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異世界転生係で神畜の女神やってます - 大先輩
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異世界転生係で神畜の女神やってます  作者: 大鳳
第一章 アルフレッド編

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大先輩

 シトリーから話を聞く事にしたフィーナだったが、彼女の話は色々と酷いものだった。

 シトリーは元々天界で女神として働いていたらしい。しかも、異世界転生者のフォローをする仕事をしていたというのだ。

 フィーナから見れば先輩に当たる訳だが、前任者の記憶の中に彼女の存在は無かった。当然フィーナの頭の中にも彼女についての情報は全く無い。

 天界でもかなり昔の事……この異世界では千年程前、魔王の世界侵攻に勇者一行が立ち向かっていた時代、シトリーは女神として地上で勇者を陰ながらサポートしていたのだそうだ。

 勇者に異世界に降りる際に魔力無限の特性を与えたのも彼女で、地上に降りてからも勇者の魔王討伐が成功する様に色々と裏から手を貸していたらしい。

 転生者をサポートするのは今のフィーナも似た様な立場なため、初めて聞く話に興味津々でシトリーの話に耳を傾けていた。

 しかし、シトリーが地上活動していた際に、時の第一王子に見初られ婚約したというノロケ話になったところで

(……ん?)

 と、フィーナの頭に疑問符が付く方向性になってきた。

「それで、彼が超がつくくらい良い男だったのよ。で二人は恋に落ちちゃってなんやかんやあってね〜、二人共若かったわ〜」

 シトリーは一人二役で当時の馴れ初めを寸劇調で再現し始めた。

「そしたら歴史が変わっちゃったとかで天界から訓告処分されちゃってさ〜」

 それで天界から警告を受けたシトリーは、汚名挽回の為に信仰心を得る為に神力をバンバン使いまくって、それはそれは大変な神の奇跡を王女の立場を利用して国民に見せ付けていたらしい。

 その際、異世界からの信仰心を多少横領していた事も露呈してしまった様で。

「天界も融通が利かないのよね〜、多少信仰心使ったってそれ以上にリターン上げるってのにさ〜」

 最終的に沢山の信仰心を得たんだから良いだろうと彼女に悪びれた様子は無かった。最悪、うまくいかなければ歴史を根本から直せば大丈夫とタカを括っていたらしい。

 それで、王女としての人生を堪能し、国王となった王子を看取り子や孫達の成長を見届けた上で頃合いを見て天界に帰ったところ

「いきなり上から魔界への出向を命じられちゃったのよ。で、魔界に行ったら行ったでいつの間にか天界から解雇されちゃってたみたいでさー」

 異世界で散々人生の絶頂と幸せを謳歌したシトリーを待っていたのは左遷であったそうだ。

「しかも魔界でも派遣悪魔扱いで色々と待遇が不公平でね〜」

(……残当じゃないかなぁ。私も気を付けなきゃ……)

 シトリーの話を聞いたフィーナには天界の対応の妥当性に疑問は感じなかった。

 神力の私的運用に加え歴史改竄、業務上横領等不正のオンパレードである。

「それで天界の女神様のあなたにお願いなんだけどぉ〜?」

 シトリーからの要望はフィーナから彼女を天界に戻す様に口利きをする事だった。

 天界に戻りたいと思う程、魔界の悪魔として働くのは大変なのだろう……。

 しかし、下っ端の自分から上申したところで上が聞いてくれるだろうか?

