Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
あなたを忘れる方法を、私は知らない - 92.実は俺もそう思ってる
[go: Go Back, main page]

表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたを忘れる方法を、私は知らない  作者: 長岡更紗
光の剣と神の盾〜ストレイア王国軍編〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

93/451

92.実は俺もそう思ってる

ブクマ37件、ありがとうございます!

 アンナとグレイが入軍して、初めての秋の改変があった。

 その改編で、アンナは小隊長から隊長へと昇進した。今までと同じく、第六軍団スウェルの元での昇進だ。

 トラヴァスも第三軍団デゴラの元で、隊長への昇進を決めた。

 そしてグレイは、当初アリシアが言った通り、第一軍団から放り出されていた。

 手放されると同時に、戦闘隊である他の五軍団からグレイへと誘いがかかる。どの軍団も隊長職でのスカウトであった。戦闘隊のすべての将が、グレイを認めたということだ。

 結局はグレイ本人の意向で、クロバースが率いる第五軍団に入ることになったのだった。


 昇進が決まったその日、アンナとグレイはトラヴァスを誘って家で乾杯をした。

 赤いワインがグラスで揺れる。


「三人揃って隊長に昇進できるなんて、嬉しいわ」

「俺は三年目で、これでも早い方なのだがな。一年目で隊長など、二人は異常すぎるぞ」


 トラヴァスの言葉を受けて、アンナとグレイは目を見合わせて微笑んだ。

 ローズも小隊長になっていたので、ぜひ一緒にと誘ったのだが、トラヴァスが仲間内だけの方が気が楽だろうと、伝えもしなかったので彼女は来ていない。

 グレイとアンナは誕生日を迎えていて十九歳、トラヴァスは現在二十歳である。


「俺もアンナも二十歳での将を目指しているからな。滑り出しは良かったが、ここからだ」


 お祝いにと奮発したドラゴン肉のステーキを、グレイはがぶりと頬張った。

 しっかりと弾力のある肉から、じゅわりと肉汁が垂れる。


「いや実際、グレイはすでに将でもおかしくない器だと思うが。年間の行事や段取りがわかるようになれば、問題なく将になれるだろう」

「実は俺もそう思ってる」

「相変わらず自信満々だな、お前は」


 謙遜せず、隠そうともしないグレイに、トラヴァスはワインを飲みながらアイスブルーを半眼にした。


「仕方ない。それだけ俺は筆頭にしごかれたし、応えられるだけの力をつけてきたからな」

「けど、グレイだけが将になっても結婚はできないのよね。むしろ私が将にならなきゃ、意味がないわ」


 音を立てず一口大に切ったステーキを、アンナも口へと運んだ。

 とんでもない勢いで出世していく二人を見て、トラヴァスは呆れながら声を出す。


「もう結婚しているようなものだろう。そこまで必死になる必要もあるまい」

「まぁな。けど妊娠すると将になるのは一気に難しくなるからな。アンナが隊長止まりになるのはもったいないだろ。できないように気をつけてはいるけどな」

「なるほど」

「もう、グレイったら」


 納得するトラヴァスだが、あけすけに話されたアンナは少し恥じらいを見せた。意識を逸らすためにアンナはトラヴァスの方へと話を振る。


「トラヴァスとローズも付き合って長いんでしょう? 結婚の話は出ないの?」


 ローズに同じ話をした時、彼女は『どうかしら……あんまりそういう話をしないのよね、彼』と言っていた。

 ということは、ローズからは話をしていると判断して、興味本意で聞いてみる。

 するとトラヴァスは、軽く息を吐き出した。


「このままではいけないと、思ってはいる」

「ふふ、そうなのね。喜ぶわよ、ローズ」

「……どうだろうな」


 トラヴァスの言葉をポジティブに捉えたアンナは、逆の意味の可能性など考えもしなかった。


「それにしてもグレイは、クロバース様の隊を選んだのだな」

「あ、それ、私も気になってたのよね。デゴラ様の隊を希望するかと思っていたのに」


 入軍前はデゴラの隊を希望していたグレイだ。トラヴァスはいいところに配属されたと羨ましがっていたというのに、グレイの希望はデゴラ隊ではなくクロバース隊であった。

 二人の言葉に、グレイはニッと口の端を上げる。


「デゴラ様の隊は、隊長が一人体制だからな。俺が行くと、トラヴァスが出世できなくなるだろ?」

「っふ、言ってくれる」


