67.生徒達に課せられた呪縛も余裕で解く
魔法国マギア・クィフの東側、イースタルにある第一魔法学校。
そこを支配していたボスを討伐した。
その後、俺はアーネットとともに、食堂へと移動。
「学園長!」
「みんな……!」
そこには、生徒と教員たちが集められていた。
彼らは魔人たちにとらわれていたのだ。
ミュゼたちに、彼らの救出を任せておいたのだが、無事、全員救出ができたらしい。
アーネットは生徒達と抱き合って、涙を流していた。
教え子の無事を知れて、うれしかったのだろう。
「ミュゼ、フレイ、よくやった」
「ありがとうございます! 父上様!」
娘であり、フェンリルのフレイがぶんぶんと尻尾を振る。
隣でハーフエルフのミュゼが感心したようにうなずいた。
「何か成果を出した部下のことを、すぐさま褒め、労をねぎらうことで、モチベーションを管理する。さすがですね!」
「ミュゼさんって父上様がなにをしてもすごいとかさすがって言いますね」
「当然です。ヒラク様の一挙手一投足、全てに意味があることですから!」
別にそんなことはないのだがな。
頑張ってくれた人を褒めるなんて、普通にすることだろう。
「それができぬ愚者もおりますから。ヒラク様とちがって」
と、そこへ……。
「あの、ヒラク君」
「どうした、アーネット。何かトラブルか」
「さすがの察しの良さね。そのとおりよ」
アーネットの深刻そうな顔、そして、子供たちの不安そうな顔を見れば、何かが起きているということは一発でわかった。
「実は、この子達の魔力臓器が、抜き取られてるの」
「あのー、アーネットさん。なんですか、魔力臓器って?」
フレイがアーネットに尋ねる。
「体内にあって、魔力を作り出す、臓器のことよ」
魔力とは、体外の魔素を取り込み、魔力臓器をとおすことで、生み出される内的な力だ。
魔法の発動、身体の強化などに使われる。
「魔力臓器は魔素の変換だけでなく、ため込んでおく働きもするの。そして……その臓器をみんな奪われてる」
「奪われてると、どうなるんですか?」
「魔法が一生使えなくなるわ」
「そんな……」
ふむ、なるほど。
「子供達が逃げられないための、枷ということだな」
「ええ、そのとおり。魔力臓器を失うことは、魔法使いとして死ぬことと同義」
魔法を習うために来てるこの子たちにとっては、魔法が永遠に使えなくなること以上に、辛いことはないだろう。
おそらく魔人側は、魔力臓器を人質にとることで、こども、教員達を支配下に置いていたのだろうな。
……ふむ。
俺はスキル、天網恢々を発動。だが、魔力臓器はこの建物にはないことが判明した。
「どこに魔力臓器を持って行ったのでしょうかー?」
「閃がいる、セントラルに運ばれたのね……」
俺は「……やはり、か」と小さくつぶやく。
ミュゼが首をかしげていた。耳のいい彼女だ、聞き取ったのだろう。
「ふむ、しかし人は魔力を生み出せないと、ひとは植物状態になるのではなかったか?」
「ええ、仮の魔力臓器を付与してるみたいだわ」
なるほど、みんなの右腕には、小さな石がはめ込まれてる。
……ちなみに、アーネットにはそれがない。
「この石は外に出ると壊れる仕組みになってる」
「なるほど……二重の枷だな」
自分の未来を人質にとり、それすら捨てて外に出ようとしたやつには、永遠の眠りを与えるという作戦だったのだろう。
ゲス野郎が。
「父上様、どうしましょうか?」
ようは、子供達の魔力臓器を取り戻せばいい。
「ステータス、展開」
俺はその場にいる全員のステータスを確認。
……ふむ。
まあいい。
彼らのステータスを見ると、状態が【欠損】になっていた。
進化した【開】の力を発動。
ステータスの欠損の表記を、書き換える。
「おお、すげえ!」「体に魔力が満ちていく!」「魔力が戻ってきた!」
ふむ、思惑通り魔力臓器が戻ったようだな。
「ヒラク様、どういうことでしょうか?」
「ようは、四肢欠損の直し方と同じだ。欠損状態をスキルで書き換えることで、欠損した部位である魔力臓器が、戻った……という次第だ」
「なるほど! 魔力臓器が体の一部であることを利用した、ということですね! すごいです! さすがヒラク様!」
子供達が元に戻ってほっと一息つく。
アーネットが「ありがとう……」と沈んだ表情で言う。
ふむ……。
「アーネット。おまえは、欠損状態ではなかったな」
「……ええ」
そう、さっき全員のステータスを確認したときに、はっきりと見たのだ。
アーネットだけは、魔力臓器が欠けていなかった。
「どういうことでしょうか……まさか! 敵のスパイ……」
「いや、それはちがうだろう。だな?」
こくん、とアーネットがうなずく。
「閃は……あたしの、親友なの」
……ふむ、どうやら込み入った事情があるようだな。