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恋愛小説短編集~ハッピーエンドストーリー~ - 【九十七人目】 指輪の意味を知りたくて~幼馴染みを悪役令嬢だと思っていた~
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【九十七人目】 指輪の意味を知りたくて~幼馴染みを悪役令嬢だと思っていた~

ブックマーク登録や評価、感想など誠にありがとうございます。

とても、とても嬉しいです。

 昔。

 昔。

 俺と幼馴染みの彼女が幼い頃の話。


「これを受け取ってくれる?」

「何これ? 可愛くない。いらないよ」

「どうして? 君の為に作ったんだよ?」

「私はもっとキラキラした物がいいわ」

「キラキラした物は俺が大きくなったらあげるよ」

「私は今がいいの」

「君はワガママだね」

「そうだよ。私の欲しい物はパパがいつも買ってくれるもん」

「そうなんだね。君はパパがいればいいんだね」

「そうね。だからこんな物はいらないわ」


 彼女はそう言って俺が渡した物を、投げ捨てた。

 俺はそんな彼女の行動を見て泣きながら家へ帰った。


 俺が彼女に渡した物はラッピングなどで使われる、針金でできているラッピングタイで作った指輪だった。


 高校生にもなればラッピングタイなんて、貰って嬉しい物じゃないことは分かるが、子供の俺にはそれが綺麗で彼女につけて欲しかったから、キラキラのピンク色を選んで作ったんだ。

