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【第二章終】耳兜の冒険者~あいつに聞かれるな・目を合わせるな・関わるな~ - 気難しい(面倒な)鍛冶屋
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気難しい(面倒な)鍛冶屋

 町の片隅にある鍛冶屋【一鉄】。

 外装の壁は亀裂が入っていて、入り口の上部にかろうじて看板がかかっているだけ。

 全体的に黒い煤で汚れたような建物に案内されたわけだけど、なんかもうすでに嫌だ。

 気難しい上にこれって嫌な予感しかしない。


「ガントム師匠、こんにちは」


 ネリーシャが挨拶したそのおじさんは返事もせずに鍛冶を続けている。

 はい、気難しそうだね。


「おーじさん!」

「……エフィか。今日はどうした(頑固な鍛冶屋その一。来客が来ても必ず一回で返事をしない。今日も『頑固そうだができる鍛冶屋』を演じて見せるぜ)」


 なんて?

 こういう時、気のせいかなと周りに確認できないのがつらい。

 だってこれはオレにしか聞こえてないからね。


「ルオン君。こういう人だけど腕は確かだからね」

「これで確かじゃなかったら誰が相手にするんだ、こんな人」


 そういえばちょっと前からネリーシャに敬語を使うのをやめていたと自分で気づく。

 見知らぬ人には波風を立てないように敬語を使えと教えてくれたからそうしていた。村長がね。

 親父があんなんだから、あの人にも地味に苦労を掛けたと思う。

 一応、おじさん連中には敬語を使うけどね。


「ガントムさん。今日はお客さんを連れてきたの(相変わらずねぇ)」

「……あぁ?(頑固な鍛冶屋その二。返事は常にぶっきらぼうに。決まったな)」

「こちらのルオン君よ。まだ駆け出しの冒険者だけど、見所があると思うの(どちらかというと得体が知れないというか……)」

「なんだよ、またガキか(頑固な鍛冶屋その三。客がガキなら悪態をつけ)」


 いや、何を演じてるんだ。

 オレは何を聞かされているんだ。

 とりあえず知らない振りして付き合わなきゃダメなのか?

 そのガントムさんがオレをジロジロを見る。


「ケッ、ひょろそうなガキだな。こんなガキに俺が打った武器が使えるもんかい(頑固な鍛冶屋その四。一度は突っぱねろ)」

「あ、じゃあ帰ります」

「あぁコラァ! 誰も打たねぇとは言ってねぇだろうが!(が、頑固な鍛冶屋その五! 万が一、帰りそうになったら強気で引き止めろ!)」

「じゃあ、お願いしますよ」


 本当に帰りたいんだが。

 でもガントムさんの腕がよければ、ここで帰るのはもったいない。

 出来上がったものがよければ、この人の人格なんてどうでもいい。


「ガントムさん。ルオン君を見てどう思う?(さぁさぁ、どういう評価を下すのかな?)」

「……んん(やべ、なんだこれ?)」

「どう?」

「ちょっと待ってろ(待て待て、なんだこの小僧。こんなの初めて見たぞ)」


 ガントムさんが奥の部屋に行ってゴソゴソと何かを取り出してから戻ってきた。

 持っているのは一本の剣だ。


「小僧、こいつを振ってみろ(こいつはナマクラだ。パッと見でわからねぇけどな)」

「試されてます?」

「いいから黙って振れ(頑固な鍛冶屋その六、図星を突かれても押し切れ)」

「わかりましたよ」


 この剣がナマクラか。

 言われなかったら気づかなかったかもな。

 よく見ると、刃が微妙に斜めになっている。

 このまま振ってもうまく刃が食い込まずに思ったほど傷を負わせられない。

 だったらこうする。オレは斜めになってる刃を考慮して、剣を振った。


「む? お、お前……(こいつ、見抜いてるってのか?)」

「これ、ナマクラですけどそこまでじゃないですね。うまく振れば使えないこともないです」

「そいつを一発でナマクラと見抜いたか(おいおい、これじゃ俺の立つ瀬がないじゃないか)」

「パッと見ただけじゃわかりにくいのは確かですけどね」


 ガントムさんが唸った。

 別に意地悪したいわけじゃないけど、先に試してきたのはこの人だからね。

 それにしても、こんなナマクラでもオレが使ってる剣よりずっといい。

 これ無料でいいからもらっちゃダメですかね?

 怒りそうだから言わないけどさ。


「み、耳兜君。よくそんなの扱えるねぇ」

「そりゃ、エフィ。状況によってはこんなナマクラでも使わなきゃ生き残れないだろ。下手したら武器すらないこともある」

「そうなの、かなぁ?」

「だから戦いでも何でも、まずはどうすれば生き残るかを考えてるよ」


 武器に頼っていたら、武器がなくなった途端に戦えなくなる。

 一つの仕事に依存していたら、仕事がなくなった時に生活ができなくなる。

 ましてや自分の生活を国に委ねるなんて恐ろしい。

 だから俺は色々な経験を積みたいんだ。


「ハハハハッ! お前、すごいなぁ! やるなぁ!(やっべ、素が出ちまった!)」

「認めてもらえましたか?」

「う、うむ。約束通り、お前に合う武器を作ってやる(よし、軌道修正完了)」

「ありがとうございます」


 これで「金はいらねぇよ、久しぶりにいいものを見せてもらったからな」とか言ってくれたら完璧なんだけどな。

 いや、それはダメだ。

 いい仕事にはしっかりと報酬を支払うべきだろう。


「じゃあ、代金だが銀貨二枚でやってやる(やべ、ちょっと盛ったわ)」

「たっか!」

「が、俺も人の子だ。特別に銀貨一枚にまけてやろう(いや、しかしだな。相手はガキだぞ? やっちまったか?)」

「んー、ちょっと足りないですね。すみません、出直してきますね」

「よ、予算を言え!(久しぶりの客だからな! 逃がすわけにはいかねぇ!)」


 オレが悩んでいると、ネリーシャさんがつんつんとつっついてきた。


「私が立て替えてあげる」

「そんな大きな借りは作れないよ。ていうか知っててここに案内したな?」

「ごめんね、この鍛冶屋が高いのすっかり忘れていた。でもルオン君には絶対にこの人の武器が必要になると確信しているわ」


 耳兜とあろうものが、これを見抜けなかったなんてな。

 本人が考えていないことはさすがに聞き取れないのが欠点か。

 だから忘れていたというのもウソじゃないんだろう。


「刃速の巨王蛇を討伐したら銀貨二枚が余るわ。それに何度も言うけど、ガントムさんの腕は私が保証する」

「そこまで言うならお願いするよ」


 銀貨二枚があれば、村の家が何軒くらい建つかな?

 なんて雑に勘定していると、ネリーシャさんが立て替えてくれた。


「おう、確かに受け取った。じゃあ、耳兜の小僧。期待して待ってな(ん? なんで俺、こいつを耳兜って呼んだ?)」

「なんでしれっと耳兜で定着してるんですか」


 百人がヘッドホンを見れば百人が耳兜と呼ぶのかもしれない。

 そして翌日、武器を受け取りにくると予想外のものを渡された。

 なんだ、これ? こんなのがオレに合った武器?

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― 新着の感想 ―
ちょっと違和感、エフィが主人公の名前を耳兜って何度も呼んでいるのだから主人公の性格ならエフィの名前をクソ女くらいは呼びそう。
[良い点] 登場する人みんな癖があっていいてすね 面白い
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