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妖々の神畏 - 第十五話 過ぎた禍根
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第十五話 過ぎた禍根


 雨が降っていた。

 激しい雨が何日も続いた影響で、衣類に泥等が身体にまとわりつく。

 

 「………」


 目の前に倒れる巨大な黒い獣のようなモノ。

 先程まで、死闘を繰り広げた強い力を持った怪異。


 黒獣の怪異、そう呼ばれたモノだ。


 「倒した、のか?」


 ソイツはぴくりとも動かず、ただ激しい雨が身体を打ちつける音が聴覚を刺激する。

 既に骨が折れ使い物にならない左腕をぶら下げながら俺は敵の死を確認する。


 呼吸も鼓動も感じない、つまり死んだ。

 俺は、俺達はこの戦いに勝ったのだ。


 「っ………」


 ようやく掴み取った勝利に喜びの声をあげようと、身体が強張ったがすぐに激痛を身体が貫きその場に倒れる。


 「あ……」


 これは駄目だ、いや今まで生きていたのが不思議なくらいの傷である。

 骨が折れたとはいえ、五体満足。

 しかし、内臓は幾つか潰れた。


 あとは死を待つのみ。


 やるべき事があった。

 やらなければならない事があった。


 その道半ばで、終わる。


 此処が俺の死に場所なのだと。


 「っ……なんでだよ?」


 今にも死にそうな俺の視界に、誰かの足が見えた。

 何処か見覚えのある、居ないはずの存在。


 「ほんと、いつも無茶ばかりするよね……」

 

 視線を上に向けると左腕を失った、ソイツは俺の方を見て笑っていた。


 「………お前に言われたくない」


 「そっか、とにかく治療しなきゃね……」


 そう言ってソイツは膝を付き俺の方へと手を伸ばす。

 

 「自分を見てから言えよ、俺は助からない」


 「でも、私が犠牲になれば君を救える」


 「ふざけてるのか?」


 「君にはやるべき事があるんだろ、遥?」


 「お前、何を………」


 「どのみち、片方は死ぬ。

 でも、片方は助かるんだよ」


 「なら真っ先に自分を……」


 「………、ごめん。

 それは出来ない、君に死なれるのが嫌だから」


 「ふざけてるのか、こんな時に?」


 「どっちだと思う?」


 「………、俺はいいからさっさと自分の方を」


 「嫌だ」

 

 「だから、さっさとやらないと手遅れに……」


 「嫌だ」


 「お前、本当に………」


 「君に死なれるのは嫌なんだよ………。

 君は絶対に助ける、それが私の役目だから……」


 「いつの話を引っ張って………」


 「仇を取るんだろ?

 家族を仇を取るんだってあれだけ言って、此処で死ぬつもりかよ?

 ふざけるな!

 死なせない、ここで君を死なせない!

 私の身勝手で、私の巻き込んだ事で君が死ぬのは絶対に、絶対に嫌なんだ!!」


 「…………」


 薄れる意識の中でソイツの声が幾度も聞こえた気がした。

 何度も何度も、俺を呼ぶソイツの声が……。


 「ほんと、馬鹿な事をしているなぁ……」


 「…………」


 「遥………。

 私、本当は……君の目的なんてどうでも良かったんだ。

 ただ、一緒に居たかった、それだけで………」


 声すら出ない程衰弱した俺を、もっと酷い傷を負ったソイツは返事を返せない俺に向けて一方的に話し掛け続ける。

 

 やめろ、これ以上はお前が………、


 声にならない、ただゆっくりと俺を背負って歩くソイツの体温のみがソイツの生存を確認させる唯一のモノ。


 「全部投げ出してでも、一緒に居たかった」


 「…………」


 「でも、もう充分。

 この命を君の為に使えるのなら本望だ。

 ねぇ、遥……?」


 「…………」


 「私、あなたのことが………」



 昔の夢から、ふと目が覚めた。

 見慣れない天井、いや既視感はある。

 俺達が宿泊していた宿の一室だ。

 

 待て、俺の記憶が正しければ確か虚無僧姿の怪異に後ろを斬られ、それから……。


 「目が覚めたか、小童?」

 

 俺の枕元で座っていたミタモは、何食わぬ顔で俺に尋ねてくる。


 「………、助けられたみたいだな」


 「余程の手練れじゃったみたいやな」


 「虚無僧姿の怪異にやられたよ……。

 全く、少々油断を過ぎたみたいだ」

 

 「顔色は良くないみたいじゃな?

