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ナルシズム - 19. 俺がいる!!
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19. 俺がいる!!

世界一のかっこよさを目指す男、鳴紫恋なるしれん


タカシとの決戦は激しさを増し、

拳が交わるたびに夜の空気が張り詰めていく。


だがその衝撃の裏で、

タカシの心は静かに軋み始めていた。


果たして、恋はほのかを助け出すことが出来るのか!?



恋の攻撃を受け、

タカシは仰向けに倒れたまま動けなかった。


恋はゆっくりと歩み寄り、鋭い目で見下ろす。


「ほら、立てよ」


タカシはボロボロの身体を震わせながら、

それでも必死に起き上がろうとする。


だが、恋はその動きを断ち切るように

拳を叩き込んだ。


「ぐはっ!!」


タカシはまた倒れる。

声も出ない。

それでも、地面を掴んで立ち上がろうとする。


恋はその度に殴りつけた。


立ち上がり、殴られ。

立ち上がり、殴られ。

立ち上がり、殴られ――


一方的だった。

タカシが立ち上がらなければ、

この戦いはとっくに終わっている。


それでもタカシは、何度でも立ち上がった。


ほのかは遠くから、口元を押さえ、

涙を堪えながらその光景を見ていた。


タカシは立ち上がる。

恋は殴る。

また立ち上がる。

また殴る。


そして――


「ーーもういいっ!!」


鋭い叫びと共に、

恋とタカシの間に何かが飛び込んだ。


恋の拳が止まる。

視線を向けると、そこには――


泣きながら、

タカシを守るように両手を広げて立ちはだかる

ほのかの姿があった。


「もういいっ!!これ以上はもういいっ!!」


「……どいてくれ、白石。

 これは俺とタカシの問題だ」


恋は視線を逸らし、低く言った。


「どかない!!」


その勢いに、恋は思わず息を呑む。


「どかない!だって鳴紫くんの手……

 震えてるもん!!」


「ーー!?」


恋はハッと目を見開いた。

自分の拳が震えていることに、

本人も気づいていなかった。


ほのかは涙をこぼしながら、

恋の“本心”をまっすぐ言葉にする。


「本当は……もう終わりにしたいんだよね……

 もう殴りたくなんかないんだよね……」


ほのかは震える声で続けた。


「私には分かる。

 鳴紫くんは、佐藤くんを止めるため……

 自分を殺して……殴ってる……

 傷つけたいんじゃない、

 救いたいんだよね……?

 これ以上……進んで欲しくないから……」


『頼りにしてます、鳴紫くん!』


あの帰り道で言った言葉が、

ほのかの胸に蘇る。


ほのかは恋に確かな期待を寄せていた。

それは自分を助け出すだけでなく、

恋なら壊れかけているタカシの心も

救えるんじゃないか、と。


そう信じていた。

でも、恋の震える拳を見て、

苦しそうな横顔を見て――

もう見ていられなかった。


「もういいの……」


ほのかは泣きながら恋を説得する。


その姿に、恋の胸が強く揺れた。


「白石……」


「どけよ……白石ほのか……邪魔すんなよ……

 僕は……まだ、戦える……!」


恋の言葉を遮るように、

いつの間にかタカシが立ち上がっていた。

ほのかの前へ出る。


「僕が勝つんだぁ!!」


タカシは波動を放とうと腕を上げる。

だが恋は、その動きより速く距離を詰め、

右ストレートを叩き込んだ。


「ぐはっ……!」


タカシは仰向けに倒れる。

そのまま恋はタカシの胸ぐらを掴み、

震える声で怒鳴った。


「勝ち目ゼロだって分かってんのに……

 なんで俺に喧嘩売った!!

 なんで……

 ここまで俺を本気にさせたんだよ!!」


「そんなこと……言われなくても……

 分かってるよ!!分かってたよ!!」


タカシは涙を滲ませ、悔しさに歪んだ顔で叫ぶ。


「だけど……ここでお前に負けたら……

 僕は、本当に……

 何にもかもなくなってしまう!!」


「ーー!?」


恋の動きが止まる。


タカシは震える声で続けた。


「強さも……人望も……愛情も!!

 お前にはたくさんあるんだろ!!

 僕には……何もないんだよ!!」


ーー


クラスで初めて鳴紫を見た時、

ムカついたけど……

同時に“すげぇやつだ”と思った。


「いやー、それにしても、

 五十メートル走四秒台とか鳴紫足速すぎ!

 人間辞めてるだろ?

 陸上部が泣いてたぞ!」


「まだまだ全然!もっと速くならないと!