 そもそもシトリーを天界に戻す事自体に天界にメリットはあるのだろうか……?色々と疑問は残るが

「い、一応聞いてみますけど……期待はしないで下さいね?」

 社交辞令に近い言葉をフィーナはシトリーに返す。そんな彼女の言葉にシトリーは期待に目を煌めかせている。

「それにしても……貴方随分目立つ格好してるのね?」

 ある意味フィーナにとっては地雷なこの言葉。フィーナから見ればまるで黒のハイレグ水着の様な格好をしているシトリーの方が十分目立っでいる様に思える。

 フードの付いた黒マントを身に纏っているからそれほどでも無い用に見えるのか……。

 異世界じゃなければシトリーも多分痴女にしか見られないんじゃないかとフィーナは心の中で力強く思う。そんなフィーナがシトリーをジッと見ていると

「ああ、これ? 魔界から悪魔っぽい格好しろって言われててね。いやー、私も昔は清楚な女神様やってたのよ?」

 フィーナはここで今更ながらに危機を察知した。職場の先輩に通ずるモノがある話が長いヤツだ……と。

 すでに結構な時間シトリーの話を聞いていた為、フィーナがそろそろ店に戻ろうと話をしようとすると

「ねぇ、仕事サボって二人で飲みにいかない? 私も仕事が大変で愚痴りたいのよね〜。天界がどうなってるのかも気になるし」

 フィーナには到底受け入れられないシトリーからの提案である。これ以上一緒に居るのは危険と判断したフィーナが

「もう宿に戻りましょう。私もお仕事がありますので……」

 シトリーからの提案を丁重にお断りしたフィーナは逃げる様に宿に戻るのだった。

「こら〜! 逃げるな後輩〜!」

 面倒くさい先輩と化したシトリーを引き連れながら……。



「先輩! も~、どこ行ってたんですかー……ニャ?」

 宿屋に戻るなりミレットからお叱りの声が飛んできた。時間はすでに忙しい時間帯を過ぎており店内はすっかり落ち着いていた。

「あ……」

 ふと見ると、シトリーが座っていた席には他のお客さん達が陣取っておりすでに彼女の席は無くなっていた。

 適当に一人が相席出来そうな場所を見てみると……フィーナがさっきお酒を運んだ冒険者達の席が一人分空いている。

「あの……こちら相席よろしいですか?」

 フィーナが声を掛けると冒険者達は

「わかりました〜」

 と相席にもトリーにもあまり興味は無さそうな感じだ。

 ちなみに、シトリーを冒険者達の席に案内した時には彼女は羽根や尻尾、角などの悪魔と見られる要素は全て消していた。

 見た目は妖艶な小悪魔っぽい妖艶な謎の女性といった感じだ。白髪と褐色の肌に黒い衣装が目立っている。シトリーの衣装は新人の若い冒険者達には刺激が強過ぎるかもしれない。

