【四十七人目】 魔法に憧れる幼馴染みに俺は魔法にかかったフリをしてみると彼女は信じた。
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俺の幼馴染みは小さな頃から魔法使いに憧れていた。
俺と遊ぶ時はいつも彼女は魔女役で、俺はいつも魔女の弟子役だった。
彼女はこの遊びを魔女ごっこと呼ぶ。
「弟子くん。今日は惚れ薬を作るわよ」
「はいはい」
彼女は大きくなっても俺と魔女ごっこをする。
俺は彼女の相手を適当にする毎日だ。
「弟子くん。あなたは誰に惚れ薬を飲ませたいの?」
「君かなあ?」
「どうして私なの?」
「君が魔法以外に興味を持てば、俺は魔女ごっこなんてしなくていいからだよ」
「私は魔法以外に好きになるものはないわよ。あなたがそんなことを言うなら、私はあなたに惚れ薬を飲んで欲しいわ」
「俺に?」
「そうよ。あなたが私に惚れたら、ずっと魔女の弟子になってくれるでしょう?」
「弟子になるだけならいいけどな。惚れ薬って相手を好きになるんだから、恋人になりたいって思うんじゃないのかな?」
「恋人になってもいいわよ。弟子くんになってくれるならね」
彼女は、恋人の存在がどんな意味を持つのか知らないみたいだ。
それなら彼女に知ってもらおうか。
それには惚れ薬が必要だ。
しかし惚れ薬なんてある訳がない。
そんなものがあれば俺は、もう使っているはずだからだ。
俺は幼馴染みの彼女が好きなんだ。
惚れ薬があれば恋人になってくれるんだよな?
よし。
惚れ薬を作ろう。
俺は惚れ薬という炭酸水を準備した。
炭酸水を彼女には惚れ薬と言って騙すんだ。
彼女はどうするかな?
俺に飲ませる?
そうなれば俺は演技をするだけだ。
◇
次の日、俺は彼女の部屋へ行く。
小瓶に入った炭酸水を持って。
「惚れ薬を見つけたんだ。見てくれよ」
俺は彼女の部屋に着くと彼女に言った。
「惚れ薬? そんなのある訳ないじゃない」
彼女は興味を示しながらも言葉は正反対だ。
「でも、こんな小瓶に入っているってことは惚れ薬だろう?」
俺は彼女の目の前で小瓶を見せ言った。
「じゃあ飲んでみてよ」
「何で俺なんだよ?」
「だって、それはあなたが持って来た物よ。本物かどうか確かめるのは、あなたがしなくちゃね」
「分かったよ」
そして俺は小瓶の炭酸水を飲み干す。
「ちょっと待ってよ。全部は飲む必要ないでしょう? 本物だったらどうするの?」
彼女は焦っている。
信じている証拠だな。
「何かこの部屋、暑くないか?」
「えっ、そんなことはないわよ」
「俺は暑い」
そう言って上着を脱ぐ。
「まだ暑い」
俺は上半身、裸になった。
彼女はそんな俺の裸を見ないように、顔を横に向け目を逸らしている。
それじゃあつまらない。
「なあ。俺の顔、熱くないか?」
俺は彼女の手を持ち、俺の頬に彼女の手を当てた。
「あっ、熱くないわよ」
彼女の顔が真っ赤だ。
でも俺の演技はまだ終わらない。
「なあ。俺、何かおかしいかもしれないよ」
彼女の頬を両手で包み、俺は彼女を見つめて言った。
彼女は耳まで真っ赤だ。
「ねぇ、本当に惚れ薬だったの?」
「分からないけど今は、君しか見えないよ。君が愛しくてたまらないんだ」
「なっ、何を言っているのよ。いつものあなたじゃないわ」
「俺もどうすればいいのか分からないんだ。ただ君が欲しくて」
「えっ」
俺は彼女を抱き締めた。
ずっと前から彼女を抱き締めたかったんだ。
大好きな彼女を、自分のモノのようにして抱き締めたかった。
すると彼女は俺の背中をトントンと優しく叩く。
「落ち着いて。惚れ薬なんかに負けちゃダメよ」
完全に彼女は惚れ薬だと思っている。
「俺は君が欲しくてたまらないんだ」
「今のあなたはダメよ。ちゃんと自分の意思で考えなきゃダメよ」
彼女は俺にお願いをするように言う。
俺に元に戻ってほしいんだと思う。
イタズラもこの辺でやめるか。
「あれ? 何か落ち着いてきたかも」
「本当? 良かった」
彼女から離れた俺は、彼女のホッとした顔にドキドキしてしまった。
今なら彼女に好きだって言えるかも。
「それならもう、私を欲しいなんて言わないわよね?」
「それは言うよ」
「えっ」
「だって俺、君が好きだからね」
「まだ惚れ薬が効いているの?」
「惚れ薬なんて嘘だよ」
「嘘? じゃあ、あれは全部演技なの?」
彼女は、惚れ薬が嘘だということがショックだったのか、落ち込んでいる。
「全部、本当だよ」
「全部が本当の意味が分からないんだけど?」
「全部、本当。俺は君が欲しくてたまらないんだ、今も」
「そんな顔で見ないでよ」
「どうして?」
「そんな欲しそうな顔で見られると、いいよって言ってしまいそうよ」
「えっ、いいの?」
「いいよって言ってしまいそうだって、言っただけでしょう」
「それはいいってことでいいんだろう?」
「違うわ」
「じゃあ、どういう意味だよ?」
「いつかなら、いいわよっていう意味よ」
彼女はそう言って俺に笑いかけたんだ。
「そのいつかはいつなんだよ?」
「い・つ・か」
彼女はそう言って不適に笑った。
そのいつかを知りたいが、そのいつかは必ずやってくると思うと、俺は嬉しくなって、彼女をギュッと抱き締めた。
「君が俺の腕の中にいるなんて、嬉しいよ」
「私は苦しいわよ」
彼女は俺の腕から抜け出して、俺の背中を押し、俺を部屋から追い出した。
頭を冷やすまでそこにいてって彼女は言っていたけど、部屋を追い出される時に、彼女の顔は嬉しそうにしていた。
そういえば、彼女に大事なことを言っていない。
俺はドア越しに言う。
「君のことがずっと前から大好きだ」
「私も魔法と同じくらい大好きよ」
「そこは魔法よりも好きって言うところだろう?」
「だって魔法も好きなの。でもあなたの命と魔法なら迷わずあなたを選ぶわ」
「そんな選択肢は一生ないと思うけど嬉しいよ」
「弟子くん。頭を冷やしたら中へお入りなさい」
「はい。魔女様」
そして俺は彼女の部屋へ入る。
彼女は嬉しそうに笑っていた。
これからも魔女ごっこは続くと思う。
でも、それでいい。
だって俺は、魔女になりきった彼女も好きだから。
読んでいただき誠に、ありがとうございます。
次のお話は、何故か部活のマネージャーに三秒だけ見つめられる主人公の物語。
彼女が見つめる理由を知った彼は、彼女への気持ちに気付く。