 俺は一番かっこいいやつを目指してるからな!」


「いや、速すぎるとかっこいいより怖いが勝つわ」


(何が一番だよ……

 そんなもん、なれるわけないだろ……)


僕はその会話を横目で聞いていた。


「マジで鳴紫、お前すげぇよな!」

「今度私にも走り方教えて!」


だけどあいつの周りには自然と人が集まっていた。

……妬ましかった。


そして今朝。

偶然にもお前は僕の計画を阻止してきた。


『俺の美学に反する遊びは、排除しないとな!!』


全部持ってるお前が、

何もない僕の邪魔をしたことが許せなかった。


だから、

以前僕の告白を断った白石ほのかを利用して、

お前を誘き出した。


『おい鳴紫。さっきの……校門のとこ、見てたぞ』


『申し訳ない、君の名前なんだっけ?』


(……名前すら覚えてねぇのか。

 僕はお前の眼中にすらないってことかよ)


『ほのかさんのこと、

 ちょっと気にしてやってくれねぇかな?』


『好きなんだろ?なら、自分で護るべきだ!

 だが、協力くらいはしてやれる』


『おう!ありがとな』


あとは簡単だった。


鳴紫に白石ほのかを護衛させ、

部下に“襲わせ”、僕も助けに入る。

そして油断した鳴紫を叩く。


ほのかさんは、ただの駒のつもりだった。


『ーー鳴紫くんって……モテそうですよね』


……ムカついた。

だから白石ほのかにも分からせないと。


予想外だったのは、

鳴紫の硬さと、アジトがバレたこと。

殺す気で殴ったのに、生きてやがった。


そして追い詰められ、今に至る。


本当に僕には何もない。

運すらない。

あるのは金と、小手の力だけ。

しかも全部、人から与えられたもの。


……本当は分かってる。


鳴紫。

多分、僕はお前が羨ましかったんだ。


何でも持ってるように見えるお前に……

憧れてたんだ。


だからーー


ーー


「だから、僕の全てをぶつけて……

 本気のお前をねじ伏せる!!

 小手ガントレッドよ!俺の欲望を叶えろ!!」


「何をする気だ!!

 やめろ、タカシ!

 引き返せなくなるぞ!」


「もともと引き返す気なんて、とっくにない!

 この小手を使った瞬間からな!」


タカシの腕に、

禍々しい憎悪のエネルギーが渦を巻く。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「……ヤベェな、これは」


その異様な気配に、恋も思わずたじろいだ。


「ぐっははは!これが僕の最大出力だ!!

 腕の一本や二本くれてやる!

 白石ほのかも道連れにしてやるよ!!」


タカシは狂気じみた笑みを浮かべ、叫んだ。


「二百ギガニュートン!!

 砕け散れぇぇぇ!!鳴紫恋!!」


その瞬間、波動が恋へ向かって放たれる。


ほのかは死を悟り、ぎゅっと目を閉じかけた。

だが、ふと横を見て――息を呑む。


恋が、笑っている。


「白石。ピンチの時こそワクワクしねぇか?

 これを破った時、自分を心の底から

 かっこいいと思える気がすんだ」


恋の目が鋭く光る。


「それに――

 相手が“人”じゃなけりゃ、本気で殴れる!!」


恋は人間相手だと無意識にブレーキをかけてしまう。

それが彼の弱さであり、優しさでもあった。


つまり、今までの恋は本気の本気ではなかった。


「なぁ、タカシ……

 それがお前の答えなんだな」


恋は拳を握りしめる。


「だったら俺も……今ある全部をお前にくれてやる!」


「さぁ、持っていきな!これが、今の

 ーー俺の全力だーー!!」


恋の拳が波動を殴り抜く。


バゴォォォン!!


轟音と共に、タカシの波動は

木っ端微塵に砕け、光の粒となって散った。


タカシの目が大きく揺れる。


「そ、そんな……馬鹿な……

 僕の……二百ギガニュートンが……?」


小手が外れ、タカシは力なく愕然と崩れ落ちた。

もう立ち上がる気力すら残ってはいなかった。


恋はゆっくりと近づき、

倒れているタカシを見下ろす。


「……何で白石まで巻き込んだ?」


タカシは薄く笑った。


「決まってるだろ?

 お前を誘き出すための“道具”が必要だった。

 ただそれだけだよ」


恋は納得しない。


「いい加減……自分の気持ちに嘘つくなよ!」


「……?」


「お前は、白石のこと……

 本気で好きだったんだろ?」


タカシは鼻で笑う。


「本気で言っているのか?

 僕はあの女を殺そうとしたんだぞ?