 それなのに彼女はいらないと言って投げ捨てた。


 この時、彼女を嫌いになった。



 そんな彼女は今でもワガママな女の子だ。

 昔よりワガママが酷くなったかもしれない。


 ワガママが酷くなったのも、彼女が美しく育ったせいでもある。

 彼女の周りには護衛と言う名のクラスメイト達の何人かが、いつも一緒に行動をしている。


 彼女のことを嫌いになったあの日から、彼女と関わらないように俺は生きてきた。

 しかし彼女は目立つからなのか、俺の視界に入り、噂は耳に入る。


「おいっ、聞いたか?」


 俺の親友が近付いてきて言ってきた。

 こいつは、いつも幼馴染みの話をしてくる。

 こいつも彼女の顔に惚れているんだ。


「またあいつの話なのか?」

「まだ何も言っていないのに何で分かるんだよ?」

「お前はあいつの話しかしないだろう?」

「そんなことはない。お前の妹の話もするだろう?」

「お前はどっちが好きなんだよ?」

「どっちも可愛いから決められないんだよ。それに、お前の妹を選んだらお前が兄貴になるだろう?」

「結婚する訳じゃないんだから兄貴にはならねぇよ」

「俺は結婚を前提にお付き合いをするんだよ」

「お前が弟になるなんて、こっちからお断りだよ」

「お前が決めることじゃないだろう? お前の可愛い妹ちゃんが決めることだよ」

「お前みたいな奴を俺の妹は選ばないよ」

「それなら俺はあの美しい令嬢様にするよ」


 俺の親友はそう言って、教室の一番後ろの席に座る俺の幼馴染みを見つめる。

 俺の幼馴染みは令嬢様と呼ばれている。

 彼女が可愛いと評判になってから、そう呼ばれるようになった。


 俺は彼女をそんな風に呼んだことはない。

 俺には令嬢様ではなく、ワガママで自分がいつでも中心にいなければ気が済まない、まるで悪役令嬢のようだからだ。


 良い所なんてひとつも無い、悪い所ならたくさんある。

 彼女は確実に悪役令嬢だ。

 だから俺は彼女が嫌いだ。


「それで? あいつの話って何?」

「あっ、それが令嬢様がどうしても手に()れたい物があるみたいなんだよ」

「あいつは何でも手に(はい)るだろう?」

「それがどうしても手に(はい)らないモノがあるみたいなんだよ」

「あいつなら、どんな手を使ってでも手に()れるだろう?」

「それが、その欲しい物はどんな手も使いたくないみたいなんだ。自分で欲しい物を手に()れたいみたいなんだ」

「へぇ~そうなんだ~」

「もう少し興味を持てよ。お前の幼馴染みだろう?」

「もう、他人だよ」

「家は離れても幼馴染みだろう?」

「俺には関係ないんだよ」


 そう。

 俺には関係ない。

 彼女は俺の幼馴染みでもなくなったんだ。

 彼女を俺が嫌いになってすぐに、彼女は引っ越しをしたんだ。


 彼女の母親が再婚したからだと、俺が少し大きくなってから聞いた。

 俺には関係ない。

 彼女の家庭環境も。

 彼女の気持ちも。


 俺は彼女が嫌い。

 ただそれだけ。

 彼女となんか関わりたくはない。



「やばっ、授業に遅れる」


 俺は体育の授業が終わり、授業で使った物の片付けをして遅くなってしまった。

 教室へと急いでいた。


「大丈夫、私は笑える。大丈夫、私は可愛い。大丈夫、私はお母さんの為に、、、」

「何を言ってんの?」


 俺は階段の下に隠れて、何かを言っている相手に声をかけた。

 まるで自分に言い聞かせているその相手は、とても不安そうで弱々しい声でほっとけなかった。


「なっ、何であなたが?」

「君がいつもと違って感じたからね」

「わっ、私はいつも通りよ」


 ほっとけないと思った相手は俺の幼馴染みだった。

 彼女はいつも通りと言ったが、どう見ても何かを我慢しているように顔を歪めている。

 嫌いなはずなのに、彼女をほっとけない。

 どうしてだろう?


「誰もいないんだし、我慢する必要はないよ」

「私は我慢なんてしてないわよ。私は好きなように生きてるもの」

「俺もそう思ってた」

「えっ」

「でも違うんじゃない? 本当は好きなように生きてないんじゃない? だから自分に言い聞かせてたんだよね?」

「あなたには関係ないわ」


 彼女はそう言って俺に背を向けて歩き出す。


「俺には関係ないけど、昔の俺は君のことが心配なんだって言ってるんだ」

「昔のあなた?」


 彼女は振り返り言った。


「昔は君のことが好きだったからね」

「昔の私? そうね、昔の私だったらその言葉は嬉しかったと思うわ」


 彼女はそう言って教室へと戻っていった。

 彼女の言葉の意味が分からない。

 昔は嬉しかった?

 俺が作った指輪を投げ捨てたのに?


 俺、さっき告白したよな?

 昔は好きだったなんて言ったんだからさ。

 なんてバカなことを言ってしまったのだろう?


 彼女があんなに弱々しく見えたからいけないんだ。

 俺が心配したからいけないんだ。

 彼女のことは気にしない。

 俺と彼女はもう、関係ないんだ。




 しかし関係ないと思えば思うほど、彼女が気になった。 

 彼女がどうしてあんなに弱々しく見えたのか。

 彼女がどうしてあんなに我慢をしていたのか。



「なあ、あいつの手に()れたい物って何?」

「はあ? いきなりなんだよ?」


 ある日、俺は窓から空を見上げながら親友に言った。


「あいつの手に()れたい物は、もう手に(はい)ったかな?」

「お前、何を言ってんだよ?」

「はあ? お前も気になるだろう?」

「お前、この前は興味なさそうにしていただろう?」

「そうだったか?」

「お前、令嬢様に恋でもしているのか?」

「はあ?」


 俺は空を見ている視線を勢いよく親友に向けた。


「だって令嬢様のことばかり気にしてるじゃん」

「おっ、俺はあいつのことなんか嫌いなんだよ」

「そんなでかい声で言わなくてもいいだろう?」


 俺はいつの間にか大きな声で言っていた。

 俺は彼女のことは嫌いなんだ。

 もう、あんな悲しい思いはしたくないんだ。


「令嬢様のことだったらすごい話を聞いたんだ」

「なっ、なんだよ?」

「令嬢様は親が決めた人と結婚をすることが決まっているんだ」

「何それ? あいつはワガママなんだから、そんなの嫌って言えば済むだろう?」

「令嬢様は拒否なんてしないみたいだ」

「なんで?」

「知らない。それは護衛をしている奴等も知らないみたいだ」


 ワガママの彼女が嫌だと言わないのは何故?

 嫌ではないのか?