 煽られたトラヴァスはしかし、無表情を崩さない。

 これはグレイにとって事実ではあるのだが、ただの揶揄いでもあるのだ。それをトラヴァスもわかっているので、怒ったりなどしないし、アンナも慌てたりはしなかった。


「さて、ここから誰が一番先に将になるかな? まぁ十中八九、俺だろうが」

「私も負けないわよ」

「後から来た二人には負けられんな。来年はカールも入ってくる。あいつも勲章持ちだから、班長以上からのスタートになるぞ」


 もう半年もすれば、カールが入軍してくる。それを皆は、誰よりもトラヴァスは、楽しみにしていた。


「今年の剣術大会は、当然のように一位を取ってたものね。カールが来るのも楽しみだわ」

「案外女にうつつを抜かして、昇進しないかもしれないぞ、あいつは」

「もう、またそんなこと言って。カールが聞いたら怒るわよ」


 グレイの揶揄いに、この場にいないカールの怒り顔を浮かべたアンナたちは笑った。

 そうして三人は楽しい時間を過ごし、食事が済むとお開きになる。

 玄関へと向かうトラヴァスを、アンナとグレイは見送った。


「今度はローズも一緒に食事しましょう」

「……そうだな、機会があればそうしよう」

「じゃあな、トラヴァス。気をつけて帰れよ」


 トラヴァスが靴を履き替えていると、客がいなくなるのを察知したディックが、二階から降りてくる。


「ではな。猫が後ろで待っているぞ。行ってやれ」


 アンナとグレイがディックに笑みを見せているのを確認して、トラヴァスは家を出た。

 宿舎までの道のりは、家や店の灯りでほんのり照らされている。秋の虫がどこかで鳴いていて、トラヴァスはその声を聞きながらアンナの笑顔を思い浮かべた。


──今度はローズも一緒に食事しましょう。


 トラヴァスとローズがうまくいっていると思って疑いもしていない、アンナの発言。


(アンナは女子会のあったあの日、俺とローズがホテルに向かったと思っているだろうから、無理もない。実際、それは当たっているしな)


 グレイの所属する第一軍団が飲み会だと知った直後、トラヴァスはすぐに恋人であるローズの元へと向かっていた。

 アンナとトラヴァスは友人ではあるが、お互いに恋人がいるのだ。二人っきりで食事にするのはさすがに憚られた。

 周りに見られてはなにを言われるかもわからないし、見られないようにアンナの家で二人きりになるのは、尚さらまずい話だ。グレイはいい気がしないということもわかっていた。友人を気遣ったトラヴァスは、ローズを頼ったのである。

 今までこんな頼みをしたことがなかったトラヴァスだ。ローズは驚いたが、すぐさま承諾した。ただし、ひとつの条件をつけて。


──食事を終えたら、久々にあなたとホテルに泊まりたいわ。


 ローズとの付き合いは続いていたものの、忙しいと言い訳をして、夜の方は長い期間が空いている。

 ヒルデと不貞した罪悪感が絡みつき、思い出したくもない行為がフラッシュバックして吐き気を催すため、敬遠していたからだ。

 しかしいつまでも避けるわけにはいかず、ローズの条件をトラヴァスは呑んだ。


 アンナの性格ならば、誰かを誘って食事に行くなどしない。

 だから強引にでも、アンナを食事に連れ出せる女性が必要だった。

 たとえそれが、行為(・・)と引き換えであったとしても。


 あの後、トラヴァスは約束通りローズとホテルに行き、情を交わした。

 すると、思ったほどには苦しみを感じなかった。

 時間が解決していくものなのかもしれないと、トラヴァスは少しほっとする。

 これならば、ローズへの愛情もいつか戻るかもしれない、と。


 しかしあれから数日。彼女への気持ちは大きく変化していなかった。今後変化するかもしれないが、まだなんとも言えない。

 間違いなく、大事な人であるには違いないというのに。


 それに気づくと同時に、トラヴァスは今まで考えもしていなかった感情に目を向けた。


 今回の件は、アンナが一人で食事をするというだけの話だったのだ。

 それくらいは誰にでもあり、躍起になって一人にさせまいと奮闘する必要など、ないはずである。

 しかし、トラヴァスは必死になっていた。

 アンナに寂しい思いをさせるまいと。

 グレイに頼まれたわけでもないのに。


 それに気づいた時、トラヴァスは愕然とした。

 仲間として大切だからというのは当然としても、トラヴァスはここまで干渉するタイプの人間ではない。それを自分でわかっていたからこその、気付きだった。


(そうか……だから俺は、 あの時(・・・)、リミッターを解除できたのか……)


