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恋愛小説短編集~ハッピーエンドストーリー~ - 【五人目】 大好きな婚約者からの婚約破棄の言葉は俺にやる気を出させた
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【五人目】 大好きな婚約者からの婚約破棄の言葉は俺にやる気を出させた

 昨日に戻ってくれないかな?

 いいや、三年前に戻ってくれないかな?

 もし、時間を戻せるのなら俺はこの二択で迷うと思う。


 昨日に戻ればまだ彼女とは仲の良い恋人だ。

 そして三年前に戻れば彼女とはまだ出会っていない。


 何故、時間を戻したいのか。

 俺は今、彼女に婚約破棄をされたのだ。

 彼女が言うには、俺といると将来が不安みたいだ。


 まあ、そうだろう。

 俺はカフェを経営しているが売り上げはいつもマイナスだ。

 そんな俺と婚約までしたのに何故、今になって婚約破棄をするんだ?


 まあ、そのことは後で考えよう。

 まずは三年前の彼女との出会いの話をしよう。



『ごめん。少し遅れる』


 友達からメールが来た。

 俺はカフェで友達と待ち合わせをしている。

 一人でコーヒーを飲んで待っていた。


 すると隣でカップルが喧嘩を始めた。

 そして女性が泣いているのをイライラしながら見ていた男性は、これが最後だからと言って去っていった。


 俺は何も聞いていないフリをして、友達が早く来てくれないかなあと思いながらコーヒーを飲んでいた。


『ガッシャーン』


 カップの割れる音がした。

 さっき泣いていた女性のコーヒーカップが床に落ちて粉々になっている。

 そのカップを女性は拾おうとしている。


「危ないよ」

「痛っ」


 俺が女性に声を掛けてすぐに女性は言った。

 女性の指から血が出ている。

 女性は指から出ている血を見ているだけで拭こうとはしない。


 俺は彼女の代わりにおしぼりで拭いた。

 座り込んでいる彼女は俺を見上げた。

 涙目の彼女は俺を見つめる。


「絆創膏はある?」

「あっ、あります」


 彼女はそう言ってバッグから絆創膏を出して貼ろうとするが片手では難しそうだ。


「俺が貼ってあげるから貸して」

「はい。お願いします」


 彼女の指に、可愛いイラストが描いてある絆創膏を貼る。


「ありがとうございます」


 彼女は笑顔で言ってくれたが無理して笑っているのがよく分かる。


「俺、思うんだけど。君はあの彼とは別れて正解だと思うよ」

「あなたに彼の何が分かるんですか?」

「だって泣いている女の子を置いて帰るなんて、優しさの欠片もないじゃん」

「私が悪いんです」

「君の何が悪いの?」

「私が彼を束縛し過ぎたからいけないんです」

「ここだと君の涙が目立つから、人の目がない近くの公園に行こうか? 話を聞くよ」

「はい」


 そして俺達は公園のベンチに座った。


「ここなら泣いても叫んでもいいよ」

「叫びはしませんよ」

「そう? それなら君の束縛がどんなものだったのか教えてよ」

「私から連絡はしたらダメなのに、彼がどこにいるのか気になって連絡してしまったり、彼が友達の女の子の家に泊まりに行くから、行かないでって言ったり、彼ともう少し一緒にいたいから、一緒にいたいって言ったり、彼には束縛が嫌だったんですよ」

