08.ギルド登録でチンピラに絡まれるも撃退
ウォズの街へとやってきた俺たち。
冒険者登録をするために、ギルドへとやってきた。
商人に場所を教えてもらったので迷わずここへこれた。
ウォズの街の冒険者ギルド会館は、2階建ての、簡素な作りの建物だった。
手前が酒場になっており、奥が受け付けカウンターになっている。
「ここで冒険者登録を行うのですね……」
ミュゼは少しそわそわしながら周りを見渡してる。
「こういうとこ苦手か?」
「というか、人全般が、あまり好きではありません……」
ふむ……。彼女は奴隷だ。しかも忌み嫌われてるハーフエルフ。
ここへ来るまで、周りから酷い扱いを受けていたのだろう。人間不信になってしまうのは仕方ないことだ。可哀想に。
「あ、でもでも! ヒラク様は特別です! 大大大大大好きです!」
「ふむ、そうか。ありがとう」
俺たちはまず、登録するため、受付へと向かう。
受付嬢がにこやかに、俺たちを出迎えてくれた。
「当ギルドへようこそ! ご用件をおうかがいいたします!」
元気が良いな。それにまだ若そうだ。
新人職員だろうか。
「冒険者への登録を行いたい。俺と、彼女の分も」
「かしこまりました! それでは、こちらに手を載せてください」
カウンターの上に、水晶玉が置かれる。 ふむ……これが真実の目か。
「こちら真実の目といいまして、お客様の職業スキルと、状態の確認を行います」
スキル鑑定と同じ効果を、真実の目は発揮する。
つまり……ふむ。俺の職業だけが、明らかになってしまう。
「どうしました?」
「いや、何でも無い」
職業スキルがはずれだとバレてしまっても、だからなんだ。
周りからどう思われようと俺には関係ない。俺はなすべきことをするだけだ。
ノブレス・オブリージュ。
持つ者が課せられし、義務を全うする。それだけ。
「触るぞ」
ぴたっ。
カッ……!
水晶玉の輝きが収まると、空中に1枚のカードが出現する。
「これはギルドカードといいまして、依頼を受けるときに必要となります。身分証の代わりにもなっておりますので、なくさないようにしてくださいね!」
「ギルドカードか。わかった」
「それとカードには冒険者としてのランクと……職業スキル、が……え、えええ!」
……やはり、こうなるか。
仕方あるまい。
「ひ、【開】……? なん、ですこれ……あっ!」
ふむ、どうやら口に出してしまってから、己の過ちに気づいたのだろう。
職業スキルは個人情報だ。それを当人の許可無くもらすのは問題だろう。
「も、申し訳ありません……!」
何度も何度も、頭を下げる受付嬢。
ふむ、仕方あるまい。見たところ新人だろうからな。
「いい。気にするな。ミスは誰でもある」
「さすがヒラク様! 広いお心をお持ちですね!」
『条件を達成しました』
『SP150→200』
……ふむ、今のでまたSPが上昇した。
恐らくユニークスキル、報恩謝徳が発動したのだろう。
しかし今のやりとりのどこに、ミュゼを喜ばせる要素があったのか。謎だ。
「おい【開】だと……?」「なんだそりゃ……」「聞いたことないぞ……」「さては外れスキルだな、ぷぷぷ!」
ふむ、まあこうなるのは自明だな。
だが最初からわかっていたことであるため、周りからさげすまれようと気にはしない。
「あの、本当にすみませんでした……」
「問題ない。ミスなんて誰だってするものだ。次気をつければ良い」
「はい! 次は絶対ミスしません! 絶対に、職業スキルが凄いものだったとしても、叫びません! 絶対に!」
その意気だな。
「では、次はミュゼの番だな」
「はい! では、失礼します!」
ぴたっ。
カッ……!
「えええええええええええ!? 賢者ぁ……! すごいです! 最上位の職業スキルで……あああー!」
ふむ。
まあ、仕方ない。ミュゼの職業賢者は、稀少なものだからな。
「もももも、申し訳ないです!」
「大丈夫だ。人間すぐに、駄目な部分は修正できないものだ」
「はう……♡」
『条件を達成しました』
『SP200→250』
ふむ……?
またスキル報恩謝徳が発動したぞ?
またミュゼを喜ばせたのだろうか……?
と、そのときである。
「そこの綺麗な嬢ちゃーん?」
「……なんですか、あなた?」
俺たちに、ひとりの男が近づいてきた。
柄の悪そうな男だ。
「おいおい先輩に対してそんな口聞いちゃあいけねえなぁ」
「はあ……それで私に何か用です?」
「ああ。嬢ちゃん、おれとパーティくまないか?」
「組みません。私には、最高のパートナーであるヒラク様がいらっしゃりますので!」
ふすふす、とミュゼのやつが鼻息荒く言う。
ふむ……面倒ごとになりそうだ。
先輩冒険者が俺を見て、蔑みのまなざしを向けてきた。
「最高ぅ? ぎゃははは! こんな外れスキル持ちの雑魚のぉ? どこが最高っていうんだよぉ、嬢ちゃん! ぎゃはははは!」
「この……! ヒラク様への侮辱は万死に値しますよ!?」
ミュゼが魔法を発動させようとしていたので、俺は肩を叩いて止める。
「やめておけ。こんなのに構うんじゃあない」
「は、はい! そうですね!」
するとびきっ、と先輩冒険者が額に血管を浮かべる。
「はぁ!? はずれ野郎が、調子乗ってんじゃあねえぞ! 死ねやぁ!」
先輩冒険者は背負っていた大斧を抜いて、俺めがけて、斧を振り下ろした。
パキィイイイイイイイイイイイイイイイイン!
「なにぃいいいいいいいいいい!? お、斧が粉々に砕け散っただとぉお!?」
唖然とする先輩冒険者。
一方ミュゼが「な、何が起きたのでしょう……?」と目を丸くしてる。
俺の手には、氷でできた剣が握られていた。
「魔法で作った剣で、貴様の斧をたたき割った」
「ば、馬鹿な!? 大枚はたいて買った、竜鱗の斧だぞ!? 竜の鱗と同等の硬度を持つ斧を割ることなんて不可能だ!」
「ふむ……そう言われても、事実できたぞ」
魔法と剣術を会わせた結果、竜の鱗すら簡単にたたき割れるだけの威力が、発揮できたのだろう。
「す、すげえ……」
「すごいです! さすがヒラク様! どうだ、見たか烏合ども! 私のヒラク様は、最高なんですよ!」
『条件を達成しました』
『SP250→450』
またしてもSPが増えた。
ふむ……俺はいったい、いつ、誰を喜ばせているのだろうか。わからんな。
とにもかくにも、こうして無事、ギルド登録は済んだのだった。