久方の
ヘルベルトは門付近で待ち合わせをして、今回共に探索するメンバーと合流することにしている。
どうやら彼は二番乗りだったらしく、既に集合場所には先客の姿があった。
「ヘルベルトって、いつも危険地帯に踏み入ってるよな……もしかして、マゾなのか?」
「だとしたら、ついてきているお前も同類だな」
「……たしかに、違いない」
マーロンは鎧に身を包み、腰にはミスリルの剣を提げている。
彼は今回も一緒に行動を共にしてくれるらしい。
元はとある男爵家の騎士見習いだったマーロンは、系統外魔法を発現させたことで既にその立場が大きく変わってしまっている。
マーロンの立ち位置自体は大きく変わってはいない。
けれど、彼を見る周囲の目は大きく変わってしまった。
「俺といる間は、何も言われないだろう。まあ、どっちの方が安全かは微妙なところではあるが」
「人間相手に作り笑顔をするより、魔物相手に戦ってた方が万倍マシだよ。俺は、もう疲れた……」
将来の成功と栄達を約束された、未来の英雄。
現在、誰の紐付きでもないマーロンを誰が取るか、争奪戦のようなものが行われているのだという。
マーロンが暮らしていた領地の領主が零細男爵家だったためか、それより上の爵位を持つ貴族からのスカウトがひっきりなしに続いているらしく、マーロンはその対応に悪戦苦闘している様子だった。
各地からやって来た貴族達の機嫌を損ねるわけにもいかないため、彼は慣れない社交の場で奮闘していたという話だった。
ヘルベルトと違い、夏休みはなかなかにハードだったようで、休みに入る前よりも少ししなびたように見える。
(公爵家で囲ってもいいが……それをやると俺との関係は変わってしまうだろう。どこか適当な有力貴族家あたりと、一度話をつけてやるべきか……?)
ヘルベルトと行動を共にすることの多いマーロンは、以前『混沌のフリューゲル』へ向かった時同様、ついてきてくれることになった。
公爵家の嫡子であるヘルベルトとの同行となれば、文句をつけることができる貴族はいない。
体の良い虫除けに使われているような気もしたが、自分としてもマーロンの戦力はたしかに欲しいところなので、両者の思惑は一致した。
「マーロン」
「なんだ?」
「困ったことがあったら、いつでも俺を頼ってこい」
「……ああ、わかった」
それだけ言葉を交わすと、二人は樹にもたれながら通用門を通ろうとする人達を見つめる。 戦い、手を取り合い、共に鍛練をして協力もし合い……こんな生活が、これからも続くのかもしれない。
未来の勇者と未来の賢者。
本来は大げんかしていたようだったから、一体どうなるかはわからない。
それでも今のマーロンとの関係は……不思議なほどに、悪くなかった。
「すみません、遅れました」
「何、集合時間より早い。問題はないぞ」
ヘルベルトに少し遅れてやってきたのは、少しだけ火照った様子のティナだった。
走ってやってきたからか、額にぺたりと前髪が張り付いている。
今回ヘルベルトと共に大樹海へ向かうメンバーは、この二名だった。
身体を温める意味も兼ねて、三人はランニングをしながら大樹海へと向かうことにした。
「俺も最近は色々と言われるけど……お前も大概、無茶苦茶やってるよな……」
「たしかに、これはいくらなんでも……」
合流した時にはパンパンに中身の詰まったリュックを背負っていたマーロンとティナだったが、今二人は何一つ持たず身軽な状態だ。
ある程度探索が長引くことも考慮して、三人分の荷物はヘルベルトのディメンジョンに入れてある。
時空魔法を使い続けて練度が上がったことで、既にヘルベルトはディメンジョンを複数発動させることが可能になっており、同時に内容量も大きく向上している。
一人で攻防回復からポーターまでこなす。
時空魔法はどんなこともそつなくこなせるようになる、万能の力なのだ。
「今日はこのまま、大樹海に潜るのか?」
「ああ、その前にもう一人、合流するやつがいるけどな」
「なんだって? 初耳だけど」
「私もです」
「大樹海は余りにも広大だ。進んでいくためにも、案内人は必要だろう?」
たしかに、と頷く二人。
彼らに事前に通達をしていなかったのは、当然ながら理由がある。
それは――詳しい話をしていれば、間違いなく反感を買ったからだ。
数十分も駆けているうちに、目的の場所に到着した。
そこで待っていたのは……。
「久しぶりだな、息災にしていたか?」
「……ええ、おかげさまで」
以前ヘルベルトが助け囲った魔人である、魔人パリスだった――。
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