 傷の具合はどうじゃ?」


 「問題ない明日にはいつも通り動ける。

 少し昔の夢を見ただけだ」


 「ほう、呑気に夢を見る余裕があったか」


 「みたいだな……」


 「それで、虚無僧姿の怪異にやられたのじゃな?」


 「ああ、そうだよ。

 ミタモ、お前まさか見覚えがあるのか?」


 「いや、知らんな。

 他に特徴は?」


 「そうかい。

 他の特徴って言うと、両手に小太刀を握ってとにかく足の速い怪異だった。

 最初は人間かと思ったんだけどな……。

 たが、奴には協力者が居てソイツは自分の仲間であったはずの神畏を殺したよ」


 「仲間を殺した、それも神畏か……。

 なるほどの」


 「この間倒した怪異を放ったのは、そいつ等で間違いないよ。

 で、恐らく奴等が狼藉を働いていた奴等で間違いない。

 だが、色々と聞き出す前に虚無僧姿のそいつに邪魔されて、口封じに皆殺された。

 奴等、仲間の命はなんとも思わない連中みたいだ。

 あるいは、怪異しか仲間と見ていない……。

 俺の実力を見て勧誘してくる余裕もあったくらいだからな、全く舐められたものだよ」


 「再戦したところで勝算はあるのかの?」


 「ミタモの協力あれば多分勝てる。

 俺一人じゃ、どうやっても無理だな」


 「そうか………」


 「千歳の方はどうだ?

 稽古の進捗、容態は?」


 「小娘は何ともない。

 稽古はまだ何とも言えんが、見る目はある。

 数日で何か変わるとは思えんが……」


 「そうか……」


 「で、どうするつもりじゃ小童?

 この地の問題、正直妾達の手には余る案件じゃぞ?」

  

 「征伐隊の人達が戻るまでの時間稼ぎ。

 あるいは、さっさとここから手を引くか……。

 今の俺達には、この二択がある」


 「根本的な解決まではしないんじゃな」


 「どうにか出来る目処がない以上、解決しようがないだろう?

 解決してやりたいのは山々だが、命を張る程ではないからな……」


 「虚無僧姿のそ奴を倒せずして、例の片腕を倒せるとは思えんがのう?」


 「………、それもそうなんだがな………」

 

 その場にため息を吐き、目の前の問題を整理する。


 ここ最近の一連の一件が大方全部繋がっていた。

 集落を荒らしていた怪異は、虚無僧姿の怪異が意図して放った。

 その事を知らず、足切りとして動かされていたのが集落から聞いていた好き放題していたという神畏達。

 

 そして、道中出会ったのは厄六と呼ばれる存在を追う征伐隊。

 無人の集落が多く発生している問題を解決する為に俺達に協力を持ちかけてきた。

 それも、多額の報酬を込みで。

 その中に居た千歳は、ここ酒倉井の長である酒倉井金重の娘である。

 彼女はこの集落の水を管理していたミカ様と呼ばれる存在の子であり、長からすれば養子の存在。


 彼女の未熟な力をなんとかする為に、征伐隊へと加入させられたみたいだが、戻って見れば虚無僧姿の奴が率いる奴等に狙われていたのである。


 正直、これだけじゃ一連の因果関係が分からない。

 隊を率いる久矛からの助言を求めたいが、現在は別の場所にて別の仕事をしている。


 集落の水質が変わった事に関係しているであろう、硫黄の採掘についてを探る目的がある為だ。

 そして、かの地には厄六と呼ばれる存在も関与している可能性がある。


 そして、千歳の父親が厄六の一人である黒鼬コクユである可能性があるとミタモは言っていた。

 しかし、彼女の出生を知らず逃亡している為奴が千歳を認知している可能性はかなり低いとのこと。

  

 「…………ミタモ」


 「なんじゃ?」


 「一連の騒動、少なからず全部繋がってるんじゃないのか?

