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ナルシズム - 17. 倒れながらも前へ
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17. 倒れながらも前へ

世界一のかっこよさを目指す男、鳴紫恋なるしれん


遂に倉庫の最深部へと足を踏み入れた恋だったが……

そこはほぼ壊滅状態。一体何があったのか?


ボロボロで倒れている剛の口から明かされる

衝撃の事実とは!?



――暗い。


照明ごと吹き飛んだのか、

目を開けても何も見えなかった。


耳の奥がジンジンと痛む。

さっきの波動の余韻だ。


その瞬間、

ほのかの後ろ手に結ばれていた縄が、

“パチン”と音を立てて緩んだ。


(…縄が…解けた?)


波動の風圧だけがほのかにも伝わっていたのだ。


ほのかはゆっくりと顔を上げる。


「……え……?」


暗闇の中でも分かる。

誰かが、ほのかのすぐ前で――

まるで庇うように立っていた。


その人影は、前に倒れそうになりながらも、

両手でバットを杖のように突き立てて、

必死に踏ん張っている。


息が荒い。

肩が震えている。

背中の服は破れ、焦げ、血が滲んでいた。


――背中で、あの波動を受けたのだ。


「……っ……!」


ほのかは息を呑む。


その顔は、見覚えがあった。

さっきまでタカシに立ち向かっていた――あの男。


「ど、どうして……あなたが……そこまで!?」


ほのかの声は震えていた。

名前も知らない。

敵だったはずの相手が、

自分を庇って立っているなんて――

理解が追いつかない。


男――剛は、弱々しく笑った。


「…あっ…はは……死ぬかと……思った……」


声は掠れ、今にも倒れそうだった。


「ど、どうして……私を……?」


ほのかが問うと、

剛は息を整えながら、ゆっくりと言った。


「……お前……

 あの時……身を挺して……あいつに…

 俺たちを……見逃せと……言ったろ……?」


ほのかの胸がぎゅっと締めつけられる。


剛は続けた。


「だから……俺も……そん時の……

 恩……返しただけだ……」


その言葉は、

暗闇の中でもほのかの心にまっすぐ届いた。


剛はもう限界なのに、

それでも倒れまいとバットを握りしめている。


すると、暗闇の奥から、

タカシの苦しげな声が聞こえた。


「……っ、あああああああああ!!」


タカシは腕を抱え込み、

床を転げ回るように痛がっていた。

さっきの衝撃波の反動だ。


「僕が……ほのかさんを……傷つけようと……?

 ありえない……ありえない!……

 そんなはず……ない……!」


タカシは震える声で呟き、

やがて“我に返った”ように顔を上げた。


そして――

剛を睨みつける。


「お前のせいだ……!お前のせいで……

 ほのかさんが危険な目に遭った!!」


「……は?」


ほのかは思わず息を呑む。

完全な逆恨みだった。


タカシは狂ったように叫ぶ。


「全部お前のせいだぁぁぁ!!」


タカシが剛に向かって突進する。


剛はボロボロで、足も震えている。

力なんて入らない。


それでも――

剛はバットを握り直し、

タカシの突進に合わせて一撃を振り抜いた。


ガッ!!


鈍い音が響き、タカシの身体が後ろへ吹き飛ぶ。


「ぎゃっ……!!」


タカシは床に転がり、怯えた目で剛を見上げた。


「な、なんで……波動を受けて…立ってられんだよ!

 お前その傷じゃ…もう動けないはず……だろ……?」


剛はゆっくりと、本当にゆっくりと前へ歩き出す。


バットを杖にしながら、一歩ずつ、一歩ずつ。


(……やべぇ……意識が……飛びそうだ……)


頭がぐらつく。視界が揺れる。呼吸が荒い。


それでも――

剛は止まらない。


一歩、一歩とタカシに迫る。


タカシは怯え、後ずさる。


「く、来るな……来るなぁ!!」


タカシは震える腕を突き出し、

制御しきれない波動を放つ。


「ぐあぁぁぁぁ……!!」


小手が軋み、タカシの腕に激痛が走る。

波動は致死級の威力――

だが軌道は荒れ、わずかにブレていた。


バゴォォン!!


剛の足元の地面が砕ける。

避ける余裕なんてない。

身体はボロボロで、もう動かない。


それでも剛は――踏ん張った。


「……クッ!!」


前屈みのまま足だけで立ち、

片手でバットを“斜めに”構える。


ガギィィィン!!


