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森に入った瞬間、僕は首をかしげた。
「……いや、魔物の数、多すぎない?」
盗賊団が前来たのせいか、ゲートが少し開いた影響かはわからないけど、明らかにいつもより魔物が多い。
それでも、前よりは落ち着いて対処できるようになったのは――
「油魔法、なんか……前と違う」
一匹目のスライムに向けて油を撃った時だった。
前は“ボタッ”って感じの、しょぼい油玉だったはずなのに……今日は妙に鋭い。
試しに、魔力の通し方を変えてみた。
油の通り道をぐっと細く絞るイメージで。
すると――
「うおっ!? 速っ!」
シャッ!!
細い油の弾が高速で飛び、奥のスライムをそのまま貫通した。
水鉄砲じゃなくて、もう“油ライフル”だこれ。
「……まじか。
ゲートの影響? 威力、なんか強くなってない?」
完全に調子乗ってるテンションだったが、実際すごい威力だった。
次に狼型の魔物が三匹ほど飛び出してきた。
これも試し撃ち。
左手を細く絞ったまま――
シュン!
一発で一匹の頭を貫通。
残り二匹には油を広範囲に撒き散らす従来型で対応。
「着火ッ!」
火打石で火をつけると、油は瞬時に燃え広がり、二匹の狼魔物はたまらず倒れた。
「……使い分けできるの、便利すぎるんだけど」
細射=貫通
広射=着火スプレー
これ、もう僕の油魔法、普通に冒険者できるじゃん!
⸻
森の奥に進むほど、魔物はさらに増えた。
それだけじゃない。
「……足跡?」
巨大な足跡。人間じゃない。
そして、地面にえぐれたような跡。
「いや、誰か先に行ってない?
盗賊団とか、魔物とか……まじでやめてほしい」
先にエルフの村が襲われてたら、恩賞どころじゃない。
僕の計画が崩れる。
(いやいや、ダメだ!
報酬のためにも、絶対に先に行かなきゃ!)
焦りも混ざりつつ、僕はさらに足を速めた。
⸻
やがて、森の奥に“光”が見えてきた。
それはただの陽光じゃない。
人工的な光。
誰かが放つ魔法光か、炎か――
その先が、エルフの村の入り口だ。
「よし……ここからが本番だな」
胸の高鳴りを抑えながら、僕は村の方へと踏み込んだ。