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妖々の神畏 - 第四十六話 怪異と人と、その先で
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第四十六話 怪異と人と、その先で

 秋重達が向かったという場所は、見慣れない洞窟。

 中に入ってみると、意外と中は広く人の手によって掘られたものであることがわかった。

 ある程度、定期的に人通りがあったのか何かの灯りが奥へと繋がる通路を照らしてくれている。

  

 しかし、気になることが一つ。

 入り口に入る前から私達の連れている怪異達の様子が何処かおかしかったのだ。


 「凪さん、大丈夫なんですか?」


 「そうそう。

 さっきから犬達の様子がおかしいですし」


 「まさか、貴方達は怖いの?」

 

 「そうじゃないです!

 絶対ここおかしいですって話ですよ」


 「凪さんのところのぴーちゃんだって、ずっとあなたの近くから動かないじゃないですか?

 いつもは俺達がサボってないか監視してる癖に」


 「そうね、確かにこんなことは初めてよ」


 そう、此処に来てから明らかにおかしい。

 後ろの犬二匹は、さっきから身体を寄せ合い前に進むのを嫌がっているように見える。

 私の首周りを定位置としてるぴーちゃんもさっきから私の元から離れない。

 誤って絞め殺しはしないだろうが、此処が明らかに他と比べて異質な場所なのは間違いないだろう。


 「この先に千歳達が居るのは確実なのかしらね?」


 「居なかったら、居なかったらで良いんですけど」


 「でも、凪さん?

 いいんですか、久矛さんを待たなくて?

 俺達だけで乗り込むのは少々危険極まりないかと」


 「彼の命令なんだから仕方ないでしょう。

 正直、あまり深入りせず彼等の到着を待つのが良さそうだとは私も思うのだけど……」


 私自身、何の胸騒ぎがしない訳ではない。

 今すぐにでも手を引くべき、そんな警鐘を本能的に感じているのだ。

 男共は怖気付く中、私まで足踏みするのは流石に恥ずべきだ。

 私一人でもしっかりしなければならない。


 千歳が助けを求めてるのかもれないのに……。


 「先を急ぎ……」


 前に進むべく、後ろの彼等へと声を掛けた瞬間奥から激しい爆発音が聞こえてきた。

 

 「何……今の?」


 「何かが居るのは確実ですよね?」

  

 「千歳と秋重殿、いやでもそれだけではない?」

  

 「まさか………本当にミカが?

 千歳の実の母親がこの奥に居るの?

 でも………、だとしたらどうして爆発音なんて……」

  

 衝撃でこの通路が崩落する可能性もある。

 退避するなら今、でも奥に何かがあるのは確実。


 「二人はどうしたい?

 手を引く、それとも進む?」


 「凪さん、その判断を俺達に委ねるんですか?」


 「ええ、流石に同意も無しにこれ以上は危なそうね。

 来たい人だけ来なさい、私は前に進むわ。

 仮に戻るなら、久矛達によろしく言っておいて」


 後ろの二人は視線を交わすと、すぐに答えた。

 

 「俺達もついて行きますよ。

 あなた一人で向かわせるのは流石に出来ないので」



 「はぁはぁ………」


 「なるほど、ミタモの入れ知恵かな?

 流石、私から生まれた存在というだけはあるみたい」


 「…………」


 怪異の子は親と同じ力持って生まれる。

 親と同じ力なら、同じ属性とそして以前言われた同じ性質であるはず。

 そして、性質が逆の力ならお互いにその力を打ち消し合えると踏んだら予想通りの結果。

 こちらが僅かに力負けしたようだが、それでも母上の力にどうにか食らい付ける。


 でも、それだけ。

 今のは軽い挨拶程度、多分次も同じとはいかない。

 全力を出されたなら私はまず勝てないだろう。


 でも……。


 「征伐隊でしたか、彼等と関わってどうでしたか?

 人間の世界、外の世界に触れたとこで現代の怪異がどれ程弱くなってしまったか、よく分かったでしょう?」


 「………ええ、そのようでした。

 でも、それでも、私が何者であっても彼等は私を怪異とか人間とか関係なく受け入れてくれた。

 彼等との日々は、掛け替えのないものでした」


 「怪異なのに人間の味方をするの?」


 「怪異だからこそ、私は人と共に在りたい。

 それが今の私の願いです。

 酒倉井を守り続けた母上や父上、そして分け隔てなく接してくれた征伐隊、そして私に力の扱い方を教えてくれた、ミタモや遥……。

 その全てが今の私に繋がっている」


 「勿体ないな、それではあなたは強くなれない。

 怪異とは畏れによって成り立つ存在ですよ。

 力を示さなければ、人間に舐められます?