 好きなわけがあるかよ。ただの道具だ」


恋は静かに言い返す。


「じゃあ何であの時――

 身を挺して白石を庇った?」


ほのかがナイフ使いーー

翔に刺されそうになった瞬間、

恋よりも早く飛び込んだタカシ。


あの一瞬だけは、迷いがなかった。


「そんなの演技に決まってる。

 どうせお前が助けると思ったからな」


「僕は、誰も好きになどなっちゃいない…」


ーー


「え?あなたも、

 そのアーティスト好きなんですか?」


突然、クラスの女子が僕に話しかけてきた。

どうやらスマホの画面が目に入ったらしい。


「え、あぁ……たまたまだよ。

 おすすめに流れてきて……」


「私も好きです!いいよねぇ〜その曲。

 なんか……救われる気持ちになるっていうか」


「うん、そうだね……」


「ほのかー!何してるの、部活行こっ!」


友達に呼ばれ、彼女は振り返る。


「あっ、うん!すぐ行くー!」


「部活?」


「うん、もうすぐ大会で。

 じゃあ、また明日!」


「あ、うん…」


今でも覚えてる。

夕日に照らされたあの笑顔は、

本当に綺麗だった。


ーー


「そうかよ……

 俺は人を見る目には自信があったんだが、

 間違いだったか……」


恋の言葉に、タカシは答えない。


「なぁ、タカシ。

 もうこんなこと二度とするな。

 何もないなんて……

 そんな悲しいこと、自分で言うなよ」


タカシは倒れたまま、黙って聞いていた。


「お前が生きてきた今日までの日々も、

 お前を認めてくれる誰かも……

 お前のことを大切に思ってくれる人も…

 少なからず、絶対にいるだろ」


「そんなもの……いるかよ……」


「ーー俺がいる!!」


恋は迷いなく手を差し出した。


「今日知り合ったばかりで、

 関係はまだ浅いかもしれない。

 お前を許す気も、正直ない。

 だけど……俺がいる!!

 だから、もう二度とこんなことすんな」


「何言ってんだよ……馬鹿……

 お前じゃ……役不足だ……」


恋の真っ直ぐな瞳にタカシはフードで顔を隠す。


「俺以上の適任、滅多にいないぜ!」


「……自分で言うなよ……」


タカシは痛む右手で恋の手をしっかり握り、

恋はその手を強く引き寄せた。


「ーー!?」


次の瞬間、恋はタカシを無言で抱きしめた。


(……馬鹿やろう……)


両親にすら抱きしめられた記憶がないタカシにとって、それは人生で初めて感じた“温もり”だった。


声が出なかった。


(あぁ……暖かい……

 やっと分かった……

 僕はこの温かさを……ずっと求めてたんだ……

 通りで、金じゃ買えないわけだ……)


先ほどまでの憎悪は消え、

タカシはただの子供のように、その胸に身を預けた。


--


「本当に助けに来てくれてありがとう!」


ほのかが深く頭を下げる。


「遅くなっちまったけどな……無事で何よりだ」


その二人のやり取りを見ていたタカシが、

ふいに恋へ声をかけた。


「……こいつは、お前に託す」


タカシは小手を放り投げる。

恋は受け取り、手の中のそれをじっと見つめた。


「これ……一体何なんだ?

 戦ってる時も、

 こいつからマジでヤバい気配がしてたけど……」


タカシは息を整えながら答える。


「そいつは……ある組織のやつに渡された」


「組織?」


「あぁ。名前は――暗部」


「暗部?」


ほのかが小さく息を呑む。


「暗部って……あの暗部ですか?」


「知ってるのか?白石」


「うん。この学園じゃ有名な噂。

 影に潜む部活動で、

 活動内容もメンバーも全部不明。

 都市伝説みたいに言われてて……

 正直実在してるなんて信じられない」


「そんな噂があるのか……」


「結構有名な話さ。

 逆に鳴紫が知らない方が僕は不思議だ」


「俺は噂とか興味ないからな!

 自分のことしか興味ない!」


「うわぁ…鳴紫らしいわぁ…」


二人の横でほのかが静かに笑う。


「でも、その暗部がどうして佐藤くんに

 小手それを渡したんでしょうか?」


「僕に可能性があるとか何とか言ってた。

 詳しくは知らないが、そいつの目は赤く、

 かなりイカれた奴だったよ」


「で、そいつから貰ったコイツは

 戦いの経験がない僕にも分かった。

 何かとてつもないヤバいものだって…」


その瞬間だった。


遠くから――誰かがこちらを呼ぶ声がした。


かすれていて、何を言っているのか聞き取れない。

風に溶けるような、ぼやけた声。


三人は思わずそちらへ顔を向ける。


暗いグラウンドの奥で、

ゆっくりと“二つの影”がこちらへ伸びていた。



次回、第一章完結です!

一章こんなに長く書く気なかったのに風呂敷を広げすぎました。

剛とか仲間にする気なかったのになぁ…

そもそも名前決めてなかったしなぁ…

まぁこんな感じで二章以降もノリと勢いで書いていくので、気に入っていただけましたら幸いです!


お読みいただきありがとうございます!


読んで下さったあなたはヒーローです!


ブクマされたら泣いて喜びます!


気軽にコメント、感想お待ちしております♪


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