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【書籍化決定】冷遇令嬢の才は敵国で花ひらく〜実家侯爵家で壊滅的被害? 自分たちでどうにかしてください【26/3/1発売!ご予約受付中】 - 番外編.カリスの休日
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番外編.カリスの休日

  Ψ  Ψ  Ψ



ネルの結婚式が無事終わり、わたしは一息ついた。


あの日。モンフォール侯爵家の王都屋敷から馬車で出発して以来、ずっと緊張していたのだと思う。



「カリスも休んでおいでよ」



と、見違えるほどに美しくなったネルが、わたしに言ってくれた。


もともと母君譲りの美貌ではあったのだけど、いまは大河の流れのように揺るぎない自信がそれに磨きをかけた。



――いつまで、友だち付き合いを許してくれるかしらね……。



と、寂しさも感じていたのだけど、



「……えっと? 本気にしたの?」


「もちろんよ! 私、バージンロードはカリスにエスコートしてもらうから!」



と、なぜかネルの親代わりにまでなってしまった。


ただ、エスコートするのはいいとしても、引き渡す相手が大公世子様だ。



「はっ!? ……伯爵って、何?」


「伯爵は、伯爵よ。領地のない宮廷爵位だけどね。大公閣下がカリスにって」


「ははっ……。ウソよね?」


「カリスは、あの豪雨災害で騎士団参謀総長補佐官に、次席斥候総長も務めてくれた大功労者よ? そもそも大河伯秘書官としての働きも目覚ましいわ。……あれ?」


「なに?」


「あと、ふたつかみっつ、何かやってくれてたわよね?」


「ええ……、こき使われてますから」


「うふっ。ありがとうね」


「どういたしまして」


「そんな功労者が叙爵されても、なんの不思議もないわよ」


「……に、したって、……伯爵って」


「いいじゃない。カリスだって、元はといえば貴族の家系でしょ?」


「……ひいひいお祖父さんが男爵ってだけよ。それも、本家とは疎遠になってるし」


「モンフォールの父に仕えたせいよね?」


「それは……、まあ、……うん」


「いいから貰っておいてよ。伯爵閣下として胸を張って、バージンロードをエスコートしてほしいな。……ダメ?」


「ダメ……、ではないわね」



ということで、わたしはリレダル王国で伯爵に叙爵された。


ウェディングドレス姿のネルをエスコートするのに相応しく、わたしにまで豪華なドレスが贈られる。


濃紺の最高級ベルベット、エンパイアラインのロングドレス。パールのネックレスにイヤリング。



「うわぁ~! スリムなカリスに、すごくよく似合ってるわ! ねぇ、ばあや!?」


「ええ、ええ。胸元にお花などあしらえば、きっとお似合いですわ」


「それいい! さすがは、ばあや! 採用で~すっ!」



と、ネルはまるで自分のことのように喜んでくれる。


そして、リレダル、バーテルランド両国王も列席する結婚式で、わたしはネルとバージンロードを歩いた。


ネルは本当に綺麗で、エイナル様に渡すのが今さら惜しく感じられるほどだ。


だけど、ヴェールをめくられ、誓いの〈チュー〉をするネルは本当に幸せそうで、涙をこらえるのに必死だった。


翌日。チューの感動を熱弁されるのには、さすがに苦笑いしたし、続くエイナル様との初めての夜のことまで語られそうになったのには、



「それは、さすがにエイナル様とふたりだけの内緒にしておいて」


「……それも、そうね」



なぜ、残念そうなのだ。


と、苦笑いを重ねさせられた。


自分でも意味が分からないうちに伯爵になっていたわたしとネルとの友人付き合いは、公にされた。



「隠せてなかったけどね」



と、エイナル様にウインクされたのは、ご愛嬌というものだ。


そして、わたしは燃え尽きた。


ポケッとしてしまう。


まだ、辺境のグレンスボーにいるし、のどかな景色を眺めてボーっとする時間が多くなってしまった。


そこで、休暇代わりに、ネルの領地であるエルヴェンへのお遣いを頼まれたのだ。


すっかり掃除された大河沿いのウッドデッキを散歩して歩く。


初夏の風が生ぬるくも気持ちいい。


観光客で賑わうカフェのオープンテラスに腰を降ろして、ラテを飲む。



「やあ、お待たせしました」



と、政務総監のクラウス伯爵が、相変わらず不愛想な表情で現われた。



――おなじ伯爵になっちゃった……。



と、すこし恐縮しつつ、一緒に大河の流れを見詰めた。


クラウス伯爵はまもなく政務総監のお役を終えて領地に戻られる。



「いや……。実は王都に呼ばれそうです」


「ふふっ。こき使われていますわね」


「まあ、エイナルに見付かっては仕方がない。光栄なことだと、精々働かせてもらいますよ」



ネルに報告書を書くために、エルヴェンの統治状況を聞かせてもらう。


総督府でやればいいものを、わざわざオシャレなカフェを指定したのはネルの仕業だ。



――わたしとクラウス伯爵を、ひっつけようとしてるな……。



たぶん、エイナル様も一枚噛んでいる。


クラウス伯爵は知ってか知らずか、そのまま視察だと言って、エルヴェン市街を案内してくれた。


デートだ。


普段はクールとも評されるわたしと、不愛想なクラウス伯爵が並んで歩いても、純粋に視察にしか見えないだろうけど。


ただ、悪い気はしない。


クラウス伯爵は男前の美丈夫だし、なによりネルの気持ちが嬉しい。


神経を緩めて、休めて、そうしたらまた、きっとネルは、わたしをこき使うのだ。


あの異様な高い壁の中で、わたしは生涯大切にしたい宝物を見付けた。


あの透んだ瞳を輝かせたいと、19年の人生を賭けてきた。


今度は、わたしがネルに見付けられてしまった。


とても、わたしのことを大切に大切にしてくれる。



――次は……、わたしが幸せになったら、ネルは目を輝かせてくれるかしら?



だけど、生涯の伴侶選びともなれば、さすがのわたしでも、ネルの言いなりになる訳にはいかない。


ネルにも出来ない内緒話をする相手を選ぶのだから。


クラウス伯爵の意志の強そうな凛々しい眉を、ジッと見詰めた。





           〈番外編 了〉


お知らせ


告知しておりました通り、明日4月28日から第二部の連載を開始させていただきます。


毎日10:20公開の1日1話ペースでの更新を予定しておりますが、更新できない日がありましたら温かく見守っていただけると幸いですm(_ _)m


完結は必ずさせます。


それに先立ちましての番外編公開でしたが、お楽しみいただけましたでしょうか?


また感想などお聞かせくださいm(_ _)m


現在連載中の『嫌われ公女が継母になった結果』も引き続き連載していきます。どうかこちらもよろしくお願い致します。


明日よりの第二部も、ゆるゆるお楽しみいただけますと幸いです。



*あと、悩みに悩んだのですが第二部でも引き続きコルネリア視点のお話は「冷遇令嬢~」の話タイトルでお届けします。もう冷遇令嬢ではない気もするのですが、分かりやすさを選びました。どうか温かい目で見ていただけると嬉しいです。



どうぞ、コルネリアの旅を最後までお見届けくださいませm(_ _)m

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