Deprecated: The each() function is deprecated. This message will be suppressed on further calls in /home/zhenxiangba/zhenxiangba.com/public_html/phproxy-improved-master/index.php on line 456
恋愛小説短編集~ハッピーエンドストーリー~ - 【七十二人目】 幸せになってと言われて婚約破棄されそうな俺はどう言えばいい?
[go: Go Back, main page]

表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/197

【七十二人目】 幸せになってと言われて婚約破棄されそうな俺はどう言えばいい?

「幸せになって」

「えっ」


 婚約者の彼女にデート中に、いきなり言われた。


「私はあなたには相応しくないから。結婚なんてできないよ」

「何で君がそれを決めるの?」

「だってあなたは、私といて楽しそうに見えないもの」

「それは俺が感情表現が下手なだけだからだよ」

「知ってるよ。あなたとどれだけ一緒にいると思っているの?」

「それなら相応しくないなんて思うことはないだろう?」

「だって私は、感情表現をもっとして欲しいから。それに気付いたら、あなたと一緒にいられないの。だからあなたは、あなたに相応しい人と結婚をしてよ」


 彼女の顔は悲しそうだ。

 本当は一緒にいたいんだ。

 俺には分かる。

 だって彼女は、感情表現が上手だし、彼女との関係が長いからね。


「君は俺に相応しい婚約者だよ。それは絶対に変わらないよ」

「私は、そうは思わないよ」

「それならこれからそれを証明するよ」

「どうやって?」

「こうやって」


 俺はそう言って彼女の左頬に手を当てる。

 彼女は俺を見上げて見つめる。

 そんな彼女を俺も見つめる。


「こんな風に見つめ合っても、あなたは無表情なのね」


 彼女はそう言って俺から視線を逸らした。

 悲しそうな顔の彼女。

 俺はこんな顔を彼女に毎回させるのか?


「ねえ、笑ってよ。俺は君の感情表現が好きなんだ。その中の笑顔が一番好きなんだよ」

「無理よ。今の私は無理なのよ」

「どうして?」

「あなたといて幸せじゃないの。だから笑えないよ」


 彼女はそう言いながらうつむいた。

 彼女がどんな顔をしているのか見えない。

 どんな顔をして俺に言ったの?


 彼女は帰ると言って帰った。

 俺も帰るが、このまま彼女と終わるのは嫌だった。

 このまま彼女からは連絡はないだろう。

 そして俺達は終わってしまう。


 彼女が、このまま終わるのは嫌だと思っているのは分かる。

 俺が変わらなければいけないんだ。

 その為にはどうすれば?


