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恋愛小説短編集~ハッピーエンドストーリー~ - 【四十五人目】 部屋にある幼馴染み専用のクッションは彼女の失恋の度に俺と一緒に活躍する
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【四十五人目】 部屋にある幼馴染み専用のクッションは彼女の失恋の度に俺と一緒に活躍する

「ほらっ、もう泣くなよな」


 また幼馴染みの彼女は俺の部屋に来て、ピンクのハートの柔らかいクッションを抱き締めながら、泣いている。


 俺の幼馴染みは失恋をした時だけ、俺の部屋を訪れる。

 そしてクッションを抱き締めて、俺の前で泣く。

 俺とハートのクッションは、彼女の慰め係だ。


「だって、また彼女がいる人を好きになるなんて、悲し過ぎるわよ」

「君は優しくされると、すぐに好きになるからだろう? もう少し相手を知ってから、好きになればいいんだよ」

「好きになるのが先だから仕方ないじゃない。私はいつも一目惚れなの!」

「好きになるのは仕方ないだろうけど、少しは次の恋愛に活かさないと、君はいつまで経っても幸せにはならないと思うけどなあ?」


「それは分かっているんだけど、あなたがいて、このクッションがあれば、私はまた次の恋愛を頑張ろうってなるのよ」


 彼女はクッションに埋めていた顔を俺に向けて言った。


「俺とクッションは同じ立ち位置なのかよ?」

「そうね。どっちも私には大切よ」

「クッションと同じ立ち位置って、なんかおかしくないか?」

「おかしくないわよ。このクッション気持ちいいし」


 彼女はそう言ってギュッと抱き締めている。

 そんな彼女の目から涙は止まっていた。


 俺の幼馴染みは俺の好きな人だ。

 そのハートのクッションが羨ましい。

 彼女専用のクッションは、彼女が初めて失恋した時に俺が彼女にあげた物だ。


 彼女がいつまでも泣き止まないから、急いで近くの雑貨屋で適当に買ってきた物だ。

 その日から彼女は、このクッションが必需品になった。


 俺はそのオマケなのかもしれない。

 だって俺は、彼女に何もしてあげていないから。

 それなのに彼女は俺に毎回お礼を言う。

 今日もありがとうって。



 それから何日か経った頃、彼女が俺に初めて顔を赤くして言ったんだ。

 好きな人ができたって。


 何故わざわざ言うのか、俺には意味が分からなかった。

 恋愛の話は、いつも彼女が失恋をしてから聞いていた。

 それなのに今回は、失恋もしていないのに俺に言ってきたんだ。


「ねぇ、私の好きな人がどんな人か知りたいでしょう?」

「どうせまた一目惚れなんだろう?」

「一目惚れなのかな? でも今回は中身もちゃんと知っている人なの」

「おっ、いつもと違うんだな?」

「そうよ。いつもとは全然違うの」


 彼女はニコニコと笑っている。

 そんな顔をさせる彼女の好きな人は、どんな人なんだろう。

 俺も、こんな顔を彼女にさせる存在になりたいのになあ。

 羨ましい。


「失恋しないことを願うよ」

「私、バレンタインに告白するの」

「それってもうすぐじゃん」

「そうよ。あなたは何人からチョコを貰うのかな?」

「俺は義理ばっかりだと思うよ」

「そうだよね」

「俺はどうせモテないんだよ」

「貰えるだけ?いいじゃない?」

「そうだな。でもやっぱり一番は、好きな人からの本命チョコが一番嬉しいけどな」


「えっ、好きな人がいるの?」


 彼女は驚いて訊いてきた。


「そうだよ」

「そうなのね。知らなかったわ」

「だって言う必要もないだろう? 恋愛の話なんて君の話で充分だよ」

「そうだね。私は失恋の話しかしていないものね。恋愛の話は、もうウンザリだよね?」

「君の不幸話ばかりだからね、恋愛の話はしたくないよ」

「そうよね、、、」


 彼女が何故か落ち込んでいる。

 俺、彼女に変なことを言ったかな?

