04.他人のスキルを進化させる
ここから短編の続きです!
俺、ヒラク・マトーは外れスキル【開】のせいで、実家を追放された。
街を目指してる途中、ハーフエルフの奴隷少女ミュゼを助けたのだった。
『条件を達成しました』
「! また……この半透明の窓が……」
俺の目の前には半透明の窓が開いてる。
これはミュゼにも見えないらしい。
「いったいこれはなんなのだ?」
「ヒラク様。実は一つ思い当たることがあります」
「この窓についてか?」
「はい。それはもしかしたら、【ステータスウィンドウ】かもしれません」
「ふむ? ステータス、ウィンドウ?」
聞き覚えのない単語だ。
「かつて、異世界から召喚された勇者様が、その【ステータスウィンドウ】、縮めて【ステータス】という物を見ることができたそうです。その窓には本人の能力を数値にしたものや、所有するスキルが表示されていると」
「ふむ……なるほど。ステータスか。しかし、これをステータスだとどうして言い切れる? そもそもミュゼは、どうしてそれを知ってる?」
「私の母の母……祖母が、異世界の勇者様と旅をしたことがあるそうです。そのときに、ステータスの存在を聞いたと」
なるほど……エルフは長生きだ。
いにしえの時代の勇者がいた時代に、ミュゼの祖母が生きていたといても、不自然ではない……か。
しかし勇者、たしか魔王を倒すために異界から召喚された存在だという。
魔王討伐したあとどうなったのかは、文献には残っていなかったはず……。
なぜ俺にもその異世界の勇者と同じ力が宿ってるのか?
……わからない。
そもそもステータスについても、【開】についても、何もかも知らないことばかりだ。
じっくりと検証したいところだが……。
ここは魔物がうろつく草原のど真ん中。
手負いが一名、そして婦女子が一名。
ここであれこれ考えてる間に、敵に襲われる可能性がある。
それにまごまごしてると日が暮れてしまう。装備もなく野営するのは自殺行為だ。
ということで、【開】やステータスについて、考えるのは一旦保留とし、とりあえず近くの街へ急ぐとしよう。
「ミュゼ。街へ移動しよう」
「かしこまりました……あっ!」
歩き出そうとすると、ミュゼがその場にしゃがみ込んでしまった。
痛がるそぶりを見せたのが気になり、俺はそばに寄ってしゃがむ。
「申し訳ありません、灰狼に足を……」
「そうか……足をかみつかれていたか」
「はい……ですが、大丈夫です! これくらいならなんとも……あっ」
再度立ち上がろうとしてミュゼがへたり込む。
彼女の白く美しい左足には、痛ましいかみ傷があった。これでは長距離は歩けないだろう。
「ふむ……困ったな。あいにくポーションは持ち合わせていない」
治療薬もなければ、治癒魔法もない。
怪我を治す手立てはない。負ぶっていくにしても、俺も手負いだ。
「治癒魔法が使えれば……」
「あ、あの! 私……治癒魔法、使えます」
「なんと。しかし……治癒魔法が使えるなら、どうして使わない?」
すると彼女は申し訳なさそうに事情を語った。
「実は……私はあるときから、魔法が自由に扱えなくなったのです」
「魔法が……使えなくなった? 原因は?」
「わかりません。ただ……一時を境に、明らかに魔法の成功確率が下がったのです。原因が取り除ければ、治癒魔法で私の足も、そして、ヒラク様の怪我も治せるのですが……」
魔法の成功確率を、下げてる原因……か。
本をたくさん読んできたが……。
「たしかに、そういう状態異常を起こすものは、いくつかある。だが、いくつもあって、どれが原因かは特定できない。何か特定できれば……」
特定……。
そうか。俺はさっき、自分のステータスを開いたときに、所有していたスキルを思い出した。
俺はもう一度自分の腕に触れて、【開】を発動させと念じる。
~~~~~~~
ヒラク・マトー(15)
体力 8/100
魔力 50/100
SP 120
【職業】
開
【所有スキル】
・ステータス操作(SSS)
・アイテムボックス(SSS)
・最上級・鑑定(SSS)
・最上級・氷属性魔法(SSS)
・中級・剣術(C)
・開錠(SSS)
~~~~~~~
ステータスが開けた。
ん? 体力と魔力が減ってる。
なるほど、さっき灰狼と戦ったときに、魔法を使ったので魔力が減った。
体力は……怪我を負ってるから減ってるのだろう。
それに……ふむ?