波動がバットにぶつかり、

剛は全身でその衝撃を受け流す。

真正面ではなく、角度をつけて力を逃がした。


「うおおおおおッ!!」


反動を利用し、剛は波動を弾き返す。


跳ね返った波動は、

タカシの顔の横をかすめて壁を抉った。


(……な、なんだと……!?

 お前如きが……波動を……弾いた……?)


剛は肩で息をしながら、

バットを杖のように支えた。


「……お前の波動……確かにヤベぇ威力だ……

 でもな……ブレてりゃ……根性で……

 どうにかなんだよ……」


ほのかはその剛の後ろ姿を

ただ眺めることしかできなかった。


「す、すごい……」


剛はさらに一歩、また一歩と進む。


(……やべぇ……足が……鉛みてぇだ……

 視界も……揺れて……くそ……倒れんな……俺……)


タカシはその様子を見て、

顔を引きつらせながらさらに後ずさる。


「な、何なんだよ……お前……!?

 何で!……もう、立つのもやっとだろ……!?

 なんで……何なんだよ……!」


剛の足取りはふらついている。

今にも崩れそうなのに――

それでも止まらない。


(……止まったら……終わりだ……

 白石ほのかを……守らねぇ…と…

 行け……行け……!)


タカシは完全に怯えていた。

剛の足音が近づくたび、肩がビクッと跳ねる。


「や、やめろ……来るな……来るなぁ!!」


剛はタカシの目の前まで辿り着いた。


剛は目を見開きバットを振り上げ――


(…これで…………!)


だがーー


その瞬間、

剛の身体が限界を迎えた。


「っ……!」


膝が崩れ、視界が真っ白になる。


白い光がじわりと滲み、焦点が合わなくなっていく。


まぶたが勝手に重くなり、

目の奥がスッと抜け落ちるような感覚が走った。


(……耐えろ……まだ……倒れんな……

 くそ……やば……意識が……)


視界の端が暗く沈み、

光が細い線になって消えていく。


そして――

タカシの目の前で、前屈みのまま倒れ込んだ。


辺りに静寂が満ちる。


「は、はは……」


しばらくして状況を理解したタカシが

勝利を確信して無理やり笑う。


「は、ははは、ははは、勝った……僕の勝ちだ!!

 僕に逆らったからこんな事になるんだ!」


でもその笑いはすぐにしぼむ。


タカシの腕は痛みで震え、息も荒くなる。

タカシはボロボロの剛に追い詰められた。


「…ちっ………」


タカシの顔から笑顔が消える。


(……なんでだよ……なんで僕が……

 僕だけがこんな……)


惨めさが胸に広がり、タカシは苛立ちを覚える。


タカシはほのかの方を向き、

無理に優しい声を作った。


「ほのかさん……ごめんね。

 あいつが君を巻き込んだから……こんなことに……

 怪我してない……?」


ほのかは無機質な声で、きっぱりと言う。


「怪我なんか、してません」


タカシはその言葉に、

なぜか拍子抜けしたような顔をした。


「そうかい……なら良いんだ……」


焦りも怒りも消え、

ただ“つまらなそう”な表情だけが残る。


ほのかはその顔をじっと見つめた。


(……結局、この人は……何がしたいの……?)


ここに来てから――いや、来る前からずっと。

タカシの言動は一貫していなかった。


告白の時は途中まで本気だったのに、

急に冷めたような態度を見せたり。


拉致までしておきながら、

ほのかが反論しなければ何もしてこなかったり。


発言と行動が噛み合わず、

どこかチグハグで、空虚だった。


だからほのかは、真正面から尋ねた。


「……佐藤くん。

 あなたは……結局、何がしたいの?」


タカシは目を見開く。


「……え?」


ほのかは続ける。


「私をどうしたいとか……

 自分が何をしたいだとか……

 本当は……何がしたいんですか?」


「それはもちろん……金で…」


タカシは笑顔を作って口を開くが、

言葉が出てこない。


沈黙が落ちる。


そして、ぽつりと漏らした。


「……僕は結局……何がしたいんだろうな…」


その目には、光がなかった。


怒りも、憎しみも、愛も、

全部がぐちゃぐちゃで、

自分の本心がどこにあるのか分からない。


ほのかはその姿を見て、胸がきゅっと痛くなる。


先ほど自分を殺そうとした相手に向ける感情とは思えない――。

それでも、"あの時"からか、

まず相手の感情が先に立ってしまう自分がいた。


(……この人……本当に……可哀想な人なんだ……)


