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転生のホムンクルス-最強勇者は魔法が存在する現代日本に転生しました- - 第3話『冒険者、ランドセルを背負う』
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転生のホムンクルス-最強勇者は魔法が存在する現代日本に転生しました-  作者: エア


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第3話『冒険者、ランドセルを背負う』

 翌朝。

 アレックス・ホークは玄関で仁王立ちしていた。肩から下げたのは新品の黒いランドセル。だが、勇者だった彼にとって、それはまるで鎧の代わりに背負わされた恥辱の荷物のように思えた。


「くっ……よりによってランドセルだと……? 俺は冒険者、勇者アレクだぞ! こんな子供の鞄など似合うわけが……」


 ぶつぶつ文句を垂れるアレクに、レンは台所から顔を出し、ぱちんと手を叩いた。

「似合ってるよ! すっごく可愛い!」

「可愛いって言うな!」

 アレクは顔を真っ赤にし、肩をいからせる。

「写真を撮っても良い?」

「撮らなくて良い!」

 なんやかんやで楽しい会話を繰り広げる二人の隣で腕を組むジンは冷たい声で告げた。

「子供の姿をしている以上、それが一番自然だ。周囲に怪しまれるよりはマシだろう」


「ぐぬぬ……」

 言い返せず唸るアレク。こうして彼の日本での小学生生活が始まった。


「転入生のアレク君です。みんな仲良くしてあげてね」


 担任教師に紹介され、アレクは渋々と前に出る。

「……アレックス・ホークだ。よろしくな」


 堂々たる声に、教室の空気が一瞬引き締まる。だが次の瞬間、クラス中がざわめいた。


「なんかすごい雰囲気……真っ白だし」

「名前からして、外国人?」


 アレクは(くっ、最悪だ……)と心の中で頭を抱えた。


  午前の算数。黒板には、割り算の問題がずらりと並んでいた。

 アレクは鉛筆を握りしめながら、必死に式を追う。

(……くそっ、なんだこの呪文みてぇな数字は! 複雑すぎて分かんねぇ!)

 頭が真っ白になり、ノートは真っ白のまま。鉛筆の先だけが虚しく震えていた。

 そんなとき、隣の席の少女がそっとノートを差し出した。

「……あの、これ。見せてあげる」

 アレクが顔を上げると、柔らかな笑顔がそこにあった。

 黒髪を肩で揺らす小柄な少女。少し恥ずかしそうに、でも真っ直ぐな瞳で彼を見ている。

「お、おう……助かる」

 ノートには丁寧な字で式が整理され、解き方の手順が一目で分かるようにまとめられていた。

 アレクは感動し、思わず口元を緩めた。

(おぉ……すげぇ。俺が解けなかったやつを、コイツはこんなに分かりやすく……!)

 少女は小さな声で自己紹介した。

「わ、私は……カスガイ・ミユ。これからよろしくね、アレク君」

「呼び捨てでいい。……ありがとな、ミユ」

 短いやり取りだったが、アレクの胸の奥にあたたかいものが灯った。


「おい、新入り!」


 がらりと机を叩く音。

 立ちはだかったのは、体格のいい少年だった。おそらく彼は、クラスのガキ大将的存在なのだろう。背後には、やたら調子のいい子分の少年が控えている。


「誰だ、お前?」

 アレクが眉をひそめる。

 カズマは顎をしゃくり上げ、ミユを一瞥した。


「俺はアンドウ・カズマ。コイツが子分のイノウエ・ユウタだ」

「へぇ、そうか。それがどうしたんだ?」

「お前、ミユと仲良くしてんじゃねぇよ。あいつは俺の幼なじみなんだ!」


 ユウタも横で声を張り上げる。

「そうだそうだ! 転校生のくせに、調子に乗ってんじゃねぇ!」


 教室が一気にざわめき、視線が集まる。


 (……なるほどな。こいつら、俺がミユと話したのが気に食わねぇわけか)

 アレクは小さく息を吐き、机から立ち上がった。


「ふん。誰と仲良くするかは俺が決める。勇者アレックス・ホークは、誰に命令される筋合いもねぇ!」


「はぁ? ゆーしゃぁ? 何だそりゃ!」

 カズマが鼻で笑い、ユウタが「へっ、頭おかしいんじゃね?」と茶化す。


 アレクの額に青筋が浮かぶ。

「……売られた喧嘩は買うぜ。かかってこい!」


「上等だ! 表出ろ!」


 場所を校庭に移すと、周囲にはクラスメイトが集まり、即席の観客席ができていた。


 校庭の真ん中に二人が向き合うと、周囲をぐるりとクラスメイトが囲んだ。

 ざわざわと期待に満ちた声が飛び交う。


「いけーカズマ!」

「転校生なんかやっちまえ!」


 土の匂い、太陽の熱気、子どもたちの歓声。どれも戦場の殺気とは違うが、不思議と胸が高鳴った。


「いくぞ、新入り!」

 カズマが吠えるや否や、地面を蹴った。

 その突進は、子どもにしては驚くほど速い。拳を振り下ろす勢いに、アレクはわずかに目を見張った。


「悪くねぇ!」


 アレクは反射的に身をかわす。だが――子どもの身体は思うように動かない。

 筋肉の張りも、脚力も、全盛期の三分の一にも満たない。足がもつれ、バランスを崩す。


「ちっ……!」


 拳が頬をかすめ、衝撃で視界がぶれる。

 周囲から「おおっ!」と歓声があがった。


 アレクは踏みとどまり、低く構える。

(身体はガキでも……技は染み付いてる!)