 結婚相手を自分で決められないなんて、誰でも嫌だと思うんだ。


 彼女のことが気になって仕方がない。

 最近は彼女のことばかり考えてしまう。

 嫌いなのに。

 頭の中は彼女のことでいっぱいになっている。



「やっぱり此処にいた」


 俺は彼女のことが気になり過ぎて、彼女を見つけたあの日の場所へ行き、そこにいた彼女に言った。


「何で、またあなたなの?」

「何で、またここに来てるの?」

「あなたには関係ないの」


 彼女はそう言って俺に背を向けて教室へ戻ろうとしている。

 ここで諦める訳がない。

 彼女のことが気になって仕方がないのだから早く解決させて落ち着きたいんだ。


「俺にも関係あるよ」

「えっ」

「昔の俺は君が好きだったから」

「また昔の話なの?」

「そう、だから君も昔に戻って話をしてよ」

「私は昔を覚えてないわ」

「それは嘘だよね?」

「本当よ」

「それならこの前、俺が君のことを好きだと言った時、昔の君だったら好きという言葉は嬉しいと言ったのはどういう意味なわけ?」

「あっ」

「君の嘘は昔からバレバレなんだよ」


 そうなんだ。

 彼女は嘘をつくのが下手なんだ。

 正直な彼女が好きだったんだ。

 ワガママでも良かったんだ。

 正直なら。


 昔は俺と彼女は両想いだったんだ。

 それを分かっていたから、彼女の為に作った指輪を彼女が投げ捨てた時に、僕は彼女を嫌いになった。

 彼女が俺に嘘をついたから。


「私は昔とは違うわ。もう嘘なんて簡単につけるわ」

「それなら変わった君を見せてよ。嘘でもいいから俺に教えてよ」

「何を?」

「君がここにいる理由だよ」


「ここにいれば逃げられると思うから」


 彼女が以前のように何かを我慢して顔を歪めた。

 そして不安そうに、弱々しく言った。


「何から逃げるわけ?」

「あなたから」

「俺?」

「昔の」

「昔?」

「あなたが好きよ」

「えっ」


 彼女は苦しそうに俺に好きと言った。

 そんな顔をして好きと言われて嬉しいはずはない。

 何を我慢しているんだ?


「嘘よ」

「えっ」

「あなたなんか好きなわけないじゃない」


 彼女はそう言うけれど俺の心は全然、傷つかない。

 好きの言葉が嘘だって分かっていたから?

 彼女のことが嫌いだから?