SPが増えている? いや、それはどうでもいい。問題は、所有スキルの欄だ。
「これだ……【鑑定】!」
俺は鑑定スキルを、ミュゼに向けて発動した。
~~~~~~~
ミュゼ・アネモスギーヴ
【職業/スキル】
・賢者
【状態】
・奴隷契約(契約者:ヒラク・マトー)
・封魔の呪詛
~~~~~~~
ステータスウィンドウに、ミュゼの鑑定結果が表示された。
これが……鑑定スキルを使ったときに見える、光景か。
「ナニをなさってるのですか?」
「…………」
鑑定スキルは、世界でも数えるほどしか所有者がいない。
無意味に口外するのはリスクは高い……が。
ミュゼは俺と奴隷契約を結ばれている。
俺の不利益になる情報は外には出せない。なら……いいか。
「鑑定スキルを使った」
「か、鑑定!? す、すごいです……所持してる人間は、世界でも数えるほどしかいないのに……」
「ああ、だから、このことは内密にな」
「は、はい! もちろん!」
しかし鑑定スキル……思ったより読み取れる情報が少ないな。
体力や魔力を見ることができないし、所有スキルも……いや、待て。
【職業/スキル】
・賢者
どういうことだ?
職業とスキルが一緒になってる……?
俺のステータスウィンドウには、職業と所有スキルは別々に表示されていた。
もしかして、鑑定スキルで読み取れる情報と、【開】を使って見れるものは、ちがうのか……?
【開】のほうがより詳しく見れる……とか?
俺は状態欄の【封魔の呪詛】に、触れる。
『封魔の呪詛に、スキル開錠を使用しますか?』
「!? なん……だと?」
開錠?
そんなスキルあったろうか。
俺はより詳しく封魔の呪詛とやらを調べようと触れたのだが……。
俺のステータスを見ると、たしかに開錠とやらのスキルが増えていた。
俺は開錠の文字に触れる。
■開錠(SSS)
→ステータス操作から派生。SPを消費することで、他者(他物)のステータスに干渉できる。
「開錠……。他者へのステータス干渉、だと……?」
この文面通りならば、ミュゼのステータスに干渉し、この呪詛を取り除くことも可能かもしれない。
『封魔の呪詛に、スキル開錠を使用しますか?』
「イエス」
『封魔の呪詛を、どうしますか。以下より選んでください』
『解除(SP5消費)』
『スキル封魔への進化(SP10消費)』
……ふむ。
解除はわかる。呪詛が取り除かれるのだろう。
問題は、進化……?
俺は封魔をタップする。
■封魔(S)
→状態異常魔法の一つ。発動中、対象は魔法が使用不可となる
……なるほど。
開錠、なかなかすごいぞ。
SPを消費することで、他人のステータスに干渉できる。
ステータスの干渉とはつまり、書き換えたり、取り除いたりするってことだ。
……なんてことだ。
職業スキルは、一度授かったら増えることも、減らすこともできない。
もらったスキルは一生そのまま、それが、当たり前だ。
……しかしこの【開】、そこから派生したステータス操作、そして開錠があれば、自分も、そして他人のスキルさえも、自在に操れるなんて……。
「これはひょっとして……すごいことなんじゃあないか……?」
いや、思索にふけるのはこれくらいにしておこう。
今は治療が先決だ。
『封魔の呪詛に、スキル開錠を使用しますか?』
「イエス。SPを10消費し、封魔の呪詛を進化させる」
『封魔の呪詛を、スキル封魔へと進化させますか?』
「イエス」
進化させれば、状態異常がきえるうえ、新しいスキルまで手に入るのだ。
SPは消費してしまうが……しかし俺には、この数値を上げる当てがあった。
まあそれについてはおいおいだ。
『受理されました。スキル封魔を獲得しました』
「よし、ミュゼ。自分の足に治癒魔法をかけてくれ」
ミュゼは素直にうなずく。
「いやに素直だな」
「ヒラク様を信頼しておりますので」
「会ってすぐの人間に、信頼も何もないと思うが……」
「勇者しか使えぬステータスが操作できてるのです、あなた様は、きっと特別な存在なのです」
どうだろうか。わからないな。
だがまあ信じてもらえるなら話は早い。
ミュゼは自分の手を患部に当てる。
するとまばゆい光が発生すると……。
「! せ、成功です! すごい! 今までどれだけ試しても使えなかった魔法が、使えるようになった! すごいすごいです! これこそ、魔法ですよ!」
「そうか。良かったな」
「はい! やっぱり……ヒラク様は、すごいです!」
その後ミュゼに俺も治療してもらった。
体力は満タンになったので、俺たちは街へと移動を開始したのだった。