 トラヴァスは唐突に当時のことを鮮明に思い出した。

 アンナがバイロンに反則されて負けた時のことを。

 トラヴァスは、それまで感じたことのない感情が全身を駆け巡っていた。

 その感情は怒りだと思っていたが、それだけではなかったのだと、今さらながらに気づいたのだ。

 当時のトラヴァスには彼女がいたし、アンナはトラヴァスより二つ年下で、若い頃はさらに幼く感じていたこともある。

 だからなにをするでもなかった。大切な仲間だと思っていた。

 その後、トラヴァスが彼女と別れた時には、アンナはグレイと付き合っていたし、カールはアンナを好きなのではないかとうすうす感じていたため、どうこうなることなどなかった。

 

 しかしもしも、お互いに〝いい人〟が誰もいない状態であったなら。


 そこまで考えて、トラヴァスは首を横に振った。


(まったく……カールのことを言えんな、俺も……)


 トラヴァスにしても、アンナとグレイを引き裂くつもりなど毛頭ない。

 二人とも、大切な仲間なのだ。


(俺はもっと、真剣にローズと向き合わねばな……ヒルデ様とのことを少しずつでも消し去っていけば、きっと元に……)


 トラヴァスはそこまで考え、いきなり込み上げた吐き気を抑えて。

 空に浮かぶ美しい月など見ることもなく、蹌踉としながら宿舎への道を歩いていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。

サビーナ

▼ 代表作 ▼


異世界恋愛 日間3位作品


若破棄
イラスト/志茂塚 ゆりさん

若い頃に婚約破棄されたけど、不惑の年になってようやく幸せになれそうです。
この国の王が結婚した、その時には……
侯爵令嬢のユリアーナは、第一王子のディートフリートと十歳で婚約した。
政略ではあったが、二人はお互いを愛しみあって成長する。
しかし、ユリアーナの父親が謎の死を遂げ、横領の罪を着せられてしまった。
犯罪者の娘にされたユリアーナ。
王族に犯罪者の身内を迎え入れるわけにはいかず、ディートフリートは婚約破棄せねばならなくなったのだった。

王都を追放されたユリアーナは、『待っていてほしい』というディートフリートの言葉を胸に、国境沿いで働き続けるのだった。

キーワード: 身分差 婚約破棄 ラブラブ 全方位ハッピーエンド 純愛 一途 切ない 王子 長岡4月放出検索タグ ワケアリ不惑女の新恋 長岡更紗おすすめ作品


日間総合短編1位作品
▼ざまぁされた王子は反省します!▼

ポンコツ王子
イラスト/遥彼方さん
ざまぁされたポンコツ王子は、真実の愛を見つけられるか。
真実の愛だなんて、よく軽々しく言えたもんだ
エレシアに「真実の愛を見つけた」と、婚約破棄を言い渡した第一王子のクラッティ。
しかし父王の怒りを買ったクラッティは、紛争の前線へと平騎士として送り出され、愛したはずの女性にも逃げられてしまう。
戦場で元婚約者のエレシアに似た女性と知り合い、今までの自分の行いを後悔していくクラッティだが……
果たして彼は、本当の真実の愛を見つけることができるのか。
キーワード: R15 王子 聖女 騎士 ざまぁ/ざまあ 愛/友情/成長 婚約破棄 男主人公 真実の愛 ざまぁされた側 シリアス/反省 笑いあり涙あり ポンコツ王子 長岡お気に入り作品
この作品を読む


▼運命に抗え!▼

巻き戻り聖女
イラスト/堺むてっぽうさん
ロゴ/貴様 二太郎さん
巻き戻り聖女 〜命を削るタイムリープは誰がため〜
私だけ生き残っても、あなたたちがいないのならば……!
聖女ルナリーが結界を張る旅から戻ると、王都は魔女の瘴気が蔓延していた。