 違う。

 今の彼女の顔が嘘だと言っているから。

 昔のあの日の顔と同じだ。

 全然、嘘を隠せていない。


 今にも泣きそうな顔で俺に言っている。

 昔は子供だったから、彼女の気持ちなんて分からなかった。

 泣きそうなのも、俺の指輪が嫌だからだと思っていた。


 でも今は彼女の気持ちが分かる。

 彼女は俺のことが好きなんだって。

 俺もそんな彼女が好きなんだって。


「嘘つき」


 俺はそう言って彼女をギュッと抱き締めた。


「あなたなんて嫌いよ」


 彼女は俺に抱き締められたまま何度も俺を嫌いだと言う。

 彼女は自分に言い聞かせるように何度も言っている。


「そんなに嫌いって言われると嘘だって分かっていても傷つくんだけど?」

「でも、私はあなたとは、、、」

「君はワガママじゃん。我慢なんてしなくていいんだよ。君は感情に正直でいいんだよ」

「あなただけを我慢すればうまくいくの」

「君はそれでいいわけ?」

「私はあの日、決めたの。あなたを諦めるんだって」

「あの日って俺が指輪をあげた日?」

「そうだよ」

「君はあんなに幼い時に、何を一人で抱えていたんだよ?」

「あの日からずっと抱えているわ。これからもずっとね」


 彼女はそう言って俺の腕の中から離れる。

 あの日のように彼女はまた俺を諦めるつもりだ。

 でも俺達はもう、あの日のように子供じゃない。

 俺はもう、彼女を一人にはしない。


「俺が背負うよ」

「えっ」

「俺が君の抱えているものと一緒に君を背負うよ」

「そんなの無理よ」

「どうして、やってもないのに最初から諦めるわけ?」

「だってあなたに解決できる訳がないもの。これは私達、家族のことなんだから」

「家族のこと?」

「あっ」


 彼女はすぐに自分の口を手で押さえた。

 もう何も話さないと意思表示をするように。


「再婚相手と仲が悪いの?」


 彼女は大きく首を横に振った。


「お母さんと仲が悪いの?」


 彼女はまた大きく首を横に振った。


「俺じゃ君の力になれない?」

「そんなことないよ。ただ私が嫌なの。私のせいになったら嫌なの」

「君のせいって?」

「私がお父さんの言うことを聞いていればお母さんはお父さんに捨てられたりしないでしょう?」

「何、言ってんの?」

「えっ、お母さんには幸せでいてほしいの。前のお父さんが出ていったのは私が言うことを聞いてなかったからなのよ」

「違う」

「えっ」

「違う。君は何も悪くないよ。お母さんに君が悪いなんて言われたわけ?」


 彼女は何も言わず大きく首を横に振った。

 そして大きな目に涙をためている。

 俺はもう一度、彼女をギュッと抱き締めた。


「君は悪くないんだ。君が我慢をする必要はないんだ。だって家族なんだから」

「う、、、ん」


 彼女は泣いた。

 今まで我慢をしていた気持ちが溢れるように、たくさん泣いた。



 そんなことがあって一週間が過ぎた。

 彼女とはあれから話をしていない。

 彼女の家族がどうなったのかなんて分からない。


「ねえ。今日、私の家に来てくれる?」


 可愛い彼女が俺に学校で声をかけてきた。

 クラスの奴等は驚いている。

 俺と彼女が話をするなんて一度もなかったからだ。


「えっと、いきなり?」

「そうだよ。あなたの話をしたら、お父さんが会いたいって言っていたの」

「俺に? 俺の話ってどんな話だよ?」

「ん? 色々だよ。それより、来てくれるの?」

「まあ、暇だし。いいよ」

「やったぁ」


 彼女は本当に嬉しそうに笑った。

 そんな彼女の笑顔を見てクラスの奴等は可愛いと呟いていた。



 それから俺は彼女と一緒に彼女の家へと向かった。


「俺を幼馴染みって言ったんだろう?」

「ん?」


 彼女は首をかしげて、俺を見る。

 俺、変なこと言ったかな?


「俺は君の幼馴染みだよな?」

「ん?」


 彼女はまだ首をかしげている。

 俺を幼馴染みと言っていないみたいだな。

 それなら俺をなんて言ったんだよ?


「俺って君の何?」

「旦那様」

「えっ」

「嘘」


 彼女はそう言って笑った。

 彼女はやっぱり令嬢様じゃなくて、俺にとっては悪役令嬢だ。

 俺の愛しいワガママ悪役令嬢さま。


「あれ? 指に何かつけてる?」


 笑っている彼女の指に何かキラキラと光っている物がついている。


「うん。私の手に()れたかった物」

「それってあの日の指輪?」

「そうだよ」

「投げ捨てたのに拾ってたんだ?」

「そうなの。すぐに拾って私の宝物だよ」

「元々手に()れてるのに手に()れたかったってどういう意味?」

「この指輪は両想いの(しるし)なの。あなたの想いがこの指輪に入っていても私の想いは入れられなかったの」

「両想いの(しるし)だから指輪をつけられない。それは手に()れられないのと同じってこと?」

「そうだよ」


 彼女はそう言って指輪を撫でた。

 簡単に作れるし、ゴミと言ってもおかしくない指輪を大事そうに撫でたんだ。


「ちゃんとした指輪をあげるから」

「うん。その時は結婚指輪だよ」

「えっ、あっ、うん」

「嘘だよ」


 彼女はクスクスと笑って言った。

 それなら俺も仕返しだ。


「結婚指輪をあげるまでその指輪は婚約指輪だね」

「えっ」


 彼女も動揺している。

 そんな彼女と見つめ合う。


「俺はワガママな君も、正直な君も、大好きだよ。だから我慢をしないで俺を頼ってよ」

「うん、大好きよ」

「俺も」


 そして俺達は初めてのキスをした。

 あの日に戻ったみたいだ。

 あの日。

 俺達が両想いになるはずだった日に。

読んでいただき、誠にありがとうございます。

面白かったと思っていただけるようなお話だと幸いです。


次のお話は、いつも主人公の部屋へ暇があれば遊びに来るアイドルの仕事をしている幼馴染みと主人公の物語。

その幼馴染みが、主人公の部屋は落ち着く場所だと言う理由を知った時、二人の距離が関係が変わっていく。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうなるんだろうと思いながら読み進め、 あ、もしかして……と少し察し 最後の展開にふふふとなりました(*´∀`*) やはりハッピーエンドのお話はほっこりするから好きです♪ 読ませていただき…
[良い点] 幼馴染みといえば大概負けヒロインですが、ハッピーエンドで良かったですね。 主人公が羨ましいです。(╹◡╹)
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