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万年銅級おっさん - 馬車に揺られて
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馬車に揺られて


 ガタンガタンと馬車に揺られつつ、窓から流れる景色を見る。ここしばらくはずっと、収穫済みの麦畑しか見当たらなかった。


 俺たちが向かう場所は、初代国王がこの大陸に初めて上陸した地のオルフェンス港だ。港といえど、規模はワーデルスの街と並ぶほどに大きい。アリーが言うには、治めている貴族も現オルシア王の叔父にあたる人だとか。爵位は公爵らしいぜ……ワーデルスよりも上の立場の貴族かよ…。

 

 最終目的地はオルフェンス港だが、そこへ向かう途中に幾つかの街を経由することになる。ワーデルスからほとんど反対側に位置してるからな。そのため、行きだけでも三週間程度は掛かる予定だ。

 経由する街で楽しみと言えば王都くらいか。まぁ、長くても二日程の滞在なんで観光らしい観光はできないそうだが。帰りなら、幾つかのスポットを巡る時間は取れるっぽいけどな。



「うぅ、おしりが痛くなってきたよ……敷物もっと厚いのにすればよかった……あぁーん、ボクのもちもちなおしりがぁー」


「グチグチ言うな。そこまで気にするんだったら、エマやレイラみたいに外を歩けばいいじゃねぇか」


「えぇー、それはそれで足がパンパンになっちゃうじゃん」


「はぁ……ほっときましょ。相手しても無駄だわ。そのうち、客車の屋根に居座り始めるでしょうし…」


「……客車の屋根って……マジかよ」


「ん?意外と快適だよっ。夏場は屋根が熱いから乗らないけど……風を全身で感じられるし、開放的だからねっ」


「こういう人なのよ、レイラは……リオのために声量を抑えるなんて気は遣えるのにね、まったく」


「あ、あははー……」


「よくも悪くも自由奔放な性格だよな……イメージ的には風魔法とかが似合ってそうなのになぁ……氷魔法ってもっと冷静沈着な奴が使いそうな感じがするわ」


「うっわぁ、それよく言われるなー」


「あら、レオンって魔法性格診断とかにも興味があるのね。意外だわ…」


「あー、魔法性格診断なんてものがあるのか?俺は適当に言っただけなんだが……」


「あ、そうだったのね……まぁ、魔法が使える人の間で流行ってる占いみたいなものよ。火魔法は情熱的とか一つのことに没頭しやすい性格、みたいな感じね」


「おっさんの、風魔法は自由奔放で氷魔法は落ち着いてるってのもよく言われてるかなー……まっ、ただの印象だし、ボクの持つ魔法が外れてるいい反例だよね」



 まぁ、所詮は診断だしな。しかも質問形式とかじゃない、色の感触を性格に当て嵌めただけの占いとも呼べなさそうなレベルのものだしよ。

 


「ちなみにその診断だと、複数の属性魔法を持つ奴はどうなるんだ?」


「そうね……間をとるって感じかしら?」


「あれ、そうだっけ?性格のてんこ盛りになるんじゃなかった?」


「…ははっ、きっとその辺は曖昧なんだろうな。民間発祥の占いなんてそんなものか」


「……発祥は貴族だから民間……でいいのかなぁ。今じゃボクたちにも流行ってはいるけどさー」


「……お貴族様も人間なんだな」


「失礼ね。私たちもオルシア王国民であることには変わらないわよ」


「それもそうか……というか、レイラは貴族ではないのか?」


「そうだよー。あれ、言ってなかったけ?」


「豊穣の灯りは私以外みんな貴族ではないわ。ルーナは金級で爵位を持ってるけどね」



 そうだったのか。魔法を使えるんで、てっきり貴族の子供かなんかだと思っていたが……いわゆる先祖に貴族の血を引く人がいたってやつかね。



「たしか、ボクのお爺ちゃんが貴族の三男とかじゃなかったかなぁ……」


「へぇ…そういう繋がりでもギフトで魔法は発現するんだな」


「そうみたいね……細かいけれど、教会関係者の前でギフトで発現なんて言わないように……こっぴどく叱られるわ」


「そうそう、ボクたちも一回それでやらかしたことがあるんだよねー。いやぁ、あんなに長い説教は初めてだったよ」


「……大変だな」


「魔法は研究しないと自由に扱えないからさ。魔力を調べてくうちに、ギフトってどういう仕組みなんだろうって問題にぶつかるんだよねっ」


「研究はある意味、神様への反抗的行動にもなっちゃうのよ……この辺の塩梅が難しいのよね」



 ギフトの仕組みねぇ。確かに、アーパルみたいに初めから持つ固有スキル……こっちでは天稟のスキルか。それらと、ギフトで発現するスキルの違いもよくわからんしな。

 たぶん魔力が大本の原因、もしくは要因のひとつなんだろうが……魔力ってそもそもなんだ?に行き着いて考察が止まるからなぁ。



「うんうん、きっと神様の在り方は魔力その――あいたっ!」



 車輪が石を踏んだのか、一際大きな揺れが馬車を襲いレイラが頭を打った。


 いくら整備された道とはいえ、現代のようなコンクリートやセメントで固めた道路ではないからな。ローマ街道の劣化版みたいな道なもんで、時折小石が外れていたり、表面が砂っぽくなっている。

 


「運がなかったな、レイラ」


「……私たちも危なかったわね」


「いったたた……もうちょっとで舌を噛むところだったよ、もうっ――っていうか、なんで今のでも寝ていられるのさ、リオは……」


「こいつ、寝始めたらなかなか起きないからな。いたずらし放題だぞ?……まぁ、反応しないんでスリルも面白さもないけどよ」


「寝顔が幼くて可愛いわね……これにいたずらなんてしようとも思わないわよ、普通」


「そうそうっ、おっさんの――いてっ!」


「おっとと……お前さん、身ぶり手振りが大きいからよくぶつけるんじゃないか?」


「そうね……レイラの良いところではあるのだけれど……車内だとどうしても、ね」


「……ふんっ、もういいもんねっ。次の休憩までボク、屋根にいるんだからっ」



 そう宣言するやいなや窓の縁を蹴って外に飛び出し、直後に俺たちが座る客車の天井からトスンッと音がなった。



「もしかして、あいつが屋根に登る理由ってのは…」


「……昔から落ち着きがないのよ…レイラは」



 まぁ、何度も頭をぶつけるくらいなら車内よりも屋根に居たくなるわな………俺もケツ痛くなってきたし、次の休憩まで歩こうかね。



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