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先輩と後輩シリーズ - 第108話 バンブーゲット 中編
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第108話 バンブーゲット 中編

 それから一週間、私と武本は進路相談室に三室先生から呼び出されていた。

 私たちは隣に座り、正面の三室先生はプルプルと震えている。


「……お前たちが呼ばれた理由はわかるよな」

「私は月に行きます!」

「うん、竹取は分かってるみたいだな」


 投げやりな三室先生は、私から目を逸らし、武本に視線を移す。


「で、武本は?」

「……まだ、進路希望調査の紙を出してない事です」


 私は隣の武本を横目でちらりと見た。

 あれから、出してなかったのか。


「……出し忘れじゃないよな」

「はい、先生、俺自分のやりたいことがわからなくて」

「取り敢えず、自分の学力にあった大学に行くんじゃ駄目なのか?」


 武本は俯く。


「……なんか、それじゃダメな気がして」

「……そうか」


 三室先生は怒っている様子はない。

 こんな感じの生徒を今までにも見てきたのだろう。


「武本は竹取と違って真面目だからな。色々考え過ぎたんだろう」


 失礼な私も真面目だ。


「でも、それは良い事だよ。あと一週間待ってやるから、そしたら出しに来なさい。竹取は頼むから出し直してくれ」


 三室先生は私と武本で明らかに態度が違った。

 差別だ。




 二人して進路相談室を出ると武本に話し掛けた。


「まだ、出してなかったの?」

「……まぁな」


 武本は気のない返事をする。


「高校でもやりたいこと見つからなかった俺が、このまま大学に行ったって自分のやりたいこと見つかる保証なんてないよな」

「うん、ないね」

「……即答かよ」


 私は並んで歩いていた廊下で、武本より一歩前に出る。


「でも、出さなきゃ、三室ちゃん困ってたし」

「困ってた原因の大半はお前だと思うけどな」


 私は私達二人しか歩いてない廊下でクルッとターンをして武本と正面で向かい合う。


「受け身で見つかる人もいれば、探しても中々見つからない人もいる。自分のやりたいことを見つけられるかに関しては運だよ。断言できる。でも、運だからって何もしなくていいわけじゃない。キッカケなんて案外その辺に転がってるから頑張ってみな」


 武本は顔を落とす。


「簡単に言うなよ。俺みたいな普通を絵に描いた人間が出来る事なんて限られてるんだ」


 私はこの時、思った。

 月に行く前にやり残した事をしよう。


「……キッカケ欲しい?」


 武本は顔を上げた。


「くれるものなら、何でも貰うよ」

「じゃあ、さっき購買で買った私の飲みかけのペットボトルを」

「それはいらない」


 ちぇ、冷たいな。

 いくら年中おちゃらけてる私でも緊張はするのにな。



「武本、私の事好きでしょ?」



 武本は一瞬目を見開くと、赤くなって顔を逸らした。

 そんな可愛い顔も出来たのか。

 私はそれを肯定と受け取る。


「なら、いつか月に遊びにおいでよ」


「……それは俺に宇宙飛行士にでもなれってことか?」


「正解!」


 私は親指を立ててウインクする。


「……お前、俺の成績知ってる?」

「中の下?」

「そうだよ、こんな特別な進学校でもない高校の中の下だ。無理に決まってんだろ」

「決まってんの?」

「決まってるよ、宇宙飛行士ってのは選ばれた一部の人間のさらにそれまたその中から努力した人間にしかなれないんだよ」

「そこは、かぐやちゃん大好きパワーで何とかなるでしょ」


 武本は少し呆れた顔をする。


「とんでもない自惚れを言ってくれるな。俺みたいな普通の高校生の普通の恋した力にそこまでの力はねーよ」


「今がキッカケだよ」


 武本はその言葉に黙った。


「欲しかったんでしょ、キッカケ」


「無理だろ」


 今度は何とか声を振り絞った。

 でも、その声は弱々しい。

 みんな、知ってるんだ。

 キッカケはそこら中に転がってる。

 でも、それは意外に難しかったり、普通とは違ったり、失敗する可能性も高かったりと飛び込むのに勇気がいることだらけだ。


「月に来れたら、チューしてやろう」

「世界一難易度の高いチューだな」


 武本は今、悩んでいる。

 悩むことは良い事だ。

 三室ちゃんも言ってた。

 私は彼の進路を選択肢の一つを提供しただけでも勇気を出したかいがあった。


「大丈夫だって、ちょっとスマホゲーを我慢すれば、宇宙飛行士ぐらいあっという間だよ」


 私は、照れくささを隠すために彼の背中を叩く。


「お前、俺がどんだけスマホゲーしてると勘違いいてるんだよ」

「でも、スマホゲー同好会の部長、部を引退してからスマホゲーをやめて半年で東大合格したみたいだよ」

「そんな同好会があったのか」

「うん、部員は最近セルラン上位のゲーム極め過ぎて、逆にセルランの低いゲームばっかりやりこんで、いつ配信停止になって今自分たちが費やしてる時間が無駄になるかのスリルを楽しんでるんだって」

「末期じゃねーか! 俺はそいつらと同列に考えられてたのかよ」


 そんな他愛のないおしゃべりをしていたら、あっという間に下足箱だ。


「じゃあ、頑張って宇宙飛行士になれよ」

「だから、無理だって」


 そう言った武本の顔は進路相談室を出た時より少し明るくなってた気がする。




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