「一言だけ言ってもいい?」

「はい」

「君は彼の本命の恋人じゃなかったと思うよ」

「どうしてそんなヒドイことを言うんですか?」

「俺だけじゃなくて誰もがそう思うよ」

「私は彼の二番目の彼女だってことですか?」

「そうだよ。だから君は彼と別れて正解なんだよ」

「そうなんですね」


 彼女はうつむいて落ち込んでいる。


「大丈夫?」

「大丈夫です。私は彼の一番にはなれなかったってことですよね?」

「君にはもっといい人が現れるよ」

「あなたみたいな人ですか?」

「俺?」

「あなたはいい人ですよね?」

「俺は女性の涙に弱いだけだよ」

「あなたは私からすればいい人です」

「俺がいい人でも俺以外の人を選んで」

「どうしてですか?」

「俺は君が思うほどいい人じゃないよ」

「それなら新しい恋人ができるまで一緒にいて下さい」

「一緒にいるって何?」

「私が寂しくなったらあなたを呼びます。その時は来てくれますか?」

「いいよ」

「それなら今は隣にいて下さい」


 そして彼女は静かに涙を流して泣いた。


◇◇


 それが俺達の出会いでそれから何度か会って恋人になった。

 彼女の涙を見たからとかではなく、彼女の中身を知って、彼女の全てを好きになったんだ。


 彼女も俺のことを知って、俺の中身を好きになってくれたんだ。

 ただ、失恋の悲しさから逃げる為に、俺を好きになった訳じゃない。


 そう思っていたのに、婚約破棄をしようとしている彼女を見ると、彼女は俺への気持ちが本物なのか、分からなくなっているように感じてしまう。



 三年前の話はここまでで、次は昨日の話をしよう。


◇◇◇


「ごめんね。やっぱりあなたと結婚できないよ」


 彼女が俺の家に来てすぐに言った。


「何で? 他に好きな人ができたの?」

「違うよ」

「俺のことが嫌いになった?」

「違うよ。好きだよ」

「それなら何で?」

「あなたとの将来が不安なの」

「俺の仕事のことだね?」

「うん」

「今はまだまだだけど、看板メニューができれば売り上げも良くなると思うんだ」

「それはいつになるの?」

「それはまだ分からないよ」

「だから私は将来が不安なの」

「それなら俺がカフェを辞めて、またサラリーマンに戻ればいい?」

「ダメよ。あなたはカフェで働いている方が楽しそうにしてるからね」

「それだと君は俺と結婚してくれないだろう?」

「…………」


 彼女はうつむいて何も言わない。


「君の気持ちが分からないよ」

「そうね」


 彼女はそう言って俺の部屋から出ていった。


◇◇◇◇


 昨日に戻るのか三年前に戻るのか。

 俺には決められないし、そんなことは絶対に起きない。


 俺はどうすれば彼女と結婚できるのだろうか?

 失恋していた彼女と出会って婚約までした俺達はこのまま終わってしまうのか?


 俺はこのまま終わらせたくない。

 彼女と三年前に出会えたのは運命なんだ。

 彼女がいるから俺はカフェを開くことができた。


 売り上げなんか気にせず、楽しく働けるんだと思っていた。

 それなのにお客さんは毎日、一人や二人くらい。


 決まったお客さんは来ない。

 リピーターはいないんだ。

 近くには高校があるのに、学生は一度も来ない。


 俺、一人ではこのカフェの売り上げはよくならない。

 カフェを心の癒しの場所にしたい。

 それを叶えるには?