「それでは私はこれで……御用がありましたら声をお掛け下さい」

 こうしてホールに戻ったフィーナが慌ただしく仕事を片付けていると、アルフレッドがこちらに近付いてくるのが見えた。

 普段なら部屋で読書をしている時間であるのだが……。

「フィーナさん、僕にもお手伝い出来る事……ないかな?」

 アルフレッドからの申し出はフィーナにとって意外なものだった。

「突然、どうしたんですか? アルが働かなくても生活に支障は……あ! もしかしてお小遣いですか?」

 そういえばアルフレッドにお小遣いを渡し金銭感覚を身につけさせるという社会勉強を全くさせてこなかった事にフィーナは今更気付いた。

 アルフレッドの年齢だと一ヶ月で穴開き銀貨一枚くらいかな……とフィーナが考えていると

「違うんだ! フィーナさんが每日大変そうだから……何かお手伝いしたいとおもって……」

 アルフレッドにそこまで心配されていたとは……特に大変だとは思っていなかったが、疲れが顔に出てしまっていたのかもしれない。

 大人としても保護者としても自分の不甲斐なさにフィーナが軽く落ち込んでいると

「それじゃ裏の倉庫からスパイスの袋持ってきてくれるかい?」

 女将さんがアルフレッドに仕事を任せていた。女将さんから指示を受けアルフレッドは嬉しそうに店の裏口へど駆けていった。

「あの子はあの子なりにあんたの力になりたいんだよ。その辺り、分かってあげな」

 女将さんはフィーナの肩を叩きながらそう言うと、厨房へと戻っていった。



 店内のお客さんに食事と酒が行き渡り始め、残るは追加オーダーの対応くらいが残るのみとなっていた。

 後は惰性で仕事をしていれば平穏無事に一日が終わるはず。フィーナが空いたテーブルの食器を片付けていると


ーガシャーン!ー


 お皿が床に叩きつけられる音がホール内に響き渡った。ならず者が多い世界なためお客同士のトラブルというのも決して少ない話では無い。

 酒が入れば尚更だ。店の中で暴れられては困る為、一応騒ぎを収めるのも店員の仕事ではある。

 フィーナが騒ぎの方を見ると、ついさっきシトリーを案内した新米冒険者達のテーブルだった。

「お客様、どうかなさいましたか?」

 フィーナが慌てて駆けつけた時には料理はぶちまけられお酒はひっくり返り……と、この後の片付けのことを考えると頭が痛くなってくる惨状だった。

 先に着いていたミレットとアンが床に散らばった料理の食べ残しやら木製のジョッキやらを片付けており、騒ぎの張本人達はテーブルの近くで睨み合っている状況だった。

 一人は新米冒険者達のリーダーと思われる戦士風の男で金属製の胸当てと肩当てを着けただけ。

 比較的簡素な装備と若そうな見た目からいかにも新人といった感じの少年だった。そんな彼と睨み合っていたのはさっきのシトリーだった。

 こんな事になるなら相席させなければ良かった……とフィーナが心底後悔していると

「お前は俺達を馬鹿にするのか!」

「そうじゃないの。お連れの女の子達を酷い目に遭わせたくなかったら慎重になんなさいって言ってるの。」

 血気盛んな戦士風の男に対しシトリーがやんわりと忠告している様に見える。

 しかし、経緯を最初から見ている訳ではないので何とも判断は出来ない。

 とにかくここで暴れられてはたまらないとフィーナがシトリーに話しかけようとした時

「私はあんた達が死のうが生きようがどっちだって良いの。でも、依頼のままに現地に乗り込んだら返り討ちよ」

 シトリーは後日冒険者達が向かうであろう依頼の内容を、まるでその目で見てきたかの様に話し続ける。

 依頼の前情報ではゴブリン十匹程度の討伐のはずが、現地に着いてみれば四十以上のゴブリンが待ち構えていた事。

 統率者に指揮されたゴブリン達の前に冒険者達は成す術なく敗れ去り、男は嬲り殺され女は慰み者とされ地獄の苦しみを味わう事。

 だから依頼通りに現地に向かうのは考え直したら?というのがシトリーの主張なのだが……

「ゴブリンなんて何十匹来ようと敵じゃないさ!」

 戦士風の男の声は自信に満ちていた。しかし、それは若さ故の怖い物知らずでしかない。

 シトリーは説得を諦めたのか深く溜め息を付くと左手を翳し


ーパアアァァー


 冒険者仲間の女の子の近くに魔法陣を出現させその中から翼の生えた悪魔を召喚した。

「きゃあああぁ!」

 悪魔の出現に驚いた女の子が悲鳴を上げる。

「な、なんだと!」

 女の子の声に戦士風の男が気を取られた隙を突き


ーダッ!ー


 シトリーは一気に近付くと男の首元に短刀を突きつけていた。

「いい? あなたはこんな簡単な事にも対処できない新人なの。下手に首突っ込んで余計な仕事を増やされても困るのよ」

 シトリーはそれだけ言うと


ーパアアァァー


 自らの足元に魔法陣を生成し何処かへと転移して行ってしまった。去り際にフィーナに後始末よろしくとだけ言い残して……。

 随分と自分勝手な先輩も居たものである。冒険者達には力を見せ付けただけで投げっ放し。食事の代金も未精算、召喚した悪魔もそのまま放置。

「あ、すいません。僕帰りますね」

 シトリーに呼び出された悪魔は周囲の人間に軽く会釈して消えていった。彼も無理矢理呼び出された被害者だったのかもしれない。

 一応、残った冒険者達には軽く注意をしその場を片付け一件落着となった。

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