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恋愛小説短編集~ハッピーエンドストーリー~ - 【二十四人目】 苦労して手に入れたモノはすぐ飽きて、近くにあることさえ気付かないモノはずっと飽きない
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【二十四人目】 苦労して手に入れたモノはすぐ飽きて、近くにあることさえ気付かないモノはずっと飽きない

「また、飽きた」

「えっ、でもまだ一週間なのよ?」


 俺の言葉に驚いているのは俺の幼馴染みだ。


「だって、あんなに苦労してレベルを上げたのに、最後のボスが弱すぎて、貰える経験値も少なくて、期待を裏切られた感じなんだよ」

「寝るのも忘れてあんなに頑張っていたのにね。期待なんてしなければいいのよ」

「誰でも期待するだろう? 俺の時間を返せよ」


「私に言われても困るわ。それに、あなたが飽きなければいいのよ」


 彼女は俺を睨みながら言った。


「だって俺って、すぐに飽きるタイプだろう?」

「そうね。今までどれだけの物を飽きてきたと思っているの?」

「基本的にテレビゲームは殆ど飽きてるよな?」

「そうね。テレビゲームだけじゃなくて、漫画本、習い事、ギター、カードゲーム、ブランドの洋服。ありすぎて困るわね」

「それに比べ、君は飽きることなく何でも続けているんだよな?」

「そうよ。私は好きな物を選んでいるからね」

「俺だって好きな物を選んでいるつもりなんだけどな?」


 俺には、このままだと何も残らないんじゃないのかと不安になる。

 彼女のように何か一つでもいいんだ。

 何かを続けなければ。



「なあ、俺ってこのままだと何も残らないよな?」

「はあ? 何を言ってんだよ」


 ある日、俺は友達に相談した。


「俺ってすぐ飽きるから何も残らないと思うんだよ」

「俺だって飽きるから、そんなに気にすることはないだろう?」

「お前と次元が違うくらいすぐに飽きるんだよ」

「お前を見ていて思うけど、幼馴染みはずっといるじゃん」

「えっ、ああ。そうかも」


 彼女は小さな頃からずっと隣にいる。


「あの子がいれば大丈夫だと思うけど?」

「何でだよ?」

「あの子、可愛いじゃん。あんな可愛い子がいれば飽きないだろう?」

「可愛い? あいつが?」

「先輩とかに人気みたいだし」

「えっ、あいつが? 信じられないんだけど?」

「お前は近くに居すぎて分かんないんだよ」

「そっか。あいつがいれば大丈夫なんだな」


 俺は彼女を手放さないようにしようと思った。

 彼女が俺の傍にいてくれれば大丈夫だと思う。

 その証拠に彼女に飽きていない俺がいるんだ。


◇◇


「ねぇ、ちょっと話があるの」


 彼女は俺の家に来て玄関で言った。


「何?」

「玄関じゃ話せないよ」

「あっ、そう。俺の部屋でいいか?」

「うん」


 俺達は俺の部屋へ入る。

 俺はベッドに寝転がる。

 彼女は絨毯の上に座り、俺のベッドに背を預けている。


「それで話って何だよ?」

「私、先輩に告白されちゃったの」

「へぇ~」

「お付き合いをするか迷ってるの」

「付き合えば?」

「そうだよね。あなたはそう言うと思ったよ」

「えっ、それなら何で聞くんだよ?」

「ん? 分かんない」

「そう。あっ、そう言えば、俺の友達が君のことを可愛いって言ってたよ?」

「そんなことないのにね」

「えっ、良く見たら君って可愛いのかも」

「かもってなによ」


 彼女は怒って俺の方を向く。


「だから俺は君に飽きないのかな?」

「えっ」

「だってそうだろう? 何でもすぐに飽きる俺が、君にだけは飽きないで、ずっと一緒にいるじゃん」

「そうだね。でもいつまでも一緒にはいられないよ」

「何で?」

「だって私は先輩とお付き合いするのよ? あなたと一緒にいることはなくなるわよ?」


 彼女が先輩と付き合えば、俺は邪魔者になる。

 彼女の隣は俺の場所なのに。

 彼女は俺の、たった一つの飽きなくてずっと残るモノなのに。


「それは困る」

「どうして困るのよ?」

「君がこれから俺に教えてくれるんだよ」

「私が? 何を?」

「君が飽きない方法を教えてくれるんだ」

「私は、そんな方法は分からないから、教えてあげられないよ?」

「君と一緒にいれば分かるだろう? 君にはあって、すぐ飽きる物にはないものがさ」


「でもあなたは先輩とお付き合いをしていいって言ったじゃない?」


 彼女は不安な顔をして言った。


「あの時は何も考えていなかったんだ。だからやっぱり先輩と付き合うのはダメ」

「もう! 何なのよ」


 あれ?