 次の瞬間、カズマが二撃目を放つ。振り抜く腕を最小限の動きでいなし、肩口を狙って拳を差し込む。

 だが――。


「ぬおっ!?」

 拳は当たったが、子どもの腕力ではカズマを倒しきれない。逆に押し返され、地面に転がされる。


「ははっ、やっぱ新入りは弱ぇな!」

 カズマが勝ち誇り、ユウタが「やっぱりカズマが最強だ!」と叫ぶ。


 アレクは土を払って立ち上がる。口元に笑みを浮かべた。

「……いいや、まだだ」


 呼吸を整え、掌に魔力を込める。

 小さな身体の奥底から、微かな光がにじみ出す。


「なっ……手が光ってる!?」

 カズマが目を見開き、周囲の子どもたちがどよめいた。


「俺は勇者だ。魔王と戦った男だ。子どもの身体でも、俺の魂は折れねぇ!」


 アレクが叫びとともに掌を振り抜く。

 瞬間、風が渦を巻き、校庭の砂を巻き上げた。

 ざあっと砂煙が広がり、観客が「うわぁぁ!」と声をあげる。


「こ、こんなの反則だろ!」

 カズマが顔をしかめながらも突っ込んでくる。

 アレクは砂煙の中でその気配を捉え、足を一歩踏み込んだ。


「まだ甘い!」


 交差する拳と拳。

 ぶつかった瞬間、骨に響く衝撃が走り、二人同時に数歩後退した。


 互いに泥だらけで、息も荒い。だが、その目だけはぎらぎらと輝いていた。


「……お前、ただの転校生じゃねぇな」

 カズマが口元を吊り上げる。


「ふん、そっちこそ悪くねぇ」

 アレクも笑った。


 その瞬間、二人の間に奇妙な熱が生まれた。

 敵意でも憎悪でもない――戦った者同士だけが分かち合える、仲間意識のようなもの。


「お前、気に入った! これからは友達だ!」

 カズマが大声で言い、アレクも頷いた。

「望むところだ!」


 歓声が校庭に響き渡り、子どもたちは拍手喝采した。


 次の瞬間、二人は同時に笑い声をあげた。

「はははっ!」

「お前、気に入った! これからは友達だ!」


 歓声と拍手が校庭に響く。

「すげー! アレクとカズマが友達になった!」

「男の友情ってやつだな!」


 輪の外で見ていたミユは呆れ顔でため息をついた。

「もう……男の子って本当に単純」

 それでも彼女は安堵の笑みを浮かべた。


 一方その頃、レンは高校の教室で友人たちに囲まれていた。


 「ねぇ、レン。最近一緒に住んでる“子供”って本当?」

 「う、うん……ちょっと事情があってね」

 「ふーん。でもなんか楽しそうだよね」

 「まぁ……楽しいっていうか、ドタバタっていうか……」


 レンは苦笑しつつ、アレクが騒ぐ姿を思い出していた。


(アレク君、大丈夫かなぁ……ちゃんと学校に馴染めてるといいんだけど)


 夕暮れ。水鏡屋に戻ると、アレクは玄関で仁王立ちしていた。


 夕暮れの水鏡屋で、アレクはランドセルを放り投げながら叫んだ。

「聞けレン! 俺は今日、算数で玉砕したが、新しい友達ができたぞ!」

「えっ、ほんとに!? すごいじゃんアレク君!」

「しかも、メチャクチャ優しくて……ノートを見せてくれて……」

 頬を赤くしながら語るアレクに、レンはじとっとした目を向けた。

「……ふーん。その子、もしかして女の子?」

「な、なぜ分かった!?」

 すると、背後からはジンの冷たい声が降ってきた。

「……妹の前でデレデレすんな。変態ロリコンクソガキ」

「やめろ! 俺はただ感謝してるだけだ! あと、カズマやユウタと男の友情を結んだ」

「へぇ、男の子とも仲良くなったんだ。これなら学校生活も楽しめそうだね」

 夕焼けに染まる店内に、今日も三人の声が響いた。

アレクが元いた世界では、学校は都会の人間や奨学金を使った人が通うところです。

村の人間は親や村長から読み書きや計算などを学ぶのが普通です。

ちなみに、アレクは簡単な読み書きは出来ますが、世界の言語(日本語)を読むことはできません。

英語ならできそうけどね…。

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