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恋愛小説短編集~ハッピーエンドストーリー~ - 【六十七人目】 聞こえる幼馴染みの声に俺はいつも反応してしまう
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【六十七人目】 聞こえる幼馴染みの声に俺はいつも反応してしまう

「おっはよう」


 学校へ行く為に家を出ると、今日も元気な声が聞こえた。

 俺の幼馴染みの声だ。

 俺はすぐに幼馴染みだと分かる。


 彼女の声に特徴がある訳じゃない。

 ただ俺の耳へ勝手に入ってくる。

 彼女の声が。


 彼女は俺の隣を当たり前のように歩く。

 俺はそれが当たり前だから気にはしない。

 彼女は俺の隣で、昨日のドラマの話を楽しそうに話をしている。


「ねぇ、聞いてるの?」


 彼女は怒ったように俺に言った。


「聞いてるよ。昨日のドラマの主人公の彼女が、好きな彼に助けてもらったのに、恥ずかしくて逃げたのが、君は疑問に思っているんだろう?」

「そうよ。だって普通は、ありがとうってお礼を言うでしょう?」

「それは彼女が、緊張し過ぎて慌てた結果が、逃げるってなったんだよ」

「何であなたに女の子の気持ちが分かるのよ?」

「俺も嫌な時は逃げる癖があるからね」

「逃げる仲間ってことなのね?」

「そう」

「でも、どうしてあなたって、私の話を聞いていないように見えて、聞いているの?」


 彼女は不思議そうに首を傾げて俺を見る。


「君の声は、俺の耳へ勝手に入ってくるんだよ」

「その言い方、私に喋るなって言っているみたいじゃない?」

「そうじゃないよ。君の声は、何よりも先に俺の耳に届くんだよ」


 俺はそう言って、少し拗ねた彼女の頭を撫でた。

 彼女は、また私を子供扱いしてと言っていたが、嬉しそうに頭を撫でられていた。

 彼女は俺に撫でられるのが好きみたいだ。



「ねぇ、今日は少し遅くなるからね」

「分かったよ」


 昼休みに彼女は渡り廊下から、俺のいる二階の教室へ叫び、俺はその返答をした。


「何だよ。今の聞こえたのか?」


 俺の親友が、俺の隣でパンを食べながら言った。


「お前は聞こえなかったのか?」

「何か言ってるなぁくらいしか聞こえなかったけど?」

「俺にはちゃんと聞こえたんだよ。今日は少し遅くなるからってな」

「お前達って付き合っているのか?」

「はぁ? そんなことがある訳ないだろう?」

「それなら、何であんなに遠い所から、声が聞こえるんだよ?」

「あいつの声は、どの音よりも、俺の耳に入ってくるんだよ」

「はあ?」

「俺は、何をしていても、あいつの声だけは耳へ勝手に入ってくるんだよ」

「お前、それって好きだからだろう?」

「何でそうなるんだよ?」

「好きだから、相手の全てを聞き逃さないようにしてんじゃないの?」

「意味が分からん」


 俺はそう言って、渡り廊下で友達と話をしている彼女を見た。

 今の彼女は、俺に叫んではいないから、当たり前だが声は聞こえない。


 すると彼女が、見ている俺に気付いた。

 そして俺に口パクをした。


 また後でと。

 声は聞こえないのに、彼女が何を言ったのかが分かる。

 何でだ?

 俺は彼女が好きなのか?




 放課後になり俺は、教室で彼女が来るのを待った。

 少し遅くなるって、どのくらいになるのか分からない。

 俺は桜が咲く、渡り廊下を眺めていた。


 そこに男女の生徒が現れた。

 二人で桜を見ながら、何か話をしているようだ。

 二人は俺に背を向けているから、誰なのかは確認できない。


 すると女子の方が男子の方を向いた。

 女子の顔は、僕のいる教室からだと見える。


 そこにいたのは幼馴染みの彼女だ。

 何故か驚いた表情だ。

 彼女はその後、すぐに頭を下げている。

 何が起きたのか俺には想像もつかない。


 頭を下げている彼女に、男子は何かを言っている。

 そして彼女が、男子に何か一言を言って俺を見た。

 そして一言、口パクしたんだ。

 それを聞いた男子は、彼女の腕を引っ張り、彼女の視線を俺から外した。


 痛そうにしている彼女に、俺は助けなければと思い、彼女の元へ走った。

 渡り廊下に着くと、俺は叫んで彼女を呼んだ。

 彼女は振り向いて、また口パクをする。

 今回の口パクは、助けてと俺に伝えていた。


 俺は彼女に近づき、相手の男子の手を彼女の腕から振りほどき、彼女を抱き寄せた。


「彼女は俺のだ」


 俺がそう言うと、男子は走って逃げていった。

 風が吹いて桜の花びらが散っていく。

 綺麗なこの場所に、俺と彼女だけが残っている。


「私はあなたのなの?」

「えっ」


 俺は驚いて彼女を見る。

 彼女は嬉しそうに笑っていた。


「さっきも言ったけど、私はあなたが好きよ」


 彼女は俺の目を見つめながら言った。

 さっきも言ったとは、俺が教室で彼女の口パクを見た時に言っていたのが、好きという言葉だったんだ。


「俺も好きなんだと思う」

「何よ。その曖昧な言い方は?」

「だって俺には、君の声は当たり前に俺の耳へ入ってきて、当たり前に君は隣にいて、君は当たり前に俺の前で嬉しそうに笑うから」

「当たり前?」

「そう。だからもし、君がその当たり前をしなくなったら、俺はどうなるのか分からないけど」

「けど?」

「多分、俺は生きていけないんだと思うんだ」

「それって私が必要で好きってことね?」

「そうだよ」


 俺がそう言うと彼女は笑顔を見せてくれた。

 そんな彼女が可愛くて俺は頭を撫でた。


「また子供扱いするの?」

「違うよ。俺の愛情表現だよ」


 俺がそう言うと、彼女は黙って、俺に頭を撫でられていた。

 いつものように嬉しそうに笑って。


◇◇


「ねぇ、また通行人が、美女と野獣って言ってるよ。誰が美女なのよ。それに誰が野獣なのよ」


 そんな頬を膨らませ怒っている彼女を俺は、微笑みながら見ていた。


「何で笑っているの? そこは怒るところでしょう?」

「ん? だって俺には、君の声しか聞こえないから。怒った君も可愛くて」

「もう。あなたって、どうして私が嬉しくなる言葉を簡単に言うの?」


 彼女は小さな声で、俺に聞こえないように言っているが、しっかり俺には聞こえている。


「それは君が好きだからだよ」

「えっ、聞こえていたの?」


 彼女は驚きながらも嬉しそうに笑っていた。

 そして彼女は俺に小さな声で言ったんだ。


「私は愛してるよ」

読んでいただき誠に、ありがとうございます。


次のお話は、オレンジ色の空、オレンジ色の雲を見て泣いていた彼女は、とても綺麗で見惚れた主人公の物語。

彼女が泣いていたのは、婚約破棄をされたからだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ーー彼女の「声」ならどれだけ小さくても、遠くても自然と耳に入ってくる彼。 凄くロマンチックに感じました。 自分にとっては当たり前のことだと思っていても、それは周囲に言わせれば当たり前のこと…
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