暗黒の地 消耗
「ハヅキ。 大丈夫か?」
「ええ。 大丈夫よ。 少し部屋で休ませてもらうわね」
「後で軽く食べられるもの持って行く」
ハヅキが出てきて、アサヒが声をかける。
僕達の見たこともないような表情で、アサヒ以外誰も声をかけられなかった。
ごめんなさいねと言いながら笑うハヅキだったが、その笑顔には似つかない程、苛立ちを隠しているのが分かった。
「ハヅキ大丈夫かな」
「悪い。 あまり詮索しないでやってくれ」
「誰にでも触れられたくないことがあるのは分かってる。 何も話してくれなくてもいい。 それでも、やっぱり心配っていうのは後でハヅキに伝えてほしいな」
「ミカの言葉はハヅキにちゃんと伝える。 悪いな」
「ううん」
「ゲームの世界にしろ、現実の世界にしろ、何かある人間がここに集められてるような気がするんだよね。 僕はこの世界で本当に色んな事があったから」
「そうかもしんねぇな。 明日はモモだろ? 大丈夫か?」
レンの言葉に反応せず、何かを考えているかのようにぼーっとしていた。
「モモ? 本当に大丈夫?」
「え? あ、ごめんミカ! 大丈夫だよ! 私も色々あるけど、そんな大したことでもないし、明日サクッと終わらせてくるよ!」
「本当に大丈夫か?」
「レンってば心配性なんだから! レオンもそんな心配そうにしないで?」
そう言って笑うモモを心配そうに見守る。
マコトは何か難しい問題を出してくるわけじゃないけど、精神的にくるものを、言ってしまえば踏み込まれたくない場所を土足で上がってきて更に踏み荒らしてくる感じだ。
自分がどんな風に生きて何を思ってきたのか、聞く分には簡単だろう。
でも、いまだに過去を乗り越えられていなかったり、ずっと後悔し続けたりしている人からしたら相当しんどいもの。
マコトはそのしんどいものを知りたいのだろう。
「ハヅキのメンタルって意外と強いんだが、そのハヅキがあんな風になるってことは相当だ。 モモ、今日は早めに休んだ方が良い」
「アサヒの言う通りだぜ。 モモ、今日はもう飯食って風呂入ってゆっくり休め」
「なんならあたしが一緒に寝てあげようか!」
「え? もー、大丈夫だよ! そんなに心配しないで! 皆の言う通り、ご飯食べてゆっくりお風呂入って明日に備えて寝ることにするね。 それじゃ、また明日」
「俺もハヅキに軽く食べれるものを持って行くからこれで失礼する」
そう言ってモモとアサヒは部屋から出て行った。
残されたのは僕とミカ、それにレンだけ。
「レン、昨日は皆がいたから言えなかったんだけど、マコトとの話でもしかしたら、アイさんがその・・・」
「分かってる。 もしかしたらアイが死んだときの映像もう1回見せられるかもしれないな」
「うん・・・」
「大丈夫だ。 ミカだって1回死んで生き返っただろ。 アイだってもしかしたら生き返らせられる何かあるかもしれねぇ」
「そうだよね。 あたしもアイに生き返ってほしいもん」
2人はこう言っているけど、アイさんが死んだときは現実の映像が出てきた。
ミカが死んだときはその映像は出てこなかった。
それって、関係あるんじゃないかな・・・。
でも、2人にはやっぱり言えないな。
「んじゃ、とりあえず飯でも食うかー。 今日の飯なんだろうな。 ここの館で出てくる飯全部美味いよな」
「確かに! あのレストランとどっちが美味しいかな?」
「僕はどっちも美味しいと思うよ」
「ユウマは大体なんでも美味しいって言うじゃん!」
そんなの皆で食べるご飯が、好きな子と食べるご飯が1番美味しいに決まってるよ・・・。