国を魔女から取り戻そうと奮闘するも、その途中で護衛騎士の二人が死んでしまう。
ルナリーは聖女の力を使って命を削り、時間を巻き戻すのだ。
二人の護衛騎士の命を助けるために、何度も、何度も。

「もう、時間を巻き戻さないでください」
「俺たちが死ぬたび、ルナリーの寿命が減っちまう……!」

気持ちを言葉をありがたく思いつつも、ルナリーは大切な二人のために時間を巻き戻し続け、どんどん命は削られていく。
その中でルナリーは、一人の騎士への恋心に気がついて──

最後に訪れるのは最高の幸せか、それとも……?!
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
この作品を読む


▼行方知れずになりたい王子との、イチャラブ物語!▼

行方知れず王子
イラスト/雨音AKIRAさん
行方知れずを望んだ王子とその結末
なぜキスをするのですか!
双子が不吉だと言われる国で、王家に双子が生まれた。 兄であるイライジャは〝光の子〟として不自由なく暮らし、弟であるジョージは〝闇の子〟として荒地で暮らしていた。
弟をどうにか助けたいと思ったイライジャ。

「俺は行方不明になろうと思う!」
「イライジャ様ッ?!!」

側仕えのクラリスを巻き込んで、王都から姿を消してしまったのだった!
キーワード: R15 身分差 双子 吉凶 因習 王子 駆け落ち(偽装) ハッピーエンド 両片思い じれじれ いちゃいちゃ ラブラブ いちゃらぶ
この作品を読む


異世界恋愛 日間4位作品
▼頑張る人にはご褒美があるものです▼

第五王子
イラスト/こたかんさん
婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。
うちは貧乏領地ですが、本気ですか?
私の婚約者で第五王子のブライアン様が、別の女と子どもをなしていたですって?
そんな方はこちらから願い下げです!
でも、やっぱり幼い頃からずっと結婚すると思っていた人に裏切られたのは、ショックだわ……。
急いで帰ろうとしていたら、馬車が壊れて踏んだり蹴ったり。
そんなとき、通りがかった騎士様が優しく助けてくださったの。なのに私ったらろくにお礼も言えず、お名前も聞けなかった。いつかお会いできればいいのだけれど。

婚約を破棄した私には、誰からも縁談が来なくなってしまったけれど、それも仕方ないわね。
それなのに、副騎士団長であるベネディクトさんからの縁談が舞い込んできたの。
王命でいやいやお見合いされているのかと思っていたら、ベネディクトさんたっての願いだったって、それ本当ですか?
どうして私のところに? うちは驚くほどの貧乏領地ですよ!

これは、そんな私がベネディクトさんに溺愛されて、幸せになるまでのお話。
キーワード:R15 残酷な描写あり 聖女 騎士 タイムリープ 魔女 騎士コンビと恋愛企画
この作品を読む


▼決して貴方を見捨てない!! ▼

たとえ
イラスト/遥彼方さん
たとえ貴方が地に落ちようと
大事な人との、約束だから……!
貴族の屋敷で働くサビーナは、兄の無茶振りによって人生が変わっていく。
当主の息子セヴェリは、誰にでも分け隔てなく優しいサビーナの主人であると同時に、どこか屈折した闇を抱えている男だった。
そんなセヴェリを放っておけないサビーナは、誠心誠意、彼に尽くす事を誓う。

志を同じくする者との、甘く切ない恋心を抱えて。

そしてサビーナは、全てを切り捨ててセヴェリを救うのだ。
己の使命のために。
あの人との約束を違えぬために。

「たとえ貴方が地に落ちようと、私は決して貴方を見捨てたりはいたしません!!」

誰より孤独で悲しい男を。
誰より自由で、幸せにするために。

サビーナは、自己犠牲愛を……彼に捧げる。
キーワード: R15 身分差 NTR要素あり 微エロ表現あり 貴族 騎士 切ない 甘酸っぱい 逃避行 すれ違い 長岡お気に入り作品
この作品を読む


▼恋する気持ちは、戦時中であろうとも▼

失い嫌われ
バナー/秋の桜子さん




新着順 人気小説

おすすめ お気に入り 



また来てね
サビーナセヴェリ
↑二人をタッチすると?!↑
― 新着の感想 ―
トラヴァス、意外でした。 本人も無自覚……だったとは。 ローズはおそらく勘づいているかも。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