 そうだ。

 彼女の感情表現を真似しよう。

 彼女は分かりやすいんだ。


 怒っている。

 悲しんでいる。

 楽しんでいる。

 喜んでいる。

 照れている。

 拗ねている。


 彼女には色んな感情がある。

 俺にもあるんだ。

 彼女のように表現すればいい。


 そして俺は、彼女がどんな時に感情が表れるのか考える。


 美味しい物を食べた時。

 そうだ。

 彼女の好きな、あのカフェに行こう。



 彼女が好きなネコカフェ。

 男が一人で入るのは少し恥ずかしいが、彼女の為に俺は入る。

 彼女が好きなネコパフェを頼んで、彼女の事を思い出す。


 美味しいと言いながら俺に笑いかけて、俺にあ~んと言って、パフェが乗ったスプーンを向けてくる。

 そんな彼女が可愛くて抱き締めたくなるんだ。

 彼女は嬉しそうで、楽しそうで、周りの目なんか気にしないで、笑っているんだ。


 彼女がいない時に食べるパフェは、味が分からない。

 ネコ達が寄って来ても嬉しくない。

 何かが足りない。


 俺はすぐにネコカフェを出た。

 楽しくなかった。

 彼女がいる時は楽しかったのに。


 彼女がネコ達に囲まれて、困っている時は可愛かった。

 助けてあげたくなって手を差しのべたら、彼女は俺の手を取ってありがとうって笑って言ったんだ。


◇◇


 次は俺の好きなアクション映画を観に、映画館へ一人で行った。

 彼女はアクション映画よりも恋愛映画が好きなのに、俺が観たいからと一緒に観てくれる。


 彼女はアクションシーンで、目を手で塞ぎながらも、指の隙間から観ていた。

 暗い中でも彼女の表情は分かる。

 アクションシーンが終わると、ホッとしたような顔になって、彼女を見ていた俺に言うんだ。


 ドキドキするけど楽しいねって。

 彼女はそう言って笑うんだ。

 今回は、その映画を一人で観た。

 一度見ているはずなのに、初めて観たシーンが多く感じた。


 よく考えてみると彼女が驚いたり、怖がったりしたシーンを俺は観ていなかった。

 そのシーンは彼女を見ていたからだ。

 彼女が心配になるんだ。


 苦手なシーンを、俺に合わせて観ている彼女が、心配で彼女のことばかり見ていた。

 それでも彼女は、最後まで映画を観て泣いていた。


 最後はハッピーエンドで良かったねって笑いながら泣いているんだ。

 泣くか笑うか、どちらかにすればいいのに。

 彼女は感情表現をするのに忙しそうだった。


 映画館から出ても、何か足りない事に気付く。

 映画を一人で観るのは、どのくらい前だっただろう?


◇◇◇


 次に俺は彼女の大好きな場所へ向かった。

 人がいない穴場の、あの場所へ。


 初めて行った時は、少し山道を歩くのが嫌だった。

 ひらけた場所に出ると、目の前には夜景が見える。

 色んな色の輝きを、彼女は綺麗と言って眺めるんだ。


 この山道も今では慣れた。

 ひらけた場所に出て俺は驚いた。


「どうして君がここに?」


 俺は、夜景を見ていた相手に声をかけた。

 何度も見た後ろ姿。

 間違えるはずがない。

 彼女だ。


「どうしてあなたが?」


 彼女も驚いて振り返った。


「この場所は、君の大好きな場所だから。君の真似をするなら、ここが一番だと思ったんだ」

「真似?」

「そう。君のように感情表現をしたくてね」

「それって私の為に?」

「そう、君の感情表現は完璧だからね。俺にはまだ難しいけどね」

「何を言っているの?」


 彼女はそう言って少し怒っている。

 何で怒るんだ?


「私の感情表現は完璧なんかじゃないわ。ただ感じたことを、そのまま表現しているだけよ」

「どういうこと?」

「あなたと一緒にいるからよ。楽しい時も、嬉しい時も、悲しい時も、怒る時も、あなたが一緒だからよ」

「俺がいるから?」

「だからあなたも、私みたいに感情表現をして欲しいの。でも私には、あなたを無表情にしかできないの。私はあなたには相応しくないからよ」


 彼女は悔しいのだろう。

 悔しくて泣きそうな彼女。

 また感情表現をする事に忙しくなっている。

 俺はそんな彼女を抱き締めた。


「俺、分かったことがあるんだ」

「何?」

「俺は君がいないと、何をしても楽しくないんだ」

「それならどうして楽しいなら笑ってくれないの?」

「それは君の感情表現を見ると、頭がフリーズするからなんだよ」

「フリーズ?」

「君の感情表現は可愛くて俺は君を見ると、固まってしまうんだ」

「固まるから無表情なの?」

「そうだと思う」

「それなら固まった後に感情表現をしてよ」


 彼女はホッとしたように笑った。

 また俺の頭はフリーズする。

 でも彼女はそんな俺を見て、いつまでもニコニコしている。


「何でいつまでもニコニコしているの?」

「待ってるの」

「待ってる?」

「あなたが感情表現ができるまで待ってるの」

「何だよそれ?」

「あっ、笑った」


 彼女は嬉しそうにまだニコニコしている。

 そんな彼女の薬指には、婚約指輪が光っている。

 彼女はやっぱり、俺との婚約を破棄なんてしたくないんだ。


 最初から、彼女も俺も同じ想いなんだ。

読んでいただき誠に、ありがとうございます。


次のお話は、好きと言われても嬉しくない主人公の物語。

美少女の彼女は彼の顔が好きだが、それは彼じゃなくて彼のお兄さんが好きだからだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