いに目を合わせる。その事について、尋ねられたのは騎士団の仲間以外では初めてだった。二人は、どうして騎士になったのか、共に戦うのかを。


 ♢


 ―幼い頃、私とオリヴィエは両親と仲がいい事もあって会う機会は多くございました。共に遊ぶ事も多く、喧嘩も多くありました。しかし、喧嘩の後にはすぐに仲直りをしていました。そして、ある日の事です―



 川のほとりで、二人は将来について話していた。


 『ねぇ、僕たち、大きくなったら一緒に騎士になろうな!絶対だぞ!』


 『うん!』


 ―僕たちは、グータッチで約束を交わした。でも、少年へと成長して、学び舎へ入学した僕とロランは親友として接する時間も無く、進路関係で勉学や鍛錬に励むうちに会う機会が少なくなってしまったんだ―



 七年程前、シュヴァリエ家。


「ロラン。騎士は、弱者を助ける為に戦う。だが、それには、礼儀に重んじるのが何よりも重要だ。敬語は、絶対に外すな。」


「はい!父上!」


 騎士団長として働いていたロランの父は、騎士道に強く従っており、息子であるロランに厳しい指導を行った。どんな時も、誰であろうと敬語を使う事を教えられて行くうちに、敬語が口癖になった。

 一方、同時期のモングラーヴ家。


「オリヴィエ。お前、騎士を目指すのか?構わないが、どうしてそこまで…。」


「僕は、ロランと一緒に、騎士になるって約束した。約束は、破りたくない!」


 オリヴィエは、約束を破る事をしたくなかった。それも、親友となれば猶更だった。オリヴィエの父は、彼の気持ちを配慮して、騎士になる事を許した。それと同時に、魔導医師の勉学も励むように言った。

 ロランは鍛錬と騎士に必要な勉学を、オリヴィエは鍛錬と魔導医師の勉学を、時間を使い分けて励んで行った。



 ―父上は、とても厳格でした。例え、少しでも、敬語を外してしまえば…


「ロラン‼敬語を忘れてはいかぬ‼何度も言わせるでない!」


 と叱責をされてしまいました。そのせいか、常に敬語で話す癖が取れなくなっていました―



 ―僕は、父上の教えに従って医学を学んでいたよ。分刻みで勉学をして、覚える事は沢山だったけど、人の為に出来る仕事を夢見ていたから、十四歳で医学の資格を取った。当時は、最年少だって騒がれた、かな…―



 そして、彼らが再会したのは、三年後、二人は十五歳になっていた。家での基礎訓練を終えて、騎士専門校で彼らは、同じ部屋で再会した。


「ロ、ロラン、だよね?」


「これは、我が同胞であるオリヴィエ殿ではないですか。ご無事で何よりです。」


 オリヴィエは、ロランが敬語を使っている事に違和感を覚えて、言葉を詰まらせたようだ。



 ―たった三年で、大きく成長したのは分かっている事だったけど、ロランが親友である自分に敬語を使うのは少々気味が悪かったよ。僕は、気まずい感覚を持ったまま、過ごし続けていたけど、とうとう限界で喧嘩をしてしまったよ―



 ―学校で大騒ぎでした。学校長からは、一週間の自粛命令をされて、しばらくはオリヴィエ殿と口を聞く事も拒否をしていました―



 ―でも、自粛期間の時に、僕はロランが敬語を外せない状態なのは理由があるのかと考えて、命令が解けた日の夜に聞いてみたんだ。それで、真意を知った―


「すみません。どうも、敬語が外せないようです。」


「…良いよ。僕が、悪かった。事情も知らずに。…でも、約束は叶えたし、ロランが僕を親友と思うのなら、以前通りに接するよ。」


「かたじけない。その方が、オリヴィエ殿らしい。感謝します。何があろうとも、共に戦いましょう。」


 二人は、グータッチをして仲良くなった。それから、共に訓練に励み、競争しては喧嘩をして、仲直りしたりと思い出深い生活を送った。

 そして、卒業試験。二体二の対決で、ロランとオリヴィエは見事な連携性と知恵で成績一位を獲得したのだ。その時点から、二人は『ルミソワいちの絆』とも称され、有名タッグとしての名を馳せていった。


 ♢


 その話を聞いた焔は、二人の友情に感動した。


 “なんて、良い話なんだろ…。やっぱ、この二人、良いわ。()()()()()で…”と焔、

 “はいはい。オタクの領域ねぇ…。友情と、親友以上の展開になってそうなアレね…”とホムラは思った。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 ロビン:随分、大変な事になっているじゃないスか…。


 タック:旦那。どう思うんだ?俺は、正直、見ていられねぇよ。


 ロビン:だよなぁ~。佳境に入るとは言いたい所だが、嫌な予感しかしない。

     と、空気を明るくするために、ここで『イリュド豆知識!』。タックは、大の酒好きで森に入る前は瓶一本は余裕で飲んでいた。けど、森に来てからは酒を控える様になったそうだ。


 タック:酒を控えた理由か?お前が、荷車を運ばせるように言って、運んだだろ?


 ロビン:こっちに来る前のことか。そうだったな。


 タック:あの時、酒も飲んでいたから、凄い気持ち悪くなってよ。人がいない所で、吐いたぜ…。そん時に、辞めた方が良いって思ったんだ。


 ロビン:なるほどな。まぁ、飲み過ぎは良くないぜ!次回、『第24節 宥和』だ!

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