暗黒の地 ユウマ
次の日、朝食を食べ、僕が1番最初に話すことを伝えれば、マコトは執務室へと案内してくれた。
「では、貴方のこれまでの事を私に教えてください。 そうですね・・・。 まずは本名から。 漢字も教えて下さい」
「水瀬優真。 漢字は流れる水の水に瀬戸際の瀬、優しいに真実の真で水瀬優真です」
「なるほど。 とても良いお名前ですね。 誕生日と血液型を」
「3月31日生まれで、血液型はABです」
「なるほど。 3月31日ですか・・・。 これはまた興味深いですね。 年齢は?」
「17です。 あの・・・これって必要なんですか?」
「必要か不必要かではありません。 ただ私が知りたいだけなのです。 家族構成は?」
「両親と兄と妹がいます。 5人家族で全員同じ家で暮らしています」
まるで面接のような形でどんどん質問が進んでいく。
「では、これまで水瀬優真として、どう生きて来たのか教えて下さい」
こうして、僕はこれまでどんなふうに生きて来たのか、何を思って生活してきたのかを話し始めた。
とは言っても、長く生きてきたわけでもない僕は、すぐに話し終えてしまうだろう。
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生まれ育った地域はとても寒く、冬になれば雪が降り積もる。
そんな場所で僕は17年間過ごしてきた。
幼い頃、両親から聞く話では大人しい子で、自己表現の苦手な子だったらしい。
小学校に上がる頃には、兄の影響でゲームが好きな子供になっていた。
学校ではよく本を読んでいて、家に帰ればゲームをする。
そんな毎日の繰り返しだった。
5年生に上がった時、転校してきた1人の男の子がいた。
その男の子と意気投合しお互いの家に行って、ゲームばかりしていた。
お互い勝ったり負けたり、勝負事が好きな男の子だった。
そんな時、その男の子が珍しく言いにくそうな顔で話し始めたことを覚えてる。
「優真は好きな子いる?」
それまで、そんな話はしたことが無かった。
確か、小学校の卒業式の前の日だった。
「好きとかそういうの、僕にはまだ分からないかなぁ」
「そっか! 俺は好きな子いるぜ」
そうして教えてくれた人は、クラスの中でも人気な女の子だった。
なんでも、プリントをばら撒いた時に一緒に拾って手伝ってくれたことがきっかけで好きになったらしい。
今思えば、小学生の男の子の好きになる理由なんて単純なものだと思う。
そんな彼は、好きな子が同じ中学校に行かないことを知って、卒業式の日に告白をした。
でも、彼の告白に返ってきた返事は良いものではなかった。
「私、好きな男の子いるの」
「そっか・・・。 ちなみにだけど、その男って誰?」
「水瀬君・・・」
「理由、聞いてもいいか?」
「うん。 きっと水瀬君は覚えていないかもしれないけど、入学式の日に転んじゃった私にハンカチを貸してくれたの。 その時に、女の子なんだから傷があるとダメだよって。 その時に笑った水瀬君の顔が忘れられないんだ」
「そっか。 教えてくれてありがとな。 じゃあ、中学でも頑張れよ」
僕は彼の頼みで近くから応援していた。
女の子の言葉もはっきり聞いてしまい、いてもたってもいられず、僕はその場から逃げるように帰った。
中学校はクラスが多く、仲が良かったその男の子とは3年間同じクラスになることは無かった。
彼はバスケ部に入ったみたいで、登校も下校も時間が被ることはなかった。
彼と出会う前の生活に戻り、学校では本を読み、家に返ればずっとゲームをしていた。
1つ違うことがあるとすれば、ゲームで出会った1つ上の男の子と出会ったことだ。
チャットでやり取りをしたり、オンラインで一緒にゲームをしたり、これといって特技の無かった僕は、高校生に上がっても、似たような生活を送っていた。
高校生に上がって、週に2回ほどバイトをして、自分で稼いだお金でゲームを買うようになった。
バイト先で、後輩ができたときは嬉しくて、親身に相談に乗ったりしていた。
ただ、後輩ができたということが嬉しかっただけなのに、好意を持たれ、告白されるようになった。
断ったら、酷い、弄ばれた、そう言われてその女の子は辞めて行った。
しかし、店長がとても気さくな人で色んな話をしていたこともあって、僕は何も悪くないって良く慰めてもらっていた。
そのバイトも、漫画やゲーム、後はカードなんかも扱っている場所だったから、ゲーム好きが集まりやすかった。
バイトが無い日、次の日が休みの日はチャットで知り合った1つ上の人とゲームをして、夜更かしなんて当たり前になっていた。
この世界に来るまでは、そんな生活が当たり前だった。