冒険者養成学院⑤
「な、なんなのだ!?あの雰囲気は!あの女の地位と身体には俺の方が先に目をつけていたのに」
二人の様子を陰で見ていたドルクは声こそ聞こえないがメリッサがあのランドという男に自分には見せたことのない笑顔を向けていることに驚愕した。
「おのれ、Cランクの癖に生意気な。どうせあの女の身体に欲情して歯の浮くようなおべんちゃらでも口にしてあの女のご機嫌でもとったに違いない。ランクの半端な奴はそういった手口だけは得意だからな」
見えないブーメランがザクザク自分に刺さっていることに気付く事もなくドルクはランドに対する憎悪だけを溜め込んでいく。
「ふん、まぁいい。たかがCランクがあの「冒険科」のガキどもの講師など務まるはずがない。すぐにでも自分の無能さを実感して学院を去るだろう、そうしたらあの女も俺に泣きついて頼み込んでくるに違いない。あの女は歳はともかく見た目と地位だけは良いからな、その暁にはあの女の身体を好き放題堪能して服従させ、やがてこの学院を俺のものにしてやる」
典型的な悪役の台詞を吐きながらドルクはその場を後にした。
そんな悪意が向けられているとは知らず、ランドとメリッサは廊下を歩いていきやがて一つの教室の前に来た。
「さて、ここが君に担当してもらう「冒険科」クラスだ。それじゃあ入ろうか」
そう言ってメリッサが教室のドアを開けて入っていくのでランドもそれに続いた。
教室には14-15歳くらいの男女が二人ずつ計四人の生徒が席についていてメリッサが入ってくると全員が席を立ち「おはようございます学院長先生」と挨拶した。
「おはよう君たち、今日はマーク先生の代わりの実技講師が来てくれたので紹介するよ。Cランク冒険者のランド君だ、それじゃ自己紹介してくれ」
メリッサに促されてランドが一歩前に出て自己紹介する。
「初めまして、ランドと言います。1ヶ月という期間ですがよろしくお願いします」
ランドがそう言葉にすると生徒達は少し怪訝な顔をして言葉を発した。
「学院長先生、なにかの冗談ですか?私達はもう「初等科」「訓練科」を修了してるんですよ、それに元とはいえAランク冒険者だったマーク先生にも認められていた実力があるのに今さら現役とはいえCランクの冒険者から学ぶものなんてないと思いますが?」
そう口にしたのはいかにもプライドが高そうな雰囲気を持ちブロンドの髪を肩まで伸ばした「美少女」と言っても遜色ない女子生徒だった。
「ふむ、ソアラ君はこう言ってるが他のみんなも同じ意見かい?」
メリッサはソアラと呼んだ女子生徒を注意するでもなく他の三人の考えを訪ねた。
「そうですね、学院長を疑う訳じゃありませんがその人がCランクだというなら確かにマーク先生の代わりとしては力不足じゃないかなと俺も思います」
黒髪の短髪の少年が質問にそう答えた。
「なるほどカインズ君も同意見だと、後の二人はどうだい?」
メリッサがそう口にすると残りの二人もそれぞれ意見を口にした。
「私は学院長が決めたのであれば異論はないです。意味がないと思えば自習しますし」
色白で銀色のショートヘアーの前髪を髪留めで留めた大人しめの美少女の生徒がそう言うと
「俺も異論はない。無意味だと思えば自主練するし、いてもいなくてもどっちでもいい」
赤茶色の短髪のガッシリとした体格の男子生徒も続いてそう答えた。
「なるほど…ミーシャとダストンは文句は言わないが、学ぶものがないなら自分の邪魔はするなということか」
「まぁ…」
「そんな感じです」
二人はメリッサの言葉にそう返した。
それぞれの意見を聞いたメリッサは「ふむ…」と少し考えたかと思うと「よし、それじゃあこうしようじゃないか」と言ったかと思うと「君達、今からランド君と四人がかりで戦ってみなさい」と口にした。
「「「「…は?」」」」
「メリッサさん?」
四人とランドがそれぞれ驚いたがメリッサはあっけらかんと答えた。
「だって君達はランド君の実力が自分達には力不足だと思ってるんだろ?それなら戦ってみたら一番確実じゃないか」
こうして勤務初日にいきなり生徒達と「模擬戦」をすることになったランドだった。