 畏れを得られ無ければ死ぬ定め、ミタモにも言われませんでしたか?」


 「そうだね、でも力の示し方は暴力だけじゃない。

 恐怖と信仰、その二つが大切だって……。

 私、まだ子供だからよくわかってない。

 でも、これだけは言える。

 私は、私はそれでも人の可能性を信じたい」 


 「………そうですか。

 残念だわ、千歳」


 母上が再びその手に力を込める。

 手の平がこちらに向けられ、その先に大きな水の塊が現れ渦のような力の流れが見えた。

 最初のアレの、多分三倍くらい……。


 でも、まだ余力があるってことは………、

 

 「もう一度、集中……教えられた通りに……」


 ミタモの教えの通り、怪異としての力を再び行使する準備をしていく。

 あの人のように器用には出来ないけど、例え同じように成れなくたって私にはまだ別のやり方があるはず。

 私にしか出来ないやり方が………。


 「………何の真似かな、千歳?」


 「落葉一刀流……」


 脳裏に浮かんだその姿、あの動きを身体に動作として落とし込んでいく。

 

 圧倒的なあの力、何度も受けたその痛み。

 忘れない、忘れる訳がない……。

 

 握っているのは練習用の木刀。

 それでも、私は乗り越えてきた。

 

 ミタモに教えられた、怪異としての力。

 遥に教えられた、剣士としての戦う力。


 それが私がこの一週間で得た全て。


 私の怪異としての力を、私の握るその刃に集中させ私は目の前の的に切っ先を向けて構えた。

 

 私が為さなければならない事の為に。

 守らなきゃならない物があるから、私は戦う。


 酒倉井の地が、父上や母上が守り抜いて繋いでくれた今の居場所を守り抜かなきゃならない。

 もっと強くならなきゃ、もっと自分の力を伸ばしてお役目を果たせるようにならなきゃ。

 

 だから、だから………。


 「あなたも消えさない、千歳」


 その瞬間、巨大な水の塊が放たれる。

 人一人分はあろう大きな水の塊が、巨大な渦を巻きながら私に向けられ放たれた。

 私はすぐに踏み込み、攻めに向かう。

 正面からアレを受け止めるかのように、母上には見えているはずだ。

 馬鹿げた真似、無謀な行為。

 でも、私は諦めた訳じゃない。


 「そのまま、死ぬつもりかな?」


 「っまだだぁぁぁ!!!」


 正面からその塊に触れた中、その力を私は身体を反らしながら受け流し、右側へと反れる事で衝突を回避する。

 そのまま、右下から左上へと斬りかかる動作へと向かう。

 すると母上はソレを見越し攻撃が振るわれるであろう方向に防御用に手の平へと力を集中させ構えたのである。

 しかし、振るわれたはずの剣筋は衝突の瞬間には水の塊となって目の前から消え去る。

 

 「っ!?」

  

 後方へと飛んだはずの水の塊の左側から本体の身体飛び出し左方向から私は全力で木刀を母上の胴体目掛けて振るい、全力でありったけを叩き込む。


 「な………?!」


 母上の身体は私の込めた一撃で大きく飛ばされ、結界の場所へと叩きつけられた。

 

 「はぁはぁ………」


 遥の技であった落葉一刀流、葉隠れの太刀。

 私が水を用いて我流にしたから、水隠れの太刀ってところかな?

  

 その場しのぎにしては上出来。

 真剣じゃないから、幾ら力を込めたとはいえ致命傷にはならないだろう。

 あとは、ミタモ達が戻るのを待つだけで……。


 「っ………え?」 


 安堵したのも束の間、身体が宙を舞っていた。

 激しい痛みを感じる間もなく、私の身体は大きく吹き飛ばされて、気付けば私は外壁に叩き付けられていた。


 「がはッ………?!」


 痛いどころではなかった。

 生きているのが不思議なくらいで、全身に激しい痛みを襲い掛かり視界と意識が朦朧とする。


 「随分とやってくれたね、千歳?」

  

 母上は倒れてなど居なかった。

 いや、違う……この感覚は……あの力の感じは……。


 怪異特有のあの感覚、例の結界が破れかけている。

 漏れた力が、母上の中に入り込んでいるのだ。


 「…………うそ………でしょ…?」


 「まぁいいわ、これで取り戻せる。

 でも、終わりね。

 さようなら千歳、あなたのお陰で私はようやく力を取り戻せますよ?」


 私を殺しに掛かる母の姿。

 これで終わり?

 酒倉井は父上の仇は……やっぱり私じゃ、私一人じゃ無理だったのかな……?


 みんな………ごめん……。


 「何をしているのかしら、そこの怪異?」


 「っ?!!」


 誰かの声が聞こえた。

 凪さんの声、それに……大きな犬二匹に……。


 「千歳……おい千歳?!」


 「とにかく、まずは手当手当。

 黒風に預けてる薬箱持ってきてよ」


 「亥さんに、煉さん………どう……して?」


 「どうしてって助けに来たんだよ?

 てゆうか、久しぶりに名前呼んでくれたね千歳?

 というか、ちょっと見ない間に大人っぽくなった?」


 「何言ってるんです………この人は……全く……」


 彼等の存在に安堵して間もなく、私の意識は闇へと落ちていった。

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