75 引き金
一夜明けて、ルキアスは昨日の続きだ。
昨日までに蒸気タンクと噴出口周りは形になった。まずは蒸気タンクがあり、それに連結してタンクの噴出口に栓をする鉄棒とその鉄棒を支持する箱がある。
これからするのはその鉄棒を支持する箱の先、銃を構える時には銃床側になる位置に引き金を付け加えることだ。
引き金を引くまで鉄棒が後退してはいけない。だからこの鉄棒の下側の突起には片端が直角に二度曲がった鉤型をした厚めの鉄板を引っ掛ける。これがストッパーだ。ストッパーは銃床に引っ掛けるように配置する。しかしただ置いただけでは鉄棒の突起に引っ掛からないため、タンク側を板バネで跳ね上げる。
ストッパーを下げるにはくの字に曲がった引き金を鉤型の部分に引っ掛ける。これで引き金を引けばストッパーが鉄棒の突起から外れ、蒸気に押された鉄棒が後退、タンクの噴出口が開いて蒸気が噴き出ることになる。
板バネは鉄の箱の底をコの字にくり抜いて上に曲げたような形ではあるものの、ルキアスはその手順では作れない。そんなイメージで作るだけだ。だから、板バネ部分は箱の穴とは一致しない四角い穴となった。その穴は引き金の可動域となる。
そうこうする間に体術講習の時間にもなって、今日のルキアスは横受け身の練習に励んだ。
次回は前回り受け身らしい。
今回も『車窓の君』には見向きもされなかった。
今日の講習を受け終わって昼食を摂った後は朝の続き。
しかし形さえ決まれば意外と簡単に組み上がるものだ。ネジ付けではなく『捏ね』での融着だから組み立てかは微妙だが。
因みに鉄を一体化させる場合、双方に『捏ね』の魔法を掛ける。片方にしか掛けない場合は一体化しない。この性質を利用すれば様々な応用が利く。ただこれは鉄のような手で触っただけでは繋がったりしないものの場合のみだ。パン種のようなものなら一体化させたくなくても一体化してしまう。本来の使い道ではそれほど融通は利かないのである。
次に必要なのは蒸気に押されて後退した栓の鉄棒を再度タンクに押し込む仕組みだ。銃の右側にレバーを設け、前に押し込む。レバーの付いたバーツと栓は一体化させない。もしも一体化させたら発射時にレバーが勢いよく後退して極めて危険だ。だから同じ理由でタンクに栓を押し込んだレバーは直ぐに後に戻して固定する。レバーを倒せば固定も容易だろう。レバーを引き戻さなければ発射できない仕組みまで作れれば完璧だが、構造が更に複雑になるため今のルキアスには無理だった。