 彼女に悲しい思いをさせるのは、失恋の時だけでも嫌なのに。


 俺は絶対に、彼女を悲しませたらダメなんだ。

 俺は彼女の慰め係なのに。


「よしよし」

「えっ」


 俺は彼女の頭を撫でていた。

 彼女はそれに驚いていた。


「どうしたんだよ? 失恋なんてしていないだろう?」

「うん。そうだと思う」

「なんだよ、そうだと思うって。自分で分かるだろう?」

「うん」


 彼女はうなずいて、俺に頭を撫でられていた。

 この時間がいつまでも続けばいいのに。

 俺はそう思いながら優しく彼女の頭を撫でた。


◇◇


 バレンタインの日がやってきた。

 彼女の恋愛がどうなるのか、気になって仕方がない。

 彼女の告白が成功すれば、彼女は俺の家には来なくなるだろう。


 彼女が告白に成功すれば、俺を頼ったりはしなくなるだろう。

 俺じゃなくて活躍しているのは、クッションだな。



 俺は色んな友達から義理チョコを貰った。

 俺って案外、女友達が多かったみたいだ。

 今年も彼女から義理チョコは貰えると思う。

 家に帰って彼女が俺の部屋に来るのを待った。


 しかし、彼女が俺の部屋に来るかは分からない。

 来なければ彼女は、俺の部屋には一生来ないかもしれない。


 彼女は俺の部屋に来た。

 手には俺用のチョコレートを持って。


 そのチョコレートは、いつもと少しラッピングがお洒落だ。

 好きな人用のチョコレートの、ラッピングの残りでラッピングをしたんだと思う。


 彼女は物を大切にするから。

 すぐに物を捨てたりしないから。


「ねぇ、本命チョコは貰ったの?」


 彼女は俺にチョコを渡さず、まず本命チョコのことを訊いてきた。


「全部、友達からだよ」


 俺はそう言って彼女に義理チョコを見せる。


「これは義理じゃないよ」


 彼女は沢山あるチョコの中で、一つの手作りチョコを取る。

 チョコの上に大きく好きと書いてある。


 しかし俺は知っている。

 これをくれたのは、俺の友達で義理チョコって言って渡されたことを。


「これは義理だよ。そう言ってたし」

「違うよ。私、知ってるもん。彼女が泣きながら言ってたの」

「えっ」

「今年も義理チョコって言って渡しちゃったって」

「えっ、嘘だろう? 気付かなかったよ。なんだろう。好かれるのって嬉しいんだな」

「彼女があなたの好きな人なのね?」

「えっ」

「そんな顔をされたら分かるわよ」

「何、言ってんの?」

「私はあなたの、そんな顔を見たことはないもの」

「ねえ、何を言ってんの?」

「私はあなたに、いつも悲しい顔しかさせていないもの」


 彼女は今にも泣きそうだ。

 ここにいるってことは彼女は失恋したんだよな?

 今日はバレンタインだよな?

 それなら少しだけ彼女に触れてもいいよな?


 そして俺は彼女を抱き締めていた。

 彼女は驚いていたが嫌がらない。


「本当は、いつもこうしたかったんだ。俺は泣く君を抱き締めて、泣かないでって言いたかったんだ」

「うん」


 彼女は泣きながらうなずいた。


「今日はバレンタインだから少しだけ許してよ」

「今日だけじゃなくて、いつもこうしてよ」

「えっ」

「私はあなたに、こうして欲しかったよ」

「えっ、ちょっと待ってくれ。意味が分からないんだけど?」


 すると彼女は俺を見上げて見つめた。


「私はあなたが好きよ」

「えっ」

「私はあなたに好きな人がいても、伝えたかったの。失恋をしたくはないけど、あなたには、もう慰めてもらえないけど、言いたかったの。あなたが大好きよ」


 なんだろう?

 さっきの本命チョコを貰ったことより、彼女の言葉は何よりも嬉しい。


 こんな幸せな気持ちなんて味わったことがない。

 どんな反応をすればいい?

 嬉し過ぎて頭が働かない。


 彼女の視線に気付き、俺は彼女を見る。

 彼女は不安な顔で俺を見ている。

 あっ、嬉し過ぎて彼女へ返事を忘れていた。


「俺の好きな人を知りたいのか?」

「えっ」

「俺の好きな人は君だよ」


 俺が告白すると、彼女は驚いた後、俺の胸に顔を埋めた。


「ばかぁ」


 彼女は恥ずかしくて、俺の胸で顔を隠しているんだろう。

 耳が赤いからバレバレだよ。


「ねえ、チョコ頂戴よ」

「あっ、そうだった。はい、本命チョコよ」

「ありがとう」


 俺は彼女からチョコを受け取った。

 彼女は俺に可愛い笑顔を見せてくれた。

 この顔が見たかったんだ。


 それから彼女は毎日のように俺の部屋に来て、ハートのクッションを抱き締めながら、俺に笑いかけてくれるんだ。


 もう彼女の涙なんて見ていない。

 クッションはいつの間にかオマケになった。

 彼女は俺に会いに来ているのだから。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。


次のお話は、好きなアイドルの写真を、いつも主人公の彼の前で見る幼馴染みとの物語。

彼女が彼の前で何故、写真を見るのかそれを知った時、彼は彼女に好きだと言います。

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