ほのかは息を呑む。

タカシの肩が小さく震えているのが見えた。


だがタカシはすぐに顔を上げ、無理に笑みを作った。


「……いや、違う。

 僕は……やるべきことがあるんだ。

 そうだ、鳴紫恋を倒さないと!」


声は震えているのに、言葉だけは強がっていた。


タカシは机の紙を掴み、震える手で書き始める。


「これは挑戦状だ。

 鳴紫を誘き出すための。

 僕は逃げない、逃げる必要なんてない」


自分に言い聞かせるように、何度も何度も呟く。


「それにこの傷じゃどうせ逃げられないし

 だったら、決着をつけるしかないだろ?」


その言葉は、

“理由を後付けしている"ようにも聞こえた。


ここでほのかは確信に変わる。


(佐藤くんも本当は……

 心の何処かでは分かっているんだ……

 だけど、分かっていないふりをしないと……

 壊れちゃうんだ……)


タカシは置き手紙を書き終え、机に置いた。


『鳴紫恋へ。

 僕はグラウンドで待つ。

 白石ほのかは連れていく。

 決着をつけよう。

 佐藤タカシ』


タカシはほのかに手を差し出す。


「行こう、ほのかさん。

 グラウンドなら誰も邪魔しない。

 目撃者は金で買収すれば済むし。

 僕はそこで全部終わらせる」


その声は、強がりと空虚が混ざった声だった。


ほのかは静かに頷く。


(……この人……このままだと……

 きっと……でも、鳴紫くんなら……)


「……うん」


ほのかはタカシの横に立ち、ゆっくりと歩き出した。


机の上には、恋への“挑戦状”だけが残された。


--


剛は泣きながら、

自分が気絶するまでの出来事を恋に語った。


「ごめん……あともう少しだったんだ……

 あともう少しで……白石ほのかを……

 お前が頼ってくれたのに……」


恋は爽やかに笑って返す。


「何言ってんだよ。お前はよくやった!

 自分のことより白石を守ろうとしたんだろ?

 ちゃんと成長してんじゃねぇか」


そして剛の肩を軽く叩く。


「任せろ。あとは俺がケリをつけてくる。

 お前はここで休んでろ」


「……あぁ……頼む……」


剛の頬を涙が伝い、

そのまま安心したように気絶した。


恋は静かに立ち上がり、

タカシの行き先の手がかりを探す。

部屋をしらみつぶしに見て回る。


「しかし……ひでぇな、ここ」


大きく穴の空いた壁。

床に散らばった写真。

片足の折れた椅子。


その全てが、

この部屋での戦いの激しさを物語っていた。


恋は眠る剛の方を見て、ふっと微笑む。


その時、机の上に紙切れがあるのに気づいた。

暗くて読みにくいので、手に取って近くで確認する。


『鳴紫恋へ。

 僕はグラウンドで待つ。

 白石ほのかは連れていく。

 決着をつけよう。

 佐藤タカシ』


恋は読み終えると、紙を片手で握り潰す。


「……あぁ。売られた喧嘩は買わねぇとな」


恋は静かに部屋を出て、グラウンドへ向かう。


外はすっかり暗く、肌寒い。

部活帰りの生徒も教師ももういない。

校舎全体が静寂に包まれていた。


文武両道を謳うこの学園のグラウンドはやたら広い。

その真ん中に、二つの影が立っていた。


恋はゆっくりと歩み寄る。


「白石、待たせてごめん。助けに来た」


「ううん、私は大丈夫!

 来てくれてありがとう。

 鳴紫くんこそ、怪我とかない?」


「あぁ問題ない。

 傷がついてても俺はかっこいいからな。

 刺青みたいなもんだ」


「やぁ、よく来たね。待ちくたびれたよ、鳴紫」


「おう、待たせたな。タカシ」


タカシは薄く笑う。


「まさか双牙が倒されるとはね……

 だけど、見た感じボロボロじゃないか?」


恋は肩をすくめる。


「そういうお前もな。

 どうだ、剛は強かっただろ」


「ちっ……何誇らしげな顔してやがる。

 勝ったのは僕だ!」


タカシは小手を構え、狂気を帯びた笑みを浮かべる。


「まぁいいさ。

 この小手ガントレッドでもう一度お前を眠らせてやる。

 今度は二度と起きられないようにな」


恋は一歩前に出る。


「タカシ。分かってると思うが……

 俺はもう容赦しねぇ。

 全力で行く。悪く思うなよ」


恋の目が本気になった。


――決戦の火蓋が、今落とされる。



学園ものだとお金持ちキャラって基本仲間になるよね?

別荘とか持ってそうで便利なんだもん!


お読みいただきありがとうございます!


読んで下さったあなたはヒーローです!


ブクマされたら泣いて喜びます!


気軽に感想、コメントもお待ちしてます♪


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