「君に見せたいものがあるんだ。だからカフェに来てくれる?」

「うん。いいよ」


 俺は彼女との関係をどうしたいのか考えて今日、彼女に伝える。

 準備は完璧。


「来てくれてありがとう」

「えっ、ネコカフェになってる」

「そう。ここに来てくれたお客さんを癒してあげたくて」


 彼女は近寄ってくる猫達の頭を撫でながら癒されているのか、ずっと笑顔だ。


「でもネコ好きにはいいかもしれないけど、犬好きにはあんまり効果はないんじゃないの?」

「俺のターゲット層はネコ好きの人じゃないんだ」

「それならどんな客層を狙ってるの?」

「このカフェの名前を教えたら分かると思うよ」

「名前を変えたの? 何て名前なの?」

「森の失恋カフェ」

「えっ、失恋なんてそんな名前をつけていいの?」

「いいよ。失恋した男女がこのカフェに来て、ネコに癒されてここで新しい出会いが生まれたらいいと思うんだ」

「三年前を思い出すわね」

「それならこれを見たら、もっと三年前が懐かしくなるかもしれないよ」


 そして俺は彼女の前に一つのコーヒーカップを置く。


「何? ただのコーヒーカップだよね?」

「ただのコーヒーカップじゃないよ」

「そうなの?」

「このコーヒーカップの持ち手の部分に君の好きな絆創膏を貼って」

「うん」


 彼女はコーヒーカップの持ち手の部分に可愛いキャラクターの絆創膏をグルグルと巻き付けて貼った。

 俺はそのコーヒーカップを袋に入れ、それを床に落とした。


『ガッシャーン』


 コーヒーカップは袋の中で割れた。


「えっ、何をしているの?」

「これでいいんだよ」

「どういうことなの?」

「このカップを割ることで、失恋した自分とさよならしてもらうんだ」

「カップがもったいないわよ」

「それは大丈夫。割れたカップはもう一度カップになって戻ってくるんだ」

「再利用するの?」

「そう。こんな風に割れたコーヒーカップは、俺の知り合いにお願いして、欠片を溶かし型に入れて、また元通りにしてもらうんだ」

「協力をお願いしたのね?」


 彼女はそう言って浮かない顔をした。

 まだ婚約破棄を取り消すことはないようだ。


「そしてカップを割って、失恋した自分とさよならしたら、コーヒーを一杯飲むんだよ」

「コーヒー? そうね。ここはカフェだからね」

「そう。そのコーヒーの名前が、もう一度ハッピーウィンナーコーヒーだよ」

「コーヒーの上に生クリームが乗ってるコーヒーね」

「そう。生クリームの上にピンクのハートチョコをトッピングし、コーヒーはブラックにして甘い生クリームとチョコが混ざると丁度良い甘さになるんだ」

「飲んでみたいな」

「うん。今から作るから待ってて」


 そして俺は彼女に、もう一度ハッピーウィンナーコーヒーを作る。


「可愛い。美味しそう」


 彼女はそう言ってコーヒーを飲む。


「美味しい」

「ついてるよ」


 俺は彼女の唇についた生クリームを親指で拭う。


「最初は苦いコーヒーが口いっぱいに広がるけど、生クリームが溶けていって優しい甘さになるコーヒーが、心を落ち着かせてくれる感じね」

「失恋した心には優しい甘さが丁度良いだろう?」

「そうね」

「だからこのコーヒーとネコ達と一緒に、新しいカフェを俺と二人でやらないか?」

「その言葉を聞きたかったの」

「えっ」

「私もあなたと一緒にカフェで働きたかったの。でもあなたは一度も私に、カフェのお手伝いをさせなかった。それが私は嫌だったの」

「どうして言わないんだよ?」

「だってあなたは一人でカフェをやりたいんだと思ってたから」


 彼女はごめんなさいと付け足して頭を下げた。


「ねえ、俺と結婚してこのカフェで一緒に歳をとろうよ」

「うん。ずっと大好きよ」

「俺も好きだよ」


 二度目のプロポーズは大成功だった。


◇◇◇◇◇


【森の失恋カフェ】


 そのカフェでは、失恋した男女が心を洗い流す為に集まります。

 コーヒーカップの持ち手の部分にお気に入りの絆創膏を貼ってカップを割ります。


 失恋した自分とはさよならをしましょう。

 そうすればその後のコーヒーの甘さが丁度良いのです。


『もう一度ハッピーウィンナーコーヒー』


 このコーヒーを飲むと、心が落ち着き次の恋へと進めるのです。

 そのカフェは失恋した男女に大人気のカフェです。


 何故ならば、そのカフェで仲良しの夫婦を見ていれば、もう一度ハッピーになりたいと思うからです。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。

ブックマーク登録や評価など、ありがとうございます。

次のお話は、幼馴染みのことが好きなのに伝えることができないイケメンな主人公の物語です。

彼が彼女の為にしたことが二人の関係を大きく変える。

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