 俺はそう思ってる」


 「妾もそこは同じじゃな、だがまだ確信出来る段階までは至って居らん。

 厄六が本当に関与しているのか?

 千歳が何故狙われておるのか?

 お主を襲った虚無僧の輩が何者なのか?」


 「俺としては正直此処で手を引きたい。

 お前の晩酌用の酒を諦める事になるがな」


 「なっ……!?」


 その言葉を聞いた瞬間、分かりやすく落ち込むミタモを見て何とも言えない感覚を覚える。

 いや、というかまだ酒のことしか頭に無いことにむしろ関心したよ、お前。

 図太いにも程がある。


 「という訳なんだが………」


 「待て、待て待て……。

 妾は嫌じゃぞ、酒が無いのは耐えられん!!」


 「駄々をこねるな、ミタモ。

 というか今の俺の怪我見てよく言えるよな?」


 「いや、じゃが……その……」


 「理由が何かしらあるのか?

 この酒倉井の守り神として存在していた千歳の母親であるミカ様はお前の昔の知人なんだろ?

 ここの水質の異変を改善する為だけに、酒が絡んでるとはいえわざわざ拘る義理もない。

 酒くらい他の産地でも沢山ある、なのにお前はここの酒を強く求めた、あるいは此処で無ければならなかった。

 今回の依頼の報酬にも、征伐隊に対してここの酒を要求したよな?

 どういう目的がある?」


 「はぁ……勘の鋭い奴よのう。

 しかし、妾がアレに何かを吹き込まれた訳でもない。

 理由は他にある」


 「何があるんだよ?」


 「ミカの役割は、この地の水を管理すること以外にもう一つの役目があった」


 「もう一つの役目?」


 「黒の怪異の封印じゃよ、ここの地下には奴の力の一部が眠っておる。

 かの封印を強固とする為に清く澄んだ水が必要となり、その為にミカの力は必要じゃった」


 「黒の怪異の力の一部だと?」


 「ああ、上からのお役目とでも言えば良いか……。

 黒の怪異の封印は全部で六つ、その一つがここ酒倉井の地下に眠っておる」


 「なんで、そんなものがあるんだよ?」


 「そんなことは知らん。

 ともかく力の一部の封印には清く澄んだ大量の水が必要不可欠なのじゃ。

 ミカドに献上される程の名酒を生み出せる程のな。

 じゃが、この地の現状はどうだ?

 ミカは死に、水は穢れた。

 この穢れは硫黄のソレで引き起こされる程の安易な問題ではない。

 封印が緩み、水が穢れたに他ならない」


 「待て、それじゃあ何で征伐隊の奴等を硫黄の採掘場探しに向かわせたんだよ?」


 「ミカが死んでおるとは思わんかった。

 水の穢れも、黒の怪異の復活を目論んだ奴が争いを起こす為に硫黄を求めたのだと思ったからの。

 じゃが、実際目の前で起きておるのは水の管理を任せたはずのミカは死に、未熟な千歳が残された事。

 この地に施された黒の怪異の封印も緩んでおる、水の穢れも大方これが原因じゃ。

 妾が応急処置をしたところで、千歳本人がどうにかせねば数年でこの地は滅び、封印も解かれるじゃろうな」


 「もしも封印が解けたらどうなるんだよ?」


 「この地の封印が解かれれば、それに影響され遠く離れた他の封印を施された土地でも連鎖的に封印が解かれ、終いにら黒の怪異は復活するじゃろうな?

 黒の怪異が蘇ったとなれば、現代の弱体化した神畏程度ではどれだけ束になろうと倒せん。

 最悪、世界が滅ぶじゃろうな」


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