 何で彼女は怒ってんの?

 ん?

 何か俺って、彼女の気持ちを考えていない気がする。


 待てよ。

 俺って今まで彼女の意見を聞いていたか?

 俺は今までのことを思い出してみた。


◇◇◇


「ねぇ、もう寝た方がいいんじゃない?」

「ん? まだ大丈夫」


 俺はそのままゲームを続ける。

 そのまま朝まで寝らずにゲームをして、風邪をひいてしまった。


「ねぇ、漫画本は読んだら本棚になおさないと、汚れるわよ?」

「ん? まだ大丈夫。あっ」


 漫画本にカレーが落ちた。

 漫画本は汚れて、カビが生えてゴミ箱行きになった。

 

「ねぇ、そろばん教室に行かなくていいの?」

「ん? まだ大丈夫」


 そしていつの間にか寝てしまって、母親にそろばん教室に行かなかったことを怒られた。

 そしてそのままそろばん教室は行かなくなった。


「ねぇ、ギターの練習はしないの?」

「ん? まだ大丈夫」

「何が大丈夫なのよ。ギターを買うって言ってたでしょう?」

「ん? 最近、好きなブランドができてさ、その洋服とか買ったらお金なくなったから、もうギターはいいよ」

「そう」


 ギターは今でも全然、弾けない。

 彼女は、俺が飽きる前に伝えてくれていたんだ。

 俺はそんな彼女の言葉を、全然聞いていなかった。


◇◇◇◇


「今までごめん」


 俺は怒っている彼女に頭を下げて謝った。


「えっ」

「君の気持ちも、君の言いたいことも、全部気付いたんだ」

「どうしたの?」

「先輩と付き合いたいならいいよ。君の気持ちは分かったから」

「分かってないよ」


 彼女はさっきよりも、もっと怒っている。


「なっ、何でそんなに怒ってんだよ?」

「だって、私は先輩なんて好きじゃないからよ」

「えっと、意味が分からないんだけど?」

「あなたは私の気持ちを聞いてくれるの?」

「うん。君の言葉をちゃんと聞くよ。もう、何も聞き逃さない。それが俺の飽きない方法だから」


 俺の言葉を聞いて彼女は笑顔になった。


「私はあなたが好きよ」

「えっ、だってこんなダメダメな俺を?」

「あなたは頑張り過ぎるから、すぐに飽きちゃうのよ。もう少し力を抜けばいいのよ」

「ギターのことは力を抜き過ぎだろう?」

「ギターは、買うことばかりに力を入れ過ぎて、弾くまでいかなかったのよ」

「君って俺のこと分かってるじゃん」

「そうよ。でも、あなたにはちゃんと自分で気付いてほしかったの」


 彼女は俺に微笑んだ。


「やっぱり良く見ると可愛いのかも」

「だから、かもって何なのよ」


 彼女は俺の方を向いていたのに、拗ねたようで顔を背けてしまった。

 そんな彼女も可愛く思えるのは、彼女が好きだからなんだと思う。


 俺の飽きないモノは、好きなモノ。

 俺の好きなモノは、ずっと隣にいても飽きることなく好きなモノ。


 俺の隣にずっと居てくれた彼女。

 そんな彼女は俺の、、、。


 大好きな人。


「好きだよ」

「私も好きよ」


 俺達は笑い合った。

 二人とも、少し顔を赤くして。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。

ブックマーク登録や評価など執筆の励みになっております。

次のお話は、社長令嬢の婚約者に選ばれた主人公の彼の物語。

何故いきなり平凡な彼が、大金持ちの彼女の婚約者になったのか。

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